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24壁ドン(紫苑視点)

 顔合わせのために予約したレストランに先に着くと、個室へと案内された。

 さほど待つ事もなく、雅樹達が案内されてやって来た。

 由梨江さんとは何度か面識があるが、僕と雅樹が顔を合わせるのはこれが初めてだ。

 部屋に入った途端、雅樹は僕の顔を見てポカンとしていた。

 その反応に僕は一抹の不安を覚える。

 …もしかして、僕の事を知らない?

 いや、まさか。

 自慢じゃないが、僕は学校一の有名人だと自覚している。

 金髪碧眼の容姿を持っているのは、うちの学校では僕一人だ。

 それに学年が一緒なのだから、僕の事が目に入らない訳が無い。

 そう思い直し雅樹を観察すると、どうやら僕に見惚れているようだ。

 そこへ、父親と挨拶を交わした由梨江さんが少し呆れたような声を出す。

「雅樹、なにをぼんやりと突っ立っているの? あなたも早く席に着きなさい」

 その声にハッとしたように雅樹は我に返ると、僕の向かい側に腰を下ろす。

 その様子があまりにも可愛らしくて思わず頬を緩めた。


 僕の向かい側に座った雅樹は食事の間中もチラチラと僕の顔を盗み見ている。

 雅樹が僕の事をそんなにも気にかけてくれるなんて、この時ばかりはこの顔に産んでくれた母親に感謝した。

 だけど、雅樹が見ているのは僕の顔だけで、僕の事を好きなわけではない事がわかった。

 雅樹にとって、僕の容姿はただ珍しいだけで、僕に対して好意を持っているわけではない。

 その事にほんの少し失望を覚えたが、焦る事はない。

 この先、僕の父親と彼の母親が再婚すれば、僕と雅樹は義理の兄弟として一緒に生活する事になる。

 高校を卒業するまで一年半はある。

 その間に必ず雅樹を僕の恋人にしてみせる。

 僕は密かにそう決意を固めた。


 食事が終わり、部屋を出た。

 入り口に向かって歩いていると、いつの間にか二人きりになっていた。

 今がチャンスだ。

「何月生まれ?」

 少し早口で尋ねると、雅樹は「え?」と首を傾げた。

 その姿があまりにも可愛くて、僕は理性が吹っ飛びそうになる。

 だが、ここで焦っちゃ駄目だ。

「誕生日だよ。何月?」

 重ねて尋ねると、ようやく納得した顔で「あ、10月だけど」と返ってくる。

 だけど、すぐにその顔はまたもや疑問の表情を浮かべたものになる。

「そうか。僕は4月生まれなんだ。それじゃ、僕の方が兄になるな。これからよろしくな、雅樹」

 そう言って僕より少し低い雅樹の頭をポンと叩く。

 初めて触れたのが雅樹の頭だなんて、ちょっと残念だが仕方がない。

 すると、雅樹は子供扱いされたのが、気に入らなかったようだ。

「たった半年じゃないか。僕の方が身長が低いからって子供扱いはやめて欲しいな」

 ピシャリと言ってのける雅樹に僕はヒョイと肩をすくめた。

 見た目によらず気の強い所があるんだな。

 思いもよらない発見に嬉しくなったが、ここは素直に謝っておこう。

「子供扱いしたつもりじゃないんだけどな。癇に障ったのなら謝るよ」

 そう言って頭を下げると、焦ったような声が降ってくる。

「別に怒ってるわけじゃないよ。そっちが兄でもいいけど、なるべく対等でいたいと思っただけだよ」

 雅樹の言葉が引っかかって僕は「えー」と不満を漏らす。

「せめて名前で呼んでくれよ。『そっち』なんて呼ばれたくはないな」

 そう言って顔を雅樹に近づけると、雅樹はビクッと肩を震わせて後ろへ下がった。

 だが、ここは通路だ。

 すぐに雅樹の背中が後ろの壁へと突き当たる。

 ここは僕が主導権を握る形で、右手をドンと雅樹の後ろの壁に当てた。

 思いっきり見開かれた雅樹の目が僕の顔を捉える。

「わ、わかったよ。紫苑」

 雅樹の口からようやく僕の名前が発せられ、僕は満足の笑みを浮かべた。

「ああ、よろしく」


 絶対に雅樹を僕の恋人にするからな。



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