31 ファンクラブ(紫苑視点)
ホームルームが終わって帰り支度をしていると、女子生徒が三人僕の方にやって来た。
そのうちの一人は別のクラスの生徒だ。
他の女子生徒達が遠巻きに僕達の方を見ている。
どうやら、今日は彼女達が僕と行動を共にするようだ。
「紫苑君、良かったら一緒にお昼ご飯を食べに行かない?」
「構わないけど? ルールは知ってるよね?」
確認のために尋ねると彼女達は揃ってコクリと頷いた。
「もちろんよ。それじゃ、いきましょ」
僕は女子生徒達と連れ立って教室を出る。
他の女子生徒達が僕をじっと見ているが、僕はあえて彼女達を見ないようにしている。
僕は別にアイドルじゃないし、彼女達に媚を売るつもりもない。
そもそも、昔から僕を取り巻く女子生徒達にはかなり迷惑を被ってきた。
学校の帰り道はつけ回されるわ、自宅マンションの前ではたむろされるわで、碌な事がない。
プレゼントと称して手作りのお菓子などを差し出してくるが、何が入っているかわからない物など口に出来る訳が無い。
あまりのエスカレートぶりに一時は警察沙汰になりかけた事もあった。
これには流石の彼女達も焦ったようだ。
何しろ、我が校は指折りの進学校として有名だ。
当然、警察沙汰になれば内申書にも響くのは一目瞭然である。
それには彼女達も大いに反省したようで、『私設ファンクラブ』なる物を作り、ルールを設けた。
要は抜け駆けをする者がいないように彼女達がお互いを監視するわけだ。
そして、ファンクラブに入っていない女子生徒が僕に近づくのを阻止してくれる役割も担っている。
そのファンクラブのルール作りには僕も参加した。
つまり僕に都合のいいようにルールを作ったわけである。
嫌ならファンクラブを作らなければいいわけで、その場合、明らかに過剰とみなせばすぐに通報すると言い渡してある。
そのファンクラブのルールの中に、僕と食事に行く場合の事も入っている。
今日のように午前中で終わる場合、僕とお昼ご飯を食べに行こうと誘う事が出来る。
人数は三人で、僕の食事代は彼女達がワリカンで払うというものだ。
奢ってもらうからといって高級料理店に行ったりはしない。
学生が行ける範囲内のお店で高額でないものを食べる事にしている。
その代わり、彼女達に愛想よくしたりはしない。
これはいつ如何なる時でも同じである。
彼女達にとって僕は見た目がいいだけのマスコット人形みたいなものだ。
マスコット人形ならば、喋ったり笑ったりはしない。
だから僕も彼女達に愛嬌をふりまいたりしない。
彼女達と連れ立って学校を出て、町中を歩く。
もう雅樹はあいつとどこかの店に行ったのだろうか?
彼女達の話を聞いていると、どうやら商業施設のフードコートに向かうようだ。
まあ、あそこなら色んな店が入っているし、値段も手頃だ。
僕はサッとメニューを決めると空いている席を見つけて移動した。
すると、その隣のテーブルには雅樹達が座っていたのだった。




