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風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


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裏側

 カシャ政府は降ってわいた伝染病と、エルデンの避難騒ぎに、こちらも大騒ぎになっていた。大統領をはじめとしたメンバーによる特別対策会議が始まったのは、カルティバが作っていた復路の方の道路が完成したころだった。

「あの人工衛星から発生したとかいう病気はいったい何なんだ。あれもヴァンセルガがやったことなのか。」

「それにしてはヴァンセルガでも同じ患者が出ているという情報が入っています。これはおかしいです。新エルデンにはバイオテロ対策チームを送りましたが、思ったほどの重症者はいないとのことです。」

 主訴は腹痛、嘔吐、下痢。珍しくもない症状だ。幼児なら重症化しやすいのはわかるが、大人ばかりの建設現場で、同じ物を食べているのに重症の者もごく軽い者もいるのは不思議だった。

「病気そのものよりも現在のエルデンシティの状況です。町を捨ててみんな避難しているんですよ。たかが腹痛程度の病気で。根も葉もない噂が飛び交っていて、避難はまたしてもお告げによるものなんだそうです。」

「その噂というのはどんな内容なのかね。」

「まず、新エルデンの建設現場は、落ちた人工衛星によってもたらされた悪性の病気で全滅した。あれはカシャ防衛軍がエルデンを狙った攻撃であって、カシャ防衛軍はエルデンシティを敵だとみなしている。お告げの通り北の砂漠に避難すれば、リゼア人が助けてくれるというものです。」

「そんな支離滅裂な内容を、市民がみんな信じているのか。砂漠になど出ても、何もないだろうに。」

 カシャ防衛軍の将官が憮然として言う。

「まあ待ちなさい。エルデン市庁舎との連絡はどうなっている?」

「それが、一切通じないのです。有線のも無線のも。市長始め関係者の個人連絡先をはじめ、市民の家庭用個人用電波も、一切通じません。」

「じゃあ、さっきの噂だとかお告げだとかいうのは、どこから来た情報なんだね?」

「エルデン教会が他の都市の教会と衛星回線を持っていて、そこを経由して出てきたものです。」

「お告げの正確な内容は?」

 誰かが文字になったものを、スクリーンに提示した。

『偉大なるエルデンの神のもとに集えし兄弟姉妹たちよ。これより最後の言葉を伝えます。人工衛星が落ちた町で災厄の病が起こりました。それこそが我らへの攻撃です。皆、このエルデンを捨てて北へ逃げなさい。一人もこの地に残ってはなりません。幼子の手を引き、老いたる者を背負って、みな北へ去るのです。』

「これが最後というのはどういうことだろう。」

「あれはどう見ても、エルデンを捨てて逃げるような病気ではないのですが。」

 科学省の長官は怒っていた。人々にデマをばらまいて動かしているのが許せないようだ。

「昔の地震のことがある。今度はエルデン教徒以外の人々もお告げに従い避難するだろうな。エルデン以外の教会ではお告げは聞こえないそうじゃないか?」

「と、いうことは、まさか、ヴァンセルガがエルデンに向かって攻撃をするということですか? 病気というのは口実で。」

「いや、ヴァンセルガ側にも発病者がいる。ましてあの市長はエルデン教徒なのだろう? エルデンへの攻撃など間違ってもしないと思うが。」

「では、町を捨てて避難する理由は何です? カシャ防衛軍が本当に攻撃するわけではないのでしょう。」

 皆が黙り込んだところへ、カシャ防衛軍の将校が発言した

「大統領、今のところ新エルデンに入ることは可能です。うちの特殊部隊を使って、新エルデンから陸路エルデンへ潜入させてはどうでしょう。」

「残念だが、入るのには時間がかかりすぎる。両エルデンをつなぐトンネルは、まだ着工もされていない。」

「北のガラッポとつながっている鉄道はどうなっている?」

「あれは運休状態です。エルデンシティへ入るだいぶ手前にバリケードが作られており、その先へは進めないようになっています。」

「復旧のめどは?」

「何とも。エルデン側の状況がわかっていないので…。」

「高速道路のほうは?」

「鉄道と同じくです。あ、待ってください。衛星画像が来ました。」

会議室のスクリーンに、大きな衛星画像が映し出された。並行して砂漠を走っている鉄道と道路は一本の線のようだ。

「これは何だ!?」

 鉄道と道路の直線の途中に、巨大なドーム状の物が隣接して映っている。その周りには小さな三角形の物が6つ整列している。

「拡大します。」

「これはリアルタイムの映像なのか?」

「いえ、タイムラグは1単位時間ほどあります。」

 処理された映像が映し出したのは、半球上のドームに覆われた一つの町のように見えた。ドームはわずかに透き通っており、中に建物があることがうかがえるのである。高速道路から進入路が引いてあるらしく、車が列をなしてそのドームの地下へ入っていくのが見える。

「まさか、噂にあった、北の砂漠に逃げればリゼア人が助けてくれる、というのがこれなのか。」

 もとからあったものではない。神々の星リゼアがやったことだとしても、いったいいつの間に? 

「リゼアからはこのことで何か連絡はあったのか。」

「いえ、開戦前に『リゼア連合の規定により、戦争を回避すべくリゼア連邦はカシャ系および交易都市ヴァンセルガに介入する』という定型文の宣告が来ただけで。」

「つまり、これについては、いちいちこちらに話を通すほどのこともないということなのだな。」

大統領は顔をゆがめた。自分のあずかり知らぬところで勝手に事態が動いていることに納得できなかったのだ。

「リゼアに連絡を取れ。わたしから話があると。


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