↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
15/35

好きだった事 (奈緒視点)

放課後デートから数日後、今日、蓮くんと一緒に絵を描く約束をした。

約束した日からずっと落ち着かなくて、緊張している。


「お邪魔します」


「ふふ……どうぞ」


ガチガチになっている蓮くんが愛おしくて、思わず笑みがこぼれてしまう。


部屋に入った蓮くんは、ショーケースに入ったお茶のペットボトルに気づいたみたいだった。思わず声をかける。


「あれは、蓮くんが初めて私にくれた物なので大切に保管してます。私の宝物です!」


「そうか……宝物なら仕方ないか……」


蓮くんは少し引き気味だった。

だけど、あれは私と蓮くんの出会いの証であり、彼の優しさそのものである。毎日見るためにショーケースに飾るのは必然である。


蓮くんが、ペットボトルから視線を逸らし、机の上にある、この前買ったスケッチブックと画材を見る。

緊張するが、さっそく始めようと思い声をかける。


「では、さっそく描き始めましょうか」


「そうだな」


私たちは、この前二人で買ったスケッチブックを広げて、鉛筆での下書きを始めた。

最初、いざ白い紙を前にして鉛筆を握った瞬間——脳裏に、あの中学時代の嫌な記憶がかすかに蘇りそうになった。

引き裂かれた絵、あの時の絶望。

指先が、一瞬だけピクリと強張る。


(……あ)


息が詰まりそうになったその時、すぐ隣から不器用そうに鉛筆を動かす音が聞こえた。

そうだ。今は一人じゃない。

チラリと横を見ると、蓮くんが真面目な顔でスケッチブックに向き合っている。


(蓮くんが、隣にいてくれる)


ただそれだけで、胸の奥に温かい安心感が広がった。彼が隣にいてくれるなら、私はもう何も怖くない。

気づけば私は、時間を忘れて無我夢中に鉛筆を走らせていた。


「……ふぅ、下書きができました!」


彼と絵を見せ合いっこする。


「すごいな、白百合さん……」


「本当ですか?嬉しいです。・・・・・・じゃあ、次は色を塗っていきましょう!」


褒められて嬉しくなるが、まだまだこんなもんじゃない。次に水彩絵の具を塗り始める。

しばらくの間集中していると、気がつけば完成していた。


完成した絵を見せ合う。

蓮くんが絵を見た瞬間に驚いたように目を見開き感想を言う。


「……本当に、すごいよ。ただ上手いだけじゃなくて、なんて言うか……ずっと見ていたくなるような、すごく綺麗な絵だ」


蓮くんの口から、お世辞じゃない、心の底からの言葉が紡がれた。

あまりの嬉しさに、一瞬頭が真っ白になる。その後、じわじわと顔に熱が集まって、りんごくらい顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。


「蓮くんにそう言ってもらえるなんて……。世界中の誰に褒められるよりも嬉しいです!」


気付けば、スケッチブックをぎゅっと抱きしめていた。

もう二度と思い出す事ことがないと思っていた、絵を描く楽しさ。それを、蓮くんが私に思い出させてくれた。


「私……やっぱり、絵を描くのが大好きです。……私、これからも絵を描き続けたいと思います」


私の言葉を聞いて、蓮くんが優しく微笑んでくれる。その温かい眼差しに包まれていると、私の胸の中には、もっともっと頑張りたいと言う気持ちが芽生えてくる。


(またたくさん絵を描いて、蓮くんに『すごいね』って褒められたい……。あわよくば頭を撫でられたい……。)


彼とのこれからの未来を想像して、つい楽しくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。