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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
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1-15

 ユスターシュはルイとカステルモールを見る。


「は……はぁ〜ッ!?」


 ルイは途端に汚いベッドを綺麗にすべく手で払い、座った。


「全く、難儀なことになったな。バレエもまた演劇、余は名優だが……薄汚い犯罪者の役などは初めてだぞ!ふん、毛布は捨てろ汚らわしい。仕方あるまい。余も、心身共に疲れてはいたしな。夏の避暑地にはなろう。」


 ユスターシュはルイに対面して、当然ながら怒り出した。


「てめぇーッ!!クソ国王!!おいルイッ!!よくも俺を冤罪監禁しやがったな!!!」


 カステルモールはユスターシュを制し、告げた。


「落ち着いて。君の気持ちはわかる、後から陛下には俺から念入りに、特別念入りに、ご忠言させていただく。」


「フン。是非とも国王暗殺事件を防いでから、余に忠言してみせよ。首が落とされていては、余とてお前の言葉どころではないぞ?」


 ユスターシュは唖然と聞いていた。


「国王……暗殺事件……?」


 カステルモールがユスターシュに語った。


「ユスターシュ・ドージエ・ド・カヴォワよ。今日から貴君は王の影武者となり、ヴェルサイユ宮殿で英才教育を受けていただく。未来から暗殺者が来ている。貴君は、殺されるか、或いは王らしく振舞って撃退するしか、道は無いと思いなさい。」


「はーあ!?」


 いきなり、未来。


 しかも、自分が代わりに危ない目に遭うのだという。


「暗殺者1人の撃退ごとに、刑期5年を免罪する。つまり、活躍すれば、生前に監獄を出るのも夢では無い。どうだ?」


「は!5年!?たかだか5年だと!?ここにいる大バカ国王の身代わりに、殺されるかもしれねぇのに!?」


 カステルモールは駆け引きとして、挑発した。


「おかしいな。君も武勇伝語りが出来る程の腕前のはずだ。喧嘩では負け知らず、噂では頼もしいと思っていたが……まさか、怯んだのか?」


「それとこれとは話が違う!!黄金のヴェルサイユ宮殿暮らし、そこは上等だ!!だが、暗殺者付き!!俺に冤罪ふっかけてきたのはルイなんだぞ!?ルイの代わりに誰が襲われてぇもんかよ!!お断りだね!!」


 カステルモールは方向性を変えた。


「……ヴェルサイユ宮殿には、花のように美しいご婦人も多くいるぞ。」


 ユスターシュは顔を背けながら、しっかり考えて、尋ねた。


「……マダム?マドモワゼル?」


「例えば。愛すべきスペインの花、麗しのアンヌ皇太后」


「え、アンヌ皇太后はちょっと……。影武者したら、アンヌ皇太后が母親って設定なのに?無理言うなアンタ。」


「……王弟妃殿下アンリエット様。マドモワゼル・ルイーズ。」


「……マドモワゼル・ルイーズ?」


 ルイが声を荒げた。


「カステルモール!ルイーズを釣り餌にするな!!」


 カステルモールとしては、ようやくユスターシュが食いついた名前だ。


「ルイーズ殿は美しく、まだ王に見初められたばかりだ。彼女は愛するラウルを失ったばかり。つまり……わかるな?」


 ルイーズの弱みに付け入って、愛し合うのは容易い……みたいなニュアンスで、ユスターシュを揺さぶった。


「……顔が美人なのはわかった。じゃあ性格は?心は、美人か?」


 ルイが思わずユスターシュの疑いに怒った。


「顔だけの美人などいくらでもおろう!ルイーズは聖母のような、清らかで温かな娘だぞ!罵ることは余が許さぬ!」


 それが、ユスターシュの決定打となる。


「乗った。アンタ、名は?俺がルイーズに好かれるにはどうしたらいい?」


「俺は銃士隊隊長シャルル・ド・バッツ=カステルモールだ。俺のことはカステルモールと。皆を呼び捨てにしなさい、でなければ疑われよう。銃士隊のことは俺に命令を。そして、ルイーズ殿に関わるならば、エレガントに振る舞え。王らしくだ。」


 ルイはカステルモールをつついた。


「ルイーズを釣り餌にしたな?許さんぞ、カステルモールよ?」


「しかし事態が事態、やむなき判断とお考えいただきたい。」


「……事件が終わり次第リュリを連れて来い。あれは親友だ、余が直々に話す。あの男は派手で隠密が苦手だ、カステルモールよ、お前が馬車で秘密裏に運ぶのだぞ。それから、ルイーズは落ちぬ。渡さぬ。余と愛し合ってる。」


 ルイは、自身も確信の無い事実無根で、ユスターシュを牽制した。


 カステルモールはため息混じりにユスターシュに告げた。


「強がりだ。ルイーズ殿の中のラウルが、当面は一番の難関だろう。」


 ユスターシュはろくに聞いていない。


 それより、知らない名前が気になった。


「リュリって誰よ?」



 ルイ14世は大のお風呂嫌いで有名である。生涯に1度だけ、嫌々水浴びをしたきりだという。


 お風呂には入らず、アルコールタオルで身体を拭くのみ。


 自然と臭さを紛らわす香水文化が発展したのだ。


 しかし、汚れ放題のユスターシュは、このままではルイの代役にはなれない。


 丹念に水浴びし、ルイらしい白い肌にならねばならない。


 洗って白くなると、もはやカステルモールさえため息が出た。


「……ここまで瓜二つだとはな。」


 ルイの美しい衣服をまとい、ユスターシュは馬車でヴェルサイユ入りを果たした。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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