約束
風邪を引いてから数日後。
すっかり熱も下がり、体力が戻った僕は、無事に学校への復帰を果たした。
そして、僕たちはいつものように、並んでお弁当を食べていた。
目の前では、白百合さんが嬉しそうに卵焼きを口に運んでいる。
「……なぁ、白百合さん。この前は、その、看病ありがとな。お粥もリンゴも本当に美味しかったし、すごく助かった」
改めて面と向かってお礼を言うのは少し気恥ずかしくて、僕は視線を斜め下に落としながら伝えた。すると、白百合さんはパッと顔を輝かせた。
「そんな、お礼なんていりません! 蓮くんのためなら、全く辛くないですから。むしろ蓮くんの支えになれて、ものすごく嬉しかったです!」
「蓮くんのためなら」と躊躇いなく言い切る彼女の言葉に、僕は圧倒されつつも、胸の奥がじんわりと温かくなるような嬉しさを感じていた。そして、文化祭の時に約束したことを果たそうと、彼女に話しかける。
「……それでさ。文化祭の時、またどこか出かけようって話しただろ?」
「はい! 覚えています!」
「今度の週末、もしよかったら、遊園地でも行かないか? 」
僕がそう誘うと、白百合さんは信じられない物を見たかのように、大きく目を見開き、嬉しそうに了承してくれた。
「はい! 喜んで、ご一緒させてくだい!」
彼女の笑顔を見て、僕は「誘ってよかった」とホッとすると同時に、自分の心臓が少しうるさく脈打ち始めるのを感じていた。
その日の夜。
「う〜〜〜〜〜〜」
私は、自分の部屋のベッドの上で、私は枕に顔を押し付けながら、言葉にならない叫び声を上げて悶絶していた。
嬉しくて、幸せで、胸がはち切れそうで、バタバタとベッドの上で足を震わせずにはいられない。
(蓮くんから……蓮くんの口から、遊園地に誘ってくれた……っ!)
この前の放課後デートの時、画材選びに付き合ってもらったのとは訳が違う。あの時は私の為を思って行動してくれた彼の優しさだった。
だけど今回は違う。蓮くんが、蓮くん自身の意思で、私と一緒に出かけるために『遊園地』という場所を選んで誘ってくれたのだ。
これはもう、どう言い訳をしたって、100%完璧な『デート』だ。
「どうしよう……何を着ていけばいいのかな……っ」
私はベッドから跳ね起きると、クローゼットの前に駆け寄って扉を勢いよく開け放った。
まずは髪型。これはもう、迷う必要なんてない。蓮くんが好きなハーフアップに絶対にする。好みを知って以来、毎日ハーフアップにしてるから、やり方はバッチリだ。
問題は服装だ。
遊園地だから動きやすい格好の方がいいのかな、とも思ったけれど、やっぱり蓮くんの前では可愛い私でいたい。
「清楚な感じ……」
服をを引っ張り出しながら、私は一枚の白いロングスカートを手に取った。清楚感バッチリの、お気に入りのスカート。これに合わせるトップスは、パステルカラーのブラウスがいいか、それとも少し大人っぽいニットがいいだろうか。あっちを合わせたり、こっちを鏡の前で当ててみたり。
デート当日までの数日間、きっと私は毎晩こうして幸せな悩みに頭を抱えることになるのだろう。私はそう思いながら、頬を緩ませるのだった。




