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帰宅と学校

「ただいま……」


雨がすっかり上がった夜道を歩き、ようやく我が家の玄関をくぐった。


「蓮……っ!!」


ドアを開けた瞬間、リビングから飛び出してきた母親に、激しい勢いで抱きしめられた。

警察から事前に連絡が入っていたとはいえ、生きた心地がしなかったのだろう。


「よかった、本当に無事でよかった……! 怪我はないの!? どこも痛むところはない!?」


「うん、大丈夫。怪我はしてないよ」


後ろからは、いつもは厳格な父親が、顔を真っ青にしながら近づいてきた。


「……本当によく無事で帰ってきてくれた。父さんはお前の行動が誇らしいぞ。」


そう言いながら僕の頭を乱暴に撫で回す。

両親の言葉に、少し照れ臭くなりながらお風呂に入った。



翌日。学校の昼休み。

僕は教室の自分の席で、いつもの友人である三谷健太(みたにけんた)と、ソシャゲの話をしていた。


「昨日発表された新キャラ、おもろかったよなー。あれは絶対ゲットしたいわー」


「わかるw。待機モーションでのメタルク○ラの数が多すぎて、夜に爆笑したわw」


昨日あんな大事件があったなんて微塵も感じさせない、いつも通りで、俺の大好きな平穏な日常。これでいい、これが最高なんだ。そう考えていた。


「あの……っ、佐藤蓮くん、いますか……っ!?」


教室の前方のドアが勢いよく開き、息を切らした少女が飛び込んできた。

その瞬間、ざわざわとしていた教室が一瞬で静まり返る。

そこにいたのは、誰もが知る学校一の美少女——白百合奈緒だった。


艶やかな黒髪ロングに、制服の上からでもわかる抜群のスタイル。誰もが思わず見惚れてしまうその容姿は、「綺麗」と「可愛い」を完璧な黄金比で両立されている。

さらに、成績は常に学年トップクラス、運動神経も抜群という、非の打ち所がない文武両道の美少女だった。

しかし、他人とは出来るだけ関わろうとはせず、いつも1人で本を読んでいるらしい。


(……え? なんで白百合奈緒が僕のクラスに来て、僕の名前を呼んでるんだ?)


僕は完全に混乱していた。なぜなら、僕は彼女の名前と噂こそ知っていたけれど、写真や実物を見たことは一度もなかったからだ。

だから、今そこで必死に僕を探してキョロキョロと視線を動かしている彼女が、昨日あの廃墟で僕が助けた、少女だとは、夢にも思わなかった。


「あ……見つけた!」


僕と目が合った瞬間、彼女の瞳がパッ輝きを帯びた。

白百合さんは周囲の視線なんて一切目に入っていない様子で、一直線に僕の席へと駆け寄ってくる。


(うわ、クラス中の視線が痛い……。何この注目度、最悪なんだが。)


健太に至っては「お前……なんで白百合さんと知り合いなんだよ!?」と裏返った声を発しながら僕を凝視している。周りの男子たちの視線からは「お前何した」という無言の圧力を感じる。


(めんどくさい、、、)


クラス中から一斉に注目されるこの状況に、今すぐ回れ右をして窓から脱出したいくらいだった。

けれど、僕の前に立ち、嬉しそうに笑っている彼女を見て少し安心した。

昨日、あれほど絶望してガタガタと震え、過呼吸を起こしていた彼女が、こうしてちゃんと制服を着て、元気に学校に登校できている。男嫌いだと噂される彼女が、こうして僕の前に立てるくらいには、心の傷が最悪の事態にならずに済んだんだ。


「良かった。元気に学校来れたんだな。」


周囲の目を気にしながらも、小さな声で、彼女にだけ聞こえるようにそっと言った。


「……はいっ! 全部蓮くんのおかげです!後、昨日のブレザーを返したくて来ました!」


そう言いながら彼女は僕がすっかり忘れていた、ブレザーを渡してきた。


「ありがとう」


「お礼を言うのはこっちの方です。今までの人生で一番温かく、安心しました。」


少し大袈裟だと思ったが、彼女の為になったのならよかった。

ブレザーを受け取った瞬間にチャイムがなった。

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