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独占欲

席替え…。それは学生にとって大事な大事なイベントである。


僕は覚悟を決めて箱の前に行く。

(居眠りしても見つかりにくい2、3列目がいいな〜)と考えてくじを引いたら、一番後ろの真ん中という目立ちやすい席を引いてしまった。

今年一ショックだった。


そして、僕の隣の席になったのは——。


「よっ、蓮! また隣じゃん、よろしくね!」


そう言って屈託のない笑顔を向けてきたのは、浜田陽奈はまだ ひなさん。

少し派手な金髪で、いかにもクラスの中心にいるような明るい女の子だ。顔立ちが整っているから男子からの人気も高い。

なぜ呼び捨てなのかと言うと、中学3年の頃に隣の席になって、仲良くなったからである。


終礼が終わって帰る準備をしていると、浜田さんが僕に話しかけてきた。


「ねえ蓮、今週のジャンプ読んだ!? ほら、蓮が好きって言ってたあの漫画!」


「ああ、読んだぞ。まさかあのキャラが裏切るとは思わなかったわ……」


「だよね!私も読んだ瞬間叫びそうになっちゃった! あそこの伏線さ——」

共通の趣味ということもあって、会話が弾む。


ガラッ……!!


激しい音を立てて教室の後ろのドアが開いた。

入ってきたのは白百合さんだった。


「……蓮くん」


その瞳は完全に光を失っていて、僕はものすごい不安と、言葉にできない焦燥感に支配された。


「あ、えっと……白百合、さん?」


浜田さんが気まずそうな顔をしなながら、白百合さんに問いかける。

そんな浜田さんに対して、白百合さんは浜田さんの方を一切見ず、ただ真っ直ぐに僕だけを見つめている。浜田さんは白百合さんの様子を察して「じゃあね蓮! お幸せに!」と言い残し、逃げるように教室を飛び出していった。

静まり返った教室に、気まずい空気が流れる。


「あの、白百合さん…」


彼女に問いかけた時、ガシッ、と痛いくらいの強さで、白百合さんに右手首を掴まれた。


「……来て」


「え、ちょっ……白百合さん!?」


抵抗する隙すら与えられないほどの力で引っ張られ、僕は教室の外へと連れ出された。

彼女が向かったのは、誰も使っていない、静まり返った空き教室。

ガラガラ、とドアを閉めた瞬間、僕は困惑しながら声をかけた。


「いきなりどうしたんだよ。こんな空き教室に連れ込んで、」


「嫌です……」


ドン、と小さな衝撃と共に、視界が白百合さんの黒髪で埋め尽くされた。

彼女は僕の胸に飛び込むようにして抱きついてきたのだ。驚きで硬直する僕の身体を、彼女の両腕がギリギリときつく締め上げる。


「白百合さん……?」


「蓮くんが私以外の女の子と、仲良さそうに話てるのが嫌です…」


彼女は僕の胸元に顔を深く埋めたまま、泣きそうな声で話す。彼女が小刻みに震えているのが伝わってきた。


「私は……絶対に離しませんから」


そう言ってさらに力を強めるのだった。



10分程経過して彼女はやっと拘束を解いて、申し訳なさそうに喋り出した。


「ごめんなさい。こんなところに急に連れ出して、抱きついてしまって。本当にごめんなさい」


そう言って彼女は頭を下げる。


「確かに急に連れてこられて抱きつかれたからびっくりしたけど、別に嫌じゃなかったから…。さっさと帰ろう。お腹すいた」


流石に罪悪感を感じているようなので特に責めずに帰ろうと提案する。

この依存度だけは何とかしないといけないなと考ながら帰路に着く。


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