↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/61

33 考察(紫苑視点)

 先に食事を終えた雅樹達は、特に長居する事もなくサッと席を立った。

 フードコートはお昼時でごった返してきたし、あちこちで席が空くのを待っている人も見える。

 僕もさっさと食べ終えて帰りたいが、彼女達はおしゃべりしながらの食事なので、なかなか食べ終わりそうもない。

 奢ってもらった手前、一人だけ帰るのも躊躇われる。

 僕はちまちまとストローでアイスコーヒーを飲みながら彼女達が食べ終わるのを待った。

 

 食事を終えた僕達も他の人に席を譲るために立ち上がる。

 僕達が席を離れた途端、すかさず別のグループがその席を埋めていく。

 僕はカップやゴミを片付けてトレーを戻すと彼女達に告げた。

「今日はご馳走様。僕はこれで失礼するよ」

 彼女達は名残惜しそうな顔をしたが、僕を引き留めるような真似はしない。

「わかった。それじゃまた明日ね」

 バイバイと手を振って僕を見送ってくれる。

 僕はなるべく普通に歩いているように見せながら、最大限の速さで歩き出した。

 もう雅樹は家に辿り着いた頃だろうか?

 まさか、榊を家にあげたりしていないよね。

 僕と兄弟になったのを知られたくないと言っていたけれど、それは女子生徒に限った話で、男友達に打ち明けないとは言っていなかった。

 榊とはかなり仲が良いようで、一年生の頃からちょくちょく一緒にいるのを見かけた。

 当たり前のような顔で雅樹のそばにいる榊が羨ましくて、何度代わりたいと思った事か……。

 玄関を開けて雅樹の靴しかない事に僕は安堵の息を吐く。

 鞄を自室に放り込むと、僕はそのまま雅樹の部屋の扉をノックした。

 だが、何の反応もない。

 ……おかしいな。

 リビングに雅樹の姿はなかったから、部屋にいるはずなのだが、どうして返事がないんだろう。

 もしかして寝ているのか?

 僕はさっきより強く扉を叩いた。

 するとようやく「……はい」と小さな声が返ってきた。

 声をかけるより先にカチャリと扉が開いて雅樹が顔を出す。

 やはり居眠りをしていたようで、寝ぼけ眼で佇んでいる。

「何か用か?」

 少しぶっきらぼうな物言いにムッとしつつ、

「さっき一緒にいたのは誰?」と問う。

 勿論、誰なのかは知っているけれど、あえて知らないふりをする。

 僕の質問が予想外だったのか、雅樹は「え?」と声を漏らす。

「同じクラスの榊だけど、それがどうかしたのか?」

 すぐにそう言われて僕は冷えた声を出す。

「同じコップの水を飲むくらい仲が良いのか?」

 なるべく感情を抑えるようにしたため、抑揚のない声が口から出る。

 それに対して雅樹は何でもない事のように語り出す。

 どうやら僕が気にしているほど、雅樹にとっては何でもない事だったようだ。

 なんだか息急き切って帰ってきた僕がバカみたいだ。

『何でそんな事を聞くんだ?』と言いたげな雅樹の目が僕を見てくる。

「もういい。邪魔したな」

 僕はクルリと背を向けると自分の部屋に戻った。

 僕一人が意識しているなんてなんだか悔しいが、雅樹自身は榊の事をなんとも思っていないようで少し安心した。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。