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17 帰路

 僕は慌ててカラになったコップを持って立ち上がると、冷水コーナーに水を汲みに行った。

「ごめん、お待たせ」

 水の入ったコップを潤也の前に置く。

 一応、僕が口をつけた所は潤也の方には向かないように置いた。

「気にすんなよ。サンキュー」

 潤也は軽く告げると、また黙々とぶっかけうどんを頬張りだす。

 僕も食事を再開したが、チラリと目に入った紫苑の顔が妙に無表情なのが気になった。

 なんだろう?

 僕が水を汲みに行っている間に何かあったのかな?

 少し気にはなったが、ここで問いただすわけにもいかない。

 僕は極力紫苑の顔を視界に入れないようにした。


 あっという間に僕と潤也のどんぶりはカラになる。

「いやぁ、美味しかったな」

 潤也は水を飲むとテーブルに備え付けのナプキンで口を拭った。

 今度は間違える事もなく、僕も自分のコップの水を飲む。

「この後、どうする? ゲーセンでも行くか?」

 潤也は人差し指を立てて、上を指差した。

 この商業施設にはゲームセンターが併設されている。

 魅力的なお誘いにちょっと心が揺れたが、新学期が始まって早々、ゲームセンターに入り浸るのはどうだろうか?

 少し迷った挙句、今日は帰る事にした。

「今日はやめておくよ。大体、制服でウロウロしてたら補導されそうだ」

「それもそうだな。また今度、休みの日にでも行くか」

 潤也も軽く肩を竦めると同意してくれた。

 立ち上がって食べ終わった食器を返却口に持っていくとそのまま商業施設から外に出た。

 途端にムッとした熱気に身体が包まれる。

「あっつ! さっさと帰ろうぜ」

 手をかざして直射日光を遮りながら、潤也が先を急ぐ。

 そのまま他愛もない話をしながら帰路に就く。

「あ、僕こっちだから…」

 途中で潤也に告げると、潤也はキョトンとした顔になる。

「え?」

 だが、すぐに合点がいったようにポンと手を打った。

「そういや引っ越したんだっけ。わかった。じゃあ、また明日」

「ああ、またな」

 潤也は軽く手を上げるとそのまままっすぐ歩き出した。

 僕はその後ろ姿をちょっと見送ると、マンションに向かって歩き始めた。

 それにしても、もうちょっとで潤也と間接キスをするはめになるところだったな。

 潤也とは中学生の頃からの付き合いで、それこそ同じジュースを回し飲みした事だってある。

 今日だってわざわざ潤也が『間接キス』なんて言わなければ、そんなに意識する事も無かったのにな。

 マンションのエントランスからエレベーターに乗って自宅に向かう。

 鍵を開けて中に入ったが、当然誰もまだ帰ってはいない。

 熱気で少しムッとする中、自室に向かいエアコンのスイッチを入れる。

 勢いよく冷風が吹き出す中、制服を着替えてベッドへと横になる。

 お腹が満たされているせいか、軽い眠気に襲われる。

 そのままウトウトした僕は、ドンドンという強いノックで目を覚ました。

 ガバっと起き上がると、ブルブルと頭を振って眠気を追いやる。

 すると、またしても強いノックの音が鳴り響いた。

 時間的に考えて扉をノックしているのは紫苑に違いない。

 一体何の用だろう。

 ベッドから降り立つと、扉の前へ行きパッと扉を開けた。

 するとそこには冷たい視線を貼り付けた紫苑が立っていた。



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