第65話 死亡予告
◇◇◇光の城ダンジョン郊外◇◇◇
遠くにガーディアンが見える、静かなサバンナ地帯で、私は高度を下げる。
「…………残り時間、現実世界で6時間40分、ゲーム内では400年。1年過ぎ去ったと同時に、脳へ一定数の負荷がかかり、信号送受信パルスの電磁波で焼かれ死亡」
「突然、何言ってんだ?」
「貴方の行く末です。これで貴方の運命は確定しました」
「私の生命時間のタイムリミット追加したってか? そんなん、私には関係ねぇよ」
殺害予告…………なのだろう。だが、1年ごとに一定数は物足ない。負荷をかけるなら、もっと頻度を多くして欲しい。
「なあ? 1ヶ月ごとに負荷の威力を強くしてくれないか? それと、魔法使用時の負荷を5000倍、被ダメ時の負荷を60000倍にさ。反映は100%で頼む」
常人には考えられない思考回路に、失笑してしまうが、刺激は強い方がいい。
「正気ですか? それでは脳が耐えきれない。早死する気なのですか? 自分は……、どうでもいいことですが…………」
そんな私に、楓はそっぽを向き、吐き捨てる。
「…………よしっ……と、ついでに、ゲーム機の安全装置のリミッターを解除した。これで、本格的にプレイできるな。ほら、やってくれよ」
「忠告を無視、ですか。…………ほんと、命知らずなのですね」
「まあな」
(少し前の会話は、芝居なんだよなぁ〜。中学生の時、演劇部で正解だったぜ。加えて、なんでも話してすぐ行動する、藍の情報も)
◇◇◇それは、昨夜のこと◇◇◇
「ねぇねぇ、りんり〜ん。明日、ウチのお姉ちゃんが来るんだけど…………、はい、これ!!」
「な、なんだよ?! ノート?」
手渡された本をめくると、今まで起きた出来事が、書かれていた。そして、ノートを藍に返す。
「これ、ガデっちの部屋に、置いてあったんだよねぇ〜」
「ちょっ!! それは、まずいだろ? 大事なやつの可能性もあるんだぞ!! しかもガデルって、1番やばいじゃないか!!」
「でも、筆跡から最近書いた文字だと思うけど……」
確かに、文字の色はとても濃く、はっきり見える。擦れて薄くなった形跡もなかった。
「でも、そういう問題じゃないだろ!!」
「えーとぉー。『ルグアは○○○倍にも耐えられる』。それからぁー、『ここに書いた内容は、対象者とガデル以外誰も知らない』……っと」
「勝手に書き込むな!!」
私は激怒し、藍が持つノートを奪い取る。だが…………、
「ん〜? 何ぃ〜? ウチ書いてないよ〜♡」
藍はとぼけて否定した。これはもしやと、ノートを読み進めると、書かれた通りになっていたようだ。
(これは使えるな。次の出来事は…………)
――ペラリ……。ペラリ……。ペラリ……。
(そうなるのか……。んじゃ、ここに……、こう書きたして…………、隠蔽すれば…………。んで、誰にも見つからないように、サブストレージの中へ。……っと)
◇◇◇そして、現在◇◇◇
(私の仮想ストレージは、楓が書き換えても開けない。パスワードロックが20個付いてるからな)
「わかりました。では、貴方の宣言通りにしておきます。まあ、即死は免れませんが…………」
「ああ、よろしく頼む!!」
楓は何も気付いていない。ルグアが、中学生の時の記憶を、全て消したから……。
私の行動・発言が、全て演技というのも、気付いていない。作戦は順調だ。
もちろん、ガデルが続きを書けるように共有もしている。さらに、私が書いた内容の流出防止等、対策済みだ。
あとは、このまま上手く動けば、問題ない。高確率で、チェックメイト、楓は詰んで終わりになる。
(この物語、面白くなりそうだぜ!! あとは頼んだ!! ガデル!!)
◇◇◇◇◇◇
「…………ぶえっくしょん!! 風邪でもひいたかな?」
自室に籠るガデルは、目をしょぼしょぼさせながら、ノートを取り出す。
「…………さて、今日の執筆を始めますかね」
袖で涙を拭い、表紙に手をかけ筆を取る。
――ペラリ…………。
「何? この記述は?! 見覚えも書き覚えもないんですけど!! 加えて、書き直しもできないんですけどぉ!! って、ん〜?」
そこに書かれていた、最後の言葉。それは、ルグアからの伝言だった。




