第53話 GMの戦いの発端
「ではでは、わたくしが知る限りのことを、情報交換という形で説明しましょう」
ゼアンが切り出す。戦いは終了したため、争う必要もない。
{みんな、聞こえるか?}
無言通信魔法で、思考のみを送信する。はじめに返ってきたのは、
{はい、聞こえています。こちら、日本拠点本部待機メンバー隊長のルクスです。ルグア先輩、通知見ました}
という、兄の声。続くように、
{りんりんお〜め〜。それから、めちゃおつ〜。あとあと、ウチを心配してくれて、マジあざっち〜}
軽快な藍の声。脳内再生で拠点の状況を確認すると、体力が回復したようで、黄色い瞳が輝いていた。
{全員無事で何よりだ。こっちで全ての把握が終わったから、私の方に来てもらいたい。と思ったが、転送してやる!! 一箇所に集まってくれ}
脳内ウィンドウには、それに従う仲間の姿。準備が終わり、ガロンが手を振る。
私は拠点ごと移動させて、偶然見つけた大きな窪みに、ゆっくり降ろした。
〖めでたいめでたい。おめでたい。ルグア殿。ルクス殿。ガイア殿。セレス殿。ガロン殿。努殿。彰殿。藍殿。最後にルナ殿。そなたらに、祝福を捧げようではないか〗
いつの間にか、剣の外に飛び出したクリムが、短い四肢の前脚で拍手。これには、ゼアンも驚いたらしく、
「モードレ様。お仲間がいらっしゃったのですね。羨ましい。VWDLのドラゴンと、ルナ様までそちら側についたのには、少々驚きましたが……」
青年に避難を命じた時、到着地点を日本拠点にしていたのだ。
「すみません、ゼアン大将。日本の方、特にアンゲーマーの拠点は居心地がいいので、彼女に着いて行っても…………」
「構いませんよ。引き止めもしませんから、お好きになさってください。わたくしには、下僕を集めることくらい朝飯前ですので」
ルナの声に応えながら、ゼアンは、近くまで歩くと、目の前で足を止める。
親離れ子離れみたいなやり取り。けど、ちょっと親側が強く投げ返しているような言い方だ。
ルグア達は、もちろん歓迎する。日本人メンバーが増えるのはとても嬉しい。
「んで、割ってすまなかった。戦いの発端について、続きを頼む」
物忘れする前に話題を戻し、メンバー全員が横並びに立つと、耳を傾ける。
「承知しました。このゲームは、荒廃した世界を発展させていく主旨で作りました。誰かのイタズラで、ログアウトできないのはご存知ですよね」
記憶に新しい事実である。私も気づいた時は、不安でいっぱいだったが、リアルの時間が停止していることは、幸いであった。
「今、スーパーコンピュータを使い解析をしているところです。別のゲームでもスパコンを使用しているため、苦戦しておりますが……」
(スパコンでも無理なんかよ…………ん? 待てよ?)
一時期ハマっていたプログラミングには、興味がある。
「なあ、ゼアン。それ、不可能なんじゃねぇか? 現実時間が進んでないんだからさぁ〜、助太刀ならいつでもOKだ」
私の発言に、目の前の青年がゲームらしき特殊なウィンドウを渡すと、
「左様ですか。なら、この場でやってもらってもいいですか? どうやら、ミニゲームのようで、難易度が高く、わたくしでも攻略できないため、助かり……………………」
「はい、ゲームクリア&ミッションコンプ!! 終わったぜ」
私には、簡単すぎる問題だった。周りの人は硬直しじろりと彼女を見つめる。
窓には、5年分のカウントダウンが、始まっていた。




