46 目撃
リビングに一人残された僕は、この後どうしようかと途方に暮れた。
母子家庭だった時だって、今のように一人で留守番なんてしょっちゅうあった。
だから一人でいる事には慣れているつもりだ。
だけど、今はとてもじゃないが一人を受け入れられない。
だって、昨日告白をして、紫苑と相思相愛だってわかったばかりだ。
今日は紫苑と一日ゆっくり過ごせるとばかり思っていたのに、いきなり一人取り残されてしまった。
それにしてもさっきの電話は誰だったんだろう?
まさか、女の子じゃないよね?
悶々とした考えを振り払うように立ち上がると、食べ終えた食器をキッチンへと運んだ。
食洗機から昨日の食器を取り出して片付けると、今持ってきた食器を新たに入れてスイッチを押す。
この作業も紫苑と一緒に和気あいあいとおしゃべりしながらやりたかったのに……。
自分の食器すら片付けずに出て行った紫苑に無性に腹が立った。
自室に戻ってそのまま仰向けにベッドに横になる。
見慣れてきた天井を睨みつけても、何の慰めにもならない。
あー、もう!
ムシャクシャする!
こうなったら僕も出かけるとしよう!
そう思って身体を起こすと、冷蔵庫の中のカレー鍋の存在を思い出した。
今日のお昼に食べるつもりだったが、別に夜でも構わないだろう。
紫苑もお昼に帰るかどうかもわかったものではない。
紫苑に連絡を入れようかとも思ったが、うざがられるのが怖くて止めた。
『ちょっとキスしたからって、もう恋人気取り?』
などと言って嫌われたくはない。
大体、行き先を告げずに出て行く紫苑が悪いんだ。
僕は外出の支度をすると、リビングに向かった。
電気を消して玄関へと向かう。
戸締りを確認すると、エレベーターに乗って一階へと降りた。
マンションを出たものの、何処に行くかは決めていない。
『映画でも観るか……』
そう思い立ち、スマホで上映中の映画を検索する。
『……これにするか』
のんびり歩いても十分に間に合いそうな映画を見つけて、僕は商業施設に向かって歩き出した。
土曜日という事もあって、商業施設はそれなりに人が多かった。
映画館が入っている階に行き、チケットを買って映画を観た。
映画を見ている間は紫苑の事を忘れていられたけれど、終わった途端、紫苑の事がまざまざと蘇る。
結局、今日は紫苑の事が頭から離れないようだ。
少し遅めの昼食を食べにフードコートに向かおうとした時だった。
前方に紫苑が立っているのが目に入った。
……紫苑?
一瞬、幻かと思い目をこすったが、やはりそこに紫苑が立っていた。
声をかけようかと近寄ろうとしたその時、「紫苑、お待たせ」という女性の声が聞こえた。
足を止めて見ていると、紫苑の所に近寄っていく女性の姿が目に入った。
その女性は紫苑に近づくと、当たり前のように紫苑の腕に自分の腕を絡めている。
紫苑はそれを振り払う事もなく、されるままになっている。
……何で!?
女子の行動に迷惑しているんじゃなかったのか!?
なのに、紫苑は今、僕に向けてくれた以上の笑顔をその女性に向けていた。
女性も嬉しそうに紫苑に笑顔を向けている。
呆然と佇む中、二人は腕を組んだまま、人混みの中へと消えていった。




