44 告白
初めて触れた紫苑の身体は思っていたよりもがっしりとしていた。
洗ったばかりの髪からは微かにシャンプーの香りが漂う。
突然僕が抱きついた事に驚いているのか、紫苑は何の反応も見せない。
紫苑の身体に緩く回された腕を振り払われるかと思っていたが、そんな事はなかった。
ドキドキと聞こえてくる胸の鼓動が少し早く感じられる。
このまま時が止まってしまえばいいのに……。
「雅樹?」
紫苑に呼びかけられて僕はハッと我に返って紫苑から身体を離した。
僕の目に少し困惑したような紫苑の顔が映る。
「ご、ごめん」
謝ったものの、紫苑の顔をまともに見られずにうつむいた。
紫苑の真新しい白いシャツが見える。
そのシャツが不意に僕に近寄ってくる。
「……え?」
気がついた時には今度は僕が紫苑に軽く抱きしめられていた。
紫苑の頭が軽く僕の肩に乗せられ、耳元には紫苑の息づかいが聞こえてくる。
「僕も好きだよ、雅樹」
そう囁かれて僕はまたもや「え?」と困惑した声を上げる。
紫苑は僕の肩から頭を上げると、少し高い目線から僕を見下ろしてくる。
「僕もって……。え?」
もう一度尋ねると紫苑はクスッと笑みを零す。
「雅樹が先に『好き』って言ったんじゃないか。僕から先に告白しようと思っていたのに、先を越されちゃったな」
紫苑に指摘されて、僕は先ほどの自分の行動を思い返す。
心の中で『好きだ』と言ったつもりだったのに、どうやら言葉に出ていたようだ。
自分の行動を思い出してアワアワしていると、紫苑は更に言葉を重ねてくる。
「学校で初めて雅樹を見かけてから、ずっと好きだったんだ。告白を迷っていたら、父さんの再婚で雅樹と兄弟になっただろう。いざとなったら怖気づいちゃってさ。だけど、雅樹から告白されるとは思わなかったな」
フフッと笑われて僕は恥ずかしさでカッと頬が熱くなるのを感じた。
そこでハッと自分がまだシャワーを浴びていない事を思い出して慌てて身をよじる。
「紫苑、離して。僕まだシャワーを浴びてないから汗臭いよ」
紫苑の腕から逃れようとしたが、何故か更に強く抱きしめられた。
紫苑の腕がガッチリと僕の身体をホールドして離れない。
「汗臭い? どこが? むしろ、いい匂いだよ」
そう言って紫苑は僕の首筋の匂いを嗅いでくる。
「ヒャッ!」
そのまま紫苑の唇が僕の首筋に軽くキスをしてきたせいで、僕の口からは変な声が出る。
「変な声」
紫苑は笑いながら僕の顔を見てくるが、不意に真剣な眼差しに変わった。
「キス、していい?」
紫苑の瞳が真っすぐに僕に向けられる。
それに対する僕の答えは一つしかない。
「キス、したい」
そう答えた口が紫苑の唇によって塞がれる。
軽く触れられただけのキスはいつしか深いものへと変わっていった。




