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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: 仁科異邦


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森の主さんこんにちは

魔の森・奥へ奥へ。


「よし!」


くっころ先生が、

やけに自信満々に腕を振る。


「この先は

魔力反応が濃い!」


「つまり――

魔物が多い!」


「だから!」


一同、

嫌な予感。


「避けるために、

こちらへ進む!」


指差した先は、

やけに開けた獣道。


「……先生」


ユウトが恐る恐る。


「その理屈、

逆じゃないですか?」


「安心しろ!」


「私は

“危険そうな道を避ける”

プロだ!」


(方向音痴の

プロでもある)


誰も口にしなかった。



数分後。


「……」


「……」


森の奥から、

重たい足音。


「……ぶひ」


「……?」


低い唸り声。


茂みが揺れ――

出てきた。


筋肉隆々。

牙。

斧。


「オークだ!!」


ミアが叫ぶ。


「避けた先に

一番避けたいの

来てるんだけど!?」



その瞬間。


くっころ先生が、

一歩前に出る。


「下がれ、

生徒たち!」


「ここは

私が――」


斧が、

振り下ろされる。


「くっ……

殺せぇぇぇ!!」


(言った!)


ユウトが、

心の中で即ツッコミ。


――ドンッ!


衝撃。


くっころ先生は、

吹き飛ばされて

木に激突。


「先生ーー!!」


「生きてる!」


「意識ある!」



セリナが、

淡々と詠唱。


「……排除します」


数秒後。


オークは、

静かに倒れた。


「……終わった」


一同、

ため息。



くっころ先生、

ふらふら立ち上がる。


「……見たか」


「これが

教師の覚悟だ……」


「覚悟の使い方

間違ってます!」



さらに進む。


「次こそは

慎重に行くぞ!」


先生は、

地面の足跡を見て

判断する。


「この小さな足跡……」


「ゴブリンだな!」


「小型だ!」


「つまり、

数が多い!」


「避ける!」


方向転換。


――即。


「ギャギャ!」


「ギィ!」


「ギャッ!」


四方八方から、

ゴブリン。


「囲まれてる!!」


「避けた意味!?」



またもや。


くっころ先生、

前へ。


「来い!」


「くっ……

殺せぇぇ!!」


(安定感すごい)


ゴブリンの棍棒が、

次々命中。


「先生、

毎回言うの

やめましょう!」


「様式美だ!」


「様式美じゃない!」



結果。


・ゴブリン撃退

・先生、地面に大の字

・生徒たち、無事


フィオナが、

先生の様子を見る。


「……先生」


「その判断、

毎回“一番密集地”

選んでます」


「……なぜだ」


セリナが、

冷静に言う。


「魔力の流れを

“安全”と

誤認しています」


「つまり」


ユウトがまとめる。


「先生が

避けた方向=

魔物の本拠地」


「……」


くっころ先生、

静かに膝をつく。


「私は……」


「地雷探知機

だったのか……」


「自覚しないで!」



こうして。


・オーク遭遇

・ゴブリン遭遇

・先生、

そのたびくっころ


という

最悪に安定した流れが

完成してしまった。


魔の森遠征は、

まだ終わらない。


ただ一つ

確かなのは。


「……先生」


ユウトが、

肩を叩く。


「次からは」


「判断、

全員でやりましょう」


「……うむ」


くっころ先生、

涙目で頷いた。


魔の森・さらに奥。


オークとゴブリンを何とかやり過ごし、

一行は息を整えていた。


「……静かすぎない?」


ミアが、

小声で言う。


さっきまでいたはずの

虫の声も、

風の音も――

消えている。


「……うん」


ユウトも頷いた。


(さっきまでの騒がしさが、

嘘みたいだ)



その時。


――ぞわり


空気が、

一瞬で変わった。


「……っ」


セリナが、

ぴくりと反応する。


「……皆さん」


「動かないでください」


声が、

いつもより低い。


「この森の

魔力の“流れ”が」


「……止まりました」


「止まった?」


フィオナが、

喉を鳴らす。


「そんなこと、

あるの?」


「通常はありません」


「ですが――」


セリナは、

ゆっくり周囲を見る。


「上書きされています」



次の瞬間。


ズン……


地面が、

わずかに揺れた。


足音ではない。

何かが“存在している”だけで

圧がかかる感覚。


「……なに、これ」


ミアが、

無意識にユウトの袖を掴む。


「……魔物?」


ユウトが、

小さく呟く。


返事は、

なかった。



くっころ先生が、

珍しく黙っている。


顔色は、

明らかに悪い。


「……先生?」


ユウトが声をかける。


「……これは」


「“遭遇”ではない」


「……“認識”だ」


「認識?」


「向こうが、

“気づいた”」


「ここに

人間がいると」


一同、

息を呑む。



森の奥。


視界の先、

木々の隙間が

歪んだ。


何かがいる。


だが――

形は、見えない。


ただ。


・重圧

・視線

・逃げ場がない感覚


それだけが、

確実にそこにあった。


「……見られてる」


フィオナが、

小さく言う。


ルナは、

言葉を発さない。


ただ、

無意識に一歩下がった。



セリナが、

静かに結論を出す。


「……この森には」


「“主”がいます」


「個体名不明」


「姿不明」


「ですが」


「先程のオークや

ゴブリンとは」


「格が違う」


「……戦える?」


ユウトの問いに、

セリナは首を横に振る。


「現状では」


「戦闘は成立しません」


「じゃあ……」


「逃げる?」


その言葉に。


森が――

きしんだ。


まるで、

答えを否定するかのように。



くっころ先生が、

歯を食いしばる。


「……私が」


「囮に――」


「ダメです」


即、

全員の声が重なる。


「今回は

マジでダメ!」


「先生は

もう十分やった!」


「これ以上

くっころしなくていい!」


「……」


くっころ先生、

珍しく素直に黙る。



そして。


ふっ


重圧が、

ほんの一瞬――

緩んだ。


「……?」


森の奥から、

低い、低い振動。


言葉ではない。

だが、

確かに“意思”を感じた。


――今回は、

見逃す。


そんな、

気配。



数秒後。


森の音が、

ゆっくり戻る。


鳥の声。

風。

木々のざわめき。


「……消えた?」


ミアが、

恐る恐る言う。


「……いいえ」


セリナが答える。


「興味を失っただけです」


「……怖っ」



ユウトは、

森の奥を見つめた。


(あれが……

魔の森の“主”)


戦わなかったのが、

せめてもの救い。


だが――

確信した。


(ここは、

“遠足”で

来る場所じゃない)


くっころ先生も、

深く頷いた。


「……学園に戻ったら」


「始末書では

済まんな」


「そこ!?」



こうして。


魔の森の遠征は、

**“触れてはいけない存在”**を

全員に刻み込んだまま、

次の局面へ進む。


主は、

まだそこにいる。


見えないまま。


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