番外編 葉山翔子熱演
いよいよ映画の撮影がスタートした
桐沢龍司の病室での撮影
「桐沢龍司さーん、担当の真壁です、よろしくお願いしまーす」
「おいおい、塔子、随分よそよそしいじゃないか」
「ええ、大事なお客様ですから」
「お客様って…」
「はい、有名俳優様、VIP扱いと聞かされてますんで、ま、私には関係ありませんけど、それよりも、難しいオペをさせていただいてありがとうございまーす」
「ははは、相変わらず厳しいなぁ、そんなとこも好きだったけどな」ニッ
「はうっ、は、は?何言ってるの?そそそそんな昔のこと…ンンッ、ねぇ、龍司、あなた元医者なんだから、ここまで進行する前に手が打てたでしょ、何してたのよっ!」
ちと、やった、イケるか?お、イケる
リナっちの言う通り、やりきって正解!
「元医者って、研修医で終わったけどな」
「終わったじゃなくて、終わらせたでしょ、逃げたんだから、で、何?私に振られた腹いせ?それで俳優になって、有名人になって、モテモテになって、私を見返したかったの?まぁ、偉いこと、偉い偉い、私にはなーんにも響きませんけどぉ」
「そうだな、逃げたなその通り、モテモテかどうかはご想像にお任せするよ、でも、塔子と別れてから、俺はずっと独り身だ」
「ふぅ〜ん、それはおめでとう、嘘も上手くなったねぇ、よっ!さすがテレビスター!」
「これを見てくれ」
ん?え?台本とセリフが違う
どした?スタッフは平然としてる
キョトンなの私だけ
首元を触り出す桐沢龍司
え、まさか、おい
「これ、塔子とペアの指輪だよ、覚えてるか?」
は?へ?どうすればいいの、誰も止めないし!
アドリブでイケってこと?
しかもその指輪本物じゃん!
「おおお覚えてるわよ!何よ、そんなのわざわざ持ってきて、昔話に付き合えって?そんな暇じゃありませんけど」
「ずっと付けてる」
「はい?」
「塔子と別れてからも、ずっと付けてる」
「ううううううそばっかり、何年経ってると思ってるの?そんなの信じるわけないでしょ、それにだったらなんなの?私には関係ありませんけど、どうぞご自由に付けてください」
「そっか、そうだよな、ごめん」
遠くを見つめて悲しい顔をする桐沢龍司
あ、台本通りに戻った
って、なんだよこのくだり
半分実話じゃねーか
「なぁ、塔子、俺、無理だろ、さすがの塔子も無理だろ、なんで引き受けた、塔子は成功率百パーセントのスーパードクターなんだろ、世界中の困難なオペをこなしてきた、どこにも属さないスーパードクターなんだろ、でも、確実に手遅れな患者には関わらないはずだ、塔子に傷をつけたくない、今からでもいい降りてくれ」
「あのさぁ、何か勘違いしてるみたいですけど」
「えっ」
「元恋人だから、引き受けたんじゃない、まだ助かる見込みがあるから引き受けたの!龍司は助かる、助ける、根治させる」
「元研修医!の、あなたが言う通りこのオペはかなり難しい、私じゃないと助からない、だから引き受けたんだよ、余計な心配すんな」
「そっか、ありがとう」
ん?あれ?終わらない
「塔子は、恋人いるのか?」
「はにゃ?いいいる いるかな?オペが恋人、ずっとオペが恋人」
なんだよこれ
オペが恋人ってなんだよ
ま、もう終わってもいいはずだからなんでもいいや
「もしかして、まだ昔のこと引きずってんのか?」
「え?」マジで、え?
「いや、失礼、なんでもない」
「う、うん、じゃあ、カンファレンス行くから、また」
「わかった、よろしく頼む」
「オーケーーー!」
ふぅ、良かった
っておい
「やまぎっちゃんどうゆうこと?」
「ん?」
「ん?じゃねーよ!」
「まぁまぁ、怒らないでください、良かったからオッケにしましょ、ね」
「まぁ、みんなオッケならいいけどさ、ねぇ、もしかして私達のこと知ってるの?」
「達?」
「いや、なんでもない」
「今でも好きな元彼の前では、あの真壁塔子もキョドってしまう、なかなかいーよこれ、最終回らしいね、うん」
「はぁ?今でも好きな設定?なの?」
「さぁねぇ〜、自分に聞いてみてくださぁい」
「え?自分?は?」
「じゃ、監督と打ち合わせあるから、翔子さんは次の準備!ほらほら」
「う、うん」
医局での撮影
「真壁せーんせっ」
「んーー?」
ノリの軽い女医の質問に画像を見ながら受け答える
「どうでした、桐沢龍司、やっぱりカッコよかった?」
「えー興味なーし」
「またまたぁ、大ファンのくせに!」
え?
「は、はぁ?な、な、なんだよ大ファンって」
「知ってるんですよぉ、真壁先生はドラマや映画なんてぜーんぜん見ないのに、桐沢龍司のはニマニマ見てましたもんね、ちょいちょい仮眠室とかで見てたのバレてますよぉ」
「あのその、アレだよ、他に見るやつなかっただけだよ、ニマニマなんかしししてねーし」
「あらあらぁ?焦ってるぅ、看護師さんからも聞きましたよ、桐沢龍司の前では女の顔してるって、あの悪魔の真壁塔子もやはり女だった!って噂になってますよぉ」
「な、何言ってんだよ、そんなの看護師さん達が勝手に言ってるだけだよ」
「はいはい、じゃ、オペ頑張ってくださーい」
女医ハケる
「ったく、誰が悪魔だっつーの」
「オーケーー!」
オッケーかよ!
てか、あゆむんはともかく、美樹ちゃんも私のアドリブの返しうまいな
何パターンか用意してたのか?
「やまぎっちゃん、さすがにもう前もって教えてよ、脚本どんどん変えてるよね、付き合うからさ、頼むよ」
「翔子さん、そろそろ気づいてね、私達が何をやりたいか、どんな映画を作りたいか、ダメならNG出すから、翔子さんの今みたいなやつが欲しいからさっ、ね」
「う、うん」
なんとなく気づいてる
この映画は、真壁塔子が元恋人の難しいオペを成功させるストーリーと、病院側が用意した最新AI機器の弱点を暴き、病院幹部の利権争いのストーリーが上手く交差している
ただ、脚本をいじられてるのは元恋人とのストーリーのみ
それが何を意味するのかは、わかってきている
♫ ♫ ♫
『やっほーお姉ちゃんどったの?これから帰国するよ』
「やってくれんじゃん、お返しのつもりか?」
『ん?なんのお返し?なんかくれたっけ?』
「やまぎっちゃんとか操るなんて、偉くなったなぁ」
『はひ?操る?なんのこと』
ん?
「大嶺さんそっちいったろ、そん時か!」
『大嶺さん?あ、うん、来たよ、竜斗の大ファンだって、でも私絡んでないんだよねぇ、竜斗とは、握手とかしたみたいだけど、そん時私さ、その日の試合の公式生配信の準備とか言われて、会議させられてたんだよねぇ』
なに?
「やまぎっちゃんはよ」
『あー、山岸さんね、この前電話でしゃべったよー、映画特別出演の挨拶程度ね』
「そん時か?口添えしたのか?」
『ほえ?クチゾエ?何言ってるのお姉ちゃん、私は女の子に興味ありません、てか、男も!竜斗としかしたことないもーん、お姉ちゃん!』
「あんだよ!」
『電話でクチゾエはできないよ、バカだなぁ』
バカはお前だ
口添えを口づけと勘違いしてないか?
わざとか?
いや、杏子はそんなこと出来ないし、嘘が下手
キョドる
「そっか、じゃあ撮影よろしくな」
『ふーん変なの、お姉ちゃんなんかあった?これ、あったね』
で、勘が鋭い、なんでだよ!
「なんもねーよ、じゃっ!」
プツッ
杏子はまさかのシロ?
やっぱりバチクソバカには無理だよな
誰だ?うーん、他にいるかぁ?
やまぎっちゃんと大嶺さんに口出せる人物
それにもうスタッフもおかしい
共演者も
みんなおかしい
おそらく、やまぎっちゃんや制作側幹部からなんかしらの指示が入ってる
そう、この映画全体を動かせる人物
しかも、私に内緒ごとだらけ
こんなこと出来る奴いるかな?
うーん、なんか重要なことを見落としてる気がする…
撮影は続き
終盤になってきた
この桐沢龍司のオペは、移植を伴う肝臓体外摘出腫瘍切除という超〜激ムズオペに挑戦することになっている
移植手術と体外摘出腫瘍切除と体内腫瘍切除
そのため、真壁塔子の実の妹とその旦那夫婦が助っ人に入ることになる
そう、竜ちゃんと杏子の出番
このシリーズ二回目の特別出演
ラストのシーンに絡む
竜ちゃんのシーズンも終わり
今季も大量の受賞を引っ提げて、春樹竜斗はプライベートジェットで同じチームの日本人二人と、今はシアトルの同じ都立出身の高橋と、そのみんなの家族と帰国する
杏子も、もちろんさくらを抱いて帰国
プライベートジェットが羽田に着いた瞬間がニュースになっていた
どんだけだよ、どっかの大統領が日本に来た時みたいになってるじゃんよ
てか、竜ちゃんの取り巻きより
杏子の取り巻きのが多い
なんなら、さくらを抱っこしてるのは、他の女性の人
アイツ、ちゃんと子育てしてるのか?
にしても、すんごいフィーバー
竜ちゃんはとんでもない大物になったわ
プロデューサー冥利に尽きる
ん?
大物
あ
あーーーーーー!
いたわ
とんでもねー大物が
うちにいたわ、スターリバーにいたわ
とんでもねーのいたの忘れてた
しかも、やまぎっちゃんとは面識ある
あるどころか、竜ちゃんが無名の頃からキュンキュンだわ
竜ちゃんのことなら、なんでも言うこと聞くわ
春樹竜斗
こ、こいつかー!
やられた
しかも過去に酔っ払って、私はあゆむんとのこと少しペロンチョしてる
世界の春樹
こいつなら、やまぎっちゃんどころか全員言うこと聞く
私に隠し事だろうが、なんだろうがやるよね
くっそ
竜ちゃんはまだ何がしたいんだ?
私とあゆむんはちゃんと再会して、チョメチョメしたぞ
もちろん知ってるだろ
もういいだろ
「緑川竜也役の春樹竜斗さん」
「緑川優子役の冬川京子さん」
「お二人入られます!」
「よろしくお願いします!」
「おにゃしまーす」
パチパチパチパチパチパチ
「お義姉さん、いや、真壁先生、今回は自分が助手で入ります、よろしくお願いします」
「私は、移植ドナーのお兄さんの方だよね、よろしくね」
「うん、二人ともわざわざアメリカからありがとう、助かる、難しいオペだから頼むよ」
「真壁先生、早速なんですけど、肝臓を体外摘出したあと、残されたここ、ここはどうやって剥離していくつもりですか?画像に見えてない癒着も予想されますよね?」
「うん、そこなんだけどさ、ここ、ここにクリップ引っ掛けて、術野展開してほしい」
「なるほど、反対側から剥がしていけば、ここはかわせるか…さすがです、勉強になります」
「うん、あともう一箇所、ここ、ここの切除はたっちゃん頼むよ」
「はい、承知しました、任せてください」
「オーケーーー!」
竜ちゃんはさすがだ
ひょろっと来て一発オーケー
コイツ、世界一のメジャーリーガーだよな
とんでもねーな
「竜ちゃんちょっと」
「はい」
「何がしたいの?」
「さすが祥子さん、もう気づきましたか」
「まぁな」
「なら、話は早い、この先、高井さんのセリフにしっかり耳を傾けて、聞いて、自分を見つめなおしてください」
「は?」
「生意気かもしれませんが、自分から言えるのはそれだけです」
「竜ちゃん!ここは映画撮影の現場だよ、しかもシリーズファイナル、間違った使い方しちゃだめ、自分のネームバリューの使い方も間違ってるぞ!」
「でしょうね、俺だってこんなやり方やりたくありません、でも!祥子さんの人生の生き方を変える方法はこれしかありません、ファイナルだからこそです」
「自分は祥子さんが、心の底から、心の底から幸せになってほしいんです、そのためなら自分はなんでもやります、自分を嫌いになるならそれでいいです、でも、俺は一生祥子さんの弟子ですからね」
「竜ちゃん…」
「何話してんの〜」
「あ、杏子、お前邪魔」
「はあ〜?」
「それより、お前、ちゃんとセリフ入ってるんだろうな」
「え?は、入ってない」
「おいおい〜、お前は予習してなんぼの役者だろぉ、大丈夫かよ」
「だって、子育て忙しいんだもん」
「本当かよ、どうせシッターに丸投げだろ」
「はへぇ?じ、自分でやってるもん、って、で!何しゃべってたの!また私に言えないこと?いっつもそう!」
「うるせーなー!言ってもお前が理解できねーからだろうがっ、このウスラトンカチ!」
「ウスラトンカチ?」
「竜ちゃん昼食うべ」
「はい」
「ウスラトンカチ、ってなに?」
「あ、私もお昼一緒に行くー!」
桐沢龍司が病室で苦しみだすシーン
「真壁先生!桐沢さんの容態が急変です!」
「なに?すぐ行く!」
「ハァハァ、塔子、こりゃダメかもな」
「喋るな!」
「緊急手術!みんな呼んで!お兄さんも!」
「え、お兄さんの方の準備が…法に触れる可能性あります!
「いい!私が責任取るから、早く!」
「わかりました!」
「塔子、いいかよく聞け」
「喋るなって!」
「もう肩の荷を下せ」
え?また違う
「何がよ」
「あの時、子供が亡くなったのは、お前だけのせいじゃない、俺も一緒にいた、原因は俺も知ってる」
「でも、お前は責任を感じ、ハァハァ、医者として一人でも多くの命を救うために、俺を振った、全世界を回り、医師として生きていくには俺は邪魔だからかな」
「それでいい、その生き方を否定しない、でもその肩の荷はもう下せ、塔子は多くの命を助けて、多くの人を幸せにしてきた、もう充分だよ、今度は塔子、塔子が幸せになるんだ、幸せになって、また、多くの命を救えばいい」
「勝手なこと言わないでよ、何を知ってるか知らないけど、私…私はとんでもないことしたの!そんな簡単に忘れるわけにはいかないでしょ!」
「そっか、じゃあ、俺が一緒に背負うよ、な、ハァハァ、ハァハァ、俺も背負う、あの現場に一緒にいたんだから、背負う義務はある、その子のことを忘れないで二人で生きて行けばいい」
「わかった、わかったから、ありがとう、グスン、もう喋るな、わかったよ」
「ハァハァ、いいか、俺がダメでも、俺は背負って逝く、だから、な、ハァハァ、少しは楽になれ塔子」
「何よ!何がダメだよ!私だよ?死なせない!いい?私に幸せになってほしいんでしょ!その相手はアナタしかいないのわかってるよね!二人で背負って生きていくの!二人で、絶対に忘れないで噛み締めて生きていくの!だから、だから死なせない!」
「ありがと、ハァハァ、もし、ハァハァ、生還できたらあそこ行かないか?塔子が行きたがってたとこ」
「鹿児島、霧島神宮」
「そう、ハァハァハァハァ、坂本龍馬とお龍が日本初の新婚旅行したとこだっけ、そこ、ハァハァ、そこ新婚旅行しよう」
「わかった、わかったから、行こう、グスン、もう喋らないで」
「じゃあ約束な」
龍司がプルプルと震えて小指を出してくる
私も小指を出す
指切りゲンマン
「死んだら、お互い針千本だからっ!」
「はは、それは嫌だなハァハァハァハァ」
「龍司、龍司任せろ、絶対助けるからっ!」
「い、急ぐよー!グスン、縁川夫婦は?」
「もうスタンバイしてます!」
「わかった!」
「オーケーーー!」
「ねえ、なんでオッケーなの?私、過去に失敗したことない設定だよ、子供死なせたって設定やばくない?」
「大丈夫ですよ、研修医時代、助手についてた医師の失敗がわかってたのに、言えなくて、死なせたって設定にしました」
「そっか、なるほど」
「はい、回想シーンは、もう別の若い演者で撮ってあります」
「そうなんだ」
「にしても翔子さん、真壁塔子の本気で泣くシーン、最高でしたよ」
「は?ほほほほほんきじゃねーし、演技だし」
「はいはい、お幸せに」
「なな、なななな何がだよ!」
「さ、会議会議〜」
「会議なんてもうねーだろ!おい待て」
くっそ
まだ泣いてるし!
「あゆむん、子供堕してたの知ってたんだ」
「うん、ごめん、フラれた時、ショコが嘘言ってるのはすぐわかったからさ、なんとか調べた」
「へぇ、別れのセリフ…あれ嘘ってわかってたんだ」
「いやいや、半べそかきながら言うセリフじゃないからあれは」
「半べそなんてかいてない!」
「はいはい」
「なぁ、ショコ、もう一人で頑張るなよ、俺も一緒に頑張るのはダメか?」
「ダメって、私が勝手に決断したことだから…」
「勝手に決断させた責任は俺にある、それ以前に!ショコの将来を考えずに避妊しなかった年上の俺に責任は大いにある」
「そうかもだけど…女優辞めて家庭を選ぶ道だってあったんだよ」
「そしたら、世界の春樹は生まれてないし、工藤君は死んでたかもしれない」
「え、なんで工藤ちゃんのこと…」
「本人から聞いたし言われたよ、命の恩人なんです、どうかよろしくお願いします、幸せにしてあげてくださいって」
「それに世界の春樹の活躍で、勇気をもらった人はたーーくさんいる」
「他にもだよ、みんな、みーんな、ショコのおかけで幸せになった、もう充分ショコは勤めを果たしたよ、少しは楽になってもバチは当たらない」
「いいか、楽になれは忘れろとは違う、忘れなきゃいいんだよ、なんで今自分はこの位置で活躍出来てるのか、なんで人を幸せにすることができるのか、それはあの時の決断があったからなんだって」
「う、うん、わかってる、わかってるけど、グスン」
「ショコ、ゆっくりでいい、ゆっくり前を向こうよ、二人でさ、今まで一人で背負わせてすまなかった、ごめん」
「あゆむん、私、あゆむんと幸せになっても、いいのかな?堕した子供に怒られないかな?」
「さぁな、それはわからない、怒られるかもな、でも、怒られるのは二人でだ、二人で怒られよ、一生二人で怒られよ、そしたらいつかは許してくれるかもしれないだろ?」
「うん、ありがとう、一生一緒に怒られてね、お願いします」
「もちろん」
「やった!やったね竜斗」
盗み聞きナウなので小声
「おー、やったな、作戦成功」
「完全に俺が仕切ったと思ってる、まぁ間違いじゃないけどな」
「うん」
「でも、杏子もやるなぁ」
「まぁね、はづきちゃんとのラインで高井歩開いたらさぁ、ピンときたんだよね、竜斗に相談してよかった」
「だな、でも、映画を利用するなんて…」
「シッ、まだ話終わってなさそう」
「おけ」
「ねぇ、あゆむーん、なんで竜ちゃんは映画を使って、ヒントを出したんだろう、こうやって、あゆむんが腹割って話をしてくれればよかったわけじゃん、謎」
「はは、まぁそう思うよな」
「うん」
「ショコのテンションを上げるためだよ」
「あー、そうくるか」
「普通の会話からだと、かえって入ってこないと思うからね」
「うん、頑なになってたかも、実際今までそうだし、テンション上がって会話したら、スゥーって入ってきた」
「そっか、ならよかった、あともう一つ、保険の意味合いもある」
「あん?」
「堕胎のこと知ってる人、他にいるだろ」
「うん、二人かな、当時の女友達、相談したり、付き添ってもらったりした」
「そっか、あとは病院関係の人も覚えてるかもしれないな」
「だよね」
「先を見越して映画を利用したんだよ」
「え?」
「いいか、俺らの関係が世間に知れたら、この時代だ、当然俺らの過去をめくってくる奴が現れる、そしたら堕胎のことに辿り着くかもしれない、そうなったら、叩かれる」
「うん」
「でもな、この映画のセリフ、本気の葉山翔子の演技、見たことないどもり具合、そして、あの本気のセリフ、そして本気の泣き、どれもみんな昔のことを思い出しての演技、そして、俺にドギマギして演技してる理由が、めくれた時に後づけが出来る」
「で、あの真壁塔子の本気のセリフで、葉山翔子が苦渋の決断をして懺悔して、十字架を背負ってここまで生きてきたことが、世間も連想できる、しかもこの映画が真壁塔子シリーズラスト、繋がりを意識する必要がない、やりたい放題、だからだよ」
「ショコならわかるだろ、言い訳記者会見よりも、映画で熱演、素が出ちゃってる熱演のが、世間に響く」
「そっか、竜ちゃんはそこまで考えてたのか」
「だとすると、どのタイミングでうちらのこと世間に公表するかだね……そこは私が考えるか、プロデューサー葉山翔子に任せろ」
「すぐ」
「へ?」
「撮影終わってすぐだよ」
「マジで?」
「嫌なのか?」
「嫌じゃないよ、でもなんでよ」
「撮られるよりいいだろ」
「そっか、映画共演をきっかけでお付き合いを始めましたか、先手を打って、恋が復活しましたもいいな、そうね、自分達から発表した方が、撮られるより印象いいもんね」
「撮られるのをビクビクして会う必要もない」
「なるほど」
「それと、お付き合いじゃないよ、結婚しますだよ」
「へ?」
「結婚してくれ」
「ほほほほえー!え?」
「一生一緒に怒られるんだろ、だったら結婚してもいいだろ」
え、え、え、え、え、喜んで
「はひー、はい」
「結婚しますのが、印象いいからね」
ん?おい
「あのさ!一言多い!そのために結婚するみたいだろ!」
「もうちょっとさ、女心…え!あん、ンンンン」
チッス押忍
「誰かに見られたらどう……」
ガタガタ、バタン!
後ろにあるパーテーションが倒れた
ん?
「ちょっと!竜斗!何やってんのよ!」
「杏子が興奮してチューしてくるからだろ!」
「は?舌いれてきたのそっちじゃん!」
「いや、その、つい〜」
「つい〜じゃない!もっかいチューして」
「しょうがないなぁ、ンンン、ンンンン」
「おい!」
「わっ!」竜ちゃん
「ビックリしたぁ」杏子
「お前ら頭大丈夫か?」
「あ、サーセン、ここ日本だった」
「俺のせいじゃないです、杏子のせいです」
「は?」
「お前ら盗み聞きか?」
「いや、なにも聞いてないよ、たまたま通りかかっただけだよ、ね?竜斗」
「え、ええ、うん、そうだっけ?」
「カス」
「杏子が聞いちゃう?って言ったんだろ」
「ノリノリでオッケ!って言ったの誰よ!」
「お前らいつから聞いてた?あん?怒らないから言ってごらん」
「まぁまぁ、ショコ、許してあげなよ」
「あゆむんは黙ってて!」
「はい」
「あゆむんだって、いい歳してウケる キモ」
「やめろ、杏子」
「しかも、お姉ちゃんのあのキス顔見た?超ブサイク」
「や、やめろって………ブハハハハ」
「お前らぶっ殺す!」
「お姉ちゃん!」
「あんだよ!」
「もっかいチューして、あゆむんと」
「は?」
「マジでやばいよ、ラストにキスシーンあるでしょ、はい練習」
「ば、ば、ばかやろ、このやろ」
「真面目に言ってんの!あの顔のままじゃ、撮影終わらないよ」
「うっ」
「はいワンモア」
「やんねーよ、本番はちゃんと気持ちいれ、え?うそーん、ンンンン、ンンン」
「わーお、あゆむんやるぅ」
「人のはなんか、こっちが照れるね」ポッ
「プハッ、あゆむん、だーいちゅ……あ、オホン」
「お姉ちゃん!」
「あんだよ!」
「まだブサイク、てか、さっきと変わってない」
「うーん、あのね、冬川さん、ショコは昔からキスの時はこんな顔なんだけど」
「えーーー!どうしよ、キスシーン入れなきゃよかったぁ」
「はあ?キスシーンしたことありますけど!」
「お姉ちゃん!それは相手があゆむんさんじゃないからでしょ!」
「あ、そっか」
じゃねーよ
キスシーン入れなきゃよかった?
杏子が言ったよな
え、嘘だろ
「え?えええ?杏子、やっぱりお前の仕業なのか?」
「うーん、もういっか、そだよーん」
「マジかぁ、てっきり、竜ちゃんかと思ってた」
「まぁ、実際動いてたのは竜斗だからね、しかも、本当は絵を描いてるのは私って、竜斗とリナさんと工藤さんしか知らない」
「随分手が込んでるな」
「まぁね、竜斗の名前のが楽だし、それになんかさぁ、私信用ないみたいで、私が指揮取るとみんなついて来なそうだったから」
「あー、わかる、バチクソバカだからな」
「それ、リナさんにも言われた、でもさぁ、帰国子女だからしょうがなくない?」
「お前、まだ帰国子女のせいにするのかよ」
「うっさい、バカのフリしてるだけだもん」
「杏子、京都って何県?」竜ちゃん
「ん?そうくるか、チッチッチッ、へへ、知ってるよ、京都県!」
シーン
みんな一瞬固まる
「ブハハハハ、お前マジか!」
「へ?」
「バチクソバカじゃん!」竜ちゃん
「え?え?え?違ったっけ?けんちん所在地は京都って聞いたよ」
「ププププ、なんか美味しそうだね」あゆむん
「府だよ、府!」竜ちゃん
「ふ?え?ふ?どゆこと?」
「杏子、お前撮影で何回か京都行ってるのにそれはやばいぞ」
「けんちん所在地…ププププ」あゆむん
「京都府!だよ!」竜ちゃん
「はぁー?そんなの引っかけじゃん、免許の試験じゃん!」
「引っかけてねーよ、バーカバーカ」私
「もう論点ズレてる!」
「杏子、お前、なんでそんなバカなのに、その、なんだ、絵を描いたんだよ」
「もう!バカじゃない!半分以上アメリカ人だからだもん!」
「わーったって、で?なんで?」
「そりゃ、お姉ちゃんに幸せになってもらいたいからだよ」
「ん、そっか、全部知ってたのか?」
「うーん、段々と、ね」
「子供の件は?」
「それは、ごめん、あゆむん…高井さんから聞いた」
「ショコ俺からもごめん」
「なるほどね、私の知らない間に色々動いてたんだもんな、わかったよ」
「その、祥子さん、俺からもすみません、折角俺だけに話をしてくれたのに…」
「うんわかった、二人、それから、みんなのおかげで、なんか前向けそうだから、もういいよ、気にすんな」
「お姉ちゃんありがとね」
「ん?」
「竜斗と出会わせてくれてありがとう」
「え!なんでそれを…あ、リナから聞いたのか…」
「違うよ、私が昔気づいて、私からリナさんに話をしたの」
「そっか…ま、そんな礼を言われるようなことはしてない、動機も変な動機だし」
「動機?そんなのどうでもいい、竜斗と出会わせてくれたのは確か、おかげで私、私達は幸せだよ、すっっっごく幸せ、竜斗がいない人生なんて想像するだけで怖い、出会いだけじゃない、付き合ってからも色々助けてくれてた、もちろんスターにするための手段だったかもしれない、でもいいの、その手段が結果、私達に幸せをもたらしてくれた、お姉ちゃん本当にありがとう」
「あのな、私はお前らが幸せならそれでよかったんだよ」
「だめ」
「ん?」
「お姉ちゃんも、も!幸せになるの!」
「わかったって」
「お姉ちゃん!」
「あんだよ!」
「ウジウジすんな!でしょ、昔私に言ったじゃん」
「あ、うん」
「自分の正直な気持ちを堕胎を理由にウジウジして、蓋をしようとしてる方がよっぽど罪だよ、その方がダメだよ、高井さんの言う通り、忘れなければいい、二人で一生償えばいい、でも仲良くしちゃいけないなんてないよ」
「そうだな」
「みーんな、同じ気持ちだよ、スターリバーのみんな、桜水のみんな、映画スタッフのみんな、みーーーーんなお姉ちゃんの幸せを願ってるから、協力してくれたんだよ、そんだけのことをお姉ちゃんはしてきてくれたんだからね」
「葉山翔子!アンタは〜エライ!前を向け!」
「はは、杏子はいつもしまんねーな」
「まぁね」
「こいつぅ、いつの間にか大人になりやがってこのこの〜」
「ちょっ、ちょっとお姉ちゃん!髪の毛ワシャワシャやめて、私まだこの後撮影あるんだよ!」
「知るかチンチクリン!」
「ねぇ!ムツゴロさんみたいになってるよお姉ちゃん!」
「アハハハハ、杏子お前、髪の毛貞子みたいになってる!」
「もう!」
ハハハハハハハハハハ
杏子、みんな、ありがとう
みんなうるせーから、前を向くよ
償いながら、幸せとやらを味わってみるよ。




