番外編 葉山翔子の異変
♫ ♫ ♫
ポチ
「はーい、もっしもーし、やまぎっちゃん、おっつ〜」
「え?うん、オッケー、ホンもある程度読んだよー、主要キャストは変わりなしだね」
「あー、そっか、患者役ね、中年男性だよね、誰になったの?候補けっこう上がってたもんね」
『高井さんに決まりました、ビックリ、候補に上がってなかった高井さんですよ、予想外の展開で決まりましたね、まぁ舞台上がりの演技派ですから、翔子さんもやりやすいんじゃないですかね』
ん?
高井?
高井?
「ほえぇ?」変な声出た
「え?え?名前もう一回、フルネームで!」
『何言ってんですか翔子さん、高井さんて名前の人、売れてる役者さんで他にいないじゃないですか、高井、アユムさん!高井歩さんですよ!」
!
「え、ええ?えーーーーーーーーーー!」
ガタッ!ガシャガシャン
「イッタ、真面目にイッタ」
まぁまぁの痛さにピョンピョン跳ねる
ソファーから飛び起きたら、テーブルに足にぶつけてテーブルの上の物が全部落ちた
コンコン
「会長〜大丈夫ですか?すんごい音と悲鳴みたいなの聞こえ…あ、会長が悲鳴なんてあげるわけないか」
おい
「だだだだ大丈夫〜、ちょちょちょっと足滑っただけ〜」
「気をつけてくださいよ、もう若くないんですから」
殺す
「あ、もしもし〜、え?なななななななな何言ってっんだよ、動揺なんてししししししししてないよ」
落ち着け私、落ちついて、やばいよ、ボロでちゃうよ
スーーーハーーーー
スーーーーー、ハーーーーー
「あ、ほらぁ、共演初めてだから、ビックリしただけだよ、ま、候補にも上がってなかったし、え?NGなんて出してないよ、たまたまたまたまたまたま、たま?だよ、たまたま、共演してなかっただけ、え、顔合わせ?そっか顔合わせね、ウフフ、いつだっけ?オッケーーー、楽しみぃ〜エヘ……あ……じゃっ!」
ポチ
ふぅ〜、やっちまった
やべぇ、やっべぇぞ、マジでやばい
えらいこっちゃ、えらいこっちゃ、えらいこっちゃ
えらいこっちゃ祭り
私の芸能人生終わるかも
モデル、女優歴三十年の現在四十五歳
ここまで、順風満帆
そりゃ、苦労はあったけど、今思うと大したことない
本業の他に竜ちゃんと杏子のプロデュースや、他の人のプロデュースも上手くいって、ウハウハの人生を歩ませてもらってる
ナベ(渡辺社長)と、長谷川ちゃん(副社長)と三人で始めたこの芸能事務所は、今は巨大化、業界トップクラス近くになってきた
私自身の長年の夢、ブロードウェイのミュージカルにも出演して、主演を務めることが出来た
そして長年、私を支えた、私主演のドラマシリーズも、今度の映画化でファイナルを迎える
あとは、ご隠居生活
今のところ決まってるのは、ミドル向けのモデルと、ドラマのゲスト出演くらい、ブロードウェイからまたオファーがきたらわからないが、悠々自適な生活を送ろうと思ってた
女優を辞めるつもりはサラサラないが、ガムシャラに仕事を取る必要は全くない、ナベにもそう伝えてある
竜ちゃんと杏子は大型契約に守られて勝手にやってる、勝手にCMがじゃんじゃん決まる、もう手はかからない
そう、全て夢を叶えた私は、あとは平穏に暮らすだけ
だったのにーーー!
最後の最後できたよ、ピンチが大ピンチが!
そのドラマシリーズ、毎回注目されるのが、患者役とゲスト出演枠の医者役
で、今回映画化
ゲスト医者役はいい、ほっとく
患者役
高井歩
現在五十歳の早生まれ
ちなみに本名
小学生の時に子役デビュー
天才子役ではなく、ちょい役で出てた
おそらく、記憶にある人はいない
高校に入ると、劇団を辞めて俳優の世界から消えた
高校卒業後、運送会社に入り、けん引免許を所得後は父親と同じ本牧の勤務先に勤める
その後、本人が三十歳の時に運転手を突然辞めて、小さい劇団に所属して、バイトしながら舞台俳優を頑張った
甘い、あまーーーーい、ルックスと、演技力でテレビにも呼ばれるようになり、今は有名俳優
主演こそ少ないが、重要な役を務める事が多い
独身
なので、そのあまーーーーーーい、マスクで女性に大人気
五十になった今でも、おばちゃんから、ギャルにまで大人気
でも、恋人ネタゼロ
ホモ説が上がるほどだった
なぜ、詳しいか、そりゃ、ググれば出てくる
でも、私は違う、昔から隠れて調べてる
でも、高井歩が出演してる、ドラマや映画は見たことない
たまたま、つけたテレビに映ることがあった、慌ててチャンネルを回した
見ることが出来ない
フラッシュバックしそうで怖いし
キスシーンや、ラブシーンなんて見たら
私、寝込む
そう
高井歩
私の大好きだった元彼
交際は順調だったが、私がモデルと女優で売れ出し、少し格差が出始めていた
高井歩はその時から、言っていた
ショコは有名になる、俺はふさわしい人間にならないと、三年、いや、五年時間くれ、子役だったスキルを活かして、俺、もう一度俳優を頑張ってみる!
って
でも、そのタイミングで子供ができた
私は、黙って堕して、それを言わないまま、別れを告げた
私は、モデル、女優業を頑張る、恋人と遊んでる暇がなくなってきた、もう無理かな、続けていくの、さよなら、新しい恋人見つけて、俳優やるなら、私に構わず頑張ってね
って
辛かった
でも、そうするしかなかった
別れるしかなかった
命奪って、付き合い続けて、また出来たらどうするの?
この人の子供を勝手に堕して、のうのうと付き合っていける?
命奪ってまで続ける女優業
その女優業を極めることで、私のした事は少しでも許されると思ってきた
女優業を極めるのに、幸せは邪魔
家庭という幸せを捨てて、選んだのに
幸せしちゃだめだろ
そこからタイミングよく、私は猛烈に忙しくなり
女優業に没頭し、そして、竜ちゃん達のプロデュースに全力を尽くして、奔走してきた
とはいえ、忘れられる訳もなく
とゆうか、俳優で這い上がってくるとは予想してなかった
実際、その名前、顔をテレビで見るまでは、忘れることがなんとか出来てた
でも、俳優で売れ出してしまった
そこから、隠れて追っかけてた
うーん、知らず知らずのうちに追っかけてたが正解かな
共演なし、テレビ局や撮影所でも会ったことなし
共演なしの理由はわかっている、高瀬の弘美さんが私達のことを知ってたから、おそらく上手くやっててくれた
自分で事務所を開いてからは、自分で調整出来たので、共演はなかった
そもそも高井歩は、若い時はキュンキュン系、今は時代劇やバイオレンス系が多い
私と被るハズがない
なので、油断してた
この映画のキャスティングには、私は物申せる
実際、竜ちゃんと杏子を私の意向で出演させることになった
前にドラマに一話だけ出てもらった
もちろん大バズリ
今回もやつらの力を借りる
まぁ、でも杏子は産後明けの復帰作、あまり無理できないし、竜ちゃんもトレーニングがあるから、二人ともちょい役、悪いけど客寄せパンダ
で、他はなんでもどーぞ、にしてた
失敗した
候補に上がってたら、自分で選べた
でも候補に上がってなかったんだもーーん
ズルい
局などで会わなかったのはたまたま
まぁ、たまたまだけど、なんとなくわかる
役どころ、キャラ的に、ニアミスすることはない
それが、ホッとしてるような、残念なようなだった
私がここまで焦る、避ける、理由
それは、会ってしまうと、私のキャラが崩壊しそうだから
それを、他の人に見られたくないから
もちろんだいぶ昔の話だし、お互いもう大人だから、普通に接すればいい
堕胎のことは今更報告する必要はない
普通に接すればいい
が、出来なさそう
もう、オッサンオバハン
色めき立つわけない…だろ
でも、自分のこのあわってっぷりで自覚する
これは、私の悪い癖が発動される気がする
発動されたら、今ままで築き上げてきた葉山翔子のキャラは崩壊する
女優葉山翔子が崩れる
会長葉山翔子の威厳が全くなくなる
そうなると、私は本当に隠居生活
ただただ、おばあちゃんになっていくだけ
私と杏子は色々似ている
そう、杏子のアレも当然、私の血を受け継いでる
でも、杏子はいい、それが通るキャラだし、発動されるのは変なトリガーを引いたときだけ
でもでも、私は違う、ずっとトリガー引きっぱなしになってしまう
本人を前にすると、撃たれっぱなし
だから、会いたくなかった
しかも共演?
死ぬって、終わるって
パシッ、パシッ、パシッパシッパシッパシッ
自分の頬を両手で叩いて、自分に喝を入れる
もう、いい大人だろ、この歳で大御所感出ちゃってるんだぞ、舞い上がるな私
恋なんて復活するわけない
認めたくないけど、もうオバハンだぞ
落ち着け、落ち着け
平静を保て私
うん、大丈夫、きっと大丈夫
ん?待てよ?
どうぞ隠居生活なら復活もあり?
子供を作らなければ、そろそろ私も幸せになっていい?
いやいやいやいやいやいや
ダメだろ、うん
そもそも、あゆむん…オホン、歩がどうなのかわからん、撮られてないだけで、他に良い人いんだろ
いなかったら?
あーーーー、もう!
コンコン
「は、はいよー」
「工藤です、ちょっとよろしいですか?」
「どうぞー」
ガチャ
工藤ちゃんが入室
工藤ちゃんは、今はマネージャー兼、付き人荷物持ち兼、新館休館のラーメン担当
新館の一室を改造してプチ社内食堂にした
工藤ちゃんと、杉ちゃん(宮杉、スケ担)が作るラーメンは最強にウマイ
リナっちが作る和定食も死ぬほどウマイ
マリッぺ(オノマリ)の時は、食う側がヒヤヒヤする、たまにやらかすので怖い、この前はクソ辛くて口から火が出た
だけど、そのドキドキ感がたまらないのか、社員には好評だ
「会長、顔合わせの日の件は山岸さんから連絡きましたか?」
「うん、オッケーだよ、スケジュールも大丈夫だもんね」
「で、高井歩さんの件もご確認済みですか?」
「え!えええ!何をご確認?私が確認?え?知らないよ、でも独身なんだから、相手の一人や二人はいるかもだけど、わわわ私には関係ないよ、フン」
「はい?いや、高井歩さんがキャスティングされた件なんですけど?」
「おおおお、おー、そっちか」
どっちだよ
ダメだこりゃ
「うん、ご確認されちゃってるよ、さっき、やまぎっちゃんから聞いたよ」
「了解です、会長大丈夫ですか?なんか汗かいてません?」
「へ?いや、その、暑いよね」
「いいえ」
くっそ
落ち着け、水飲もう
「会長!」
「なんだよ!」
「キャップ開いてませんよ」
「わっ!」
「大丈夫ですか?何か変なもんでも食いました?」
こ、こいつ、今すぐ全額金返せ
「で、何よ、顔合わせの日?たた、高井あゆむん、歩がどうした?」
「あーはい、高井歩さんのマネージャーさんから連絡ありまして、顔合わせの日、そのあと二人で打ち合わせしたいとのことです」
「ふーん、え!ん?んんんん?」
「あ、もちろんお互いのマネージャー同席なんですけどね、まぁお断りでいいですよね?凄いすよね、葉山翔子に二人での打ち合わせお願いしてくるなんて、ダブル主演でもないのに、なかなかの猛者ですよ、この高井歩さん」
「ちょい、ちょいー待った、ちょい待った、まだ断ってないよね」
「あーはい、一応は会長に聞いてからだと思いました」
さすが工藤ちゃん、これが長谷川ちゃんだったら待ったなしで断ってる
昔からそうしてきたから、男性と二人で会うのは全て却下してきた、マネ付きでもね、工藤ちゃんもそれは長谷川ちゃんからレクチャーされてる、でも、色々見てきたんだな、工藤ちゃんは先走らない
でかした工藤ちゃん!金もう返さなくていい
っておい、何言ってんの私
ま、ファイナルの映画だからね、初共演だし、打ち合わせしないとね!
工藤ちゃんの前で発動したら、金で解決しよ
「で?お断りでいいんですよね?」
「あのーそのー、オーケーしよう!うん」
「はい?マジすか?」
「いや、ほら、たぶん本人不安なんだろ、これがこのシリーズファイナルだしね、迷惑かけたくないとかだろ、私もこの映画で主演映画はラストかもしれない、今回ばっかりは受けて、しっかり打ち合わせするよ」
「いやぁ、それがですね」
「あんだよ、まだなんかあんの?」
ま、打ち合わせ以上のことはさすがにねーだろ
はぁ、打ち合わせかぁ、久々だなぁ、あゆむんと会うの
緊張しちゃうぜ、このやろーー!エヘヘへ
「なんか、高井さん側から挨拶が終わったら二人にしてくれって言われました、向こうが場所押さえて、個室二つ取るから、俺らマネは別室待機してくれって、これはさすがに…っすよね?」
「ほえぇ?」変な声出た
「俺も聞いたんすよ、そこまでする?的な?したら、なんか、大昔にもらった物のお礼をしたいから、恥ずかしいから二人にしてくれですって」
「ガチ二人っきりってこと?」
「そういうことになりますね」
チーン
死ぬ
腰の力抜けた
パタリ
ソファーになだれ倒れる
「会長?やっぱり変ですよ、どうしました?」
「あ、大丈夫大丈夫」
「会長、高井さんに大昔に、何かあげたんですか?繋がりあったんですか?」
「いや、わからん、大昔に会ったのかな、忘れちゃったよ」
本当にわからない、何かあげたか?
ちょこちょこ、誕生日とかにプレゼントあげたけど、大した物は上げてない
大した物を上げれる金は既にあったけど、私は気を使った
マジでなんだろ
「どうします、断りますか?」
「いや、二人っきりになるのは、そのお礼をもらってる間だけだろ?いいよ、私も気になるし」
「わかりました、じゃあ受けちゃいますよ?」
「うん、そうして」
「じゃ、一旦失礼します、お大事に」
「おーよ」
お大事にってなんだよ…
って、おいおいおいおいおいー
大丈夫か?二人っきり?
え、え、え、どうなっちゃう?
何をあゆむんは企んでるの?
アイツは、気をまわさないタイプ
女心なんて関係ない、思ったことをそのまま行動に移すタイプ
そう、竜ちゃんと似てるのは顔だけじゃない
そんなアイツが何か企んでる
楽しみ、楽しみだぞー、うふふふ…は!
くそ、認める、たぶん私はまだ好きかも
なんで俳優やってんだよ
そのままトレーラー転がして、幸せな家庭を築いててくれればいいのに
私と別れたんなら、格差気にする必要なかっただろ
売れたからいいけど、鳴かず飛ばずだったらどうしてたんだよ
なんで、同じ業界にいて、しかも独身なんだよ
忘れること出来なかったじゃん!
私が他に行かなかったのは、堕胎だけのせいじゃない
高井歩を忘れられなかったからかもしれない
それに、越える人が出てこなかったから
実際、越えてきそうな春樹竜斗と出会った時にズキュンきた
でも、竜ちゃんは歳が離れ過ぎだし、それよりも妹杏子に会わせたいのが勝った
幸せになっちゃいけないと、自分に足枷をつけて、恋心は封印してきたつもりだった
けど、結局は私も女、竜ちゃんやあゆむんの前ではその足枷は外れそうになる
さて、どうなることやら
とりあえず、服買うべ
あ、下着も新しいの買っちゃう?
あゆむん好み変わってないかなぁ?
だとしたら、新調しないとね、アハ
「ショコ、ホテルを取ってある、この後付き合ってな」
「え!もう!そうゆうところ変わってないね、私の気持ち聞いてからじゃない?この後付き合ってくれる?じゃないの?」
「え?じゃあやめとく?」
「行くに決まってるでしょ、行く行くー」
「ショコ、歳を重ねても綺麗だね、俺の好みも覚えててくれたんだ、燃えちゃうよ俺、五十だけどまだまだ元気だよ」
「もう!あゆむんのエッチ!でも、身体のラインはまだ自信あるよん、ほら、どうぞ召し上がってちょんまげ!」
とかになっちゃたりしてぇ?
ウヒョヒョヒョヒョ
ダメだ、既に発動してる
運命の顔合わせ当日
ソワソワソワソワソワソワソワソワ
ウロウロウロウロウロウロウロウロ
も、もう時間かな
ガチャ
新館会長室を出て、オフィスルームに向かう
「おーす」
「あれ、会長、まだ早くないですか?出発まで一時間位ありますよ」
「あ、そうか」
「珍しいですね、いつも時間ギリなのに」
「う、うっさい、あれ?工藤ちゃんは?」
「下でラーメンの下準備してますよ」
「そか、じゃあ待つか」
「会長、なんかいつもより化粧濃くない?」
「え、あ、ほんとだ」
「男出来た?」
「まっさかー、それだったら、世界終わるわ」
「確かに」
「目パキッてないか?」
「ふふふ、本当だ、いつもの目力が違った方向に向いてる」
「ウケる」
「おーーーーい、全部聞こえてるぞー」
「聞こえるように言ってるんですよ!会長ここんとこおかしいから」
「うっ」
やべぇ、こりゃバレるの時間の問題か?
いや、平気、うん平気
確かに二人っきりでの打ち合わせ、お礼参りを聞いた時は舞い上がった
でも、そこから二週間くらい経ったら、落ち着きを取り戻した
まあね、全く恋をしてなかったからね
舞い上がっても仕方ないよね
でも、今はスンッてなってるから大丈夫
高井歩もお礼を返したいだけ
予習もしてきた
高井歩の最近の映画を見た
初めてみた演技
殺し屋映画の敵のボス役だった
ちゃんと見れた
恥ずかしがらず最後まで見れた
カックイイ、キャーとはなったが
ズキュンはしなかった
ちゃんと視聴者として観れた
よし、大丈夫
ソワソワしてるのは、昔の元彼と再会するから
再会するだけ
そりゃ、みんなソワソワするでしょ?
再会して、共演して、撮影終わったら、また別々の道を歩む
昔のことなんて忘れて、演技するだけ
女優歴長いんだから、余裕のよっちゃん
「おっは〜で〜す」
くっ、やっかいなのが来た
リナっちだ
そそくさ
影に隠れて、誰の席かわからんけど座る
「リナちゃーん、おっつ〜、一奈ちゃんもこんにちは、二奈ちゃん、相変わらず可愛いねぇ」
長谷川ちゃんが応対してる
「ん?ショコさん、なんでそんなとこで隠れてんの?」
チッ
「か、隠れてねーよ、工藤ちゃん上がってくるの待ってんの」
「ふぅーん、あれ?マリさんちょっとこいつら頼む」
「はーい、って、うちの楓もいるし大変なんですけど」
スタスタスタスタスタ
リナっちがこっちに来る
やべぇ、コイツはだめだ
「ショコさん、何その服、スポンサー以外の服着るなんて珍しいじゃん」
「え、そ、そうかな、気分転換、気分転換だよ」
「ふぅ〜ん」ジロリ
「な、なんだよ」
「化粧濃くない?」
「へ?なななな何言ってんだよ、あ、暗い所で化粧しちゃったからなぁ」
「怪しい」
「怪しくねーよ」
「今日撮影じゃないんだよね、だからそこまで自分でビッチリ決めてるんだよね」
「そ、そうだけど、ビッチリは決めてないよ」
「ふぅ〜ん」
私の顔を舐め回すように見てくるリナっち
「あれれ、女の顔になってるぅ、ウケる」
「は?」
「男だ」
「はーーー?」
「男だ男だ、わっしょい」
くっそ、コイツの嗅覚はとんでもない
今一番会っちゃだめな奴だろ
「なな何言ってんだよ、そもそもリナっち、なんで毎日当たり前のようにうちの事務所来てんだよ、お前他事務所だろうが」
「は?散々こき使っておいて、それ言う?この事務所大きくなったの、少しは私のおかげじゃない?」
全くもってその通り
リナっちの働きがないと、竜ちゃん達はあそこまで価値は上がってない
「それにさぁ、他事務所って言うけど、本当はここだよね私、スターリバーが間をマージンで取ってたのは早くに気づいたけどさぁ、それ工作してるよね、レコード会社所属って形にすれば仕事取りやすい、だから名前だけ借りてる、間を抜いてたのは、スターリバーじゃなくて、レコード会社、違う?」
くっそ
「ズボです」
「ほらぁ、マージンと、ギャラのパーセン手数料じゃ偉い差だもんね、それに歌の売り上げ、しっかりウチで儲けてんじゃん、文句言わせねーよ」
「はぁーい」
なんなんだよこの洞察力
私の上いってるだろ
次期社長はリナっちでけってー、だろ
「ラーメンの準備出来たので、食べたい方はどーぞー、宮杉と高橋さんがスタンバってまーす」
「やったー、ありがとうございまーす」
工藤ちゃんがキタ
リナっちの詰めから逃げれる
「お、工藤ちゃん来たから行くわ、またねリナっち、この後は、いくら居てもいーぞ」
「怪しい」
「よし、工藤ちゃん行くぞ」
「え、早いですよ、まだナチが車を洗車してます」
「は?」
「え?会長が洗車しといてくれ、中も綺麗にって言ったじゃないですか」
「あ、そか」
しまった、もしかしたら、うちの車で移動するかもしれないから、洗ってもらうことにしたんだった
って、普通そんなことにならないだろ
何やってんだ私
「工藤さん、ショコさんの今日のスケジュール教えて」
「え?あそこのスケジュール表、見に行けば載ってるよ」
「だめ、人多すぎ、ここでこっそり教えて」
「え、意味が」
「いいから!」
くっ、リナっちは完全に気づいてる、私の異変に
スタッフだらけの前で見ると、私を詰めれないからだ
終わった
いや、リナっちは高井と私の関係を知らない
それに、竜ちゃんにズキュンしたことあるのも知らない、そこだけは隠してた
こりゃ逃げれるかな
「ほほう、なるほどねぇ、打ち合わせか」
気づくとリナっちは、もう工藤ちゃんのアイパッドを見てる
コイツは行動も早い
「あれれ、高井歩さんと二人で打ち合わせ?ん、あっ!」
「どうかしたの?」工藤ちゃん
「いや、なんでもない、ん、んん?このグランドインターコンチネンタルホテル横浜ってなに?」
「あー、ほら、二人の打ち合わせの場所が横浜なんだよ」
「え?みんなの打ち合わせは東京なのに?」
「うん、向こうが指定してきたからね」
「ふぅーん、で、ホテル押さえてるの?しかもインターコンチ?なんで?次の日何も入ってないじゃん」
「あー?なんか会長がお酒飲んだらキツイから、ホテル押さえてくれって」
「は?ショコさん飲むの?てか、飲んでも酔うまで飲まないじゃん、しかもなぜみなとみらいのホテル?打ち合わせ場所からは、離れてるよね」
「それは俺に言われても」チラッ
私を見てくる工藤ちゃん
「そ、そそれは、あれだよ、最近歳だからだよ、あとほら、ホテルは適当に選んじゃった」
「ショコさん、シャラップ!」
「はい」
ポチポチポチポチ、ポチポチポチポチ
スマホを連打するリナっち
「なるほどねぇ、そっかそっか、全て繋がった」
なに?
「二人の思い出の地、横浜をチョイスねぇ、やるねぇ」
「はうっ」
やばい
「工藤さん、ごめん、一奈のラーメンよそってきてくれないかな、お願い」
「お、いーよ、いつものお子様ラーメンね、了解」
工藤ちゃんが席を外す
「ショコさんの元彼って高井歩さんじゃん?」
「はい?」
「前にキョウちゃんから聞いた、まぁキョウちゃんはそれが高井歩さんとは気づいてないから安心しなさい」
「え?ええ?」
「涼子ママが、酔っ払って口滑らせたって、えっと大河の徳川秀忠役が、ショコさんの元彼って言ったらしいよ、ほら、これ、高井歩さんじゃん、キョウちゃんはバチクソバカだから、気づいてない」
くっそ、なにやってんだよ、クソ母親
母親は付き合ってたのは知ってる、母親が一時帰国した時に紹介したことがある、堕したことは言ってない
竜ちゃんには、酔っ払ってしゃべったが、アイツは絶対に言わないし、相手が高井歩とは言ってない
まぁ、バレてるならしゃあない
あとはどう逃げるか
「はい、元彼です、その通り」
「んとー、高井歩さんは独身じゃん?恋の炎がまた燃えちゃった感じ?」
「ババババカ、何言ってんだよ」
「あれでしょ、二人っきりで、打ち合わせと言う名のラブラブイチャイチャしてぇ、その後インターコンチか?お洒落な三日月ホテル、高級ラグジュアリーホテルでムードムンムン、エロっ!」
「は?そんな訳ねーだろ、連絡先も知らないのに」
「ま、そうだろうね、そこは想定内、でも、ちょっと期待しちゃってぇ、思わずホテル押さえたでしょ?」
ギクッ
「やっぱり〜」
「ち、ちげーよ、元彼だけど、今は全然好きじゃないし、タイプでもない、大昔のことだよ」
「は?その格好にその化粧、やる気マンマンなのに?」
「それはたまたまたまたまたまたまたまちゃん」
「たま多いな、本気で私をごまかせるとでも?」
「ごまかすも何も…」
「ふぅーん、じゃあなんで、ハルちゃん見た時、ズキュンきた?タイプだからだよねぇ、ハルちゃん高井歩さんに似てるもんねぇ」
え?ええ?なんで知ってんだ
「なんのこと?」
「もういいから!ショコさんは、ハルちゃんとキョウちゃんのスパイを私にやらせてた時にさぁ、全部情報くれてたじゃん?なのに、計画のスタートのところだけ、教えてくれてなかったんだよねぇ、不思議だった、それは涼子ママも言ってた」
「だからてっきり私は、最初はハルちゃんもキョウちゃんも別々のプラン、でも二人がいい感じになったから、セット販売に切り替えたって思ってた」
「いや、その通りだよ」
「違うよ、ショコさんとハルちゃんは、キョウちゃんが帰国する前に共演してる、そこでズキュンきた、からの、私には年齢的に無理、あ、私が惚れるなら、杏子も惚れんじゃん?だったら杏子を桜水野球部にぶち込んじゃえ、トニオ使うか、でしょ」
「うっ」
「おかしいんだよぉ、別々のプランなのに、なんで、わざわざ面倒くさいことして、キョウちゃんを桜水の野球部に入れたのかが、ずっと疑問だった、だって、そんなことしなくても、どうせキョウちゃんを女優やらせるためだけに帰国させるなら、芸能コースがある所のが楽じゃん、なのにそうしなかったのは、二人は出会って恋に落ちるのがわかってたから、だから桜水の野球部に入れた、最初からセット販売の構想が出来てた、でしょ」
「うっ」
「結論!ショコさんは高井歩さんのことがだーいすきだった、死ぬほど好きだった、でも、なんかの理由で別れた、まぁおそらく若気の至りかな?で、それを引きづりまくり、ハルちゃんと出会い、ズキュン、それはやっぱり、高井さんがどタイプだったことを証明する、で、まさかのここにきて、共演、再会、ショコさんは自分の夢を叶えたから自由の身、そりゃ、さすがのショコさんも頭おかしくなるよね」
「うっ」
何も言えない
チーン
「ショコさん、誰にも言わないから、安心せい、遠慮なくイチャコラしてこい」
「んな、私にだって立場があんだよ」
「知らねーよ、そんなの、自分のことプロデュースせんかい!アホンダラ、みんなを幸せにしたんだから、今度は自分の番だよ」
「でもでも、あゆむん、歩、あゆむん、は、どう思ってるか、わからないよ」
「大丈夫、あのルックスで今まで独身、熱愛報道全く無し、そして今回誘ってきてる、きっと待ってたんだよ、ショコさんが全て夢を叶えるのをさ、そっと見守ってたんだよ」
「そ、そうかな」
「高井歩さんもきっとわかってる、ショコさんがなぜ独身なのか、なぜ熱愛報道がされないのかをね」
「もういいんじゃない、自分の気持ちに素直になっても」
「リナっち、ありがとう」
リナっち、神かも
「ギャハハハハハ、いい歳こいてあゆむんってなんだよ!ウケる!」
「は?」
「え、まさかの姉妹揃ってお花畑?ポンコツ?ポンコツ姉妹!ウケる!」
殺す
「ねぇ、ショコさん、結婚記者会見とかで、チュキチュキだーいチュキ、ねえ、チューしてぇ!は、マジ勘弁ね、マジ引くし、親泣くぞ、フリじゃないよ」
「は?そそそそそそぞそんなこんも!言うかよ、べべべつにチューしたいとか思ってないし!いやね、どうしてもチューしたいってあゆむんが言うなら、チューするよ、チューくらい余裕だし、女優だよ、チューなんて朝飯前、チューなんて挨拶だからね、会見でチューなんてよくあんだろ」
「ねーよ!てか何回チューチュー言うんだよ、歳考えろ、てかそんなこんもってなんだよ、どんだけポンコツかますんだよ、ある意味バカキョンよりヒデーわ」
うー、杏子、お前すげーな、よくリナっちと親友やってるな、コイツに弱味見せたらこーなるのか、身に染みた
「ショコさん、下着新しく買ったんでしょ、さっきからチラチラブラ紐見えてるよ、ブラチラ作戦?ウケる、歳考えろ、ギャハハハハ」
殺す、コイツクビ
「ショコさん、恋に年齢なんて関係ないよ、大丈夫、みんな祝福してくれるって」
「う、うん、ありがとう」
クビ撤回
「姉妹そろってちっぱいなのに、なんでか、悩殺を挑もうとする姉妹、マジウケる」
「は?Dあるし!ちっぱいじゃねーよ!」
「姉妹揃ってなぜかDと言い張り、盛る、マジウケる」
こいつやっぱりクビ
「会長、そろそろ行きますよ」
工藤ちゃんが戻ってきた
「お、おう」
「ちっぱいファイト!」
「お前クビ」
「へいへい、じゃバラすか」
「うっそ、うそうそ、リナたーん、行ってくるね」
葉山翔子出陣
「リナちゃーん、ありがと」
「いえいえ、あのたぬき女帝、ケツ叩かないとダメだからね」
「ほんとそれ、みんなにバレてないとでも思ってたのかなぁ」
「シゴデキウーマンなのに、男性関係になるとダメダメとはビックリだよ」
「今後どうなるかね?楽しみ」
「ま、あとは相手が上手くやるっしょ」
「そうだよね、会長には幸せになって欲しいなぁ」
「工藤ちゃーん、私、ここんとこ変?」
「変です」
「即答かい」
「はい、でも、なんか、楽しそうな変なので、いいと思いますよ」
「そっか」
楽しそうな変…か
私が幸せになる番…か
いやいやいやいや
そんなんどうすりゃいいのよ
誰か私をプロデュースしてくれ
ま、まだ相手がどうくるかわからん
舞い上がって、チャンチャンは一番キツイ
とりあえずはいつも通り、いつも通り
特に最初の顔合わせは、他の人もいるからね
事務所内はともかく、外ではちゃんとするぞ!
ちゃんとできる気がしない。




