番外編 葉山翔子バグる
さ、いざ出陣!
はぁ、不安だらけ
あゆむんの気持ちがどーのこーの、の前に、長年一緒にやってきた主要キャストやスタッフの前で、私のキャラが崩壊しないか心配……
ガチャ
ガンッ!
「いったぁーーい!」
車に乗り込む時に、車に頭ぶつけた
ボーッとしてた私も悪いが、この車も悪い
「大丈夫ですか、会長」
「大丈夫じゃない!もうコイツ売る!ベントレー嫌い、アルファードのがいい、天井高いし、ドアウイーンだし」
「会長、じゃあハマーにしましょう、ハマー」
「工藤ちゃんなんだそれ、ケンタスティ?か?」
「あー、懐かしいですね、ゴッツイ車ですよ、会長にピッタリ」
「うるせーよ、ほら、なっち出して」
工藤ちゃん、車屋さんの息子だったこともあり、車にうるさい、外車好き
カタログ片手に、私にあれこれ勧めてくる
「そう言えば会長、ハルは向こうで何乗ってるんですか?」
「なんだっけ、あー、カローラクロスだっけかな」
「は?」
そりゃそうなる
「なんか、車は日本車が一番なんだって、工藤ちゃんも見習いな」
「いや、そうゆう問題じゃない気がするんすけど」
「ま、おかげで、追っかけられないってよ、街入るとモブるらしいぞ」
「なるほど」
「はい、出発しますよ」
なっちが、クソムカつくベントレーを発進させた
「会長、ハルの試合見ながら行きましょうか、丁度やってますよ」
「あ!400号!今日打つかな」
「そうですね、ここ5試合止まってますからね、そろそろじゃないすかね」
「おーよ」
ポチ
『さあ、六回、ノーアウト一塁二塁で、打席には春樹が入ります、一点ビハインドのサンフランシスコは、同点、逆転のチャンスです、春樹の得点圏打率は今季も今のところメジャー全体でトップです、ホームランが出ればメジャー通算400号です、スタジアム内はファンが総立ちで声援を送ります』
『相手メッツはここでピッチャーを左に代えるようです』
『スタッドキャストで、相手が左ピッチャーでも、春樹がいかに広角に打ち分けてるのかが紹介されています』
『対左でも三割打ってますから、ここは打って欲しいですね』
おー、ちょうど竜ちゃんの打席やーん
戦場に向かう私にとっては幸先がいいじゃーん
『あっと、これは、なんのデータですかね?』
『これは、冬川京子さんが球場に試合を見に来ている時と見に来ていない時のデータ比較ですね』
『なるほど、えっと、見に来ていない時はガクンと落ちてるのがわかります』
そんなデータもあるのかよ
データ大好きメジャーリーグ
『冬川京子さんは出産をしてから、見に来れない時がありますからね、特に遠征は来ていない時が多かったみたいです』
『そうですね、それを見かねた冬川さんが、春樹の試合前にテレビ電話で励まして、アドバイスを送るようになってから、成績が戻ってきたと監督は言ってましたからね』
『なるほどぉ、今日は、はい、現地映像も捉えてます、娘さんのさくらちゃんを抱き抱えて、いつものキョーコルームから応援をしてます」
『これはもう期待していいんではないでしょうか?』
どんだけだよ、キョーコルームなんて作りやがって
だいたい、竜ちゃんも大人になってまで、杏子がいないと打てないなんて…さすがの私も予想外だぞ!
あれ?
あゆむんも、そうなったりして
うん、竜ちゃんと似てるからありえる
「ショコたん、お、俺は、ショコたんが見ててくれないと、いい演技出来ないよ、俺の撮影の時は必ず応援に来てくれ、そしたら、俺、俺、チュ、チュー」
「あーん、もう、あゆむん、かわいい!でも、私ストーカーになっちゃうじゃん、チュ、チュー」
「いいよ、一生俺をつきまとってくれ、チュ、チュー」
「しょうがないわね、うちの事務所に移籍しちゃう?あ!旧館の会長室で…ヤン、何言わすのよぉ、もうエッチ!」
とかになったりしてぇ?
ウヒョヒョヒョヒョ
「会長!」
「んあ、あんだよ!」
「顔やばいすよ」
「う、うるさい」
『クァーーーーン』
「あ」私、工藤ちゃん、運転中なのになっち
『打ちましたーーー!左中間に技ありの一発!逆転スリーラン!スリーランモンスターと呼ばれるだけあります!記念すべき400号!そして、今季50号!メジャー8年目での400号到達は大記録です!』
『いやぁ、見事です、相手投手もアウトローに完璧なスイーパーを投げてます、これをもってかれては、たまったもんじゃありません、打った春樹が凄すぎます』
『マークマグワイアを抜いての400号最短到達者になりました!凄い!凄すぎる!』
『残り試合はまだまだあります、これで、今季も50本50セーブ達成が濃厚になりました!』
『冬川さんは…はい、いつも通り号泣して拍手を送ってます』
『ははは、まだ六回で、通過点の記念弾ってだけで、よくあそこまで泣けますよね、尊敬します』
はぁ、もうちょっと、球団にふっかければよかったかな
安かったか?
ここまで、伝説的な記録を作るとは思わなかった
技術とパワーはもちろんなんだけど、一番の武器は竜ちゃんは怪我しない
これが凄いし、記録を積み重ねられる第一の理由
親父の怪我対策メニューを今でもやってる
親父って、凄いんだな、アホで不倫するクソアホだけど、尊敬する、もう隠居してるけど
戦場到着
時間までまだあるので、そのまま車内で試合を見る
『最終回、セーブシュチュエーション、もちろんマウンドには春樹が上がります!いつもの登場曲が流れスタジアムは大熱狂に包まれてます』
『ははは、いいですよね、女性ファンが腰をゆっくりクイックイッと、しながら踊るのが、なんともセクシーですね』
エロ解説者め
『はい、最近は日本の女性ファンの方もよく踊っているのを見かけます』
『え!プハハハ、えっと、冬川さんも、お、踊ってます、けど、なんですかあれ?ロボットかと思いましたよ、ククク、まぁ、かわいいので、許されます、ククク、ロボット、カクカクしてる、ククク』
最近は日本の実況にまでイジられる始末の我が妹
アイツ、野球と演技以外、センスゴミ
過去の冬川京子のクールビューティーのイメージは、竜ちゃんのせいで、完全に崩壊してる
いいなぁ、崩壊しても、世間は普通に受け入れてくれてる
杏子は、いいんだよ、崩壊しても、幸せだから、それに、かわいいキャラでも、杏子は充分イケる
私は無理、崩壊したら、終わる
そう、自分で言うのもなんなんだが、上司にしたい殿堂入りで、豪快がウリの私が、突如ニャンニャン言葉になったら終わる
幸せになれるかわからない、なれなかったら、ニャンニャンして終わるだけ
もう、海外で暮らすか、ひっそりと
『今季のピッチアーセナルが、画面で紹介されてます、特筆すべきは、スプリット、被打率は0割台、ほぼ打たれてません、空振り率は驚異の75パーセント、もうこれは魔球ですね』
『はい、春樹は速いストレート系に90マイル中盤のスプリットが投球の主体になります、そこに20パーセント位の割合で、スイーパーと縦のスライダーをミックスしてきます、しかもゾーン内でどんどん勝負してきます、これは、春樹が出てきたらもうエンディングって、フレーズも大いに頷けます』
『気になる冬川さんが来ていない日のピッチングなんですが、ピッチングの方はあまり変わらずいい成績を残してる印象があります』
『そうですね、ただ、よく呟きながら投げるようになりました、なにを呟いてるのか気になりますね』
『はい、一部メディアは、口の動きを読み取って、楽しんでね、って呟いてると言ってましたね、なにかのおまじないでしょうか』
どうせ、杏子が絡んでるんだろ、なんかいちいち幸せそうだなおい
自分でプロデュースしといてだけど、今の私にはちょっとムカついてくる
『ゲームセットです!最後は101マイルのシンカーをバックドアで決めました!春樹、自身のメモリアルゲームを自分で締めて終了です!そして、チームからの祝福に応えます、オリバーにオジギをされて笑っています』
『冬川さんはまた号泣してますね、よくまだ涙が出てきますね、尊敬します』
ポチ
「さ、行くよー」
「はい」
顔合わせ打ち合わせ現場の会議室に向かう
今日は撮影はないので、そのまま会議室直行でいいのだが、主演の私は最後に入室してくれと言われたので、一旦楽屋で待機
うん、段々落ち着いてきた
まあね、長年女優やってきたからね
しかも大きい事務所の会長だよ?
そりゃスイッチ入る
大丈夫そうだな
コンコン
若いADさんが呼びに来た
「葉山さん、そろそろお願いします」
「はひっ!」
ダメかも
「行ってくる、じゃっ」
「会長!」
「あんだよ!」
「ロボットみたいな動きしてますよ」
「は?さ、さっきの杏子の真似してるだけだし!」
「は、はい」
ダメかも
カチャ
スタッフさんに、ドアを開けてもらい入室
「真壁塔子役の葉山翔子さん入られます!」
パチパチパチパチパチパチ
エスコートされ、会釈をしながら、席へ向かう
高井歩はどこだ、いや、見ないようにしよう
スタスタスタスタ
ドカッ
着席
私の横並びは、監督や脚本家、プロデューサー
いわゆる上座
正面に、キャストさん、技術さん、スタッフさんが座る
椅子の位置を整えて正面を向く
ズドーーーーン
「はうっっ、オ、オホン」
高井歩真正面、あゆむん真正面
ニッ
あゆむんが、微笑んで見てくる
ズキューーーーーーーン
「ハンッッ、オ、オホン」
「翔子さん大丈夫ですか?喉の調子が良くないんですか?」
横に座ってる今はプロデューサーのやまぎっちゃんに心配される
「ほえ?そそそそそうなの、さっき口開けてねちょった」
ねちょったってなんだよ
「翔子さん!」
「なに!」
やまぎっちゃんが、ヒソヒソしてくる
「なんでもなーい」ニヤニヤ
「は?」
くっそ、まずい、このままじゃまずい、初日からやばい
そうだ、ここは演技だ
そう、今この現場もカメラが回ってる、そう、そう思う!
自己紹介が始まる
主演の私から
「真壁塔子」役の葉山翔子です、シリーズの集大成となるこの映画を、是非皆様とより良い作品に仕上げたいと思っております、主演として、至らぬ点もあるかと思いますが、ハンッ!オホン、何卒、皆様のご協力をお願い、い、いたしま、クッ、えっと、よろしくお願いします」
一瞬間があって
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
くっそ、見ないようにしてたのに、ついつい見てしまった
なんとか、ごまかせたかな
って、こんなんで大丈夫か?共演シーンまぁまぁあったよな
あ、でも、オペシーンがほとんどだ
寝たフリしてる相手だからイケるか、医者役でよかった
「翔子さーん」
「なに!」
「なんでもなーい」ニヤニヤ
「は?」
「桐沢龍司役の高井歩です」
あゆむんの自己紹介が始まる
うつむいたまま聞くのは失礼だし、不自然なので、目線はズラして、顔を向ける、ピントもズラす
「翔子さん、目が寄ってる、ククク」
くっそ
「この映画に出演させていただき誠にありがとうございます、シリーズファイナルの重要な役ということで、大変緊張しておりますが、皆様の邪魔をしないようになんとか頑張りますので、よろしくお願いします、それから…」
ん?
「葉山翔子さん!」
「ほえええ?」
「初めての共演となりますが、よろしくお願いします、優しくお願いしますね」ニッ
ズキュンズキュンズキュンズキュン
ドッ
あゆむんの挨拶に会議室内が軽く湧く
みんな私を見る
へ?アンサーしなきゃダメ?
「え、え、え、えっと、優しくしちゃうぞこのやろー」
チョッパーかよ
やっちまった
ドッ
ウケたからいっか
全員の自己紹介が終わり
脚本家から、ストーリーの説明になった
私の手元に置いてある台本をめくり、脚本家の話に耳を傾ける
傾ける
………………!
は?
なにこれ?
事前にデータで送られてきてた脚本と全然違う
真壁塔子と桐沢龍司は元恋人?
え?えええ!
おーい
どゆこと?
ただの患者役だっただろ!
名医を訪ねて来た、有名俳優役だった
でも変わってる
元恋人を頼ってきた、有名俳優役に変わってる
これ、なーんか嫌な予感がしたので、慌てて台本をラストシーンまで焦ってめくる
パラパラパラパラ、パラパラパラパラ
手術は無事成功
退院日に、桐沢の病室で二人はキス
「はーーーー?」
シーン
私の叫び声で場は固まる
「あ、なんでもないです、大嶺さん続けてください」
おいおいおいおいおいー
キス
チッス
チーーーーーーン
なんなら、エンディング中にも旅先でチッス
いやね、私はNG出してないから過去にしたことあるよ
だからキスシーンは余裕のよっちゃん
でも、このシリーズは真壁塔子の恋ネタは一切ないので、今までキスシーンなんてない!
それに…
相手あゆむん
死ぬ
てか、なんで!
なんで脚本が撮影前から大幅に変わってる?
大嶺のオバハンは、脚本を変えたと一言も言ってない
ってことは、私に送られてきた脚本がすり替えられた?
ん?あれ?
私もやったなこれ、杏子に
ま、まさか、この手法やられた?
だ、誰に
ってことは最初から相手役はあゆむんに決まってた?
やまぎっちゃん見る!
コイツが脚本を送ってきてる
まずコイツだ
あれ?
涼しい顔してる
やまぎっちゃんは、顔に出やすい
ってことはシロ?
でも、さっきのイジリが気になる
「ねえ、やまぎっちゃん」
ヒソヒソ質問する
「はい?」
「なんで、さっきニタニタしてたの?」
「はは、いや、このシリーズ初のラブラブ物でキスシーンがあるから、緊張してるのかなって、翔子さん、いつもよりバグってるから面白くて」
「そ、そっか」
マジで意味不明
脚本家の大嶺のオバハンもおかしい、なんで私に相談がないんだ?
いくら映画化とはいえ、この展開の脚本は、普通、私に相談するだろ!
ストーリーの説明も終わり
撮影スケジュールや、技術スタッフとの打ち合わせも終わった
「尚、この映画の主題歌はRINAさんが務めます、まだ製作中です、デモを聞いたんですが、素晴らしい曲、このストーリーにとてもピッタリな曲でした、皆さん楽しみにしててください」
やまぎっちゃんから説明が入る
うん、リナっちが主題歌を務めるのはもちろん知ってる
作詞作曲はゴー助
私が推した
長く続いたこのシリーズの、締めの映画化の主題歌
是非あいつらにやってもらいたかった
夫婦二人セットの初の曲
インディーズ時代はライブハウスとかでやってたみたいだが、二人が有名になってからはお初
楽しみ
コネかもしれないが、あいつらは絶対に良い曲、歌を作ってくれる、やまぎっちゃんの言う通りストーリーに合わせた素晴らしい歌を作ってくれたはず……
ん?
ストーリーに合わせた曲のデモが、既に出来上がってる
ってことは、あの二人もこの脚本の内容を知ってる
キスシーンを知ってる
さっきのリナっちとの事務所の件は、リナっちは全部知っててだったのか
まぁ、それはいい
ってことは、脚本の内容は最初からキスシーンがあり、早い段階で相手役が高井歩に決まってったことが推測出来る
じゃないと、ゴー助がイメージできない
ゴー助は思いつきで作詞作曲をしない、プラン、イメージ、方向性を全て揃えてから作っていくタイプだから
私が相手が高井歩に決まったと聞いたのは二週間前
脚本の事実を知ったのは今
なのに既にデモが出来てる
脚本すり替えられたの確定
高井歩に最初から決まってたの確定
みんなグル?
私が高井歩が相手だと困惑するのを知ってたから?
キスシーンを渋ると思ったから?
にしては、みんな涼しい顔してんだよなぁ、約一名除いて
あゆむん
コイツは絶対に知ってる、グルだ
たまたま選ばれたんじゃなくて、最初から決まってたって知ってる
あの顔は絶対にそう、フンフンルンルン顔
昔から変わってない、あの顔の時はなにか隠してる時の顔
まぁ、かわいいんだけどねー
キュンキュン
くっそ
「私は今まで、この全7シリーズ携わってきました、どれもいい作品でした、そしてこの映画でラストになります、今まで以上の最高の作品にしてみせましょう!皆様よろしくお願いします!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ
やまぎっちゃんの挨拶で会議が終わった
「ねえ、どうゆうこと?送られてきた脚本と違うし、キスシーンとかあるのに、何も相談ないよ、ありえないんだけど」
やまぎっちゃんを詰めるの巻
「え?脚本が違う?身に覚えがありませんけど、それに送ったあと、電話で全部通達して、翔子さんはOKしてるって、返答が返ってきてますけど」
「は?聞いてないよ」
「え?副社長の長谷川さんからOKもらってます、長谷川さんから言われれば、私達は翔子さんも納得してるって思うじゃないですか、逆にどうゆうことですか?」
確かに、このシリーズに限っては窓口はまだ長谷川ちゃんだ、工藤ちゃんではないし、他の社員も窓口になったことはない
長く続いたこのシリーズ、長谷川ちゃんは一作目から私と携わっていたので、勝手がわかるから副社長になった今でも窓口を任してある
「それに翔子さん、大嶺さんと打ち合わせして、脚本を一緒に考えたのスターリバーさんじゃないですか」
「へ?知らん、全然知らん」
「はぁー?」
「てか、この前、予想外の展開で候補に上がってない高井歩に決まったって言ってたけど、それどうゆう意味?予想外の展開ってなに!」
「え!えっとぉ」
やべって顔した、なんか隠してる!
「なによ!」
「ま、そんな訳で、今更出来ませんは無しですよぉ、私、監督と打ち合わせあるんで!じゃっ!」
スタコラサッサー
「おい!ちょっと待って!」
くっそ
「大嶺さん」
「はい、翔子さんどうも、あ!春樹選手かっこいいわよねぇ、この前サンフランシスコに行って応援してきたわ、二試合見ちゃった、そしたら、お会い出来て握手してもらったの、もちろんサインも、もらっちゃった、近くで見てもいい男よねぇ」
「あの!この脚本ってうちの誰と相談したんですか?」
「え!」
ん?このババアもやべって顔した
「うちの事務所の人間と相談したんですよね!誰ですか?」
「うーん、それは私からは言えません、そちらの事務所の人から聞いてください、じゃっ!」
スタコラサッサー
なんだこの展開
トゥルルルー
『はい長谷川です、只今電話に出ることは出来ません、発信音の後にメッセージをどうぞ ピー』
「おい、舐めてんのか?」
『あは、バレちゃったー』
こいつは副社長になっても、おちゃらけは変わらない、マリッペと似てる
「おい、私の言いたいことわかってんよな、どうゆうこと?脚本すり替えてるし、全部長谷川ちゃんの仕業か?あ?」
『えっとー、私は利用されただけでーす、詳しい事はまた明日ってことで、あれ?明日はまだ事務所来れなかったりしてぇ?キャッ、とりあえずはデート楽しんでくださーい』
「は?デート?たたただの打ち合わせだぞ」
『はーい、では明日』
「お、おい」
『会長激おこだったよ、ま、いっか、抱かれて全部オッケーだよね、え?マリちゃん!それ当たり、キャハハハ』
『インターコンチ二名様ご案内〜』
「おーい、まだ切れてねーぞーー!」
『あ、やばっ!』
プツッ
クソがっ!
なんだよ、みんな私と高井歩の関係を知ってるのかよ
なんだこれ、何か踊らされてる気がする
裏でみんなを操ってる奴がいる
長谷川ちゃんじゃない
やまぎっちゃんも大嶺のババアも、長谷川ちゃんが黒幕なら隠さない、隠す必要ない、どうせすぐにわかるんだから
他に黒幕がいる
私を騙して、元彼高井歩と私を共演させてチッスさせようとしてる奴
あわゆくば、恋を復活させようとしてる奴
やまぎっちゃん…山岸プロデューサーと、大物脚本家、大嶺聡子に顔が効いて、黙らせることが出来る人物
なかなかの大物か
ふん
この葉山翔子様に喧嘩売るなんていい度胸してやがる
誰だ!
ん?あれ?
うちの事務所の人間だよね、みんなのセリフを聞くとそうなる
そして、うちの副社長をも手玉に出来る奴
リナっち?
いや、ちがう、リナっちは歌では大物だけど、やまぎっちゃんや大嶺さんは畑違い、顔は効かない、長谷川ちゃんがケツを持つ可能性もあるが、だったら長谷川ちゃんが最初からやればいい
ってか、もうわかったわ
一人しかいねーじゃん
くそ、やられた
やり返されたわ
脚本をダミーと差し替え
そして、キスシーン
私の妹
大物芸能人、冬川京子かっ!
バチクソバカなのに
アメリカにいるのに
どうやって?
更に内通者がいるのか…
そこで、リナっちか…
うーん、違う、違うな
リナっちだったら、自分でどうにかしてやる、バチクソバカを使う必要ない
はぁ、とにかく、妹に踊らされるとは…
「ショコ、どうした難しい顔して、なんか悩んでるのか?」
「ほええ?」
高井歩くん目の前
「あ、いや、その、よっ!ひ、久しぶり」
「うん、久しぶり、もしかして相手役、俺じゃない方がよかった感じかな、残念だけど、ショコが嫌なら俺降りるよ」
イラッ
「はあ?何言ってんの?じゃあ私が別の人とキスしてもいいわけ?なによそれ!嫌なわけないじゃん!あ、そっか、あゆむんが私とチッスしたくないんだ、昔は、あんなにベロベロしてモゴモゴモゴ、ベロベロ」
口を塞がれたん、塞がれた手をベロベロした
「ショコ!」
「なによ!ババアになったから?ババアになったから?」
「ち、違うって落ち着け!」
「落ち着いてるよ!じゃあどうなのよ!わわわわわわわたしとチュチュちたい?」
「ショコ、もうグチャグチャになってるよ」
「あゆむんが変なこと言うからでしょ!夜はもっとグチャグチャしちゃう?とか言って?ウヒョウヒョウヒョ」
「ショコ!」
「なによ!じゃあ前みたいにショコたんって呼んだら許す!」
「ショーーーコ!」
「あんだよ!」
「お願い周り見て」
「ん?」
シーーーーーーーーーン
まだ残ってた人、全て固まる
「あ」
「どうすんだよこれ」ヒソヒソしてくるあゆむん
やった
かなりやった
そう、私はこの人を前にするとポンコツになってしまう
しかも、杏子よりも酷い
興奮すると、もう何がなんだか、わけわかめになってしまう
「えっとぉ」
「あはは、葉山翔子さん!昔の舞台作品覚えててくれたんだ?よくフリに気づいてくれました、ありがとうございます」
「へ?」
「シッ」
「すいません、皆さん、驚かせました、実は昔、葉山翔子さんが、私が以前お世話になってた劇団に飛び入り参加してくれたことがありまして、その時の劇中のやり取りが今のだったんです、覚えてるかなって、ちょっと悪ふざけしてフッたら、しっかり乗っかってくれました、いやぁ、葉山翔子さん、素晴らしい」
ん?あ、なるへっそ
「わっ!そそそうなんですぅ、もう、たた高井さん、ビックリしちゃうじゃないですかぁ!」
なんとか持ち堪えて、あゆむんのフォローに乗っかる!
「なんだぁ、ビックリしたぁ」
「でも、ショコって呼んでなかった?」
「アレンジしたのか?そっか飛び入りだから、名前も変えてお客のウケ狙ったのか」
「なるほどぉ」
「でも、最後の方もセリフか?周り見ろまでセリフ?セリフか、さすが二人とも演技うまいな」
みんな、なんとか納得してる
ほっ、よかった
あゆむん、さすがだ、頭の回転の早さ、そして優しさ変わってない
チュキチュキ
「いやぁ、葉山翔子さん、頭のおかしい女性を演じるのもうまい!」
あゆむんがほざく
イラッ
「は?頭のおかしい?頭のおかしい?言ってくれんじゃん!その頭のおかしい女を散々抱きまくったのどこの誰よ!」
「もう知らね、帰る」
「へ?ちょっと待って、待って、横浜は?横浜、ねーえー、うっそ、頭おかしくていいから、怒んないでよぉ」
「はいはい」
シーン
「あ」
そう、私はこの人を前にすると、やばいくらい頭がおかしくなる
私、45だぞ、どうなのよこれ
恋愛を全くしてこなくて、歳を重ねると、ただただ痛い女が出来上がる
「ははは、翔子さん、頭のおかしい役上手いですねぇ、そっち方面もイケるじゃないですか」
「よっ、アタオカ女!上手い上手い!」
みんな、あまりの私のギャップに本気で演技だと思ってる
助かった
でも、こっちは本気なので、私がアタオカ呼ばわりされてるみたいでなんかムカつく
「では、失礼します、じゃっ!」
またボロが出ないうちにズラかる!
チーーン
楽屋で落ち込む
テーブルに突っ伏してうなだれる
これ、今日はなんとか切り抜けたけど
この先、どうなんのよ
ここまで酷いとは自覚なかった
恋愛してこなかったツケが回ってきてる気がする
恋愛してくれば、まだマシになってた気がする
「会長大丈夫ですか?」
「だめ」
「なにかあったんすか?」
「あった」
「まぁまぁ、ほらこの後、楽しいお食事じゃないですか、元気出してくださいよ」
「うん、そうだね」
ん?
「工藤ちゃーん、なぁに楽しいお食事って?ただの打ち合わせなんですけど」
「あ!そうでした…間違えました」
四角いコイツもやべって顔した
「工藤ちゃん、シッダウン!」
「ヒッ、じじ自分はなんにも知りませんて!」
「まだなんにも言ってねーよ!工藤ちゃん、何が起こってる、あん?ゲロしろ」
「会長、俺は会長に頭上がりませんけど、杏子ちゃんやリナにも頭上がらないんすよぉ、勘弁してください」
「わ、わかったよ」
ま、もうコイツはもういい
有力な情報をくれたから、もう用無し
なるほど、あいつらか
「会長、ご機嫌斜めなとこ申し訳ないんですけど、デート会場にそろそろ行かないと」
「デート?エヘヘヘ、あ、オホン、工藤ちゃん開き直るな!」
「はいっ、デレデレしたくせに ボソッ」
「なんか言ったか?」
「いえ、なにも」
いざ楽屋を出てデート会場へ アハ
さっきの失敗はとっとと忘れて、ルンルンで向かう
うん、B型最強
ルンルンテクテク
ん?あれ?
少し遠くの廊下を横切った人物を見た
知ってる顔、よーく知ってる顔
え、なんでここにいる?
誰の連れ?
ま、まさか…
当たりだと全部繋がる
杏子の内通者はコイツだ。




