33 考察(紫苑視点)
先に食事を終えた雅樹達は、特に長居する事もなくサッと席を立った。
フードコートはお昼時でごった返してきたし、あちこちで席が空くのを待っている人も見える。
僕もさっさと食べ終えて帰りたいが、彼女達はおしゃべりしながらの食事なので、なかなか食べ終わりそうもない。
奢ってもらった手前、一人だけ帰るのも躊躇われる。
僕はちまちまとストローでアイスコーヒーを飲みながら彼女達が食べ終わるのを待った。
食事を終えた僕達も他の人に席を譲るために立ち上がる。
僕達が席を離れた途端、すかさず別のグループがその席を埋めていく。
僕はカップやゴミを片付けてトレーを戻すと彼女達に告げた。
「今日はご馳走様。僕はこれで失礼するよ」
彼女達は名残惜しそうな顔をしたが、僕を引き留めるような真似はしない。
「わかった。それじゃまた明日ね」
バイバイと手を振って僕を見送ってくれる。
僕はなるべく普通に歩いているように見せながら、最大限の速さで歩き出した。
もう雅樹は家に辿り着いた頃だろうか?
まさか、榊を家にあげたりしていないよね。
僕と兄弟になったのを知られたくないと言っていたけれど、それは女子生徒に限った話で、男友達に打ち明けないとは言っていなかった。
榊とはかなり仲が良いようで、一年生の頃からちょくちょく一緒にいるのを見かけた。
当たり前のような顔で雅樹のそばにいる榊が羨ましくて、何度代わりたいと思った事か……。
玄関を開けて雅樹の靴しかない事に僕は安堵の息を吐く。
鞄を自室に放り込むと、僕はそのまま雅樹の部屋の扉をノックした。
だが、何の反応もない。
……おかしいな。
リビングに雅樹の姿はなかったから、部屋にいるはずなのだが、どうして返事がないんだろう。
もしかして寝ているのか?
僕はさっきより強く扉を叩いた。
するとようやく「……はい」と小さな声が返ってきた。
声をかけるより先にカチャリと扉が開いて雅樹が顔を出す。
やはり居眠りをしていたようで、寝ぼけ眼で佇んでいる。
「何か用か?」
少しぶっきらぼうな物言いにムッとしつつ、
「さっき一緒にいたのは誰?」と問う。
勿論、誰なのかは知っているけれど、あえて知らないふりをする。
僕の質問が予想外だったのか、雅樹は「え?」と声を漏らす。
「同じクラスの榊だけど、それがどうかしたのか?」
すぐにそう言われて僕は冷えた声を出す。
「同じコップの水を飲むくらい仲が良いのか?」
なるべく感情を抑えるようにしたため、抑揚のない声が口から出る。
それに対して雅樹は何でもない事のように語り出す。
どうやら僕が気にしているほど、雅樹にとっては何でもない事だったようだ。
なんだか息急き切って帰ってきた僕がバカみたいだ。
『何でそんな事を聞くんだ?』と言いたげな雅樹の目が僕を見てくる。
「もういい。邪魔したな」
僕はクルリと背を向けると自分の部屋に戻った。
僕一人が意識しているなんてなんだか悔しいが、雅樹自身は榊の事をなんとも思っていないようで少し安心した。




