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風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


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28/35

段取

 ヴァンセルガ市長ゼカイル・ナウトは頭を抱えていた。戦争なんて起きるはずがないと思っていたのに、いつの間にかこの状態なのだ。態度を保留していた間に、ボディーガード契約だけのつもりだった警備会社は勝手に軍隊を作りだすし、気晴らしにとパーティに出かければ誘拐されてしまう体たらくだ。誘拐のショックが抜けないうちに、何だか大きなお祭りをやるからと市民の半分は招待されて行ってしまうし、テュアルズは勝手に作った軍隊で勝手に開戦の口火を切っている。

「くそっ、僕はただ交易都市を豊かにして、その富を故郷へも届けたかっただけだ。だから市長になったのに、なんでこんなことになったんだ。」

「ゼカイル、落ち込まないで。リゼアの人たちがきっと助けてくださるわ。」

 ソファーの隣に座っている秘書が肩に手をかけて慰めてくれる。この女性はいつから当たり前のように自分の隣に座るようになったんだろう、とちらりと考える。この人は秘書だよな。

 その時パズルのピースがはまるように、何かがゼカイル・ナウトの頭の中で形をなした。

「そうだ、リゼアだ。今すぐ連絡を取ってくれ、誘拐された僕を助けてくれたリゼアの担当者を、いやもっと上の人を、呼んでくれ。話がしたい。」


「大統領が話をしたいとおっしゃっているのですね。時間と場所を指定していただいてよろしいですか? セレタス王は少し前からカシャにおいでになっておりますので、いつでもお会いになれると思いますが。」

 ジノフィーニャは、避難誘導の共感応域にいるまま、大統領府からの連絡を受けていた。相手の返事を待つ間も、駐車場の車から荷物を下ろす手伝いを増やしてほしいという要請を聞いている。

「では、20単位時間後に大統領公邸へおいでいただけますでしょうか。」

「結構です。承りました。王にはお伝えしておきます。」

― 王、カシャ大統領から会談の申し込みがありました。20単位時間後、大統領公邸へお越しいただきたいと。

― ああ、わかった。先にカルティバかローエンジュを行かせておいてくれ。さすがに一人だけで行くわけにはいかないからね。

― 了解です。ローエンジュ、聞きましたね?

― はいよ、了解。っと、まてまて、着替えて来ないといけないよな。一度、黄炎宮へ帰る。

― 礼装ですよ。

― わかってるって! あとこっちはよろしく。

 あわただしく着替えて、セレタス王宮黄炎宮から、カシャ大統領公邸へ連絡を入れる。

「あー、こちらはセレタス王付き担当官、ローエンジュ。大統領秘書官へご伝言いただきたい。大統領公邸に控室を一室用意いただきたい。はい、もちろんセレタス王に。はい、今から参ります。」

連絡を切ると同時に、黄炎宮からヴァンセルガへ、さらにカシャ大統領公邸の、警備員でごった返すロビーへと跳んだ。突然現れたローエンジュに全員の注目が集まる中、彼はすまし顔で共感応を放った。

― リゼア連邦セレタス王付き担当官、ローエンジュです。大統領秘書官へお取次ぎを。

ばたばたとやってきた秘書官に控室へ案内され、会談の場所と段取りを確認すると、ローエンジュは用意されたお茶を飲みながらおもむろにライラーザへ呼びかけた。

― 王、準備が整いました。もうこちらへおいでくださっていいですよ。

 瞬き二つ分くらいで、ライラーザは現れた。首筋を隠すチョーカーが、いつもは金糸織りの布なのだが、今日は本物の金の鎖帷子くさりかたびら状の胸飾りだ。鎖帷子の小さなパーツ一つ一つが、キイロのリングを加工したものである。

― 今日はおしゃれにも気合入ってますね、王。まさかその格好のまま、エルデンを歩いていたわけじゃないでしょう。

― エルデンにいたときはアバター体ですよ。

― じゃ、本体には最初から礼装着せてましたね。でなきゃこんなに早く支度できないでしょう。

 セレタスのアオの礼装は、一枚の大きな布を数人がかりで縫い留めながら着つけてゆくものだ。呼ばれてから着ていたのでは間に合わないのである。

― そのくらいはやっておかないとね。カシャの大統領をあまり待たせては、今度はリゼアに怒りの矛先が向きかねません。

― へえ、これだけ俺たちがんばってるのに、まだ怒られなきゃいけませんか。

― カシャに、というより大統領に、何の断りもなくやってると思ってるんですよ。

 ライラーザは礼装にしわが寄らないよう、自身を少し浮かせた状態で椅子にかけると、お茶のカップを手にする。

― ほう、ここのお茶は、エルデンの物とは香りが違うのだね。

― そうでしたか? じゃ、大統領とはお茶談義から始めてやって下さい。俺は用事ができるまで、航空機の上手な操縦法習ってますよ。

― とりあえず、わたしと同じ部屋に立っていなさいよ。

― 承知。


― ゼカイル・ナウトが、会いたいって言ってるの?

― はい。先ほど秘書から連絡が。

 普段ならこういう話はエルクリーズが受けるのだが、今、ヴァンセルガにいるのはイクセザリアだけだった。ウロンドロスは偽病薬によるにせのパンデミックの管理に手いっぱいだし、サグとエルクリーズはアーセネイユの手助けに出かけている。

― いいわよ。だいたい予定してた通りだわ。10単位時間後に市庁舎でいい?

― 向こうはもう少し時間の猶予がいるはず。かと…。

― あ、そうなの。じゃ、時間はあなたが交渉しておいて。いつでも行くから。

 イクセザリアは仕方なくさっきの音声連絡の回線を開いた。こういう交渉事は苦手だ。市長の秘書官は必要以上にリゼア人を奉っている。おそらく完璧な準備をするまで待たせるだろう。逆に市長に直に話をした方が早いかもしれない、と思い直す。

― ヴァンセルガ市長ゼカイル・ナウト、こちらはリゼア連邦ミトラ王担当官、イクセザリア。今からミトラ王との会談の打ち合わせに行きます。市長室で会いましょう。


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