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まさかの自宅に

休日、それは僕にとって聖域のような時間だ。

ベッドの上で寝転がりながら、昨日始まったソシャゲのイベントを周回し、飽きたら動画配信サイトで適当なアニメや動画を流し見する。さらに飽きたら、お気に入りの漫画を読み返す。

学校でのあの「めんどくさい注目」から完全に解放された、僕の大好きな、僕のためだけの平穏な日曜日。


「あー……やっぱり、休日って最高だな……」


天井を見上げて、僕はその幸福を深く深く噛み締めていた。

——まさにその時だった。

ピンポーン、と我が家のインターホンが静かな空気の中に響き渡った。


(……宅配便か何かかな?)


特に荷物が届く予定もなかったけれど、僕は寝癖のついた頭をボサボサと掻きながら、スウェット姿のままリビングへと降りていった。すでに母親が玄関に向かったようで、パタパタと小走りの足音が聞こえる。


「はーい、どなたですか?」


「突然の訪問、大変申し訳ありません。佐藤蓮くんのご自宅で間違いないでしょうか。……いつも蓮くんにお世話になっております、隣のクラスの白百合奈緒と申します」


「えっ……!? あ、あらやだ! まあ、なんて綺麗なお嬢さん……っ!」


玄関からあまりにも聞き覚えのある声がした。慌てて駆けつけると案の定そこには彼女がいた。


「し、白百合さん……っ!?」


慌てて玄関に飛び出すと、そこにはいつも通りの艶やかな黒髪ロングを揺らし、私服姿の白百合さんがいた。


「あ、蓮くん。こんにちは。休日に突然押し掛けてしまってごめんなさい」


「なんで日曜日にここに?」


混乱する僕をよそに、白百合さんは少しだけ頬を染め言った。


「蓮くんがいつも休日にどんな風に過ごしているのか、どんなことが趣味なのか……もっと蓮くんのことを知りたくて。どうしても我慢できなくなって、お伺いしてしまいました」


「知りたくてって……」


完全に僕のプライベートまで踏み込んできた彼女に、唖然としていると、母さんが話し出した。


「まあまあ、白百合さんって言うのね! いつも仲良くしてくれてありがとうねぇ! ほら蓮、いつまで玄関で立ち話させてるの、早く白百合さんを中に通しなさい!」


「えっ、お母さん!?」


母親がものすごい食いつきで白百合さんの手を取り、満面の笑みでリビングへと招き入れてしまった。


「ありがとうございます、お母様。これ、皆さんで召し上がってください。蓮くんの好きなアップルパイだとお聞きしたので、朝から焼いてきたんです」


「まあっ! 手作りのアップルパイ!? なんて良い子なのかしら……! 蓮は白百合さんと付き合ってるの?」


「ただの友達だから!」


リビングのソファに座った白百合さんは、母親の質問に対して「はい、蓮くんにはいつも本当に良くしていただいていて……」と、完璧に受け答えしている。その様子は、まるで事前に何度もシミュレーションしてきたかのように自然で、母親の心を一瞬で鷲掴みにしていた。


「白百合さん、蓮の部屋見ていく? 案内してあげて!」


「ええ、ぜひ! 蓮くんのお部屋、とっても興味があります」


「ちょっと待って、勝手に決めないで!?」


僕の制止なんてどこ吹く風で、母親と白百合さんの間でトントン拍子に話が進んでいく。

まずい。学校だけでなく、ついに僕の絶対の聖域である「家」の防衛線まで突破されつつある。母親という最強の味方をつけ、着実に外堀を埋めていく白百合さんを見ながら、僕は自分の平穏が完全になくなったと悟り、静かに天を仰ぐのだった。

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