第66話 ガデルの〈レコード・ノート〉
「これって…………」
――ガデル。勝手に書き込んですまない。もとはと言えば、藍なんだけどさ……。こっから先のバトルは、任せてくれ。
「えっ?!」
――その、ノートに書かなくていいと説明した方が、しっくりくるか……。実は、面白いことを思いついたんだ。隠蔽はしてある。安心して欲しい。
執筆用のノートに刻まれた、主人公が書いた文字。主人公が作者のノートに書く日が来るとは、思っていなかった。
ノートのページをめくり、読み進める。そこには、ルグアが書いたのだろう、今後のシナリオがぎっしりと詰め込まれていた。
1ページだけではない。ノートの最後のページまで、文字で埋まっている。
さらに、私が事前に考えていた、別のゲームの詳細設定や、攻略の進行状況まで……。
はじめは、ルグアがやりたいことだけを、書いているのだと思った。
だが、細かい描写やテンポ、彼女自身の挫折や立て直しまで、一執筆者の目線で書かれている。
でも、セリフまではいかないようで、どちらかというと、シナリオチャート。物語の流れだけだ。
「なんでここまで…………。これはただの空想物語だったはずなのに、まるで、現実世界を描いているようにしか…………」
あとは、作者である私が、より詳しく肉付けしていけばいいだけなのだ。
バトルは書かなくてもいい。ルグア達が、思うがままに綴ってくれるから。
私は、ルグアが書いた内容を、1つの物語として、成立させればいい。
そして、ノートの下には同じ表紙のノート。開くと真っ新なページ。
ルグアの記述はまだ続く。
――あと、ストーリーが浮かび過ぎて、ページ全部使っちまったから、全く同じやつのコピーを6冊用意した。消えないようにはしてあるから、好きに使ってくれ。
「…………う、うぅ〜。あり……がとう…………。大事に…………使います……」
瞳から零れる水晶が、薄い用紙を濡らしていく。筆は、ルグアのシナリオを使い、新しいノートに書き込んでいく。
物語は、進み続ける。私にも、どこまで書けるかわからない。けれども、私は今までのキャラクター達を見捨てたくない。
物語は、進み続ける。戦いや出会いと別れ。そのような物語を私は書きたい…………。
◇◇◇その頃ルグアは◇◇◇
「楓、試しに一戦しないか? もう、書き換え終わったんだろ?」
光のダンジョンに近い、サバンナ地帯で、楓と交渉していた。
「ええ、いいですよ。自分はとても強いので、手加減を…………」
「不要だ。私は本気のバトルが好きだからさ。ほら、本気でかかってこいよ!!」
相手を挑発して煽り、攻撃を待つルグア。楓は、慎重に武器を取り出す。
柄は両手で持てるサイズで、刀身はとても長く細い。太刀だろうか……。
ルグアも、愛剣の〈クリムゾン・ブレード〉を手に持ち、構える。
そして、2人は同時に刃をぶつけた。




