↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/35

彼が辛い時は私が、、、

——文化祭から1週間近く経った日の朝。

私はいつもの待ち伏せスポットで蓮くんが来るのを待っていた。

だけど、いつもならもう来ている時間になっても、蓮くんの姿は見えない。学校が始まる時間が近づいているため、仕方なく学校に行く。


学校についてすぐに彼のクラスを見た。しかし彼はいなかった。

気になって私は蓮くんにラインを送ってみたけど、数分待っても『既読』の文字はつかない。

私は居ても立ってもいられなくなり、以前連絡先を交換していた蓮くんのお母様にメールを送った。


『急に連絡してすみません。今日、蓮くんが学校に来ていなくて、ラインも繋がらないのですが……何かありましたか?』


数分後、返ってきたお母様からメールの返信が来た。


『心配してくれてありがとう奈緒ちゃん。実は蓮、今朝から39度の高熱を出して学校を休んでいるの。私が看病で仕事を休むって言ったんだけど、頑なに拒否されてしまって……。今は一人で寝ているわ』


(39度……高熱……っ!? 一人で……!?)


その瞬間、私の頭の中は蓮くんへの心配でいっぱいになった。

私は震える指先で、すぐにお母様へ返信をした。


『私に看病をさせてください。放課後、すぐに向かいます』


『本当? 奈緒ちゃんが来てくれたら本当に心強いわ。ごめんなさいね、甘えちゃって……。私の仕事場が学校から近いから、放課後、裏口まで鍵を取りに来てくれる?場所は今から送るわね』


『わかりました。蓮くんは私に任せてください。』


私は、お母様に返信をした後、スマホで看病の仕方を色々と調べ始めた。





授業中も、先生の言葉なんて全く頭に入ってこなかった。ただ時計の針を凝視して、終礼が終わった瞬間に教室を飛び出した。

お母様の職場へ向かって鍵を受け取り、そのまま蓮くんの家へと全速力で走る。


「失礼します……っ」


静まり返った蓮くんの家に入り、私は音を立てないようにゆっくりと彼の部屋のドアを開けた。

ベッドに近づき、横たわっている蓮くんの顔を見る。熱のせいで顔が火照っていて、すごく苦しそうに呼吸をしていた。


(かわいそうに…。私が元気にするからね)


そう思いながら、私は持ってきたカバンからマスクを取り出して身につけた。長い黒髪も、看病の邪魔にならないように後ろで一つに結ぶ。

キッチンをお借りして、料理の準備を始める。

蓮くんのお腹に優しいお粥を作り、デザート用にリンゴを小さく丁寧に切った。お盆に乗せて、再び彼の部屋へと戻る。

ベッドの横に腰掛け、眠っている蓮くんの顔をじっと見つめる。

いつもは頼りがいがあって格好いい蓮くんが、今は完全に無防備で寝ていて、物凄く可愛い。


(なんだかいけない気持ちになってきた)


ドクドクと心臓がうるさく脈打ち、胸の奥からの愛おしさが、理性を消し去りそうな勢いで湧き上がってくる。このまま、彼の唇に私の唇を重ねてしまいたくなる。

——けれど、その時だった。


「……ん……」


蓮くんの長い睫毛が小さく震え、ぼんやりとした瞳が私を捉えた。


「あ……蓮くん、目が覚めましたか?」


私は一瞬で理性を引き戻し、できるだけ優しく、彼を安心させるような声で語りかけた。


「し、白百合さん……!? なんで、ここに……」


「蓮くんの様態が心配でお母様に聞いたら、蓮くんが高熱で寝ていると聞いて……。放課後、鍵を借りてお邪魔したんです。……起こしてしまいましたか?」


蓮くんはガラガラに枯れた声で、苦しそうに呼吸をしながら私に話す。


「いや、そうじゃなくて……。風邪、うつるから。もう帰って……」


私に風邪をうつすまいとする、彼らしい拒絶。

だけど、そんなの聞けるわけがない。


「嫌です。蓮くんをこのまま一人にできません」


私は真っ直ぐに彼の目を見つめた。

今まで私を何度も助けてくれて、たくさんの幸せを蓮くんから貰った。だから、蓮くんが辛い時は私が側にいて支えると決めている。この主張だけは、譲るつもりはなかった。

私の主張に押されたのか、蓮くんは小さく息を吐いて承諾した。


「……わかった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう。ありがとな」


「はい!全力で看病させていただきますね」


まず、汗をかいてしまった蓮くんの背中を拭くために、服の中にそっと温かいタオルを差し入れる。手のひらを通して伝わってくる、蓮くんの広くて逞しい背中の感触。


(蓮くんの背中……、蓮くんのSENAKA!)


興奮が爆発しそうになったけれど、私は必死にそれを押し殺した。ここで抱きついたりしたら、看病ができなくなってしまう。私は聖女になりきって、丁寧に、かつ素早く彼の汗を拭き取った。


そして、先ほど作ったお粥を差し出す。

お粥をスプーンですくい、「ふーふー」と丁寧に冷ましてから、彼の口元へと運ぶ。


「美味しいですか?」


「あぁ、めちゃくちゃ美味い。染みるわ……」


「良かったです。……じゃあ次、リンゴも剥いたので、食べられますか?」


素直にアーンされながら、ご飯を食べてくれる蓮くんが、まるで小さな子供みたいで、たまらなく可愛い。


「蓮くん、少し顔色が良くなりましたね」


「白百合さんのおかげだわ、ありがと……」


弱々しく感謝を伝えてくれる蓮くん。

薬が効いてきたのか、彼は気持ちよさそうに再び瞼を閉じ始めた。

私はそっと右手を伸ばし、彼の柔らかい髪を優しく、何度も何度も撫でる。その心地よさに身を委ねるようにして、蓮くんは深い眠りへと落ちていった。

すやすやと穏やかな寝息を立てる蓮くんを見て、私は安心した。

その後簡単に手紙とイラストを書き、蓮くんのスマホの上に置く。



蓮くんが寝て少ししたら、お母様が帰ってきた音がしたので荷物をまとめて部屋を出る。


「お邪魔してます。鍵、ありがとうございました」


「こちらこそありがとうね〜。蓮の面倒見てくれて、すごく助かったわ〜」


「いえ、蓮くんのためなら全く苦じゃないです。むしろ嬉しいです」


そう言ったら、お母様が嬉しそうにしていた。

少し話をして蓮くんの家を出る。


(蓮くんが元気になりますように)


そう思いながら帰路に着いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。