相談
——数日後の放課後。僕は健太と一緒に僕の部屋でソシャゲのイベントをしていた。
「これがサイヤ人の力だ!!!」
僕の完凸させたキャラクターの声が部屋に響く。
お菓子を食べながら健太が話しかけてくる。
「なあ…、お前、白百合さんと仲良すぎだろ。昨日も一緒に帰ってたって噂、もう流れてんぞ。お前らもう付き合ってんの? てか雰囲気的にもはや夫婦だろw」
「ぶっ、……ゲホッ、何言ってんだよ。付き合ってないし、夫婦なわけないだろ。ただの友達だって」
お菓子を喉に詰まらせそうになりながら反論する。しかし健太は「いやいや」と呆れたように首を振った。
「友達で片付くレベルじゃねぇって。白百合さん、お前になつきすぎだろ。学校じゃあんなに他人を寄せ付けないオーラ出してるのに、お前の前だとデレデレじゃん。おかげで学校中の男子がお前を羨ましがってるぞ? 命狙われても知らねぇからな」
「……はぁ。本当に、勘弁してほしいよ」
僕はただ平穏な学校生活を過ごしたいだけなのに…。
そう思いながら今日聞きたかった本題に入る。
「……なぁ、健太。ちょっと、聞きたいことがあるんだけどさ」
「ん? なんだよ改まって。ガチャの神引き報告か?」
「違う。……お前さ、高校1年の最初の頃から終わりくらいまで、彼女いただろ?」
「ぶっ、……ゲホッ! なんだよ急に!」
今度は健太がお菓子を喉に詰まらせそうになり、大慌てでジュースを飲んだ。色恋沙汰の話に興味のなかった僕が、過去の恋愛事情に突っ込んできたのだから無理もない。
僕はちょっと申し訳ない気持ちになりつつも、モヤモヤを解消したくて、言葉を続けた。
「びっくりさせてごめん。ちょっと気になってさ。……その、お前ってなんでその子と付き合おうと思ったんだ? 付き合ってて楽しかったか? あと……なんで別れたのかなって、聞いてもいいか?」
踏み込んだ質問に、健太は呆気に取られたように目を丸くしていた。
「なんだよ、お前がそんなこと聞くなんて明日には雨でも降るんじゃねぇか? ……まぁ、いいけどよ。付き合った理由は、向こうから告られて、可愛いし話しやすかったから。楽しかったかって言われれば楽しかったよ。映画行ったり、飯食ったりさ」
健太はそこまで言うと、少し遠い目をして苦笑いを浮かべた。
「別れた理由は……なんて言うか、だんだんお互いの『好き』の熱量が冷めてきたんだよな。相手のちょっとした事が気になったりしてさ。それで結局、こっちが振られて関係がおわったって感じかな〜」
「……なるほど」
「可愛いから」、「話しやすいから」そんなシンプルな理由で始まったとしても、熱量が変わればいつか終わりが来る。
(やっぱり、よく分からないな……)
健太からリアルな話を聞けば何かわかるかと思ったけれど、結局、僕の中のモヤモヤは晴れないままだった。
自分が彼女をどう思っているのか。恋愛感情なのか、それともただの同情や責任感なのか。考えれば考えるほど、泥沼にハマっていく。
「おい、どうしたんだよ蓮? 白百合さんのことなのか?」
ワクワクした顔で、僕の顔を覗き込んでくる健太に、チョップをかまして言う。
「……いや、なんでもない。ちょっと気になっただけだ。ありがとな」
「なんだよ、つまんなの……」
そう言って健太はまたソシャゲの画面をタップし始めた。
結局、現状維持でいいのだろう。
今すぐ彼女とどうこうなる必要もないし、無理に距離を置く必要もない。今のままで、彼女が前を向いて笑ってくれているなら、それでいい。そう思っていると健太が叫び出した。
「嘘だろっっ!……90%の回避すかしたわ。どんだけ運ねぇんだよ、俺」
そんな健太の嘆きっぷりに、僕は少しだけ肩の力が抜けるのを感じながら、口元をわずかに緩めて言い放った。
「そりゃ、日頃の行いが悪いんだろ」
「はぁ!? 人が真面目に恋愛のアドバイスしてやった直後に言うセリフかよ!」




