23 父親の再婚(紫苑視点)
父親が再婚した。
別に父親が再婚したからといって、それに対してどうこう言うつもりはない。
母親と離婚して既に五年以上が過ぎているし、まだ四十そこそこの男が独り身なのも辛いだろうと理解はしている。
高校二年になってすぐに、夕食の席で父親に切り出された。
「あー、紫苑。ちょっと話があるんだが……」
そう言って言葉を濁す父親に僕はピンときた。
ここ最近、やたらと浮かれているような雰囲気を感じていたし、以前にも増して身だしなみに気を使うようになっていたからだ。
それでも気づかないフリをして「何?」と顔も見ずに尋ねる。
「実は……その……。再婚しようと思うんだが、どうだろうか?」
予想した通りの言葉が父親の口から発せられた。
チラリとその顔を見ると、僕の答えを固唾を呑んで見守っている。
こんな顔の父親を見るのは初めてだな。
そこで改めて父親の再婚について考えてみた。
新しい母親が来るにしても、僕は大学進学を機に一人暮らしをするつもりでいる。
そうなれば、父親は新しい奥さんと二人きりの生活を送れる。
妹か弟が生まれる可能性もあるが、そんな事は大した事じゃない。
よく小説やマンガにあるように、『義理の母親に恋をして…』なんて展開も僕には起こるはずもない。
だから僕は一も二もなく父親の再婚に賛成した。
「いいんじゃない? 別に反対するつもりはないからさ。それに父さんと二人の生活にも飽きてきたし、新しい母さんを歓迎するよ」
すると、父親は喜ぶどころか、更に言いにくそうに口ごもる。
何だ?
まだ、何かあるんだろうか?
訝しそうに父親の顔を凝視すると、父親は重い口を開く。
「…実は、向こうにも紫苑と同い年の息子がいるんだが……」
同い年の息子!?
つまり、子連れ同士の再婚という事か?
いや、まさか。
父親が子連れ女性と付き合っているとは思いもよらなかった。
てっきり年下の若い女性と付き合っているとばかり思っていたからだ。
それにしても、同い年か…。
気の合う奴ならいいけれど、気の合わない奴なら、早めに一人暮らしをするのもアリかな。
息子の事はともかく、相手の女性についての情報を集める事にした。
「それで? 結婚したい人の名前は?」
「え? ああ。高橋由梨江さんと言うんだが……」
高橋?
その名字を聞いた途端、一人の人物の顔が頭に浮かんだ。
今、隣のクラスにいる高橋雅樹。
彼の少し童顔な笑顔が僕の脳内に蘇る。
彼を初めて見たのは今の高校の入学式だ。
自分で言うのも何だが、僕はこの容姿のおかげでとにかく人目についた。
金髪碧眼に加えて高身長のため、女子生徒にはモテた。
入学式の時も、中学校の時のクラスメイトや、新たに同級生となった女子生徒に囲まれていた。
その時、ふと視線を感じて目を向けると、そこに雅樹がいた。
ちょっとポカンとした顔で、僕をじっと見つめていた。
その顔があまりにも可愛くて、思わずニコッと微笑むと、顔を真っ赤にして俯いた。
(…可愛い)
今思えば一目惚れだったと思う。
同じクラスになれなかったのは残念だったが、出来る限り僕は雅樹の動向を探った。
二年生になる時も期待をしたが、残念ながら同じクラスにはなれなかった。
その雅樹と兄弟になれたらいいなとは思ったが、そんなに上手く事が運ぶ訳が無い。
まずは、先方との顔合わせをしてからだな。
そして、顔合わせの日。
僕の目の前に現れたのは……。
やはり、雅樹だった。




