第54話 集結した元アーサーラウンダー
静まり返った北朝鮮の荒野。そこに立ち続ける、11人のWWMプレイヤー。
彼女たちの空間を破る足音。音色は複数あって、戦争の勝者と敗者は辺りを見回す。
「ベディっち、おつかれさまぁ〜、アタイガンバったよね? ガンバったよねぇ?」
幼い声が、ゼアンの近くで聞こえた。
「ノンノ、今のわたくしは、【ベディヴィア】ではありませんよ。あの称号はゴミ箱に捨てましたから」
可愛さが強い小柄な少女。身長はとても小さく、年齢を考えずに表せば、幼女と言っても過言ではない。
髪は、長髪で横に編み込みを入れていて、少し大人びた印象。
ピンクローズの髪の毛一本一本が、川の流れのように優しく、そよそよとたなびいている。
「ギルマスさん、トリンさん、モルっちに、パーシーさん、ガウェンさんもお久しぶり」
ノンノはいないはずの人の名前も声に出して、ぺこりと頭を下げる。
もう一度周りを見ると、人数が増えていた。
「ルグアさん、やはり僕が選んだ人の中で、規格外の実力者だったようですね」
「ノアン!!」
真後ろで囁かれ、深紅の剣を背負った黒髪の少女が振り返る。
「きゅ、急に話しかけんなよ!! びっくりしたじゃねぇか!! んで、さっきの、言葉の意味も教えてくれ!!」
私は少しふらつき、体勢を立て直すために、体重移動を繰り返すが、前に倒れ込みノアンが受け止める。
「張り切りすぎじゃないですか? 僕もあなたと同じ中学校で、当時小耳に挟んだことがあります。持久力があまり良くないと」
どうして、私の周りにいる人は学校が同じ人が多いのだろうか? 加えて、ノアンにはリアルの話をしていない。
すると、沈黙を貫いていたセレスが口を開き、
「ルグアさん、伝えてなかった私がいけませんでした。実は、【アーサーラウンダー】所属メンバーのほとんどが、私とアドレス交換している人なので、そうですよね?
田室井くん?」
突然飛び出した”田室井”という苗字。ここでリアル割れしていいのだろうか。けれども、
「合ってますよ。三上さん。えーと、僕のリアルネームは田室井綾人。三上輝夜のいとこで、ルグアさんが卒業した学校に通う、中学3年生です」
まさかの、いとこだったとは。改めて良く見比べると、それほど多くはないが、似てる部分を見つける。
だが、私の意識は不安定で、瞼が重く垂れ下がり細かく開閉していた。
ノアンは、彼女の身体をセレスとガロンに預けると、
「そろそろ帰りましょうか。飛行船は僕が用意します。もう準備できてますが。ワープするので集まってください」
少年は、呪文を使わずにゲートを開くと、光の扉が一行を包み込んだ。




