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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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出会う

 

 軽やかなメロディが携帯電話から響く

 ムクっと起きて、速やかに止める。


 朝は、結構すんなり起きれる

 周りには眠たそうな顔してるとよく言われるが、それは顔だけで中身はしっかり起きてる。


 顔洗って、歯を磨いたら掃除機の準備


 自分の部屋だけではなく、家全体をかける

 朝練がある時はみんな寝てるのでやらないが、今日は土曜日で一日練習だから朝練はない

 掃除機のコードのコンセントを差し替えながらかけていく。


 姉の部屋はスルー、まだ寝ているぽい

 姉は一個上だが早生まれなので、学年は二個上

 現在は専門学生、テレビ関係での就職を狙ってるみたいだ。


 両親は、自営業を営んでるため二人とも朝から晩までいない。


 俺が掃除機、姉が洗濯係で家事を手伝ってる。


 食事は、ほぼ外食、というかほぼコンビニ


 高校入っても、すくすく育つ自分の身体に驚いている

 ここ一年でまた10センチ伸びた、中学でかなり伸びたので、もう止まるかなぁと思っていたのだが…


 コンビニ飯歴六年くらいかな、成長期ど真ん中

 なのによく180センチまで伸びたよ


 コンビニ飯を悪く言う人がいるから、この成長に驚いているけど、本当はバランスよくちゃんと栄養が取れているのかもしれない。




 練習着に着替える、家から高校まではチャリですぐなので、練習着で行っちゃう


 昨夜磨いたクタクタのグローブをバックにしまう、高校入部時三年生から頂いたお古

 お古のクタクタグローブを使ってるのは、別に家が貧乏だからではない、むしろ裕福かもしれない。


 じゃあなぜ?


 父親が野球に反対で野球道具を買ってくれないからだ、理由は簡単、勉強の妨げになるから。


 中学までは、普通にやらしてくれた。


 高校に進学したら猛反対され、シカトして始めたら道具一切買わないと言われてしまった。


 母親が、父親にバレないように練習着やスパイク等買ってくれたり、たまに日雇いのバイトをしてどうにか凌いでいるが、成長が早くサイズがあるものはすぐ小さくなってしまう

 とうとうバイトしてる姉からも支援してもらうようになった。


 あと父親がもう一つ反対する理由がある、まぁこの理由が本命


 俺は、小三から野球を始めたが、高二になる今の今まで公式戦に出たことは一度もない。


 小六の時、父親が仕事を休んで俺の試合をこっそり見に来てくれたことがある

 仕事が多忙極まりない父親がだ


 その時、父親の目に入ってきたのは全力でプレーする姿ではなく、ベンチで丸くなり一生懸命スコアブックに記入する俺の姿

 スコアをつけてるってことは、その試合は絶対出ないってことを父親も予想はついたはず。


 でも、最後までいたみたいだ

 相当、落ち込んだであろう


 後から、母親に聞いた俺自身はもっっと落ち込んだ。


 せっかく来てくれたのに、申し訳ないのと恥ずかしいので顔から火が出そうになった。


 父親の中で、どうせ試合に出れないなら高校までやる必要ないだろと反対


 全くもって正論


 友達がいるから!みたいなノリでやるのはせいぜい中学までだ。


 高校までやる必要があるのか、自分自身も悩んだ

 野球以外のスポーツには興味がないが、水泳を子供の頃からやっていて、今はよく行くジムに併設している室内プールで泳いでいる


 だが、高校に水泳部はない。



 実はみんなに知られてないが、密かに俺は鉄道オタク

 高校に鉄道研究部はあり、正直そちらと悩んだ

 オタクがバレたくないから、野球部を選んだわけではない。


 文化部なら掛け持ちしても問題ないが、どちらも中途半端にやるのは嫌だ。


 では、なぜ野球部?


 それは……野球の神様がそのうち報われると言ってくれてるから


 そう、人に言ったら頭がおかしくなったと思われる理由…


 前に夢を見たことがある


 明白に覚えてる



 (野球で辛い思いしてるよね、野球で我慢ばっかりしてるよね)


 (一生懸命やってるんだから、絶対いつか報われる日が来るよ)


 (だから、信じてもう少し野球やってみようよ)


 (大事な場面の時がきたらさ、いつものお礼、少しだけになるけどご褒美あげるね)


 と、誰かが俺にささやいた。


 夢を見たって言っても、声だけ

 でも、その特徴的な声で誰がささやいたか分かった

 あの女優だ、テレビによく出てるあの有名女優だ

 顔とあの豪快そうな性格は好きかな…


 だけど、その女優の大ファンってわけではない


 で、今現在、報われてない、当然だが、まだご褒美をもらってない

 とゆうか「お礼」ってなんだろ、「少し」ってなんだろ、気になる。


 そんなことがあってから、その女優は俺の中で「神様」ってことにしている

 その夢の件が、野球をやってる理由だ。

 

 アホくさ


 そんな理由はこじ付け

 結局、俺は野球が好きだからやってるんだ

 ガッツリ補欠の俺自身をごまかすおまじないみたいなもん。


 ちなみにこの前、初めての進路相談があった

 将来の就職希望欄に「新幹線の運転手」と、書いといた

 子供かっ!って思われるかもしれないが、本当になりたいと思っている。


 なので、高校までしっかり野球をやり切って、その後は夢のために突っ走る。



 

 自転車の前カゴにバッグを入れ、学校に向かう。


 途中、いつものルーティン、コンビニに入る

 店員も皆顔馴染み、そりゃ大常連だからね

 朝飯用のおにぎり二つとウイダーをカゴに入れ、昼飯用の弁当を手にしようとした瞬間、思い出した。


 あ、今日から確か外人のコーチが来るんだったな。


 昼休みはいつも、コンビニ弁当を購買の横のレンジでチンして食べてる。


 でも、今日は新しい外部コーチが来る

 昼休みどうなるかわからないから、適当に弁当を選ぶのはやめよう

 あっためなくても平気そうな物をチョイスし、レジに向かう。




 学校に到着


 自転車を駐輪場に止めてグラウンドへ


 既に、練習着を着ているから部室には寄らず直行


「今日来る外人どんなやつかな」

「日本語しゃべれるのか」

「英語の小島先生が通訳したりして」

「いや、あいつじゃ無理だろ」


 集合時間前だが、外人襲来イベントなので、早くから集まってみんな噂している。


「おいっすーハル」


 ゴーが、なんか変なファッションで近寄ってきた

 こいつは、小学校からの付き合い

 なんか、気が合うんだよな。


 元々少し変なやつだったが、高校に入るとギターやドラムを始めるようになり、変な方向の角度が少し変わった

 他校の高校生同士で貸しスタジオを借りて、バンド活動みたいなのをたまにしてるらしい。


 ちなみに、ピアノも弾ける


 そして、野球上手い


 まぁよくわからんやつだけど、悪い奴ではないのは確かだ。


「これ、昨日リナと下北で見つけたさー」

「なんかかっこいいから買っちったー」

「この着かたであってんのかなー」


 だからと言って、練習の時になぜ着て来るのかがわからない


 変な袈裟?みたいなやつを、練習着の上からかけてる。


 まぁ、監督は何も言わないだろう

 うちの監督はうるさいことは何も言わない

 髪型なんかもだ、自分ら自主的に大会前は坊主にするが、たぶん伸ばしたまま大会出ても大丈夫だ。


「ハルちーんオハザイマス」


 リナが、俺の後ろ足をカックンとしてくる

 その時、胸が当たったがこいつは何も気にしない。


 ゴーの彼女で、ゴーよりもぶっ飛んでる

 が、このリナは観察力がすごい、よく見てる

 んで、遅刻したところ見たことない。


 それに、コミュ力とゆうか現場適用力が鬼のように優れている

 まだ一年生で入学して半年だが、練習の段取りが良く、道具出しが早い!

 リナがたまにいないと、段取りがぐちゃぐちゃになる始末


 でも、マネジャーではない


 みんなで打診しても、「ムリー」とか言ってくる。


 まぁ、マネジャーじゃなくても素晴らしい仕事っぷりなのでほっておく


 みんなでお礼のつもりで、お菓子を渡すと上機嫌だ


 機嫌が悪い時は、他の一年部員を蹴りまくってる。


 そんなリナは桜水ラインではなく、電車通学なんだが、ゴーの家に「お泊り」して、自転車二人乗りで来たりもすることも…

 お互いの両親はなにやってんだ!と、オッサンみたいな思いをすることもしばしば


 なんでも、去年の学生バンドイベントに出演してたゴーに一目惚れして、この桜水高校に入学してきた強者だ。


 しかし!極め付けの欠点もある。


 ゴーを好きそうな奴やファンみたいのを徹底的に排除する。


 ゴーは、モテる


 顔は良いし、小柄だが筋肉質

 また、変なノリだがそこがまた魅力的なのであろう


うちのグラウンドには、一塁側のベンチの上に見学できるちょっとしたスタンドがある。


 キャパは三十人位かな


 そこに来て、ゴーに黄色い声援を送ってくるとまぁ大変

 先輩だろうがなんだろうが関係ない。


 マジでやりすぎなんだが…


 ゴーも、注意はするが本人も面倒くさかったから丁度良かったのか、あまり厳しくいかない


 今は、噂が流れに流れてゴーのファンは全く来なくなった。


 うちのエース、ノブ(佐藤)のファンは来るがそこはしっかり確認してるのか噛みつかない。




「おーい、そろそろ来るからな」

「とりあえず先にランニングしとけー」


 いつものノックバットを持って名取監督登場


「ナトっちゃん!鍵知らね?」

「倉庫の鍵がいつもんとこにないんだよね」


 当たり前だが、ナトっちゃん呼ばわりするのはリナだけだ

 うちらも影では呼んでるが、面と向かっては絶対に言えない

 もちろん、名付け親はリナ


「あ!」

 監督がカバンの中をゴソゴソして、出てきた鍵をリナに放る


「もー、めっちゃ探したじゃんよー!」

「いつものとこ戻せって何回言わすのよー」

「準備遅れるじゃん!」


「わりぃわりぃ」


「今度やったら老人ホームに連れてくからね!」

  

 監督は舌を出してリナにリアクションする


 もう、お爺ちゃんと孫だ。


 ランニングを始めると、まだベンチでシューズを履いてる一年生部員牧野がいる。


「なにモタモタしてんだよマッキー!早く行け!」

 と、肩パンをいれる


 立派なパワハラだが、牧野はまんざらでもない様子、ドMか?


 てか、もうリナさんはキャプテンで良いかと思います。



 そう思いながら、ランニングを続けてると

 部長が外人達を連れ現れた、三人いるな

 あの体格の良いおじさんが通訳なのか?


 ん? あれ、若い女の子がいるぞ


 下は黒で白のラインが入ったジャージ

 上は長さ短めのグレーのパーカー、ジッパーを半分くらい下ろし、中の白いTシャツがクッキリみえる

 グレーの帽子にポニーテール

 スタイルは遠めから見てもいいのが分かる。


 服装やスタイルだけで見ると、一瞬芸能人のお忍びか?と思うくらいだ。


 でも、その服装には似合わないスポーツバッグを担いでいる


 どうゆうこと?




 いよいよ、近くに来ると…


 かわいい、いや綺麗と言った方がいいか

 外人に注目しなきゃいけないのに、外人が入ってこない。


 あれ、外人と会話している

 どうゆうことだ?外人が日本語話せるのか、それとも…


 あの若い女の子が英語話せるのか?



 

 集合がかかり、整列する。


 ザワザワするかと思ったが、みんな静か


 外人が英語で挨拶を始める

 女の子が日本語に訳す

 たまに、めちゃくちゃ良い発音で外人に話しかける。


 マジかよ


 何歳なんだ、見たところタメかな


 目力があって、吸い込まれそうだ。


 キッ!としてるようにも見える、機嫌悪いのかなと思うがたまに笑顔を見せる、それがまた余計に可愛く見える。


 いかんいかん


 横のノブ(佐藤)が「あの子の英語力すげーな」とヒソヒソ話しかけてきて、俺も「うん」と返して、またあの娘を見ると目が合った。


 ん?…ジッと俺を見てきてるぞあの目力で、あれ、なんか、少し目力が弱くなってる?


 ポーっとしてる自分に気づき

 あ、やばっ!慌てて目を逸らし、落ち着こうとした。


 ドキドキしてるのがやばいほどわかる


 なんだったんだ!


 にしてもあの娘、あの女優「神様」に少し似てるな

 年齢は全然違うけど。


 外人、いやアンソニーさんの挨拶が終わると

 あの娘の自己紹介が始まった

 英語力は帰国子女とゆうことで納得した。


 びっくりしたのはまだ中三ってことだ

 この時はさすがにみんなザワついた、全然中三に見えない。


 来年、この学校に入学すると聞いたときは、認めたくないが心の中でガッツポーズ


 他のみんなもきっとそうだろう




 アンソニーさんの顔覚えのため、レギュラー順に「ビブス」が配られることになった。


 はぁ、控えなのがバレる


「あいつ補欠なんだ」って思うだろう


 エースのノブに憧れるであろう、あいつめちゃくちゃ球速いし


 ま、言うてもこんなことは慣れっこ、女の子の前で恥かくのは経験済みだ。




 全て配られ、練習準備に入る

 ベンチでドリンクを飲み、さぁ行こうと思ったら


 リナが星川さんに絡んでる!


 やばい!と思ったけど、ゴーが来て話してるから大丈夫かな?


 心配だからやっぱり行ってみよう


 後ろから声を掛けた

 振り返ってきて、最初はキッとしてたが、段々笑顔になってくれた。


 かわいい、なんだそのギャップ!


 ドキドキしてきて、何話してんだかわからなくなってきた。


 んで、リナが急に現れた

 ん?なんだ星川さんが俺に見惚れてた?

 星川さんが、恥ずかしそうにリナを止めてたけど聞こえた。


 でも、リナそれは大きな勘違いなんだよ

 俺の横にノブがいたから、そっちを見てたんだよ


 心の中で報告しといた。


 ま、でも二人とも仲良くなったみたいだからよかった。


 でも、なんかショックだな


 俺がエースだったら……

 やめた、無駄な事考えるの


 あれ、でもあん時はまだノブがエースってわからなかったはずだ

 とゆうことは、顔がタイプ?

 結果、後からエースって分かったんだから、もっと好きになっただろうな


 ノブはかっこいいしエース

 やっぱり神様なんかいないな。 


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