謎の補欠
杏子がリナの口を塞いで春樹の前から逃げたシーンに戻る
「リナさん!もう!やめてくださいよ!」
離れたので、とりあえずリナさんを解放する。
「あれれ、超あせってんじゃん!」
「もしかしてぇぇズボッたぁ?」
なんだズボとは
図星のことか?
「いや、その、あれですよ」
「綺麗な顔してるなぁって思っただけです!」
「別にそんなやましいことは…」
ホントにただそう思っただけで、好きとかにはなって無い!
たぶん
「でもさぁ、ハルちゃんに行くなんてセンスいいね」
おい、決めつけんなや
「だからリナさん?私は顔はいいなぁと思っただけです、私は外見だけで判断しません!」
「だからぁ、それ言ってんの!ハルちゃんはさぁ顔と同じくらい、いや、顔以上にいい奴だよ!それは私が保証する」
「だからもう好き確定じゃん!」
「会ってすぐに好きになりません!」
「じゃあさぁ、一目惚れってことで!」
「もう!」
「わかったキョウちゃん!じゃあそのうちに好きに変換するって事で、今はまだ充電中ね」
リナさんの言ってることは、半分当たってる気がする。
いや、ほとんど当たってるのが、自分に素直になればわかる。
いい奴、うんわかる
だって、さっきリナさんと揉めた時、ゴー君は来てくれるのは当たり前として、あと心配して来てくれたのは春樹さんだけ、他のみんなは見て見ぬフリ
そのうちに好きになってく…
私もその予感しかしない
「でもさぁ、キョウちゃんキリッ顔なのに、ハルちゃんとおしゃべりしてる時はあんなニヤニヤ照れ顔してたらさぁ、私惚れちゃいましたーって宣言してるようなもんだよ、アハ」
チキショ、なんも言えねー
「ハルちゃんは鈍感だからわかってないけどね」
「それからぁ、ハルちゃん彼女いないよ」
「てか、高校入ってからは、いないって」
え、そうなの?
ヨシ!ん?何喜んでんだ私
「あれれれぇ、またニヤってしたねぇ」
「キョウちゃんわかりやすっ!」
「帰国してばっかりだし、その反応は彼氏いないんでしょ?もう恋はじめちゃえ」
くそ、この女、鋭すぎる!
「あともう一個いい事教えてあげる」
「ハルちゃんのあんな態度、見た事ない!脈アリ間違いないよ、脈!大あり!」
捨てゼリフを吐きリナさんは、後ろ向きでこちらに向かって親指を立てて走り去った。
ほほう、あの鋭いリナさんがそう言うならば…
違う違う、違くない、もうわかんない
でも、高校入って彼女いない
一年半は最低でもいないってことか
周りの女子は何をしてんだ?
じゃあ私がもら……
違う違う、私はまず通訳しないと!
そ!通訳!
ブルブルとキャップが落ちるくらい頭を振り、正気に戻ろうとした。
でも、反省もした。
外見で判断しないとか言っておきながら、あのルックスで補欠だからスンってなった
ホント失礼な話だ、春樹さん勝手にスンってなってごめんなさい。
結果、話しかけられたら喜んでるんだからきっとそんなのは関係ない私、でも一瞬でもスンってなった自分に猛反省してみる。
そんなこんなで〜、シートノックの準備に入る
そんなこんなありすぎだわ!
ふと、プチスタンドにいる父が目に映った
私の恋の予感には当然気づいていない
うーん
私は父親の前でいったい何をしてるんだ?
シートノックを受けるため、部員達が守備位置に散り始める。
エースの佐藤さんを含む投手陣4人とそれを受ける2番手キャッチャーの松山さん達が、ブルペンに入るためノソノソとブルペンの方に向かう
頭にグラブを乗っけて、指のケアしながら歩いてる人もいる。
シートノックには、投手は何人もいらない
通常であれば、この間柔軟などしてる
シートノックが終わったら、投手陣と内野手だけで投内連携練習するのが、投手陣のメニュー
ただ、今日は投手陣のピッチングを見たいと、トニーがオーダーしたので、シートノックが終わったらピッチングを披露することになっている。
歩いている、佐藤さんに向かって
「ノブさーん二枚でいい?」
おそらくブルペン周りに置く防球ネットの数だ
少し遠くからのリナさんの質問に、頭の上で大きくマルを作る佐藤さん
「ぬま子!それボールちげーよ」
「マッキー!それネットほつれてるから待って!」
ネットやボール等の準備に追われる、一年生部員達のリナさん軍団
ぬま子って誰だよ!調べてみる…小沼さんだ
さかさまに呼んでるだけかなと思ったが、発音は「ぬま子」って聞こえる
その発音の「ぬま子」が、顔と一致してるような気がして爆笑しそうになった。
言っちゃ悪いが、ナヨッてしてて女の子みたい。
そして、お!ノックバットを肩で回しながら名将登場だ!
杖ではなかったんだ
「ナトっちゃーん、ロジン使う?」
「おぉ、つけるかな」
ポーンとリナさんが、監督の足元にロジンを投げる。
監督に向かって投げるなよ
てか、なんで佐藤さんはサン付けで監督はナトっちゃんなんだよ!
心の中のツッコミが止まらない
名取監督は、ノックバットにポンポンとロジンをつけ白い粉が舞う
なんか雰囲気出てくるね、名将って感じ
ロジンを付け終わると、監督はそのロジンをリナさんに投げ付ける。
後ろ向きでしゃがんで、ネットのほつれを修復してたリナさんの腰とゆうか、お尻に命中
リナさん振り向いて、何が起きたのかを確認
「おいー、ふざけんなや!」
「老人ホーム通り越して墓場に連れてくぞ!」
と、暴言を吐き、落ちたロジンをベンチに投げ捨てる。
今は相手してられないって感じだ
監督は舌を出して笑ってる。
もう、色々酷すぎる
ネットをガラガラと運んで、ブルペン周りに設置するリナさん軍団
向きが違ったのか、ちげーよおめーと言わんばかりに兵隊の一年生部員マッキーさんのお尻に蹴りを入れてる。
パワハラ極まりない
てか、マッキーさん喜んでね?遠くてわかりづらいが…
ドMか?
マッキーマッキー、んと牧野さんか
気を取り直して、グラウンドを見る
準備も進み、内野陣はボール回しをしてる
トニーもグラウンドに降りてきて、タブレットを見ながらその様子を目で追ってる
ここで、一旦整理
守備配置を見る
もちろん守備位置は9で、部員は総勢22人
そのうち、投手位置にとりあえずの一年生投手が入り、残りの一年生6人がサポートに入る
投手3人と、捕手1人がブルペンにいる
合計10人がシートノックには入らないので、残りは12人でノックを受ける
なので、3つの位置は2人で受けることになる。
位置をみて2人で受けてるところは…
ファースト、セカンド、レフト
えっと、春樹さんはどこだ、レフトだ
お!外野は控え1人ってことはチャンスありやん!
他の外野の、センターとライトは、打率バリ高の中心選手なので、ここはもう不動だろう
春樹さんと守るポンチョナンバー7をつけてるのがライバルか!
えっと、工藤さんって人だな
監督は打順6番に設定してたけど、データ見る限り大して打ってない、打率バリ低いとゆうか練習試合で1本打ってるだけ…
春樹さんチャンスありじゃん!
ん、ここでリナさんの言葉を思いだす。
「みんな平等にしなきゃじゃん」
あ、私、平等に見てないじゃん
でもぉ、平等にみなきゃいけないのはトニーであって、私関係ないよね
通訳は平等に通訳
でも、私個人は春樹さんにひいきしてもいいよね
都合よく解釈してみる。
あ、でもまだ好きではないよ、まだね
うん
ただ、ファーストを守る人も外野を守れるデータがある、シートノックはファーストは忙しいから、とりまファーストに2人いるのかな、でもその人は出場少ない、春樹さんみたいに全くってことではないが、なので春樹さんがレギュラーになれるチャンスがあることに間違いはない。
シートノック始まって驚いたの名取監督だ!
マジ、ノック上手い
内野はともかく、外野に上手い打球がポンポン飛んでいく
あのご老体、いや失礼
でも、年齢的に考えると凄い!
春樹さんの守備に注目する。
あれ、普通に上手いやん
レギュラーの工藤さんより上手い、全然上手い
工藤さんが、下手ってわけではない
春樹さんのスキルが普通に高い
足も速い
え、なんでこれで控え?
トニーは「あの15番いいな、守備はゴールドグラブだ」と、アメリカらしい例え
これはなかなかのアピール出来てる!
外野のバックホームが始まると、春樹さんレーザービーム連発
工藤さんには、内野のカットが入るが、春樹さんはノーカット、文字通り、矢のような送球がくる。
これで試合に出たことがない?名将じゃないわ
シートノックが終わる頃
ブルペンから心地良いミットの音が聞こえてきた。
佐藤さんだ!トニーも当然目が行く
プチスタンドにいた父も立ち上がって双眼鏡で見てる。
双眼鏡持ってきてんのかよ
パン!ってなってた音も、ギアが上がったのか、ズバン!に変わる
遠くにいても、超高校級なのがわかる。
でも、なぜ?
あんな凄いピッチャーが、なんで都内の公立高校に?
早く近くで見たい
早くマウンドに来いよ佐藤さん
あ、春樹さんこれは浮気じゃないよ
えっと、誰か私を蹴り飛ばしてください。




