神の目を持つ通訳
グラウンドは主力選手のフリーバッティングに入っている。
脇では、何箇所かでトスバッティングをしている。
主力はフリーでバチコン打ってるので、とりあえずほっとき、トスバッティングをトニーと見に行く。
春樹さんがトスバッティングを始める
私はもちろん?だが、トニーも真っ先に春樹さんを見る。
しばらく見た
えっとぉ、こりゃダメだ、ガックリ
世紀末的にバッティングが終わってる
トスをやめて置きティーにしてみる
だめ、止まってるボールすらダメ
なんで、試合に出れないのか理解した
バッティングだ
パワーはあるので、芯に当たれば良いのだか、その芯にほとんど当たらない、空振りはさすがにしないがちょっとダメ
原因は私にでもわかる、いや、誰にでもわかる
スイングした時に頭が捕手方向にガクンと倒れてしまう、そこでバットの軌道が崩れ、尚且つ目線もズレる
なんだろ、あっち向いてホイ打法?みたいになってしまってる。
不格好とゆうか、なんとゆうか
同じ打てないでも、見栄えが悪い
トニーが、指摘して色々アドバイスを送りやってみるが一瞬治る、でも治るとスイングに力がない。
ひどい悪い癖
すると名取監督が来た
「ハルは最近身長も伸びて、パワーもついてきて期待してたんですけねぇ、いかんせんこのバッティングの癖が治らないんですよ、色々かなり指導したんですけど…」
おい、なんか諦めた口ぶりだな、訳し方変えてやろうかと思った。
春樹さんは、後ろでそんな会話されてる中、黙々と置きティーをしてる。
悔しいのかな、とにかく黙々と打ってる。
「ハルちゃん、水泳やって、ジムやって、身長伸びて、だから、かなりパワーアップしたんだって、だからあともう少しなんだけどなぁってゴーくんが言ってたよ」
「中学入った時はゴーくんのが身長高かったんだって」
ヌッと、またリナさんが現れたがまともなこと言ってるのでトニーに訳した。
トニーは「スイム……」とうなずきながらあごをさする。
「水泳とジムはいつからやってるんだ?」
と、トニー
えっと、これどっちに聞くの?
春樹さん?リナさん?
いや、リナさんごめん、今遊ばれたら困る。
春樹さんに聞く
打つのをやめて、春樹さんが話だした
水泳は小学校二年からです
スイミングスクールに中学生まで通ってました
高校に入ってからは、週2、3くらいです
そこにジムも併設されてるので一緒に筋トレ等もしてます。
それ以外に、雨の日などは体育館の中にあるトレーニング施設に行ったりします。
「ふむ」
トニーが身体を触りだし、チェックする。
「ハルちゃん上半身めっちゃいい身体してるんだよ」
「裸みるとビビるよ」
耳がかゆくなる距離で、リナさんがささやいてきた
へぇ〜ユニフォーム姿だとわからなかった
さすがに筋肉隆々ではないだろうが、ボクサーみたいな細マッチョなのかな
あの顔でそんな筋肉だなんて…
元々、別に筋肉ムキムキの人が好きなわけではない
でも、春樹さんだと別だ、ムフフとなってしまう。
ん、ちょいまて!
なんで、リナさんは裸を見たことあるんだ?
むむむむ
なんでだ?
「あは、キョウちゃん!エロい顔からの怒り顔なによ」
「夏場はベンチでアンシャツ変えたりするでしょ、その時見えちゃうの!ごめんね先に見ちゃって!」
う!普通に考えたらわかることだ
うー、またやってしまった
「キョウちゃんさ、そのわかりやすさは、ちょっとかわいそうに見えてきたわ、うん同情する、ドンマイ」
肩をポンポンとやってくる
「野球以外で裸みたことあるのは、ゴーくんだけだから安心してね」
投げキッスをしながら消えていく
サラッとエロい事言いやがって
こっちは中学生だっつーの!
でも、夏になったらそのたくましい上半身が見れるのか
うーん、先が長い、待てない
どうにか見る方法ないもんか
水泳に一緒に連れてってもらうとか?
とゆうことは、私も水着? え、どしよ
今日一日で、頭がおかしくなってる!
トニーのチェックが終わった
「バッティングはちょっと期待できないが、いい収穫だ」
ほほう、なんだろ、守備固めや代走で使う方針かな
それなら充分いけると思う。
「もう一時だ!昼にするぞ!」
と、監督から号令がかかる
色々あったため、午前中の練習が押してしまった。
え、春樹さんだけまだフリーやってないよ?と、思ったが…
まぁ、あの状態じゃあフリーやっても結果は見えてる
素直にランチタイムにすることにした。
午後はバントや連携等、細かい練習と紅白戦を予定していたが、時間が押したので紅白戦のみになった。
佐藤さんが出れないので、投手陣の負担も考え、少ないイニングの簡単な紅白戦をするらしい
トニーと父はスタスタとグラウンドを後にする
昼はマックに行くと朝言ってたので、食べに行ったんだな、明日からはトニーだけでも行けるように道とか教える段取りだ。
私は、母におにぎり弁当を作ってもらった。
ベンチで食べ終え、周りを見渡すと
気づくと、半数以上いない
購買?とかに行ってるのかな?
ベンチで食べてるのは、私の他に三人位
既に食べ終えたのか、プチスタンドで寝転がってる人もいる
春樹さんは……あ、いた
芝生のとこにいる
一塁側ブルペンの後ろの一角が芝生になってる
投手陣がストレッチとかをしやすいように、後付けの芝生が敷いてある
ゴー君とリナさんと春樹さん、あと眠そうで大人しそうな小林さんもいる。
四人でいいなぁ、楽しそう
ちょっと休憩したあと、バックからグローブを出して、壁当て用の軟式ボールを出す
今日はキャッチボールとか無さそうだから、壁当てでもしようかな
すると、なにやらその芝生で何か始まってる
ゴー君なんかは爆笑してる
何してんだろうと、グローブは一旦置いて近づいてみる
「あれ、キョウちゃんいたのか!おいでおいで」
リナさんが誘ってくれる
ゴーくんと、春樹さんがバットを持ってモノマネをしてる
プロ野球選手のマネだ!
これがまたクオリティー高い!
小林さんは、綺麗に体育座りして首を小刻みに動かして、笑ってる
ゴーくんに「どっちが似てる?」
と、聞かれ、無言でスッと春樹さんに指をさす小林さんがまたウケる。
ちびまるこちゃんに出てきそうなキャラだ!
リナさんは、肘枕で横たわりチュッパチャップスを舐めてる。
そのチュッパチャップスの白い部分がタバコに見える。
オッサンの休日か?
最初私が来た時、恥ずかしそうにしてた春樹さん
「なんだ、キョウちゃんの前だと照れるのか?このチキン野郎!」
と、煽られると、顔がキリッとなりモノマネをやりきってる。
二人の途中入る誇張モノマネとかで爆笑
「キョウちゃん、爆笑するとブスだね」
「まぁ、それはそれでオケ!」
と、リナさん
はっ!やば、ゴリラか?ゴリラ笑い出てたのか?
でも、楽しくて爆笑が止まらない
「ハルー、通訳ちゃん、違った、えっとキョウちゃんがわかるようにメジャー版やろうぜ」
ゴー君が煽る
春樹さんが
「じゃあ、バリーボンズ!」といって、モノマネからのバットを綺麗なマン振り
「デービットオルティス!」モノマネからのブンッ!
「デレクジーター」ブンッ!
あの頭が倒れる悪い癖はモノマネでも抜けないんかい
しかも、ちょっと古い!が、私には普通に刺さって爆笑
ん?んんん?あれ?
なんかおかしいぞ
私が、ボンズもう一回
次、オルティス
次、ジーター
続けざまにリクエストすると、春樹さんがしっかりやってくれる
それを何回か繰り返してやってもらった
うん、間違いない!
私は慌てて、春樹さんの手を取り
はう!つい、手を握ってしまった
後で手のにおい嗅いでみよ
いやいやいや、落ち着け私
「バット持ってこっちきて!」と、手を引っ張る!
飽きてフェンスに向かってブラチラさせながら、逆立ちしてるリナさんが
「あら、キョウちゃん積極的〜」と、チュッパチャップスを口に含んだままの舌っ足らずの口調で冷やかしてくる。
色々ツッコミたいが、今はそれどころじゃない
置きティーがそのまま置いてあったので、ボールを私が置く
「打って!」いつのまにかタメ口
春樹さんは、はにゃ?になってたが、言われるがまま打とうとするが…
「違う!左!」
いつもの右打席に立とうとしたところを止める
更に、はにゃ?になる春樹さん
「いいから、左で打ってください」
「わかった」
カキーン
いきなり快音
やっぱり!
続ける、快音連発、とゆうか快音のみ!
全球快音
左打席だと、スイングが綺麗なのだ!
癖が全く出ない
それに、このコンタクト率はやばい
さっきのモノマネで気づいた。
左打席のモノマネをする時は綺麗なスイング
ただ、モノマネで力が入ってないだけかと思ったけど普通にマン振りなのは音でわかる。
しかも右打席のモノマネは癖が出る。
それで、気づいた
こ、これは
今度はトスバッティングに変えてみる
私が、トスをあげようとすると
「えっ?」みたいな顔するから
「大丈夫です、私、一応野球経験者です」
更に「えっ」になった
もう!その「えっ」とか、「はにゃ?」って顔も好きだわ!
違うっ、今はそれどころじゃない!上手くいけば春樹さんの野球人生が変わる!
黙ってトスをあげる
カキーン
しっかりとらえる
ちょこっとトスをあげる位置をかえるが、どれもしっかり打ち返す!
主力選手ならば、しっかり打ち返して当たり前だが、さっきのあの春樹さんの状態から考えると大変なことだ!
凄い綺麗で力強いスイング!
ん?あれ、おかしいな
急に左で打ったわりには力強いスイング
なんでだ?癖が抜けて綺麗なスイングなのはわかる
でも、普通いきなりこんな力強いスイング出来たら、みんなスイッチヒッターになれる
「もしかして、左で打ったことあります?」
「全くないよ」
「全く打ったことないはないんだけど、素振りは毎日してる」
恥ずかしそうにモジモジ答える春樹さん
おい、私をキュン死させる気ですか?
ブルブル、今はそれどころじゃない!
「えっ?左で?なんでですか?」
詳しく聞いて見ると
中学生の時に、有名なプロ野球選手が練習をテレビで公開してたのを見たらしい
その選手は素振りは終わったら、逆でも少しだけ素振りすると言っていた
いつも打つ方だけの素振りばっかりすると、体幹が偏るから
それを見て、春樹さんも左でも素振りするようになったとのこと
「一日、何回素振りしてるんですか?」
「うーん、三百位かな?」
「多い時はもっとかな」
「え?両方で?」
「いや、片方三百だよ、でも左のが楽しいから左のがついつい多くなっちゃうんだよね」
はっ?やばくねこの人
「時間かかっちゃうからさぁ、先に楽しい左やる、左の時はしっかりコースとかイメージしてやる」
「そのあと、右の時はもう早く切り上げたいから音楽聴きながら振ってる」
やってることは素晴らしいが、それじゃあ右の練習になってないやん
「え、そんなに楽しいなら、なんで左で打とうとしなかったんですか?」
「なんで?俺子供の頃から右打ちだもん、ガッツリ右利きだから考えもしなかった」
この人は天然?それとも野球も鈍感?
野球にはよくある、右投げ左打ち問題
どのタイミングと理由で左に?ってやつ
私もそうだ、でも私は気づいたら左打ちだった
右で打ってみたことあるが、全然しっくりこない
この人はなんで、左を試さなかったのか
素振りで楽しくなってきたら、普通試すでしょーが!
怒ってもしょうがない
「トスバッティング続けましょう」
「うん、ありがとう」
快音連発
「どした、左で覚醒か?」
ゴー君や、他のみんなが近くに寄ってきた。
プチスタンドで寝転がってた、佐藤さんもきた
佐藤さんは左打ちなので、少しアドバイスする
すると、更にパワーアップ!
右だと、何言っても吸収できなかったのに
左に変えた途端、どんどんアドバイスを吸収する
みんな、楽しそうに見てる。
春樹さんは、みんなに愛されてるんだな
すると、父とトニーが戻ってきた。
快音に釣られ、慌ててこっちにダッシュで来る
「ランチタイムの間に何があった?キョーコが魔法でもかけたのか?」
トニーはパチクリ
父は頷いてる
名取監督も、戻ってきて見てる
大人三人に、ランタタイムの出来事と春樹さんに聞いたことを英語と日本語で説明する。
その間、ゴー君がトスをあげてくれてる
投げ手が変わっても快音連発
これはマジ覚醒
「キョーコは神の目の持ち主だ!」
トニーが褒めてくれた。
本家のゴッドアイに言われると照れる。
でも、その本家トニーのゴットアイが発揮されてビックリすることが起きるが、それはまだ結構先の話。




