第62話 受注クエスト:上位強化素材収集②
「フェンリル、用意してきたぜ。おっ!? 収集組も相当集めたようだな」
まるで、占領されているような散らかりっぷりに、ルグアは感心した。
「さて、さっさと片付けて整理しますかね。0.005秒で……」
「というと?」
「はい、終わり。やっぱ、魔法便利だな。めんどくせぇことも一瞬でケリがつく」
部屋の両角に、原石と洗浄前の革。それぞれの内側に、鉱石と洗浄後の革で敷き詰められ、空間が広くなる。
向かい側には、フェンリルが精錬した剣が数本。このままだと素材が増える一方で、溢れ返ってしまう。
「例の質問はあとで話す。私も手伝うから、一本持って行ってもいいか?」
「何をされるんですか?」
「精錬するなら同レベルのやつがいいだろ?
私の場合、少ない素材で、強力な武器を生成できる。これだと、フェンリルの剣と同等のものを作るのは難しい。だから、素振りに行って、威力を試してくる。それだけだ」
「そうですか。わかりました。どれくらいで戻りますか?」
(ゲームで普通そこまで……。まあいいか)
ルグアは自身の能力値を計算すると、
「最速5分で戻る」
「わかりました」
問いかけに答え、ルグアは外に出た。
◇◇◇5分後◇◇◇
「帰ったぜ。平均攻撃力とダメージ量、重さ全て叩き込んできたから一旦代わってくれ」
そのように、鉱石を剣へと鍛えるフェンリルに伝える。フェンリルは、快くその場から離れると、疲れが溜まっていたのか、ルグアのベットに横たわった。
――ガコーン……。ガコーン……。ガコーン……。
私が、フェンリルのために用意した、精錬かまどで金属を軽く溶かし、硬くならないうちに叩いて鍛える。
――ジュゥゥゥ……。
時々冷水で冷やし、形状を確認。同じ工程を何度も繰り返す。
精錬で魔法を使うと、威力に差が生まれてしまうという、デメリットがある。
ルグアでも、成すには多くの時間を要するため、集中力を限界まで高めて作業に励む。
――ガコーン……。ガコーン……。ガコーン……。ジュゥゥゥ……。
やはり、最初は上手くいかない。これは、すでに把握しきっていたことだ。
経過も、想定の範囲内で進んでいる。もちろん、呑み込みの早い彼女は、格段にペースを上げていく。
――ガコーン……。ガコーン……。ガコーン……。ガコーン……。ガコーン…………………………。
四六時中、地下拠点に響き渡る、精錬の音色。それは、途絶えること無く、約1週間続いた。
◇◇◇1週間後◇◇◇
――ガコーン……。ガコーン……。ガコーン……。
「ルグア先輩、ただいま戻りました。精錬の方は…………」
真っ先に部屋に入ってきたルクスは、予想を裏切る光景に、目を見開いて固まった。
ルグアの背後に積み上げられた素材の山。魔法で飛んでいく鉱石。随時製錬されていく無数の原石。
響き渡る鍛錬の音色。向かい側には、綺麗に並べられた数万本の剣。
これら全て、ルグアが作ったというのは想像できるが、サイクルを1人で一定に保っているのは、意外だった。
わかる範囲では、5種類以上の術式を無言詠唱で行っているはず。
そんなこと、できっこない。
だが、それを簡単に成功させるのが、妹のルグア……。否、巣籠明理なのだ。
フェンリルに聞いたところ、1週間の間座ったままで、一睡もしていないらしい。
よくそんな無茶ができる。兄としての心配で不安な気持ちは、サラサラと積もる塵のように、膨らんでいく。
「おっ!! 帰ったか。おかえりルクス。鉱石がちぃと足りなそうでな、今、倍加魔法も使っているんだ。合計で10種類魔法を展開させている」
「そうなんですね。……いや、それより体調は…………」
顔を上げ、こちらを窺うルグアには、疲れの兆候が何一つ感じられない。
1週間寝ていないように思えないのも、不思議だ。積もった塵も風でふわりと吹き消される。
「ああ、そのことか。安心してくれ。一応仮眠はとっている。まあ、3、4回ほどだが…………」
「それなら良かったです」
「心配してくれてありがとな。陸兄」
そして、目標の本数を超えて、一斉に配布された。ルグアとフェンリルが作った剣は、紛れもなく上等品。
威力の差はほぼ0に近く、重さも変わらない。やがて人気を博し、世界中から依頼がくるようになった。
時間の流れは早く、1年が過ぎ去った。




