表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
16/47

1-14

 政治の間にやって来たルイを驚かせたのは、ルイの剣の師匠、銃士隊長カステルモールであった。


 カステルモールは頭を垂れ、頭を上げて良いというルイの許可を待つ。

 コルベールも訳知り顔だ。


「スペインは……口実か。どうしたというのだ?カステルモール。面を上げよ。」


 カステルモールはようやく頭を上げた。


「お休み時間に失敬を。緊急事態につき、お知らせに上がりました。陛下、こちらをご覧下さい。銃士隊!」


「はっ!!」


 何か棺桶のような物に布が被せてあり、カステルモールの指示で布が剥ぎ取られた。


 中には、金属の箱があった。鋼の棺桶とでも言えばよいだろうか。様々な技術を用いた箱であり、蓋を開ければ、人が入れるスペースが見られた。


「……何だこれは。聖人の聖体でも入れるのか?」


「本日ヴェルサイユ近郊で発見されました。俺がある協力者から情報を得て捜索させていた……おそらく、これは時空転移装置です。」


「時空……?これは珍しい、カステルモールでもユーモアを?」


「王。私はルイーズの取り合いで王が前線に送った銃士ラウルの名付け親です。ラウルの父ダトスは今、心労から過呼吸、過呼吸から喘息に発展し、私の部屋で苦しんでおります。今の私が冗談を言うように?」


「……見えないな。ラウルのことはすまない。だが、なぜ時空などと。突飛ではないか、カステルモールよ。」


「この装置を学者にも触ってもらい、解析済です。協力者がいた、と言いましたが、発作を起こしたダトスを助けた医師が、未来から来たサンソン家の四代目死刑執行人でした。彼は王を守る側、その他の未来人は王を暗殺に来ると。今も彼は貴方の護衛をスカウトすべく、出回っております。サンソン殿から伝言が。安全確保の為、ヴァスティーユ監獄ですり変われ、と。」


 ルイは察した。

 ヴァスティーユ監獄でルイとユスターシュが入れ替わり、少なくとも、国王暗殺によるフランスの倒壊を防げ、ということだ。


「……!!不味い。それは恐らく、ヴェルサイユ宮殿にまで刺客がもう入り込んでいるのだ。……一時間後に舞台が。」


「代役を。リュリがフォローしながら踊ればそれなりに何とかなりましょう。」


「うむ。コルベール!カステルモール!そなたらは、余以外の誰かに話したか?」


「いいえ。陛下の信頼厚いコルベール殿以外の政務官には、スペインがらみとしか言ってはおりません。」


 コルベールも告げた。


「わたくしも、カステルモール殿から聞いて、直ちに陛下の元へ。秘密は墓まで持って行きます。どうか、自衛なさってください。貴方様抜きには、フランスは両ハプスブルク家に支配されてしまいます。」


 ルイは、ルイーズが脳裏に過ぎったが、ルイーズに知らせる余裕は無かった。


 ルイーズか、フランスか。

 愛か、国家か。

 マリー・マンシーニとマリー・テレーズで、既に学んだ道である。


 国家を、天秤にかけられようか?


「コルベールよ!余の不在を誤魔化し、影武者の支援を行え!政治の再開は、余が戻ってからとする!カステルモールよ!今すぐ余を護衛し、質素な馬車を出せ!ヴァスティーユ監獄へ向かう!銃士は少数精鋭だ、よいな?」


「かしこまりました、我が王」


「御意に!」



 リュリが急な代役と踊る事になり、目を白黒させている頃、カステルモール率いる質素な馬車はヴァスティーユ監獄の橋を渡った。


 銃士二名と、質素に変装したルイ、カステルモールは監獄に入り、ルイは王としてではなく罪人のフリをして、足掻く演技すらしてみせた。


「離せっ!!触るな!俺は無罪なんだ!!」


「銃士隊長さん。この男、罪状は?」


「刑期120年の終身刑、脱獄したユスターシュ・ドージエ・ド・カヴォワを収監に参った。中にいるのは、入れ替わった弟さんだ。参った家族愛だな。案内してもらえるか?」


「あぁ、アンタは仮面の紳士さんか!なるほどね。あんた仮面外しちゃダメでしょ、王の勅命なんだから。看守ー、鉄仮面持って来てー」


「あぁッ、やめろ!よくもこの美貌に鉄臭い仮面を!しかも溶接!熱い、熱いぞ!!……ちょ、おいっ!何も、仮面までは要らなかったのではないのか?」


 ルイの本音が漏れて、カステルモールが返した。


「いざと言う時、身バレ防止になりますよ。」


 看守はルイを連れて、カステルモールに振り向いた。


「銃士隊長さん、ここまででいいですよ。後は我々がやります。仕事なんでね。」


 そうもいかない為、カステルモールはアドリブを効かせた。


「こちらも王の勅命だ。ユスターシュに条件付きの警告をしなければならない。人払いを頼めるか?」


「では、話の時だけ独房に。」


 ルイ達がユスターシュの牢屋に案内されると、ユスターシュは飛び上がって檻にしがみついた。


「て、てめぇ……!?」


 ルイは白々しくも、泣き声でユスターシュの向かいから檻にしがみついた。


「弟よ!すまねぇ、捕まってしまった!」


 カステルモールは呆れ返り、この馬鹿芝居を辞めさせる為にも、淡々と職務についた。


「ユスターシュを牢屋に入れろ。弟さんは我々が引き取る。まずは、人払いを。」


「かしこまりました。独房には近づきませんので、終わったら看守室に呼びに来てくださいね。」


 看守達が去ってから、間もなく銃士二名も立ち去った。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ