星川家の秘密
「長谷川ちゃーん、ちょっくら墓参り行ってくるわ」
「はーい、了解でーす、あれ?なんだかんだ翔子さんお初?」
「あは、バレチー?ほら、来月竜ちゃん帰国してくるからね、さすがに悪いから行ってくるよ」
「ですね、一回は行ってくれ、葉山翔子のファンだったから喜ぶ、って言ってましたもんね」
「おーよ、じゃあ、よろしくぅ」
「はーい」
竜ちゃんが渡米する際に墓守りを頼んできた
そんなの任せておけっ!だったけど…
名前を聞いて、全身に電気が走った
竜ちゃんに動揺がバレないようにするのが大変だった
稲富直鷹
直鷹は、私の腹違いの弟
そりゃ、慌てる
マジでビックリした、聞いてない
それに、竜ちゃんと親友だったのもビックリ
母親のタカエさんは、地元の人
再婚とゆうか、結婚してもそのまま地元にいたので、まぁありえる
にしても、なんだよそれ、そんなことあるか?
星川の血が流れてる人間で、春樹竜斗に一番先に会ってるのが直鷹だったとは…そして亡くなってるとは…
すぐにタカエさんに連絡した
もちろん激おこで
でも、返ってきた言葉に何も言えない
私に黙ってた、それは遺言だから
直鷹は病院に運ばれてずっと昏睡状態
でも、一度だけ、一瞬だけ目を覚まして言葉を発した
「ショコ姉ちゃんには黙ってて」
その言葉を最後にそのまま亡くなったらしい
「ショコ姉ちゃん」と呼ばれてた
直鷹が小さい頃はよく会いに行っていた
もちろん、血の繋がりは隠して
でも、タカエさんの話だと、最後の言葉は知り合いのお姉ちゃんって意味ではなく、姉に対する姉ちゃんに聞こえたと言っていた
私がそれはなくない?と返したけど
タカエさんは間違いないと突っぱねる
タカエさんは言ってない、私も言ってない
いつ気づいた?
父親のことは話をしたみたい
結婚して、直鷹が大きくなるにつれて、そこはちゃんと話をしたらしい
新しい父親との間に子供が出来て、いい機会だったとのこと
でも、私のことは言ってない
昔、よく来たお姉ちゃんは葉山翔子だとは気づいていた
でもその程度
タカエさんは、絶対に助かると信じて、昏睡状態中も私に連絡してこなかった
タカエさんに新しいパートナーが出来た時、二人で交流を断とうと決めたから
「葉山翔子」は新しい家庭の邪魔になるから
だから、直鷹が大人になるのが楽しみに、静かに待つことにした
竜ちゃんと同い年の直鷹
生きてれば、今頃仲良く出来たはずなのに…
なのに…
死因を聞いて愕然とした
自転車で転んだ時に頭を強く打った
私はその現場を知ってる、目の前を車で通ってる
救急車に運ばれてる男の子を見た
あれ、もしかして?と思った
久しく会ってないけど、面影はあった
現場は、地元、普通にありえる
でも、私は逃げた、気のせい気のせいと言い聞かせて…
その日は、皮肉にも私の誕生日
だからこそ、鮮明に覚えてる
逃げたけど、連絡がなかったため
あ、やっぱり人違いだったんだなと、納得してた
それが…やっぱりそうだったなんて…
死ぬほど後悔した
車から飛びおりて、救急車に付き添えばよかった
弟なんです!って言って
もちろん、私が付き添ったところで助かったわけではない
でも、姉弟としてやれることはやりたかった
直鷹は、私が姉と気づいてた
なら、他の兄弟にも会わせたかった
いや、気づいてたかどうかなんて関係ない
実際、最後の最後に発した言葉なんだから…
弟のピンチに綺麗事なんて言わずに、私はさっさと行動を起こしたはず
私のせいで、直鷹は秀太と杏子の顔を知らないで逝ってしまった
あそこで、逃げなければ、昏睡状態でも一ヵ月弱は生きてたので、急いで帰国させれば会わせることが出来た
申し訳ない
なのに、墓参りにはここまで一度も行ってない
それには理由がある
杏子を帰国させた時くらい?もう少し前かな?
あ、竜ちゃんと初めて共演した時くらいだ
そのくらいから、男の子の声が聞こえるようになった
いや、夢を見るようになったが正解かな
なにか、ペラペラしゃべるわけでもない
一言だけ呟いて励ましてくれる感じ
もちろん直鷹の声に似てると思った、アメリカにいる秀太かな?とも思った
声だけ聞こえる夢
当時は、直鷹が亡くなってるとは知らないので、不思議だった
誰だろ?って思った程度、夢だしそんなもんくらいにしか思ってなかった
でも、竜ちゃんから亡くなったと聞いた時、それが直鷹なんだなって確信した
しかも、その辺りから、頻繁に聞こえるようになった
竜ちゃんと杏子をビックにしたる!作戦を遂行するに辺り、杏子の苦しんでる、寂しがってる姿を見て、何度も作戦をやめようと思った
でも、その都度その声が後押ししてくれた
大丈夫、二人なら大丈夫
二人のため、頑張ろう
二人を信じて、自分を信じて
僕も見たいよ、二人の活躍
その声のおかげで、ここまでやってこれた
だから、下手に墓参りはしなかった
墓の前で手を合わせて瞬間、聞こえなくなるって思ったから、確証はないが、そう思った
社員に任せっきりだった、さすがに悪いと思い
事務所のすぐ近くにお墓を移動させた
社員の負担を考えての行動と、近くに移動させればもっと声が聞こえるかなって
でも、とうとう別れの言葉が聞こえてしまった
私の作戦、シナリオが峠を越えたタイミングで聞こえた
しかも私の誕生日に、イコール、直鷹が意識を失った日
指揮者はもう必要ないから帰りまーす、ってか?
ふふ、これ、私のシナリオのメガホン取ってたの直鷹じゃね?
いや、私もキャスト?
杏子も聞こえたらしい
別れの言葉が聞こえたらしい
まさかとは思ってたけど、杏子も聞こえてたのか
そこで、指揮者は直鷹じゃね?って思った
メガホンを取ると言うより、指揮者だね
みんなが奏でるオーケストラ
それを指揮してた感じ、みんなを踊らさせてたはずの私まで踊らされてたみたいで笑える
それに、数々の奇跡と偶然の出会い、桜水に集まった偶然の野球部員達
全部、直鷹の仕込みのような気がしてきた
稲富直鷹
稲富貴恵の息子で、星川直之の息子
私の弟で、秀太の弟で
杏子の兄
たが、親父は直鷹の存在を知らない
うちの母は、当然知らない
母は、親父がベビーシッターを口説いたレベルで認識してる
口説いただけで、関係は、ないって認識
それだけでも修羅場だった
親父を殺しそうな勢いだった
もし、子供が出来たと聞いたら、おそらく親父はもうこの世にはいない
杏子は産まれてない
母は今頃刑務所だ、マジでそうなってる
なので、これは文字通り墓場まで私は持っていく
が、この夫婦、喧嘩するたびに子供が出来る
喧嘩の後、燃える系だ
このタカエさん案件は、その後も母が蒸し返すかのように何回か喧嘩を繰り返し
それで杏子が出来た
昔、酔っ払った母から聞いた、私が出来た時は、母が元カレ大好きすぎて、それがバレて親父がブチギレて喧嘩になってからのー、だって
秀太は、母が酔っ払ってホストクラブに行ってしまい、それが父にバレて喧嘩
五十万のカード請求がきて、更に大喧嘩
からのー、だ
そう、母もなかなかな奴
小学生の私の目の前で大喧嘩
その後、隣の部屋で寝ている私が飛び起きるくらいの、母の甘いうるさい声が聞こえてきた
この夫婦普通に笑える
よく、この夫婦で、私と杏子みたいな恋愛真面目姉妹が出来たよ
秀太はだめ、恋愛以前にモテない
アメリカ女性にはウケない、竜ちゃんみたいにアメリカ女性にウケまくりの日本人ではない
でも、帰国して最近初めての彼女が出来たみたい
写メを送ってきたが、はぁ?って感じ
詳細は差し控える
話を戻す
タカエさんは、秀太のベビーシッターだった
当時の私は小学校六年生
杏子は当然まだ産まれてない
タカエさん
旧姓は、名取貴恵
直鷹も旧姓は名取直鷹
そう、あの監督の娘だ
でも、直鷹が小学校に入る前に結婚して、稲富になったので、竜ちゃんはもちろん、みんな知らない
ゴー助も、血の繋がりがあるリナっちも
ちなみに母も知らない
タカエさんが名取監督の娘と母が知ってたら、監督のオファーを受けることが出来なかった
親父は母に、タカエさんのことを、知り合いの紹介、としか言ってなかったのが幸いした
そこはよかった
その監督も自分の娘の子供がまさか、教え子星川の子供ってことも知らない
タカエさんが各方面に隠し通したからだ
親父のために
でも、私だけに教えてくれた
夢を私に託す時に、全て教えてくれた
うちのベビーシッターに来たのは、当然親父と監督繋がり
母が介護で家を空けるため、ベビーシッターを頼んだ
当時、親父はイケメン、三十代半ば、今みたいに太ってなく、シュッとしてたし、二軍のコーチだったため、程よく日焼けされ、私から見てもまぁまぁだった
そこに当時モデルの卵として頑張ってた、タカエさんがバイト感覚で来た
そして、親父にズキューーン
親父から口説いた感じになってるが、実際はタカエさんから誘った
それに乗っかってきたのが、アホの親父
恩師の娘に不倫働くアホっぷり
マジで、私と杏子はそこは似なくて良かった
亡くなった、星川の祖父母は、昔では珍しい大恋愛婚だったので、隔世遺伝かな?
でも、親父の気持ちも少しはわかる
元カレ大好き発言されるし、ホスト行かれるし、恨みはあったのかもしれない、やる事やって子供はこしらえてるけどね
からの、母にバレた
母がサプライズ帰宅したからだ
そう、アホの親父はあろうことか、現場をうちにしてた
でも、事を済ませて、タカエさんも親父も服を着ていたのが幸い
その鉢合わせが、タカエさんと母の初対面
普通にテーブルで、二人で喋ってただけなんだが、母は鋭い
そのタカエさんをそっと帰して、その後父を詰めた
母は、ぶっ殺してやるとか言って、わめきちらかして大変だった
だが、親父がご飯に誘っただけだよで、なんとか逃げ切り
名前も適当に言ってごまかした
そう、親父は親父でこっちも鋭いし、口が上手い
だいたい夫婦喧嘩になっても、親父が上手く逃げて、母をなだめてるパターンが多い
その後、タカエさんはクビ
ベビーシッターを新たに雇うことはなく、介護ヘルパーを雇った
最初からそうしろよ、バカ両親め
そして私達は、横浜へ引っ越した
私はタカエさんの携帯電話の番号を知っていた
中学生になり、携帯電話を持たせてもらうと、速攻でタカエさんに連絡を取った
タカエさんのことは大好きだった
かっこいいし、綺麗だし、モデルの話をいっぱいしてくれた
私もモデルになりたいなって思ってた
連絡が取れて遊びに行くとビックリした!
こ、子供がいる!
そこで、打ち明けられた
あなたの弟よって
そこから、お小遣いを駆使して、横浜から頻繁に通った
もちろん両親には内緒で
タカエさんは、美貌を活かして銀座で働いて稼ぎまくり、生計を立ててた
中学三年になると、タカエさんからモデルに誘われた
その時言われたのは、私の夢を受け継いでって、祥子ちゃんなら売れるよ、私の夢を通り越すよって
即答でやると伝えて、ゴー助のお母さん、弘美さんを紹介してもらって、モデルの道を歩み始めた
タカエさんから受け継いだ夢、そして、その息子から知らず知らずのうちに受け継いだ夢
両方成し遂げた
私は若い時に堕胎した
その殺してしまった命にも懺悔して、やり遂げた。
竜ちゃんと杏子には、もうすぐ手が掛からなくなる
今度は自分自信の夢に向かって動き出す
そして、私の秘密を含む、星川家の秘密の全てを知る私は、この先も秘密を抱えて生きていく。
お墓到着
綺麗に掃除をして、花を供える
お線香に火をつける
変装を解いて、手を合わす
おい、直鷹
やったな私達
二人を幸せに出来たぞ
杏子は迷惑だったかな?
やりすぎたかな?
幸せだけど、有名になりすぎて、どこにも行けないからかわいそうだよな
ま、いいよね、竜ちゃんが凄すぎるせいだよな、どうせどこにも行けない、だったら頂点極めた方がいいよな
それを悩んだ時に言ってくれたよね
どうせ、どこにも行けないよ
確かにそうだわ
笑えたよあの言葉
そこそこでも顔を刺される時代
だったら極めた方がいいよねー
おかげで悪魔になりきれたわ
じゃ、また来るね
いつかは、みんなと来るから
杏子達に子供が出来たら、甥っ子姪っ子連れてくるからね
それまで楽しみにしてなよ
ねぇ…なんで、最後に遺言残したの?
なんで、私に黙ってて、だったの?
知られたくなかった?
それとも、私に知られると困ることがあったの?
あ、もしかして、私に知られると、葬儀で私と竜ちゃんが出会っちゃうから?
もっと言うと、竜ちゃんと杏子も出会っちゃうかもだから?
もうそこからプラン始まってたの?
なんだよぉ、なんか言えよぉ
本当にもういないのかよぉ
こんな、石の中じゃつまらないだろぉ
まだまだやりたいことあっただろぉ
墓に来たら実感湧いてきちゃったじゃん
今まで支えてくれてありがとうね
お姉ちゃん嬉しかったよ
あは、泣いちゃった
杏子みたい。
『ありがとう、ショコ姉ちゃん』




