↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/61

48 紫苑の帰宅

「ピコン」という音とスマホの振動で、フッと目を開けた。

 ポケットからスマホを取り出して画面を確認すると、紫苑からメッセージが入っていた。

「紫苑!」

 ガバっと身体を起こして紫苑からのメッセージを開く。

『夕食までに帰るけど、まだカレーは残ってる? 残ってないなら何か買って帰るけど?』

 そんなメッセージが送られて来ていた。

 スマホの時計を確認すると、時刻は既に6時を回っていた。

 紫苑は僕が一人でお昼にカレーを食べたと思っているんだろう。

 実際は僕も出かけていたんだけれど、そんな事はおくびにも出さずに返信する。

『一人でカレー鍋を温めるのが勿体なかったからまだ残ってるよ』

 そう返事を送るとしばらく経って紫苑からメッセージが返ってくる。

『わかった。もう少ししたら帰るよ』

 そのメッセージに『了解』の絵文字を送ると、すぐに『既読』が表示された。

 だが、それきり紫苑からメッセージは届かない。

 がっかりしながらも僕はノロノロと立ち上がるとキッチンに向かった。

 まだ紫苑が帰るまでには間があるけれど、一旦カレーを温めておこうと思ったからだ。

 人気のないリビングは、何となく寒々とした空気が漂っているように見える。

 そんな空気を振り払うように僕はテレビを点けた。

 テレビコマーシャルの賑やかな音が辺りに響き渡る。

 その音を聞きながらキッチンに向かい冷蔵庫を開けた。

 大きなカレー鍋がでん、と、冷蔵庫の中央に鎮座している。

 鍋を持ち上げると、ひんやりとした感触が指に伝わる。

 カレー鍋をIHクッキングヒーターの上に置き、蓋を開けた。

 冷え固まったルウの中に牛乳を適量注ぐ。

 ヒーターのスイッチを入れて、お玉を使い、牛乳を伸ばすようにカレーをかき混ぜる。

 粗方温まってきたところで一旦火を止めた。

 こうしておけば、紫苑が帰ってきてもすぐにカレーを温めて食べる事が出来る。

 リビングに戻り、ソファーに座って紫苑の帰りを待った。

 目はテレビ画面を捉えているものの、内容に関してはさっぱり頭に入って来ない。

 どのくらい時間が経っただろうか。

 玄関の方でカチャリと小さな音が聞こえたような気がした。

 ハッとリビングの入り口に顔を向けると、足音が徐々にこちらに近づいてきた。

 リビングの扉が開くと同時に紫苑の姿がそこに現れる。

「ただいま、雅樹」

 そう言ってこちらに近寄ってくる紫苑に僕は「おかえり」とだけ返す。

「なんだよ、冷たいなぁ。駆け寄って抱きついてくれるかと思ったのに……」

 そう言いながら紫苑は僕の隣に座った。

 昨日とは違って僕に身体をビッタリと密着させてくる。

 ドキッとして顔を上げると、紫苑の顔が僕に近づいて来て、そのままキスを交わす。

 紫苑に抱きしめられキスをしている僕の鼻腔に、知らない香水の匂いが漂ってくる。

『この匂いって、あの女性の匂い?』

 紫苑に匂いが移るほど、あの女性と密着していたんだろうか?

『もしかして、あの女性ともこうしてキスをした!?』

 そんな考えが頭をよぎったが、だからといって紫苑の身体を突き放す気にはなれなかった。



  


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。