43 葛藤
一人きりになってふうっと大きく息を吐く。
もっと紫苑と一緒にいたかったのに、紫苑は僕と二人きりでいるのがそんなに嫌なんだろうか?
落ち込んだ気分を払拭させようとテレビのリモコンを操作して次々とチャンネルを変えていく。
だけど何を見ても、僕の心は晴れそうもない。
小一時間がたって僕はノロノロと立ち上がりキッチンに向かい、カレー鍋の温度を確かめる。
「これくらいなら大丈夫かな」
独りごちるとカレー鍋ごと冷蔵庫に放り込む。
リビングに戻って点けっぱなしのテレビを消すとそのまま自室に向かう。
部屋の扉を開ける前にじっと紫苑の部屋の扉を見つめる。
扉が開いて紫苑が顔を出して「雅樹」と呼びかけてくれたらいいのに……。
そう願いながら扉を見続けていたが、一向に扉が開く気配はない。
このまま僕が紫苑の部屋に押しかけたら、紫苑はどんな反応を見せるだろうか?
『どうした? 何かあったのか?』と優しく声をかけてくれるだろうか?
それとも『何しに来た! さっさと出ていけ!』と、怒鳴られたらどうしよう?
そう考えると怖気づいてとてもじゃないが、紫苑の部屋を訪ねる勇気が出ない。
僕はふるりと頭を振ると、自分の部屋へと入った。
先ほどのままの状態の机に向かい、宿題の続きを始める。
宿題を終えて時計を見ると、そろそろ10時になろうとしている。
少し早いけれど風呂に入るとしよう。
僕はクローゼットから下着とパジャマ代わりのTシャツと短パンを取り出すと部屋を出た。
すると、同じタイミングで紫苑の部屋の扉が開いて紫苑が顔を出す。
紫苑もやはり風呂に入ろうと思ったようで、僕と同じように着替えを抱えている。
「「あ!」」とお互いに小さく声を上げると、どちらからともなくクスッと笑みを漏らす。
紫苑の笑顔を見た事で、嫌われているわけじゃないのかな、と少しだけ安堵する。
「シャワーで済ませるつもりだけど、雅樹はどうする?」
紫苑に聞かれて僕はコクリと頷いた。
「それでいいよ。お風呂掃除も面倒臭いし……」
思わず本音を漏らすと、紫苑はフッと口元を緩める。
「確かにな。雅樹、先に入っていいよ」
紫苑がまたしても僕に一番を譲ってくる。
「いや、いいよ。今度は紫苑が先にどうぞ」
そう言うと紫苑は「わかった」と言って風呂場に向かう。
僕は一旦部屋に戻って、紫苑がシャワーを終えるのを待った。
手持ち無沙汰にスマホを触っていると、ノックと共に紫苑の声がかかる。
「雅樹、いいよ」
「わかった」
僕はスマホを置くと、再び着替えを持って部屋の扉を開けた。
すると、そこにはシャワーを浴びたばかりの紫苑が立っていた。
髪を乾かすためのタオルを首にかけ、まだ濡れたままの金髪から水滴が落ちて紫苑の頰を伝っていく。
色気全開の紫苑の姿に僕の心はドキドキが止まらなくなった。
「……紫苑」
僕はそのまま紫苑へと抱きついた。




