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Trompe-l'œil ー二人の太陽王ー  作者: 燎 空綺羅
第1話 快男児トロンプ・ルイユ
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1-13

 再びの解説をしよう。


 カステルモール率いる銃士隊とは、近衛銃士隊のことで、国王ルイ14世の直属の近衛が、レイピアとマスケット銃を持ったものである。


 少年たちの夢であり、栄誉ある職種だ。


 ルイはラウルとの決闘を果たしたが、確かにそれは銃士隊内部の暗黙の了解であり、しきたりは決闘だが、実はルイや父王ルイ13世は、決闘を禁止している。


 ルイがラウルに対してあえて決闘を選んだのは、国王たるルイと対峙するラウルへの、平等性の為であり、別に銃士隊に決闘沙汰を許している訳では無かった。


 しかし、剣よる個人の決闘はご法度だが、銃士隊は熱血漢だらけ。


 剣豪程、血が騒ぐ。


 かつてはカステルモール自身も決闘に出回った程だ。もっぱら、今は叱りつける側だが。


「シラノ!!」


 お冠のカステルモールが馬で駆けつけたのは、まさにそういった決闘騒ぎ。


 片や剣も照り返す光のような美青年。


 親友との乱癡気騒ぎで頬を赤らめ、艶やかな髪を翻して剣舞を辞めることは無い。


「よさないか、シラノ!!」


「お待ちを、カステルモール殿!」


 カステルモールは驚いた。そこに現れたのは四代目サンソンだ。


「サンソン殿?……未来人の?」


 サンソンは頷いた。


「はい。わたしはこのまま、シラノ殿の剣の腕が見たい。どうか、彼らをお止めになられずに。」


 しかしサンソンの見込み違いか、シラノは不細工銃士にコテンパンにのされてしまったではないか。


 いや、違う。


 不細工銃士が強過ぎるのだ。

 その腕前ときたら、大剣豪である。


「クリスチャン!!お前も無謀が過ぎる、下がれ!!やめろシラーノー!!」


「!?」


 サンソンがシラノだと思っていた方が、美しいだけのクリスチャン。


 不細工銃士が、大剣豪シラノ・ド・ベルジュラックだ。


「吾輩も君も銃士隊が一人

 吾輩は50人との決闘をも乗り越えて来たし

 何度も武勲を上げてきたのだ

 これ以上吾輩に挑むと言うのなら

 この剣の錆になりたいか

 吾輩の勝利に既に変わりはないがな」


「この詩は……!こちらがシラノ殿か……」


 喋る言葉はすべて詩人の如く。


 カステルモールはシラノの頭をどつき、クリスチャンにも厳しく言いつけた。


「隊内の決闘はご法度だ。クリスチャン、またか、シラノに挑むな!」


「……ロクサーヌは俺を見てない。俺を通り抜けてシラノを見ている。」


 シラノは大袈裟に肩を竦め、唄う。


「おおクリスチャン

 彼女は君に心酔している

 それは明らかな事だ

 君は美しい

 君は情熱を纏っている

 彼女が自分を通して吾輩を見ているだって?

 馬鹿な話だ

 彼女は君を愛しているのさ

 吾輩には見える、君と彼女の輝かしい未来が

 言いがかりの決闘ならば100万と返り討ちだが

 愛するロクサーヌへの悩みであれば、

 友よ、いつだって力を貸そう

 これからの、ロクサーヌとクリスチャンに永遠に幸あれ」


「……ロクサーヌに会ってみる」


 シラノは事態を丸く収め、見物客達に帽子を取って一礼した。

 あたかも、シラノ劇場である。


「カステルモール殿。シラノ殿をひとけの無い場所へ。話がある。」


「……だそうだ。シラノ!彼の話以後は一段と騒ぎを起こすな!これからは国王直属だ、わきまえろ。」


 シラノはすかさず素で返した。


「銃士隊も国王直属だけどな。」


「シラノ!!あぁ、この問題児、俺の頭をおかしくしたいのか?これ以上俺を怒らせるな!!」


 銃士隊隊長カステルモールも怒髪天だ。


 シラノはサンソンに連れられて、路地裏に来てから、帽子を下げて一礼した。


「我が名はシラノ・ド・ベルジュラック

 闘いの場にこの身を捧げてきた

 同じように

 詩を謳うこともこの身の全てだ

 そんな吾輩に

 なんの御用かおありか」


 台詞の全てが詩になっている。


 サンソンはようやく彼を見つけ出して安堵した。


「私は未来から来た死刑執行人のサンソン家四代目、シャルル・アンリ・サンソンです。この時代で最強の剣士である貴方を、国王護衛隊及びこの時代のスパイとしてスカウトしに来たのです。銃士兼詩人、シラノ・ド・ベルジュラック殿、その力を貸して欲しい。」



 コルベールがヴェルサイユ宮殿の廊下を急いで歩いている。


 ハイヒールの靴音が響く。


 コルベールは、ルイが貴重な自由時間にデザイナーと衣装の打ち合わせをしているところへ、駆けつけた。


「国王陛下、急を要するお話がございます。」


 ルイはため息をついた。


 まだまだルイーズの拒絶状態が続いており、ルイは傷心の身である。


 平静を保っているフリは出来ても、内面が追いつかない。


 だが、国王であるルイを、政治は待ってはくれないのだ。


「コルベール、またスペインか?それとも増税の問題が?いいか、余が対応するのは一時間だ。本来ならば休憩時間なのだぞ。誰ぞ、リュリを!リュリを呼べ!!」


 小姓がリュリを呼んでくると、ルイは親友に急いで歩み寄った。


「我が王!リュリはここに!」


「バレエ舞台は一時間後、予定通りに。今宵はそなたと余で登壇するのだろう?そなたのシリアスも、モリエールのコメディも良い。準備運動をして待っていろ、すぐ行く。」


 ルイはリュリに約束してから政治に向かい、リュリは王への愛で高鳴る鼓動をステップにしながら舞台へと向かった。


 王の寵愛ならばルイーズにすら引けを取るまい、リュリの爆進、快進撃は止まることを知らぬ。


 トスカーナで粉引きの家に生まれたが、家柄などなんのその。音楽がリュリをルイに引き合わせてくれたのだ。


 ルイは、天性の審美眼を持つ、芸術の神だ。だからこそ、男好きで手の早いリュリでさえ、ルイを神聖視して手を出さないし、その期待に応えようと作曲を繰り返す。


 ルイのバレエこそは太陽神アポロンの化身。

 リュリはいつだってまなこを閉じれば王の舞が蘇った。


 見よ!

 美しくも優雅な王の舞を!

 讃えよ!

 麗しく気高き王の姿を!

 これがわ、た、し、の、、、王だーー!!!


 王はわたしを寵愛してくださり

 私も王を愛している

 思い思われ

 愛し愛されて

 ふ、た、り、は、、、両想い!!!


 更に寵愛をいただく為

 今日もリュリは

 音楽に励みますぞ!


 だれも引き離せない絆

 それが王とリュリ

 ルイ14世万歳!

 王とリュリ万歳!


 リュリ、心の独白……著 A:flow


「あぁぁぁぁぁ、おぉぉぉうッ!!」


 リュリの咆哮に同僚音楽家達が今日も2度見する。


 ヴェルサイユ午後三時、マリア様は見てらっしゃらないし、神父達もたてつけぬ、寵愛された男の禁忌の情熱であった。

Copyright(C)2026 燎 空綺羅

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