10 朝食
新生活が始まった。
母さんと二人きりの生活から、お義父さんと紫苑が加わった四人での生活になった。
夏休みだから、そんなに早起きをしなくてもいいのだが、翌朝はいつも通りに目が覚めた。
しばらくはベッドの上でゴロゴロしていたが、眠気はどこかへ行ってしまったので諦めて起きる事にした。
パジャマを着替えてリビングに向かうと、ダイニングにお義父さんと母さんがいた。
「あら? 早いのね。いつもは私が出勤する頃になっても起きてこないのに」
母さんがクスクスと笑いながら立ち上がろうとするのを制してキッチンに入る。
いつものように食パンを取り出そうとしたが、新しいキッチンの勝手がわからない。
食パンを探してキョロキョロしていると、後ろからついてきていた母さんに「ここよ」と教えられた。
食パンを一枚取り出してトースターに放り込んでタイマーを回す。
その間に愛用のカップを出して牛乳を注ぐと、バターを出しておく。
チン、という音がして食パンが焼き上がった。
バターを塗って母さんが出してくれていた皿に載せ、ダイニングに向かう。
「雅樹、それだけで足りるのか?」
お義父さんがコーヒーカップを手に尋ねてくる。
お義父さんの前には食パンとベーコンエッグが載っていたと思しき皿が2枚残されている。
「雅樹はあまり朝は食べないのよ」
僕より先に母さんが答える。
「そうなのか。まあ、寝起きで食欲が湧かないという人もいるからな。…おっと。そろそろ出ないと」
お義父さんはコーヒーを飲み干すと、立ち上がってスーツの上着を羽織り、鞄を持って出て行った。
その後を追って母さんもリビングから出て行く。
テレビのニュースを見ながら食パンをかじっていると、母さんがリビングに戻ってきた。
その後ろから紫苑がリビングに入って来る。
「おはよう、紫苑君。朝ご飯は?」
「あ、自分でやるから大丈夫です」
そう言って紫苑は迷う事なく、テキパキと自分の朝食の準備を始める。
僕達より先にこのマンションで生活していたんだから、どこに何があるかを把握しているんだろう。
母さんは洗濯のためリビングを出て行き、僕と紫苑の二人が取り残される。
紫苑が隣の席に着くのとほぼ同じタイミングで、食事を終えた僕が立ち上がる。
何か言われるかな?
そう思っていたが、紫苑は特に声をかけてくる事はなかった。
ホッとしつつもどこかがっかりしている自分がいた。
僕は食器をキッチンに片付けると、そのままリビングを出て自室に戻った。
椅子に座るとそのまま身体を背もたれに預ける。
紫苑とは特に言葉を交わさなかったけれど、何の問題もないよね。
お義父さんと母さんだって、仲良しごっこの家族ごっこなんて望んでないだろうし…。
それにまだ新生活は始まったばかりなんだし、紫苑とはそこそこ仲良くやっていければいいはずだ。
それよりもさっさと宿題を終えてしまわないと、夏休みが終わってしまう。
僕は頭を切り替えると、宿題をするために机に向かうのだった。




