35 義父からの話
体育祭が終わったその日の夕食の席での事だった。
テレビのバラエティー番組をチラ見しながら食事をしていると、何やら向かい側に座った両親が目配せし合っているのが見えた。
(何だ? 何か話でもあるのか?)
何となくそう察していると、徐にお義父さんが口を開いた。
「あー、紫苑と雅樹。ちょっと聞いてくれるか」
お義父さんの言葉に僕は箸を止め、口の中に入っている物を急いで咀嚼して飲み込む。
紫苑も手を止めてはいるけれど、箸は肉を掴みかけたままだ。
「何?」
紫苑が自分の父親に話を促す。
すると、お義父さんはちょっと照れたような笑みを浮かべた。
「実は今度の週末、由梨江と旅行に行こうと思ってね。悪いが二人には留守番をお願いしたいんだが……」
つまり、少し遅れたハネムーンという事か。
母さんはお義父さんの横でコクコクと頷いている。
お互い再婚同士だからと結婚式も挙げずに入籍で済ませたんだ。
せめて新婚旅行くらいは行ってもバチは当たらない。
それに一泊くらいなら、どうって事はないな。
食事なんてどうにでもなるし……。
だけど、掃除洗濯はどうしたらいいんだろう。
むむっと考え込んでいると、僕の考えている事がわかったのか、母さんが助け舟を出してくる。
「洗濯は私が帰ってからやるから脱衣籠の中に入れておいていいわ。だから食器の片付けとリビングと自分の部屋の掃除はお願いね。あ、あと、湯船に浸かるのならお風呂掃除もお願い。シャワーだけならそのままでいいわ」
洗濯はしなくていいと言われてホッとする。
自分の部屋の掃除は今でもやっているんだから、大した手間じゃない。
リビングの掃除にしても、それほど散らかったりはしないからどうって事はない。
お風呂に関しては後で紫苑と話し合いが必要かな。
それよりも、問題なのはこの家に紫苑と二人きりになるって事だ。
嬉しいけれど、多少の不安もある。
紫苑は僕と二人きりになるのは嫌じゃないのかな?
紫苑に嫌われるような行動は避けなきゃ。
「いいんじゃない。一泊くらいなら何とかなるよ」
僕よりも先に紫苑が了承を告げたので、僕もそれに同意するように頷く。
すると、お義父さんは少し言いにくそうに告げる。
「いや、金曜日の夜に出発するから二泊になる」
マジか!
だが、僕も紫苑も小さな子供じゃないんだから、二晩くらい両親がいなくても問題はない。
「大丈夫。二晩くらいどうって事はないよ。な、紫苑」
隣に座る紫苑に同意を求めると、何故か紫苑は冷めた表情のまま頷く。
なんだろう?
そんなに僕と二人きりになるのが嫌なのかな。
だったらなるべく紫苑に負担はかけないようにしよう。
そう思いながら僕は食事を再開した。




