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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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番外編 はづきの秘密


「お疲れ様です、佐藤です、本日からマネージャー業務を務めさせていただきます、高井さん、よろしくお願いします」


「うん、こちらこそよろしく、あれ?あ、そっか、結婚して佐藤になったんだ」

「はい、先月結婚しまして、柴田から佐藤になりました」


「了解だよ、まぁ事務所内では、はづきちゃんで通ってるから俺もそう呼んでいいかな?」

「はいもちろんです!」


「いやぁ、優秀なはづきちゃんにマネージャーしてもらえるなんて光栄だよ、よろしく頼むね」

「ふふ、初日からプレッシャーかけないでくださいよぉ」


「はは、ごめんごめん、ま、俺の仕事はだいたい似たようなやつばっかりだから楽だと思うよ、気軽にやって」


「そうですか…で、早速なんですけど、そろそろ違う方向の役もやりませんか?このままでも充分だと思うんですけど、時代の流れとゆうか…その…」


「うん、言いたいことわかるよ、時代劇やバイオレンス系は、若い人は見なくなってきてるからね、俺も別にこだわってるわけじゃないから、昔みたいにいろんなジャンルをまたやってみたいと思ってるよ」


「そうですか、良かった」

「なんか、ありそうなの?」


「はい、葉山翔子さんのドラマシリーズなんですけど」

「え!あー、スーパードクター外科医真壁塔子だよね」


「そうです、ちょっと噂で聞いたんですが、来年辺り映画化されるらしいんです、医者役か患者役にエントリーしませんか?失礼かもしれませんが、高井さんにオファーはきません、でもエントリーすれば、抜擢される可能性は充分あります」


「いやいやいやいや、無理無理、それはやめよう」

「え?なんでですか?エントリーするだけでも…」


「うーん、ま、あのドラマは俺の肌に合わないよ、向こうも俺をチョイスしないよ、無駄だからやめよう、他のやつなら、チャレンジするから」

「は、はあ」


 なんだろ、高井さんはけっこうなんでもやるタイプなのに、顔つきもおかしくなって、絶対にやりたくないオーラ満載


「でも、なんでいきなり葉山翔子さん?」

「あ、いや、あのドラマ好きですし、葉山翔子さんは女としても憧れの存在ですから、あ、すいません、公私混同ですよね」


「なるほどね、あれ?はづきちゃんは、うちの事務所に来たのって、高瀬さんの紹介だよね、もしかして、葉山翔子さんと会ったことあるの?」


「知ってたんですね、え、高瀬さんのことご存知なんですか?」

「え、いや、昔、何回かお会いしたことあるだけ、うん」


 この人、詳しいな、ゴーのお母さんが祥子さんのマネやってたのって、だいぶ昔の話、高瀬→葉山翔子で結びつけれる人って、もう業界でも少ない


 しかも、高井さんは祥子さんと一度も共演してない


 たまたま、高瀬さんとお会いして聞いたのかな


「あの、そのうち分かると思うので、先に説明しますと、高瀬さんの息子のGOと同級生なんです、小中高、一緒だったんです、その流れで、昔、葉山翔子さんとお会いしたことあります」

 

「え!ってことは、桜水高校」

 すげ、よくすぐピンときたよ


「はい」


「じゃあその繋がりで、高瀬さんからの紹介?」

「ま、まぁそんなところです」


「そっか、高瀬さんのところけっこう人いるもんね、だから万年人手不足のうちに来たんだ」

「ですかね」


 口が裂けても、私があの騒動の発端の記者で、葉山翔子経由でゴーのお母さんを紹介してもらった、なんて言えない

 そして、ゴーのお母さんの所でも、まだ近いから、別の事務所を紹介してもらったなんて絶対に言えない


「あれ?佐藤?桜水高校?もしかしてぇ、あのジャイアンツの佐藤の嫁さんだったりしてぇ?」

「え、ははは」

「冗談だよ、佐藤って苗字は死ぬほどいるもんね、ハハハ」

「ですよ」


 この人、察しがいいな、ドキッとしたよ

 私、ポーカーフェイスで良かった

 これ、杏子ちゃんだったら、いつものアレ出たね


「葉山翔子さん、テレビの時と全然違ったでしょ?」

「え、そうですかね、あれ?葉山翔子さんとお会いしたことあるんですか?共演もないですよね」


「えっと、会った事…ある…かな、さっ、そろそろ行こう!」

「は、はい」


 なんか怪しい、怪しい

 これ、なんかあるよ

 葉山翔子映画案件門前払いといい、たまに知った口をきく

 あと気になる、テレビと全然違う?

 いや、まんまのような気がするよ


 なにか臭う

 バイセクシャルはづきの勘はけっこう鋭いのよ

 ま、今は掘り下げることも出来ないので、とりあえずほっとくことにする




 高井歩の担当マネージャーになって、そこそこ月日が流れた



 ピロリン

 ラインの着信音


 杏子ちゃんだ、杏子ちゃんとは、ちょいちょいラインしてる

 数年前の飲み会も誘われたが、さすがに断った

 私が荒らした記者なのは野球部でも知らない人が多いが、さすがにやめた、幼馴染のハルに会わす顔がなかった

 

 

 (はづきさん、ヤッホー、元気?)

 

 (うん元気だよ、杏子ちゃんは子育て頑張ってるのかな?シッターさんにぶん投げたりしてない?笑)


 (ドキッ!って、ちゃんと自分でやってますぅ、でもだいぶ落ち着いたよ、そろそろ二人目イクかも)


 (わー、元気!すぐできそう)


 (エロいこと想像したでしょ)


 (なんでよ!したけど 笑)


 (ウケる)

 (はづきさんは?なんかエロい、いや、イイ話ないの?)


 うーん、結婚したのはみんなに内緒にしてる、知ってるのはお互いの家族だけ

 隠す必要ないんだけど、どうもね、お互い秘密主義なのと、お互いの秘密があるから、あまり言いたくない

 杏子ちゃんは、私の秘密は知ってるけど、旦那の秘密は知らない、なので言いたくない


 (相変わらずだよぉ、イイ人いないよ)


 (両方?)


 (両方って、ウケる、そう、両方、男も女もナッシング)


 (じゃあ、まだカツ丼が恋人かぁ)


 (ひどいよそれ 笑)


 (そだ、この前担当変わるって言ってたけど、誰になったの?)


 (高井歩)


 (高井歩?)

 (たかいほ?)

 (珍しい苗字だね)


 でた!杏子ちゃんマジック、まじバカ

 最初は、帰国子女だからしょうがないのかなぁ、なんて思ってたけど、どうもそうでもないっぽい


 (タカイアユム!)


 (ふぅーん、誰?テレビ出てるの?)


 まじかよ、そこそこ有名なんすよ

 なぜ知らねーのよ、杏子ちゃんだって女優でしょ


 (俳優さんだよ、冬川京子と共演してなかったっけ?)


 (うーん、してないと思う)


 (そっか)


 (ちょいまちー)


 ググってるな


 (あ、思い出した、一回共演してる、けど、絡みない役だったからね、あと、バラエティーのコーナーで対決してるみたい)


 だったら覚えててよ


 (ま、いい人だよ、春樹に似てるで有名かな)


 (ふぅーん、竜斗の方が全然カッコいいもん)


 うっせーな、このメンヘラ女め




「ただいま」

「お帰り〜、ナイスピッチング!良かったね」

「まぁな、ダイ(大沢)がうちに移籍してきたのがデカい、今日も援護してくれたから、おかげで楽に投げれた」

「そっか」


 そう、うちの旦那は佐藤信幸

 桜水高校野球部キャプテンのノブ


 みんな、知らない

 桜水メンバーも知らない


 実は私達の歴史は古い

 中三からだ

 初体験も中三で済ましている


 でも、裏の事情もある

 

 夫婦共にバイセクシャル


 旦那ノブのが重い

 まぁまぁ男好き

 女性も興味あるけど、男性しか好きになったことがないレベル


 私は、基本男が好きだけど、かわいい女子が身近にいるとダメってくらいのレベル


 中三の時、ノブの秘密を知ってしまった

 中三新学期、名前のあいうえお順の関係で、隣の席だった

 クラブチームの遠征で、ノブが学校を休んだ時に、教科書を借りようと思って机を漁ったのがまずがった

 ノブに教科書借りるよ、ってメールを投げたら、オーケーって言われたので漁った


 そしたら、気になるノートが出てきたので、見てしまった

 先輩の男の人への思いを綴ったノート


 学校に置いておくなよ

 って、マジ思ったよ


 黙ってようと思ったけど、私にも似たような秘密があった

 私にも大好きな女の先輩がいた、その先輩が卒業して、近くにいなくなったら、思いは冷めていったけど、同じ同性愛者なのは間違いない


 なので、ノートを見た謝罪がてら、私も秘密を告白した


 そこから、二人の距離が急接近

 他に絶対に相談出来ない秘密を持つ二人

 お互いの恋の相談をよくした

 もちろん、高校に入ってから杏子ちゃんのことも相談したりした


 後は…


 お互い、両方イケるのかを確認した


 初体験の流れは、相手が異性でもムラムラするのかを確認したかったから


 ノブは相手が女でもアソコが膨らむのか

 私は相手が男でも濡れるのか


 普通にヤれた


 そこから、高校卒業までは、友達以上恋人未満

 私はノブと付き合っても良かったんだが、ノブが本気に好きになるのは男、なので、その関係が続いた


 でも、普通にデートしたり、エッチしたりと、それなりに楽しかった

 

 お互い別の好きな同性相手がいたが、告白できるわけもなく、思いはそのまま


 お互い、思いを寄せる人の相談をしながら、デートとかして、変な関係だなと思いつつ、学生生活を人並みに満喫した


 徹底秘密主義なのも一緒

 おかげで、中三から、高三まで一切バレなかった

 ノブは、リナちゃんを警戒してたけど、そこもバレずにいけた


 高校を卒業すると、お互い忙しく会わなくなった


 だが、私が記者になり、ノブが一軍で投げるようになると、また会うようになった


 ノブは、大学時代の先輩に思いを寄せ

 私は、また杏子ちゃんに思いを寄せていた…ことにした


 そして、あの騒動

 当然、ノブもその時の記者は私だと知ってる


 でも、同性愛の気持ちがわかるノブは、私から離れず、寄り添ってくれた


 そこから、私の同性愛は薄れていった

 代わりにノブをしっかり愛せるようになった


 ノブはまだ、私に本気になるのは無理だけど、私の想いに応えるように、付き合いをしてくれて、そして、結婚


 ノブは、男のスポーツを仕事にしてる

 そこで、同性愛が発覚したら、名誉と地位はなくなる

 日本では、まだ受け止めてもらえない


 なので、同性愛は封印して、私との結婚に踏み切ったのだと思う


 まぁ、妥協の結婚かもしれないけど、それでいい

 秘密の打ち明けから、始まった関係だからね


 女性では、はづきが一番!

 一生一緒にいたい!って言ってくれたからオッケーだよ



 数日後


 ピコン


 SNSにDMが届いた

 私は別に写真とか、コメントとかアップしてない、見るためだけに登録してる

 イイネ、なんて押さない

 なので、DMなんて珍しい


 なによ、誰よ


 え!


 ええええー?

 ハ、ハルだ


 あれ、なりすまし?


 開くと、ラインのIDが載ってて、連絡くれと書いてある

 

 ハルとはラインは繋がってない

 だからか?


 恐る恐る、ラインにIDを入力


 出た、ハルだ

「ねえ、ノブ、これってハルで間違いない?」

 ノブは繋がってるので、一応確認する

「うん、それだよ、なんだ、どうした?」

「連絡くれって、していい?」

「もちろん、どうぞ」

「うん」



 (はづきだよ)


 ♫ ♫ ♫

 わっ!いきなりライン電話かよ

 どしよ、騒動の件とかどしよ


 ポチ

「もしもし」


『おー、はづき久しぶり』

「あ、うん、あの、あん時ごめんなさい」


『いや、そんなのはいい、はづきのことだ、なにかあったんだろうけど、聞かないよ、お前がいい奴なのは間違いない、タカちゃんの所、俺が渡米した後、引き継ぐように行ってくれてたらしいな、社長の渡辺さんから聞いたよ、よく見かけるって、どんな子か聞いたら、はづきだなってすぐわかった、ありがとな、はづきだけだよ、そんなことしてくれたの』


「う、うん、こちらこそありがとう」

「で、なによ、急にどしたの?」

 すぐに切り替えて幼馴染モード

 B型の特権


『うん、はづき、杏子から聞いたけど、今、高井歩さんのマネージャーなんだろ?』

「そだよ」

 

『実はさ、その高井歩さん、祥子さん、葉山翔子の元彼なんだよ』


「そっかぁ」


『なんだよ、リアクション薄いな、もっとビックリするかと思った』

「はは、いやね、そんな気がしてたんだよね」


『そうなんだ、ってことは、高井歩さんは、葉山翔子ネタになると、なにか様子がおかしくなるってことか』

 

 さすがだ、ボーっとしてる顔なのに、昔から察しがいいんだよ

 でも、その察しの良さは女心に向かない

 残念


「うん、そうゆうこと、なんか隠すような発言するし、この前なんて共演勧めたら、それだけはダメみたいなこと言うのよ、ハルの話聞いて納得、気まずいってわけだね」


『そっかそっか』


「高井さんが葉山翔子の元彼って、どうやってわかったの?」


『杏子がさぁ、祥子さんネタを昔お母さんから聞いたらしくて、それを俺に話してくれてさぁ、それでピンときたんだよ、で、前に祥子さんが俺に少しほのめかしたことがあって、その話と杏子のお母さんの話を擦り合わすと、高井歩さんなんだよ』


「そっか、それと今の私の話を更に擦り合わすと、もう間違いないね」


『だな、繋がったよ、なぁ、高井歩さんて彼女みたいな人いる?確定じゃなくてもいい、怪しいなレベルでもいる?』


「いないね、私が担当になってからは絶対にいないし、その前も、事務所内の噂話でも、聞いたことないよ」


 なんでそんなこと聞くのよ


『ホモ?』

「ウケる、じゃあなんで、葉山翔子が元カノなのよ!」

『いや、バイセクシャル?とか?』

 ドキッ

 って、なんで私がビビるのよ


「ないよ、あの人、女好きだよ、キャバクラとか頻繁に行ってるみたい」


『マジか、それなのに女の影がないのか、俺よりも全然いい男なのに、なんでだろ』

 はぁ、そうそう、コイツはそうだった

 鏡見たことあんのかコイツ

 あんだけ、女性ファンからキャーキャー言われてんのにアホか

 杏子ちゃんもボヤくわけだ


「そうだよ、私もそこは不思議に思ってる、でもね、この前酔っ払って言ってたけど、恋する資格ないとか言ってたかな、オッサンのくせに何言ってんだよ、って思った」


『やっぱり!そうかそうか、高井歩さんも気づいてたんだ!』

「なにがよ」


『はづき、協力してくれ、これから話す俺の作戦に協力してくれ!』


「え?作戦?私に出来ることならいいけど」


『頼む、今がチャンスなんだ、はづきが高井歩さんのマネージャーをやってるし、祥子さんは今度の映画があのシリーズ最後だ、このタイミング逃すと、もう無理かもしれないんだ』


「わかったって!だからどんな作戦?」


『うん、作戦名』

「うん」

『コードネーム』

「うん」

 早くしてよ


『葉山翔子をみんなで幸せにしちゃおう!』

「は?」


『あのさ、簡単に説明すると、祥子さんと高井歩さんをくっつける、お互いまだ大好き、だからくっつけて幸せにする』

 

「うーん、言いたいことは少しわかるけど、それ、私達がすること?他人の恋愛に首突っ込むのは良くないと思うけど」


『いいか、はづき、もちろん二人が自然とよりを戻すのが一番いい、でもそれが無理なんだよ、無理だから、二人はずっと今の状態なんだよ』

『祥子さんは勝手に十字架を背負ってる、それをおろさないように必死に生きてるから、恋愛をしないでいる、だから、俺ら恩になった、世話になった桜水の連中、その他のスターリバーのみんなと、そして、高井歩さんにも協力してもらって、みんなでその十字架をおろすんだ、楽にさせて、今度は祥子さんに幸せになってもらうんだよ』


「十字架?なにがあったの?二人になにかあったんだ」


『あった、二人は、若い時に凄く愛し合ってた、でも、とある理由が原因で別れた、その理由は俺からは言えない勘弁してくれ、でもはづきなら気づくと思う、気づいても内緒にしててくれ』


 気づいたよ

 女の祥子さんが背負う

 私達はともかく、元彼の高井歩さんにも協力を仰ぐ

 大好きだったのに、大恋愛だったのに別れなければならない理由

 

 女側に不利な理由


 浮気ではない


 妊娠だ

 そして、堕したってことか

 

「わかった」


『俺と杏子はもちろん、ゴーとリナの才能を引っ張り上げ、コバッキーの成り上がり、他にヤス(工藤)や宮杉にナチ、みんな祥子さんに助けてもらい、今幸せな人生を歩ませてもらってる、他のみんなもそう、ガブとオノマリ、ウッちゃん(羽堂)も、ダイの嫁さんもダイの移籍で東京に一緒に来て、スターリバーに入ってフリーアナウンサーとして活き活きしてる、ノブもそう、マネジメント契約していい契約を勝ち取った』


 うん、知ってる、いい契約だよ


『それにはづき、お前もだろ、世話になったろ?』

「もちろん、世話になったし、尊敬してる」


『おし、だから、みんなで恩を返す!』

「おっけ!私は何をすればいい?」

 

『まず、高井歩さんを今度の祥子さんの映画に出演させたい』

「それは無理かも、さっき言ったけど、それ私も別の角度の理由で勧めたんだよ、キッパリ断られた」

『わかった、それは想定内、明日の今ぐらいの時間、高井歩さんと一緒にいることはできるか?』

「うん、大丈夫」

 

『明日また、はづきにライン電話するから、高井歩さんに代わってくれ、俺が直接口説く』

「わかった、世界の春樹の頼みなら、納得するかも、でも、制作側はどうするの?オファーはきてないし、今からエントリーはできないよ」


『大丈夫、プロデューサーを俺は知ってる、やりたくないけど、その世界の春樹オーラでなんとかゴリ推しする』

「あ、それならイケるかも」

 

『とりあえず、制作側にはこのことは内緒で進める、だから山岸Pには、俺と高井歩さんは昔からの知り合いってことにする』

「え、なんで?全部言った方が楽に話進められるじゃん」


『考えてみろ、上手くいく保証はない、なのに先走ったら、祥子さんが恥かくだけだろ、作戦が祥子さんにバレて失敗、なのにスタッフさんに祥子さんが、今でも高井歩のことが好きってバレたら、かわいそうだろ』


「ねえ、そこなんだけど、間違いなく祥子さんは高井さんのこと今でも好きなの?」


『間違いない、前に祥子さんと飲んだ時、酔って言ってた、大好きだったって、でも、別れたって、あの時の目はまだ未練タラタラ、それにさ、俺、高校生の時に言われたことあんだよ、三十歳から俳優になった人もいるよって、それ高井歩さんのことだ、忘れられてないんだよ、むしろ追っかけてる、だから、共演しない、もし、気持ちないなら、プロ意識高い祥子さんだ、仕事と割り切ってとっくに共演してるよ』


「そっか、高井さんはどうなんだろ、確かにここまで女の影がないのはおかしいけど…」


『さっき話をした理由なんだけど、祥子さんは高井歩さんに、告げないで別れてる、今でも相手は知らないと思ってる、でも高井歩さんは気づいてたんじゃないかな、それを理由に祥子さんが恋愛をしないのも気づいて、高井歩さんも同じ気持ちで恋愛しないんだと思う、恋をする資格がないって、そうゆうことだろ、結局さ、二人揃って好き同士なのに、勝手に二人で背負ってる、しかもお互いテレビ業界、いやでも相手を見てしまう、忘れることが出来ないんだと思う、ま、高井さんの気持ちは明日電話ではっきり聞くよ』


「うん、わかった、あとはスターリバー側か」


『ここは、隠さず、スターリバー全体で祥子さんを騙してプッシュする、そこはリナに任すから、上手く連携取ってくれないか?』


「うん、ナイスだよ、リナちゃんチョイス正解、明日のハルと高井さんの電話が終わったら、速攻連携取るよ」


『あと、はづき、ポイントは再会した初日が大事、初日に一気に持っていく、燃えさせる、その初日をクリアしたら、制作側にはネタバレさせる、俺の予想なんだけど、杏子の姉さんだ、恋愛ポンコツ臭がする、もし本当にそうだったら、制作側にリークして、協力を仰がないと、撮影に迷惑がかかる』


 当たりかも、これか?高井さんが言ってた、テレビと違うだろってやつだ


「オッケー、初日ね、初日にたたみかけるのね」

『そうだ、祥子さんに考える時間を与えない、あの人は先を見過ぎちゃうからな』


『あとさ、脚本家の大嶺さん?杏子がよく知ってて、聞いたんだけど、俺のファンって本当?』


 うーん、日本人のほとんどがアナタのファンだと思いますけど……


「そうだよ、キャーキャー言ってるみたい」


『わかった、その人を招待したい、チケットと往復の飛行機用意するから見に来てね、的に誘ってもらえないか?』

「え?杏子ちゃん、よく知ってるんでしょ?杏子ちゃんが誘えばよくない?」


『杏子には、全て内緒で作戦を進める、ネタバレはずっとあとにする』

「え!なんで?かわいそうじゃん、仲間外れみたい」


『よーーく考えてみん、よーくね、杏子に教えたらどーなるー?杏子だぞぉ、はづきはあまり知らないかもだけど、それでもわかるだろ』

 

「あ、あー!だめだ、途中でネタバレしちゃう、おバカさんだから、ペロっと祥子さんに…そうじゃなくても、変に祥子さんに気づかれて、祥子さんが真相を知ろうとして、真っ先に落としにかかるのは、おバカな妹、そして、見事に、完璧に落ちる」


『正解』


「そっかー」


『杏子は、おバカさんどころの騒ぎじゃないからな、天然でもない、猛烈バカ、そのせいで、俺は今まで散々恥をかいてきた』

 

「確かに〜」

 って、ちょっとかわいそうだよ、ウケるけど


『ま、そんなところも大好きなんだけどね、なんならそれないと物足りない』


 なんだよコイツ、おめーもバカじゃんよ


「はは、ごちそうさん、大嶺さんを呼びつけるってことは、脚本もなにか仕込むつもりね」


『うん、撮影終わったら、はい終わり、にさせない、ストーリー内で十字架を下ろす』


「なるほど、わかった」


『じゃあ、はづきよろしく頼むな、とりあえず明日またよろしく』


「うん、わかったよ」

 


 翌日


「高井さん、今夜スケジュール追加になったのでお願いします、打ち合わせ入りました」


「え?そうなの?なんの打ち合わせ?」


「葉山翔子と恋を復活させる、打ち合わせです」


「は?え?はい?はい?何言ってんのはづきちゃん」


「葉山翔子さんのこと好きですか?」


「え!いや、好きもなにも、共演したことないし、まぁテレビで見るけど、綺麗だなぁとかくらいだよ」


「違います!今でも!今でも好きですか!」

 

「はい?な、な、な、何を言ってるんだよ、べべべべつに、そんな、えっと今でもずっと?え、何を知ってるの?」

 当たりだな、ずっとなんて言ってねーし


「わかりました、ごまかしけっこー、でも打ち合わせ相手には正直に答えてくださいよ」


「えっとなにその打ち合わせ、今夜キャバ行く予定だったから断れない?」


「高井さんは、なんでキャバクラ行くんですか?何しに行ってるんですか?」


「ええ?それは女の子とお酒飲んで楽しむためだよ」


「違う!ねえ、高井さん、逃げるのやめましょ、業界内にキャバクラ好きをアピって、翔子さんに前を向かせたいからでしょ!さっき奈良井さんから聞いた!毎回一時間ですぐ帰っちゃうって、キャバクラ通いだけど毎回一時間?お金持ってるのに毎回一時間?そんな奴いねーよ!そんなキャバ通い俳優見たことねーよ!元芸能記者舐めんなよ!……です」


「ええ、え?芸能記者?」


「高井さん、打ち合わせの相手はあの世界の春樹竜斗です、今更キャンセルなんて出来ませんよ」


「は?はぁーーー?」

「あ、まてよ、そっか、春樹はショコの…」

 ショコって誰だよ、ウケる

 でも、その呼び方でもう確信は得られたよ


 この二人はハルの言う通り、元恋人同士だ!


「なるほど、春樹と渡りをつけれる…当たり前だけど、はづきちゃんは春樹の同級生、知り合いだもんね」

「ええ、幼馴染です、こぉーーんなちっさい頃から知ってます」

「わかった、でも、春樹と打ち合わせって…いきなりすぎるよ」

 

「春樹竜斗の打ち合わせ依頼を蹴飛ばしたら、やばいですよ、全世界敵に回しますよ、日本全国のキャバクラ出禁になりますよ」


「了解!覚悟決めるよ、どうすればいい?」

「サンフランシスコの春樹とズームで会議します、よろしくお願いします」

 電話はやめた、顔を合わせて喋った方がいい

 



 ハルと高井さんの会議は無事終わった

 私は立ち会わなかった

 その方がいいと思ったから

 

 でも、高井さんの表情でハルの作戦は上手くいったことがわかる


「はづきちゃん、とりあえず俺は何すればいいかな?」

「そうですね、ネトフリで真壁塔子シリーズ見て予習してください」

「それは大丈夫、セリフを覚えられるくらい見てきてる、全シリーズ見てるよ、見まくってるから大丈夫」

「なぁんだ、アホくさっ!」

「はづきちゃん、当たりキツイよ」

 


 ハルから作戦決行!とラインがきた

 早速行動開始


 まずは、脚本家大嶺さんと連絡を取り、サンフランシスコに飛ばした

 喜んで飛んで行った


 そして決まった、オファーがきた

 患者役に高井歩が抜擢された


 公表は、事情によりギリギリになるから、それまでは口外しないよう、キツく言われた


 もちろん想定内

 葉山翔子側に知れるのはギリギリになる

 側じゃないね、葉山翔子だけ知るのはギリギリ

 おそらく、不自然がないギリギリのライン

 顔合わせ二週間前くらいかな


 山岸プロデューサーからは、春樹の名前は出てこなかった

 おそらく全体に箝口令(かんこうれい)を敷いている


 ハルが上手くやってくれている


 ここからは私達の出番


 リナちゃんと連絡を取って、連携することになった


 リナちゃんは、既にハルから作戦を聞いていたので、話は早かった


 リナちゃんが動けば大丈夫


 コードネーム

 えっとなんだっけ


 とにかく

 葉山翔子、星川祥子を今度は私達が幸せにする

 さぁ、恩を返すよ!

 



 そう、恩を返す

 私は昔、葉山翔子様に助けてもらってる

 あの記事のことではない


 高校時代、高校二年の冬だった、バトミントンでつまづいてた、途方にくれてた

 全国レベルの人に全く歯が立たなかった

 そんな時、大ファンだった葉山翔子様が杏子ちゃんのお姉ちゃんってことに気づいた


 納得いった、似てるもん

 杏子ちゃんのこと好きになるわけだ


 杏子ちゃんは大好き

 葉山翔子様は推し


 程度だった


 だけど、それが姉妹とわかると葉山翔子様に会えるかも!

 とゆう、私独特の変な気持ちになった


 なぜ姉妹とわかったか?

 葉山翔子が秘密にしていた本名を私が暴いたから

 今ならググればサクッと出てくるかも

 でも当時は違う


 バトミントンで限界が見えてきて、暇さえあれば調べてた

 うちの祖父は警察官

 父は今でも刑事


 そう、なんか血は争えないのか、調べ方がうまかったのか、行き着いた


 なんと、桜水界隈出身で、星川祥子

 そして杏子ちゃんと顔が似ている


 マジでビビった


 これは姉妹か従姉妹で間違いないと思った


 杏子ちゃんの家を暴くと、隠れて張り込みをした

 家は当然、別のはず

 でも、有力な情報をもらっていた


 ハルのお母さんだ

 前にバッタリ会った時に、この辺で葉山翔子目撃情報が多発してるって


 これは、ここで張り込みしてれば、いつか来るんではないか!と、思い張り込み


 したら来た


 車の後部座席から、葉山翔子が降りてきた

 ダッシュ!


 カバッ

 抱きついてしまった


 マネージャーさんに慌てて剥がされる

 

 そして

 

「君、いきなりなにやってんだ!どうしてここが!さてはストーカーだな!警察呼ぶから!」


 やばい、どうしよ、これで警察なんか呼ばれたら…

 父の顔に泥を塗ってしまう

 もしかしたら、クビ?

 

 マネージャーさんが110番しようとした時だった

 

「待て待て待て、待てって、ナベも落ち着け」

「え、はい」

「あなた、高校生かな?」

「は、は、はい、本当にごめんなさい!申し訳ありませんでした!」

「うんうん、ちょっと舞い上がっただけだよね、体つきもしっかりしてる、スポーツかな?顔もメイク慣れした顔、普段から身だしなみもしっかりしてるんだね、こんな子がストーカーなんてしないよ、でもうちに行き着くのは、よくないなぁ、わけを聞かせて、車に乗って」

「は、はい」


 ファミレスに連れて行かれた


 葉山翔子がファミレス?


 サングラスしてるのにバレバレだよ

 そりゃ目撃情報あがるよ


 そんなのお構いなしで、話を始めた

 マネージャーさんはいなくて、二人だけ

 ど緊張の中、私の素性、なぜ家を特定出来たかを伝えた


 その時は、その時は、杏子ちゃんへの思いは伏せた

 さすがに、それ言ったら情報量多すぎだよね

 


「マジか!あなたも桜水?こりゃすげーな」

「え?」

「いや、なんでもない」


「でも、うーん、柴田ちゃん、ははは、立派なストーカーだよ!ははは」

「す、すいません」


「まぁ、いいよ、でも柴田ちゃん、もうだめ、本当やめなよ、興味が湧くのはけっこう、でも、本当にナベが警察呼んで、その相手が私、世間に騒がれたら、マジで親父さんに迷惑かけてたよ」


「はい、もう絶対にしません」


「まだ、若いから大丈夫、ちゃんと自分を見つめ直して、困ったことがあったら、ここに連絡してきな、相談に乗ってあげる」

「え」

 

 葉山翔子様が名刺をくれた


「竜ちゃんの幼馴染、あいつの友達に悪い奴はいない、そこは信じれるし、信じられる、だから遠慮しなくていい」

「あ、ありがとうございます」


「にしても、よく調べ上げたな、柴田ちゃんさぁ、本当にバトミントン挫折したら、記者とかやったら?」

「え?」

「いや、記者でもやり過ぎはダメだけど、その意欲と行動力は記者に向いてるかも、私が言うのもなんだけど、こっちからしたら嫌な記者になるぞぉ、あははは」

「はぁ」


「いい、柴田ちゃん、あなたはまだ高校生、いろんな可能性が秘めてる、バトミントンダメかもで、違う方向に突っ走ってはだめ、そりゃ、バトミントン一筋でやってきたから、その壁にブチ当たってわけわかめになってるかもしれない、でも、きっと、他にも頑張れることは、見つかるはず、焦らず、今しかない高校生活を満喫しな、でもね、軽はずみの行動起こして、ごめんなさいで済む歳でもないんだからね、そこだけは気をつけな」


「はい!私、記者になります!」

「お、決断はえーな、B型か?」

「です!」

「ははは」


「柴田ちゃん、もし記者になる時、連絡して、自分で探してきたなら、そこがどうゆうとこか教えてあげる、もし、どこに入ろうか悩んだ時はいいとこ紹介してあげるよ」

「わかりました!」


 そんな流れで記者になった

 あの日、ハルとバッタリ会って、記者になると告げた時は、もう既に決意は固まっていた

 ストーカーまがいな事をした私を助けるどころか、将来を導いてくれた、葉山翔子大先生


 もう恩師だよ


 そりゃ、ハルの大作戦に乗って恋の応援しちゃうよ

 


 でも、今はあの事件がきっかけで記者はクビになり、芸能事務所に勤めてる


 今のこの仕事も葉山翔子様が導いてくれた

 おかげで充実した生活を送らせてもらってる

 ただ、やはりあの記事のせいで、葉山翔子様とは疎遠になった、しょうがない、大手を振って仲良くするにはもう少し時間がいるよ



 なんで、あんな記事を書いたか


 ふふふ


「はづきー、ハルなんだって〜」

「あー、うん、大事な相談、作戦、コードネーム」

「はぁ?」

「成功したら、報告するよ」

「なんだそれ」

 



 お金って大事だよね


 ふふふ



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