表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
21/47

1-19

 翌日、ユスターシュはしっかりトイレを済ませて、ピアノ練習。


 リュリはしっかり聴いている。


「……上手くなった!まだまだ荒々しい、だが音楽に心が乗った!!感情が音色に出ている!今ならバレエが身に入るはずだ!講師、むきたまごに片手を貸せ!私が踊る、合わせろむきたまごッ!!バレエは演劇だ、音に合わせて心をのせろ!アン・ドゥ・トロワ、アン・ドゥ・トロワ!!」


 わかる!

 音楽に心を乗せることで、動きは自然とリュリに近づく!!


 リュリ程の偉大な講師が二人といようか?


 コルベールは、ユスターシュの上達ぶりに、拍手を送った。


「俺……フランス一の、バレエダンサーになれる……ッ!!!」


 夢見るユスターシュに、監獄生活は頭から抜けてしまったようだ。



「バレエの足!」


 リュリの号令で、ユスターシュはトゥシューズでつま先歩き。


「宮廷の足!」


 ユスターシュはハイヒールに履き直し、ファッションモデルのように歩いた。


「今日はここまで!宮廷人との会話はまだ禁止!だが、宮廷を歩いてヨシッ!!よくやったむきたまごッ!!なんのセンスの欠片も無かったお前が、どこでバレエのヒントを掴んだかはわからないが、御の字だ!!」


 ユスターシュ、宮廷解放!!


「アンヌ皇太后、サンキュー!母の愛は偉大だぜ……!!」


 コルベールは仕事の合間合間に来てくれており、拍手して、率先して案内してくれた。


「おめでとうございます陛下。ヴェルサイユ宮殿の案内はわたしめが。まずは、お召かえをなさってください。」


 ユスターシュはコルベールに耳打ちした。


「貴族側から、話しかけられたら……?」


「一礼されたら、視線を合わせないまま、(おもて)をあげよ、と。話題は、グリンピースに持って行きましょう。貴族達は流行りのグリンピースの美味しさくらいしか語らないので、大方大丈夫でしょう。」


 政治話に勤しむ法服貴族に比べて、貴族達はグリンピースしか話さないとは、ルイが何故コルベール達を重鎮に採用したか、分からなくもない気がした。


 ユスターシュとコルベールが、王の自室に戻って衣服を漁っていると、コルベールが困り出した。


「参りましたね……王の着こなしが真似出来ません。」

「着こなし……?」


 慌ててカステルモールが駆けつけた。デザイナーを連れていて、彼はコーディネーターでもあり、たくさんの衣服を抱えている。


「待て!まずは宮廷解放おめでとう。だが、王らしい服の着こなしは、デザイナーと二人で!常にデザイナーに服を選ばせろ。ルイ陛下ならば自分で選んだスタイルがブームになるが……陛下には、ルイ陛下らしさが必要ですから。」


 デザイナーがデザインブックを見せた。


「おまかせください!事情は把握しております。わたしが学んできた陛下の着こなしは完璧です!」


 ユスターシュは、気に入ったジュストコールと、デザインブックを見比べた。


「スタイリッシュなジュストコールがあるのに?こんなフリフリのコスチュームを着るの?しかもピンク!!」


「こちら日本のサクラ色で最先端のアール・ヌーヴォー・デザインでございますッ!」


「三段パフスリーブにリボン!ベスト下にギャラント!フリフリのドロワーズ!フリルのついたニーハイソックス!?おい……俺はルイより歳上なんだぞ。ドロワーズはまずいだろ。」


 現代では忘れ去られがちな、ロリータの元祖とも言えそうなルイ14世ファッションである。

 リボンやフリルやレース文化は、男性から始まったのだ。


「長い靴下で素肌を隠せ。今晩は、おおやけの夕食会に出席する。まず皇太后様が座り、その後陛下が王妃様の手を引いて二人とも着席。会話はしなくていい、貴族達が見ているからな。」


 ユスターシュは仕方なく、デザイナーのコーディネート、春のルイ陛下・サクラがテーマのフリフリ使用に着替えて、リボンのハイヒールを履き、きちんとトイレを済ませてから、コルベールの案内でヴェルサイユ宮殿を見て回った。



 ルイーズはアンリエットの仕いを終えると、銃士隊宿舎のダトスの看病に来た。


 まだ、定期的に発作があり、夜も眠れなかったのだろう、ダトスは眠りながら。


 ルイーズが喘息の対応がわからず、ダトスの額のタオルを冷たい水で絞って、取り替えていると、ダトスが涙を流した。


「……ラウル。すぐ飯を作ってやるからな。ラウル……」


 ダトスは、ルイーズとラウルを混同したのだ。


 男やもめのダトスは、自分が具合が悪いだとか、病だとかで、寝込む訳にはいかなかった。


 自分が倒れたら、ラウルは何を食べればいい?


「すまない……ラウル……待っていろよ……」


 ルイーズは涙を溢れさせた。


 一番悲しいのは、ラウルのお父様だ。


 自己犠牲の中で、精一杯愛を込めて、ラウルを育てぬいた。


 なんだ。


 わたしが原因じゃないか。


 ラウルとわたしが、好きあってしまったから。


 ラウルは死を選び、わたしは立ち直って陛下を選んだ。


 本当にラウルを死なせたのは、わたしだったんだ。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ