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翌日、ユスターシュはしっかりトイレを済ませて、ピアノ練習。
リュリはしっかり聴いている。
「……上手くなった!まだまだ荒々しい、だが音楽に心が乗った!!感情が音色に出ている!今ならバレエが身に入るはずだ!講師、むきたまごに片手を貸せ!私が踊る、合わせろむきたまごッ!!バレエは演劇だ、音に合わせて心をのせろ!アン・ドゥ・トロワ、アン・ドゥ・トロワ!!」
わかる!
音楽に心を乗せることで、動きは自然とリュリに近づく!!
リュリ程の偉大な講師が二人といようか?
コルベールは、ユスターシュの上達ぶりに、拍手を送った。
「俺……フランス一の、バレエダンサーになれる……ッ!!!」
夢見るユスターシュに、監獄生活は頭から抜けてしまったようだ。
「バレエの足!」
リュリの号令で、ユスターシュはトゥシューズでつま先歩き。
「宮廷の足!」
ユスターシュはハイヒールに履き直し、ファッションモデルのように歩いた。
「今日はここまで!宮廷人との会話はまだ禁止!だが、宮廷を歩いてヨシッ!!よくやったむきたまごッ!!なんのセンスの欠片も無かったお前が、どこでバレエのヒントを掴んだかはわからないが、御の字だ!!」
ユスターシュ、宮廷解放!!
「アンヌ皇太后、サンキュー!母の愛は偉大だぜ……!!」
コルベールは仕事の合間合間に来てくれており、拍手して、率先して案内してくれた。
「おめでとうございます陛下。ヴェルサイユ宮殿の案内はわたしめが。まずは、お召かえをなさってください。」
ユスターシュはコルベールに耳打ちした。
「貴族側から、話しかけられたら……?」
「一礼されたら、視線を合わせないまま、面をあげよ、と。話題は、グリンピースに持って行きましょう。貴族達は流行りのグリンピースの美味しさくらいしか語らないので、大方大丈夫でしょう。」
政治話に勤しむ法服貴族に比べて、貴族達はグリンピースしか話さないとは、ルイが何故コルベール達を重鎮に採用したか、分からなくもない気がした。
ユスターシュとコルベールが、王の自室に戻って衣服を漁っていると、コルベールが困り出した。
「参りましたね……王の着こなしが真似出来ません。」
「着こなし……?」
慌ててカステルモールが駆けつけた。デザイナーを連れていて、彼はコーディネーターでもあり、たくさんの衣服を抱えている。
「待て!まずは宮廷解放おめでとう。だが、王らしい服の着こなしは、デザイナーと二人で!常にデザイナーに服を選ばせろ。ルイ陛下ならば自分で選んだスタイルがブームになるが……陛下には、ルイ陛下らしさが必要ですから。」
デザイナーがデザインブックを見せた。
「おまかせください!事情は把握しております。わたしが学んできた陛下の着こなしは完璧です!」
ユスターシュは、気に入ったジュストコールと、デザインブックを見比べた。
「スタイリッシュなジュストコールがあるのに?こんなフリフリのコスチュームを着るの?しかもピンク!!」
「こちら日本のサクラ色で最先端のアール・ヌーヴォー・デザインでございますッ!」
「三段パフスリーブにリボン!ベスト下にギャラント!フリフリのドロワーズ!フリルのついたニーハイソックス!?おい……俺はルイより歳上なんだぞ。ドロワーズはまずいだろ。」
現代では忘れ去られがちな、ロリータの元祖とも言えそうなルイ14世ファッションである。
リボンやフリルやレース文化は、男性から始まったのだ。
「長い靴下で素肌を隠せ。今晩は、おおやけの夕食会に出席する。まず皇太后様が座り、その後陛下が王妃様の手を引いて二人とも着席。会話はしなくていい、貴族達が見ているからな。」
ユスターシュは仕方なく、デザイナーのコーディネート、春のルイ陛下・サクラがテーマのフリフリ使用に着替えて、リボンのハイヒールを履き、きちんとトイレを済ませてから、コルベールの案内でヴェルサイユ宮殿を見て回った。
ルイーズはアンリエットの仕いを終えると、銃士隊宿舎のダトスの看病に来た。
まだ、定期的に発作があり、夜も眠れなかったのだろう、ダトスは眠りながら。
ルイーズが喘息の対応がわからず、ダトスの額のタオルを冷たい水で絞って、取り替えていると、ダトスが涙を流した。
「……ラウル。すぐ飯を作ってやるからな。ラウル……」
ダトスは、ルイーズとラウルを混同したのだ。
男やもめのダトスは、自分が具合が悪いだとか、病だとかで、寝込む訳にはいかなかった。
自分が倒れたら、ラウルは何を食べればいい?
「すまない……ラウル……待っていろよ……」
ルイーズは涙を溢れさせた。
一番悲しいのは、ラウルのお父様だ。
自己犠牲の中で、精一杯愛を込めて、ラウルを育てぬいた。
なんだ。
わたしが原因じゃないか。
ラウルとわたしが、好きあってしまったから。
ラウルは死を選び、わたしは立ち直って陛下を選んだ。
本当にラウルを死なせたのは、わたしだったんだ。
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