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[悲報] 魔法使いを目指す俺、ツッコミ役に就任しました  作者: 仁科異邦


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バレンタイン終

バレンタイン翌日・朝。

学園。


廊下は、

いつもよりざわついていた。


「なぁ聞いた?」


「昨日さ、

何個もらった?」


「……ゼロ」


「強く生きろ」


男子生徒たちの会話は、

希望と絶望が入り混じっている。



一方、教室。


ユウトは――

机に突っ伏していた。


「……」


「……?」


ミアが、

覗き込む。


「ちょっとユウト?」


「生きてる?」


「……生きてる」


声が、

弱い。


「なんか顔色悪くない?」


「……チョコの後遺症」


「なにそれ」



原因は、

明らかだった。


机の中から、

チョコの包みが出てくる。


・板チョコ

・手作りチョコ

・普通すぎるチョコ


それらを見るたびに――


「……」


ユウトの脳内で、

各ヒロインの顔が同時再生される。


(……うるさい)


(情報量が、多い)


「……セリナ」


ぼそっと呟いた瞬間。


「……何かしら」


背後から、

即レス。


「怖っ!?」


ミアが叫ぶ。



セリナは、

淡々とユウトを観察する。


「瞳孔、やや拡張」


「集中力、低下」


「……想定通り」


「想定しないで!?」


フィオナが、

慌てて止めに入る。


「セリナ、

やっぱり何かしたでしょ」


「……微調整を」


「微で済ませて!?」



そこへ、

ルナが静かに一言。


「……ユウト」


「チョコ、美味しかった?」


「……うん」


即答。


その瞬間。


「……」


「……」


空気が、

ピシッと凍る。


ミアが、

無理やり明るく割り込む。


「は、はい次の話題!」


「今日は授業だよ!平日だよ!」



しかし。


授業中も、

カオスは続く。


黒板を見ると、

なぜかチョコに見える。


教師の声が、

遠い。


「……このままじゃ」


「……糖分過多で、

集中できない」


ユウトが、

小さく呟いた。


セリナが、

即座にメモを取る。


「後遺症、

約二十四時間持続……」


「記録しないで!」



昼休み。


男子生徒たちが、

集まってくる。


「なぁユウト」


「昨日、何個もらった?」


「……数えられない」


「夢ある?」


「……悪夢なら」


完全に、

英雄を見る目だった。



放課後。


ようやく、

ユウトは一息つく。


「……次のバレンタインは」


「普通でいい」


心からの願いだった。


その背後で――


「……来年は、

調整を抑えるわ」


セリナが、

静かに呟く。


「抑えるって言葉、

怖いんだけど!?」


こうして。


バレンタイン翌日の学園は、

**平常運転(混沌)**に戻った。


ユウトがようやく正気を取り戻しつつある、その時――

異変は静かにやってきた。


「……ユウト様」


控えめな声。


振り向くと、

そこにいたのはセシリアだった。


相変わらず整った所作。

相変わらず静かな存在感。


だが――

手に持っているものが、おかしい。


「……それ、何?」


ユウトが指さす。


セシリアの腕の中には、

紙袋が三つ。


どれも、

ずっしり重そうだった。


「はい」


「昨日の“ばれんたいん”が失敗してしまいましたので、

リベンジです」


「……後から?」


「はい」


真顔。



セシリアは、

少し誇らしげに説明を始める。


「私の国では」


「想いを伝える日は、

“保存食を渡す”のが一般的です」


「保存食?」


「はい」


紙袋を一つ開ける。


中身。


・干し肉

・ナッツ

・固形保存菓子(めちゃくちゃ硬い)


「……チョコじゃないの?」


「?」


セシリアが、

本気で首を傾げる。


「甘味は、

腐りやすいと聞きました」


「長く想うなら、

長く持つものを」


「……なるほど?」


なるほどなのか?



周囲が、

ざわつく。


「なにあれ……」


「差し入れ?」


「遠征用?」


ミアが、

小声でフィオナに聞く。


「……あれ、

愛情表現らしいよ」


「重すぎない!?」



セシリアは、

さらに続ける。


「それと」


二つ目の袋。


中から出てきたのは――

塩。


小袋に分けられた、

高級そうな岩塩。


「……塩?」


「命を繋ぐものです」


「……重いな!?」


「褒め言葉ですか?」


「違う!」



そして、

最後の袋。


「こちらは」


ごそごそ。


出てきたのは――

保存用チョコ(軍用)


カカオ含有率、

驚異の95%。


「……黒い」


「苦いですが、

士気は上がります」


「戦場なの!?」



ユウトは、

しばらく黙ってから言った。


「……セシリア」


「はい」


「ここでは」


「バレンタインは

“気持ちを伝えるイベント”で」


「保存期間は、

そこまで重要じゃない」


セシリアは、

一瞬固まった。


「……そう、なのですか」


「うん」


「……」


考え込む。


「……では」


「私は、

とても的外れなことを?」


「……うん、

ちょっとだけ」



セシリアは、

しゅん、と肩を落とした。


「……失礼しました」


「文化の違いを、

軽視しました」


「……いや」


ユウトは、

慌てて続ける。


「でも」


「セシリアらしいとは思う」


「……え?」


「ちゃんと考えてくれたの、

分かるし」


「重いけど」


「物理的に」


「……」


セシリアの耳が、

ほんのり赤くなる。


「……では」


「この保存食は、

“好意”として

受け取っていただけますか」


「……うん」


「助かる」


「本当に?」


「非常時に」


「非常時前提なの!?」



こうして。


バレンタイン翌日の学園は、

文化理解のズレによって

さらに混沌を深めた。


そしてユウトは思う。


(……次は、

普通の日がいい)


だが――

その願いが叶うかどうかは、

誰にも分からない。


次回予告


「学園の外に出て、

もっと見聞を広めよう!」


先生の一声で決まった、

お楽しみ(?)遠征企画。


街?

遺跡?

それとも観光地?


――そんな期待を胸に、

向かった先は。


「……森、だよね?」


「しかも、

やけに暗くない?」


ざわつく一行。


地図には、

小さく書かれていた。


“魔の森”


「……聞いてないんだけど」


「誰が決めたの!?」


「帰っていい?」


期待と不安が交錯する中、

遠征は始まる。


次回、

遠征先は何故か魔の森でした


お楽しみに(?)

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