21 裏話
『借り物競走』が終わって、トラックから退場門へと移動する。
そこから自分の席に戻る際、ついでにトイレに行ってこようと思い立った。
「ちょっとトイレに行ってくる」
近くにいた潤也に告げて、僕は解放されている校舎へと向かった。
その途中に体育祭に使う道具が置いてある場所を通りかかった時の事だった。
そこには女子生徒が二人、『借り物競走』で使った小道具を片付けていた。
二人は片付けをしながら、何やらグチグチと言い合っている。
「まったくもう! 誰よ! このカードを紛れ込ませたのは! 使わないから外しておいたのに!」
「知らないわよ。そもそも金髪のカツラを用意し忘れたのがいけないんでしょ?」
「そうよ。あいつが悪いのよ! 『うちにあるから持ってきてやる』とか言いながら、今日になって『やっぱり貸せない』とか言い出すなんて!」
どうやら彼女達の話を聞く限り、あのカードは『ボツ』にされた物のようだ。
それが、何かの手違いで紛れ込んだらしい。
「高橋君が紫苑と二人三脚をしたものだから、女子生徒の歓声がとんでもないものになったでしょ。あれを聞いて女子の競技に使うのはヤバいと思って回収したその場でこっそり破り捨てたわ」
「それが正解よ。あのカードがあったら、それを巡ってのバトルロワイヤルが繰り広げられたに決まってるもの。校庭に血の雨が降るところだったわ」
一人がホッとしたように胸をなで下ろしている。
血の雨が降るかどうかはわからないが、とんでもない騒動が巻き起こる可能性があったのは確かだ。
それくらい、僕と紫苑の二人三脚には悲鳴に近い声援が飛び交っていた。
下手したら嫉妬に駆られた女子生徒達に取り囲まれる可能性もあったのかもしれない。
ブルリと身が震えたのは、悪寒を感じたせいか、尿意をもよおしたせいかは定かではない。
トイレから戻ると、三年生の競技が半分くらい終わっていた。
この後、一年生の競技があり、その次が僕達の『創作ダンス』だ。
『創作ダンス』と言ってもそんなに大げさなものではない。
校庭いっぱいに広がって、その場でダンスをするだけの簡単なものだ。
しかし、ここで問題になったのが紫苑の踊る位置だ。
生徒の観覧席に近い所に紫苑を配置させると、そこに女子生徒が集中してしまうに決まっている。
そこで、紫苑は校庭の中央の位置で踊る事になった。
ここならば、どの席からも紫苑の位置が同じくらいの距離になる。
女子生徒達も落ち着いて自分の席から紫苑を見る事が出来るだろう。
やがて僕達の『創作ダンス』の番がきた。
入場門から行進してトラック内に入り、そのまま所定の位置へと行進しながら広がっていく。
紫苑が校庭の中央に留まると、一部の女子生徒から落胆のため息が漏れる。
紫苑と同じクラスの人達が近いので、紫苑もその辺りに来ると予想していたようで、アテが外れてがっかりしているのだろう。
おかげで特定の場所に女子生徒が殺到する事もなく、無事に『創作ダンス』は終了したのだった。




