↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/35

尋問

「おい蓮、ちょっと面貸せ」


昼休みのチャイムが鳴り響いた直後、僕の席はあっという間に即席の尋問会場へと変貌した。

中心にいるのは、いつもの友人である健太。その後ろには、クラスの男子数人がまるで裏切り者を睨みつけるような目で僕を囲んでいる。


「な、なんだよみんなして。ソシャゲのガチャで爆死でもしたのか?」


「とぼけんな! 白百合さんの件に決まってんだろ!」


健太が机に両手を叩きつけ、身を乗り出してくる。


「一週間前のブレザーの件だけじゃない。お前、昨日も白百合さんと一緒に帰ってただろ! しかも、お昼も一緒に食ってるだろ!」


「あー……いや、それは……」


図星を突かれて、僕は思わず冷や汗をかいた。

クラスメイトたちの食いつき方は尋常ではない。それもそのはず、白百合奈緒といえば、入学以来どんな男子からのアプローチも冷徹に切り捨て、誰とも深く関わろうとしなかった。そんな彼女が、平凡な僕と一緒にいるので、不思議に思うなというのが無理な話だった。

まさか「廃墟で襲われそうになっていたところを、僕が犯人の股間を蹴り飛ばして助けたから」なんて本当のことを言えるはずがない。彼女の名誉のためにも、あの事件のことを喋るわけにはいかない。

僕は必死に頭を回転させ、できるだけ平然を装って言い張った。


「勘違いするなよ。僕と白百合さんは、ただの『友達』だから。ちょっとしたきっかけで、普通に仲良くなっただけだって」


「友達ぃ!?」


「嘘つけ! あの白百合さんが男と友達になるわけねえだろ!」


男子たちの疑心の目は全く晴れない。そりゃそうだ、説得力が皆無すぎる。

彼らが「本当の理由を吐け!」とさらに詰め寄ろうとした、その時だった。


「蓮くん!」


鈴の鳴るような、だけど僕のクラスには明らかに不釣り合いなほど可憐な声が、背後から聞こえた。

振り返ると、そこにはいつの間にか教室に入ってきていた白百合さんが立っていた。手には、今日も栄養バランスが完璧に計算されているであろう、上品な包みの手作りお弁当箱が二つ握られている。

彼女は僕の席を囲む男子たちには一瞥もくれず、ただ僕だけを見つめて、嬉しそうに微笑んだ。


「お昼ご飯、一緒に食べませんか?」


教室中の空気が凍りついた。

男子たちの視線が「お弁当も作ってもらってるじゃねぇか!」と僕に突き刺さる。

健太が、意を決したように、直接白百合さんに向かって声をかけた。学校一の美少女を前に、その声は心なしか緊張で震えている。


「あ、あの! 白百合さん! ちょっと聞きたいんだけど……なんで、そんなに蓮と一緒にいるの?蓮は友達って言ってたけど… 」


健太の質問は、その場にいる全員の疑問を代弁するものだった。

白百合さんは「友達」という言葉を聞いて、少しだけ不服そうにした後、真っ直ぐな瞳で僕を見つめながら、はっきりと言い切ったのだ。


「友達……ですか? いいえ、違います。蓮くんは、私にとって『一番大切な人』ですから」


「ええっ……!?」


健太が変な声を上げて硬直した。周りの男子たちも、まるで時が止まったかのように口をあんぐりと開けて固まっている。


「さあ、蓮くん。行きましょう。今日は蓮くんの好きなハンバーグを作ってきたんです!」


白百合さんは僕の返事も待たずに、当然のような顔をして僕の手首をきゅっと掴んで、歩き始める。


(違うんだみんな、これは健全な恋愛感情じゃなくて精神的な依存で……!)


心の中でどれだけ叫んでも、クラスメイトたちに届くはずもなかった。彼らの目には今、僕が完全に「学校一の美少女を落とした大罪人」として映っている。

僕はクラス中からの激しい視線を背中に浴びながら、嬉しそうに僕を引っ張っていく白百合さんと一緒に、お昼ご飯を食べに教室を後にするしかなかった。僕の望む平穏な日常が、また一歩、遠ざかってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。