14 始業式
潤也と一緒に教室に入ると、既に半数近くの生徒が登校していた。
真っ黒に日焼けした人もいれば、髪が妙に茶色く染まっている人もいる。
そのうちにチャイムが鳴り、皆ガタガタと自分の席へと着くが、中にはまだ立って話をしている生徒もいた。
そのうちに担任の須藤先生が教室に入って来る。
「おーい、もうチャイムが鳴ったぞ。さっさと席に着け!」
須藤先生に一喝されて、立っている生徒は渋々自分の席へと戻る。
須藤先生はグルリと教室の中を見回した。
「欠席は……いないな。日直は……」
そう言いながら須藤先生は学級日誌をパラパラと捲る。
「一学期が『瀬戸』と『高木』で終わっているからその次だな。誰だ?」
須藤先生が顔を上げると同時に、僕ともう一人の女子生徒が手を上げる。
「高橋と田中だな」
須藤先生は学級日誌を自分の近くにいる田中さんに差し出した。
田中さんはちょっとげんなりした顔でそれを受け取る。
名簿順から言えば僕の方が先だが、須藤先生は自分に近い田中さんを優先したようだ。
須藤先生に何か言われるかとドキドキしたが、僕の名字について触れる事はなかった。
事務処理だけで完結しているのか、担任にも通達されているのかはわからないが、何も言及される事がなくてホッとした。
「皆、夏休み中は特に問題はなかったみたいだな。これから始業式があるから廊下に並べ」
皆は立ち上がるとゾロゾロと廊下に並ぶ。
小学生じゃないんだから、各自で体育館に向かっても良さそうなものだけどな。
そうすると、どこかでばっくれる奴が出てきそうだから、まとめて行動させるんだろう。
廊下に並び、ゾロゾロと体育館に向かう。
他のクラスも体育館に移動していて、廊下は生徒でごった返している。
そんな中、前方に紫苑の金色の頭が目に入る。
紫苑が他の生徒より背が高い事もあるが、やはり黒髪の中では、あの金髪は目立つな。
体育館の中は空調が利いているとはいえ、千人近い人間が集まるんだから、お世辞にも快適とは言い難い。
校長先生の話も心なしか短かったような気がする。
いっその事、教室で校長先生の話を放送で流せばいいと思うんだけどな。
まあ、こういう時でもない限り、校長先生の顔を拝む事はないので、それはそれでアリなんだろう。
始業式が終わり、今度は各教室へとゾロゾロと移動を始める。
あちこちでおしゃべりが始まるのは仕方がないだろう。
すると、突然後ろからガッと肩に腕を回された。
びっくりして横を向くと、そこに潤也の顔があった。
「何だよ、脅かすなよ」
文句を言うと潤也は『してやったり』の顔を見せる。
「終わったら、どこかで飯でも食わないか? どうせお袋さんは仕事でいないんだろう?」
潤也の言う通り、母さんはいつものように仕事に行っている。
お昼は適当に済ませると言ってあるし、特に紫苑と約束してはいない。
「いいけど、練習は?」
「今日は休み」
「本当に?」
「たまには休息も必要だよ」
そううそぶく潤也に「お前は休息の取り過ぎだ」と突っ込んでやる。
このサボり癖がなかったら、もっとレギュラーになれると思うんだけどな。
ケラケラと笑いながら、僕と潤也は教室に向かうのだった。




