表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/35

重複

 新生命宮での100年以上前の犯罪、予知能力者トエラルカたちへ供給されるミネラルが神経刺激薬物にすりかえられていた事件の犯人はわからずじまいだった。ミネラルの袋の中味をいくぶんか取り出して別の薬物を代わりに突っ込んでおくことくらい、誰にも可能だったからである。袋を開封しなくても中身を入れ替えるくらいは、リゼア人なら一般市民アカにも簡単にできることなのだ。さらに言えば能力階級の高い者なら、その現場に当人が居る必要すらない。

 神経刺激薬物についても、一般に販売されている飲み物にも入っているようなありふれた物で、飲み物の製造過程で使用される濃縮された状態の物さえも、普通に買えるということがわかった。人々に畏敬の念を持たれている予知能力者トエラルカに対して、このような行為が行われること自体、誰一人予測していなかったというだけなのだ。

― まったくお手上げだったということですね。

 ウロンドロスが報告する。影響は大きかったが、行為としては児戯に等しい。道ばたに落ちていたゴミにつまずいてけがをしたからといって、ゴミを捨てた奴を探して責任をとらせることができないのと同じようなものだ。

― 王、新しい「お告げ」が来ました!

 突然アーセネイユから呼ばれた。用意していたアバター体に替えるのももどかしく、しーんと静まった緊張みなぎるエルデン教会の一つにテレポートする。

『… 守らなければなりません。くれぐれも用心を怠らぬよう。ヴァンセルガの市長は我らの希望なのですから。』

 さすがに最初の部分は聞き損ねた。ゆったりとした話し方は聞きやすいものだったけれど、それだけで終わりだった。集まっていた人々の緊張がほぐれ、徐々にざわめきが広がる。

「さあ、皆さん。ありがたいお告げに感謝して、もう一度祈りましょう。大丈夫、ヴァンセルガにはすぐにも連絡を送ります。」

 登壇した白い上着の男が声を上げた。周りの人々にならって席に座りながら、わたしはアーセネイユに尋ねる。

― どう? 記録はできた。

― もちろんです、王。ごくごく低い帯域の共感応でした。教会内部にいるものが発したテレパシーではないようです。どこかから送られてきた内容を、例の装置で全体に届くよう響かせているようです。

― わたし、途中からしか聞けなかったんだけど、ヴァンセルガの市長を守る様にって話で合ってる?

― 市長のゼカイル・ナウトの命が危ないと言ってました。

― また、お告げにしちゃ物騒なことを言い出したわね。

「偉大なるエルデンの神のもとに集えし兄弟姉妹たちよ。われらの栄光につながる者、ヴァンセルガのゼカイル・ナウトの命が狙われています。エルデンの栄光を世に知らしめるため、われらは全力でこの者の命を守らなければなりません。くれぐれも用心を怠らぬよう。ヴァンセルガの市長は我らの希望なのですから。」

これがお告げの全文だった。あとの調査を任せて一旦もどると、すぐにセレタスから招集がかかった。「お告げ」の仕組みがわかったというのだ。

― 例の共鳴装置の手前に、発言者の立つ壇があるのですが、この壇の床に音声をテレパシーに変換する装置が入っていることがわかりました。音声の受信機能もある代物です。

 カルティバが説明する。

― 装置もスイッチも素材の中に隠されていて、教会関係者もこれの存在を知りませんでした。どこかでだれかがスイッチを入れるとお告げが始まるようになっていたんですね。

― 五つすべての教会に同じ装置があるのだね。

あの人が念を押す。

― そうです。あるいは五つとも連動して動く仕組みだったのかもしれないです。それでですね、ここが肝心な所なんですが、普段の説教や祈りの時にもときどきこの装置のスイッチが入っていたようなのです。

― どういうことなの? 目の前で話をしていることを、わざわざテレパシーにして聞く必要はないでしょう。

トトラナ摂政王が尋ねた。

― 普段から教会に集まる熱心な信者が、テレパシーを受け取りやすくなると考えたらどうでしょう。聴覚に障害のある人が、教会での祈りの言葉はよく聞こえると言ったという証言もあります。

― 用意周到なわけね。エルデン教徒が聖都としてエルデンを死守する理由がわかったわ。

 トトラナ王がため息交じりに言った。

― で、ヴァンセルガのほうは?

わたしが尋ねると、サグが答えた。

― 大騒ぎになってますよ。「お告げ」があったらリアルタイムで実況放送する仕掛けになっていたようです。放送じゃお告げは聞こえませんが実況者が代わりに復唱するようで。

― 実際に暗殺者とかがいたの?

― いえ、今のところは何も。テュアルズの連中だけはいろめきたっていますけれど。

― サグ、あなたも目立たないようにゼカイル・ナウトを警護して。今、彼を死なせるわけにはいかないわ。

― 了解しました、王。

サグの通信が切れると同時に、コーグレス王が立ち上がった。

― では、続きは新生命宮で、ですね。

あの人も黙ってテレポートした。今から皆で開戦の予言を読み直し、今後の方針を考えなければならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ