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47 推測

 二人を追いかける事も出来ず、僕はその場に立ち尽くす。

 今の女性は誰だったんだろう?

 年齢は僕達と同じくらいに見えたが、学校で見かけた覚えはなかった。

 たとえ見かけた事がなくても、あれだけの美人なら必ず噂になっているはずだ。

 だが、彼女のような美人がいるとは聞いた覚えがない。

 僕は今見た彼女の容姿を思い出す。

 腰の辺りまである流れるようなストレートの黒髪をしていた。

 おまけにそこいらのアイドルにも負けないような綺麗な顔立ちをしていた。

 紫苑と並んだらお似合いのカップルなのは間違いない。

 紫苑は昨日僕の事を『好きだ』と言ってくれたけれど、あれはきっと僕の告白に対するお返しみたいなものだったんじゃないだろうか?

 日頃、女子生徒に囲まれて辟易していたから、たまたま告白してきた僕をちょっとからかうつもりでキスをしてきたんじゃないだろうか?

 そんな碌でもない考えがぐるぐると頭の中で渦巻いている。

「ぐうっ」

 不意に僕のお腹が音を立てる。

 こんな考えが頭に湧いてくるのは、お腹が空いているからだ。

 こうなりゃやけ食いでもしてやる!

 そう勢い込んでフードコートに向かったものの、結局は食べ切れる量だけをお腹に収めた。

 昼食を終えてしばらく商業施設の中をブラブラしたが、紫苑に出会う事はなかった。

 何処へ行っちゃったんだろう。

 遭遇しないだけで、まだこの商業施設内にいるんだろうか?

 大体、紫苑達と鉢合わせて、何事もなく笑顔を見せられるんだろうか?

『僕というものがありながら……』なんて、紫苑を責める?

 いやいや、とその考えを打ち消した。

 たった1回キスをしただけだし、まだ二人が恋人同士だと確定したわけでもない。

 あちこち歩き回ったが、何処にも紫苑の姿を見つける事は出来なかった。

 ふと、ある考えが僕の頭をよぎる。

 まさか、ラブホテルに行った!?

 そう考えたが、すぐに『それはない』とその考えを否定する。

 この辺りにラブホテルがあるなんて聞いた事がない。

 それとも僕が知らないだけで、何処かにあるんだろうか?

 スマホを取り出し、検索しようとして慌てて止めた。

 万が一、この履歴を紫苑に見られたら、どう言い訳したらいいかわからない。

『誰と行くつもりだったんだ? まさか僕じゃないよね?』

 なんて冷たい視線を向けられたくはない。

 もういい。帰ろう。

 僕はトボトボとマンションへと歩き出した。

 マンションに帰りながらも、『何処かに紫苑がいるんじゃないか』と探してしまう。

 だけど、何処にも紫苑の姿を見つけられずマンションへと帰り着いた。

『もしかしたら、もう戻ってるかも?』

 そんな淡い期待を抱きながらエレベーターに乗って玄関を開けたが、玄関の三和土に紫苑の靴はなかった。

 がっかりしながら鍵を閉めて僕は自室へと戻った。

 そのままベッドへと寝っ転がるが、頭に浮かんで来るのは、女性と腕を組んで人混みに消えていく紫苑の後ろ姿だった。

「……紫苑」

 じわりと涙が滲んでくる。

 いつしか僕はウトウトとまどろみ始めるのだった。



 

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