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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: 仁科異邦


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主よ穏便に頼む

魔の森・奥。


一度は緩んだはずの空気。

鳥の声も戻り、全員が少しだけ安堵しかけた――


その時だった。

――ズゥン


今度は、はっきりとした“圧”。

「……っ!?」


ミアが息を呑む。

「さっきより、

重くなってない?」


セリナの表情が、一瞬で硬直する。

「……魔力反応、再上昇」


「しかも」

「機嫌が変わった様です」


「変わったって

そんな軽い感じで!?」



森の奥。

さっきの場所とは、別の方向から。


木々が、内側に“押し倒される”ように揺れた。

「……来る!」


フィオナが叫ぶ。

足音は、ない。

だが――

確実に距離が詰まってくる。


「……追われてる?」

ユウトの問いに、

くっころ先生が即答。


「うむ!」

「完全に追いかけられている!」



突然。


バキィッ!

すぐ横の大木が、

根元からひび割れた。


見えない“何か”が、通過しただけ。


「見えないのに破壊力おかしいよぅ!」

ミアが半泣き。


「なんでだ?」

ユウトが叫ぶ。


セリナが、走りながら分析する。

「……推測ですが」


「我々の存在が“玩具”から“面白い獲物”に昇格しました」

「いや、最悪じゃん!」



くっころ先生、必死に走りながら叫ぶ。


「皆!隊列を崩すな!」

「……私が!」

「囮になる!」


「またそれ!?」


「今回は本当に最後だ!」

「それ、毎回言ってます!!」



森が道を変える。


さっきまであった獣道が枝で塞がれる。


「地形が変わってる!?」


「意思持ってるよこの森!」


「森じゃなくて主です!」



突然。

――ズンッ!!


真後ろの地面が、陥没した。


全員が、転がるように前へ。

「危なっ!」


「今の、完全に踏み潰す気だった!」

「……」


くっころ先生、

珍しく無言。

汗だく。


「……くっ」

「殺せ……」


「こんな時に言わないで!!状況見て!」



ユウトは、

歯を食いしばった。

(このままじゃ本当にやばい)


その時。


セリナが、急に立ち止まる。

「……待って」


「主は」

「完全には攻撃してこないと思います」


「……?」

「致命打を避けています」


「つまり?」


「相手を追いかけてその反応を見ている」


「いや、趣味悪っ!」



森全体が、低く唸る。

威嚇。

焦らせるための。


まるで――

“遊んでいる”。


「……」


ユウトは、

背筋が冷えた。

(気まぐれ一つで、終わるんじゃ‥)



その瞬間。

ピタリ


追跡が、止まった。


「……?」


誰もが、足を止める。


重圧が一気に消える。


森は何事もなかったかのように

静まり返った。



「……終わった?」


ミアが恐る恐る言う。


セリナは首を横に振る。


「……いいえ」

「満足しただけです」


「なにそれ、一番怖いやつ!」



くっころ先生は地面に膝をついた。


「……私は」

「二度と遠足の企画を立てん……」


「そこは方向音痴を自覚してください」


ユウトが、

真顔で言った。



こうして。


魔の森の主は、姿を見せることなく

全員を“遊び”そして放した。


忘れられない恐怖だけを、しっかり刻んで。


誰もが、同じことを思っていた。


(……遠足ってこんなんだっけ)


主の気配が消えてから、しばらく経った。


「……今度こそ、行ったよね?」


ミアが何度目かの確認をする。


「はい」


セリナは、慎重に頷いた。


「主の意識はこちらから外れています」

「ただし――」


嫌な間が空く。

「影響は残っています」



一行は地図を広げた。


「ここを真っ直ぐ進めば、森の外だよね?」

フィオナが指差す。


「……そのはず」

くっころ先生が自信なさげに答える。


「では進みましょう」

ユウトが言う。



数分後。

「……あれ?」


同じ大きな岩。

同じ折れた木。


「……さっきもここ、通ったよね」

ミアの声が小さくなる。


「……通りました」


セリナが即答した。


「三回目です」

「三回!?」



くっころ先生が青ざめる。


「……おかしい」


「私は、やはり私が先導するべきか……」


「先生」

ユウトが、やさしく言う。

「それ、一番信用できないやつです」


「ぐっ……ころ‥」



セリナは、地面に手をつき魔力を探る。


「……結界」


「ですが通常のものとは違います」


「どう違うの?」


「主の存在感が、地形に染みついている」

「結界というより」


「“帰る気を削ぐ配置”です」

「性格悪いな!」



ルナがぽつりと言う。


「……森が」

「“ここにいろ”って言ってる気がする」


誰も、否定できなかった。

(でしょうね)


さらに進む。


だが、景色は少しずつ似通っていく。


「……時間感覚もおかしい」

フィオナが、空を見上げる。


「日が、傾いてない?」

「……はい」

セリナの声が、低い。

「外界との時間の流れがずれています」


「閉じ込められてる……?」

ミアが不安そうに呟く。



くっころ先生が、拳を握る。


「……私が」

「主を怒らせたせいだ」

「責任は、私に――」


「先生」

ユウトは、はっきり言った。


「今は」

「“誰のせいか”を決める時間じゃありません」


「“どう出るか”です」

「……」


くっころ先生、黙って頷く。



セリナが、結論を出す。


「このまま出口を探しても」

「同じ場所を巡るだけです」


「では?」


「主の影響が薄い場所を探す」


「薄い?」

「主が“興味を持たなかった”地点です」


「そんなとこあるの?」


「……あります」


セリナは、森の奥を見つめた。


「魔力が不自然に空白な場所がそれす」

「……嫌な予感しかしない」



ユウトは、全員を見回す。

「無理はしない」


「誰かがおかしくなったらすぐ止まる」

「いい?」


全員、黙って頷いた。


魔の森は、まだ離してくれない。

主の姿は、見えない。


次回予告


「ねえ……」

ミアが、ふと立ち止まって言った。


「この遭難……どうだった?」


「どうって?」

フィオナが首をかしげる。


「面白かった?」

「ちゃんと、意味あったかな?」


セリナが腕を組み、少し考える。


「判断材料は多いですが」

「最終評価は、見る側に委ねるべきかと」


「だよね〜」

ミアが苦笑する。


「読んでくれてる人がどう思ったか、ちょっと気になるよね」


ルナが小さく頷く。


「……もし」

「“悪くない”って思ってくれたなら」


「評価して、聞かせてほしい」


一瞬の静寂。


その奥で――

重い気配が、再び揺れた。


「……来るよ」

セリナが低く告げる。

「評価を気にしてる場合じゃなくなったみたい」


「うん」

フィオナが、前を見る。


「逃げるのは、もう終わり」


次回、

魔の森の主とのバトル、開幕。


評価されるのは、物語か。

彼らの覚悟か。


お楽しみに。


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