19 ファンクラブ
翌日からは普通に授業が始まった。
朝は紫苑と二人揃って自宅を出る。
「「いってきます」」
と、両親に声をかけてリビングを出ると、二人は笑顔で見送ってくれる。
僕と紫苑が仲良く登校するのが嬉しくて仕方がないようだ。
エレベーターで一階に降りると、紫苑が先に学校に向かって歩き出す。
紫苑の後を少し遅れてついていくのが、僕達の朝の光景だ。
今のマンション周辺では、紫苑目当ての女子生徒の姿を目にした事はない。
噂によると、我が校には紫苑の『私設ファンクラブ』なる物があるらしい。
紫苑はそれを容認する代わりに様々な条件を出したそうだ。
どうやらその中に『自宅周辺をうろつかない』という物があるようだ。
万が一、それを破った場合、即刻警察に通報すると紫苑が宣言したとか……。
そんな話をクラスの女子生徒が話題にしていた。
『ファンクラブ』って……。
一体どこのアイドルの話だよ。
確かにそこら辺のアイドルバリにイケメンだし、背は高いし……。
それこそ、どこかからスカウトされてもおかしくはないと思う。
いや、もう既にスカウトされてるんじゃないかな?
まあ、紫苑にその気がなければ、スカウトされても迷惑なだけだろうしね。
毎日のように紫苑の後ろを歩いて登校していて、ふと気がついた。
そもそも通学路なんて、同じ人間が歩いているはずだ。
なのに、紫苑に近寄っていく女子生徒は毎回、メンバーが入れ替わっていた。
しかも、合流する場所も毎回、判で押したように同じ場所からだ。
これももしかして『ファンクラブ』で取り決めされているのか?
そう思い至って僕は軽く目眩を覚える。
「おはよ、雅樹。どうした? そんなシケた顔をして」
パシッと潤也に背中を叩かれて、僕は軽く身体をつんのめさせる。
「おはよう。朝から馬鹿力だな」
ジトリと潤也を睨んでみせたが、当の本人は我関せずだ。
潤也は前方で女子生徒に囲まれている紫苑を軽く指差した。
「朝からお盛んだな。っていうか、毎回メンバーが変わってないか?」
「しっ! 声が大きいよ」
慌てて潤也をたしなめたが、幸い紫苑達の耳には届かなかったようだ。
紫苑は潤也の事を好きなのかと思ったが、学校で特に二人が接する場面を見る事はなかった。
そのうちに秋の体育祭についての話し合いが始まった。
二年生の僕達が行う競技は、「徒競走」「借り物競走」「創作ダンス」である。
その他に「選抜リレー」があるが、僕が選ばれるはずはないから、数に入れなくていいだろう。
「選抜リレー」に関してはあらかじめ、体育教師より、タイムの速い順にリストをピックアップしてもらっていた。
その中から男女二人ずつが代表に選ばれる。
当然、潤也がそのうちの一人に選ばれた。
他の三人も妥当なメンバーが選ばれた。
体育祭の準備も順調に進み、後は本番を待つだけになった。




