モンスター再行進
「杏子〜」
「なぁに?」
「つけて、餌つけて」
「貸して」
プチッ
「うわっ、プチって音した!プチっていった!キモッ」
「うるさいなぁ、お魚逃げちゃうよ、ほら、はい」
「サンキュー」
…………
「わっ!キタ!かかった!よいしょっ」
ピチピチ ビタンビタン
「うわ、ピチピチいってる!ビタンビタンってなってる!杏子取って取って!」
「はぁ?自分で取りなさいよ!」
「無理、キモい、魚と目が合う」
「はぁ?ねぇ!そんなんで、なんで釣り誘った?なぜ釣りしようと思ったん!」
「え、釣りしたことなかったから」ウルウル
「もう!貸して!」
「杏子〜」
「なに!」
「餌付けて」
「もう!てかさ、なんでさっきから竜斗だけ釣れるの!私の方さっぱりなんだけど!私が餌付けて、糸垂らしてるだけなのに、なんで竜斗だけ釣れるのよ!」
「え?魚もわかるんじゃん?」
「なにがよ!」
「あ、この人に釣られたら、ブチギレされるって、アハハ」
「はあ?アハハじゃない!もう知らない!自分でつけて!」
「杏子〜」
「なに!」
「愛してる」ウルウル
「もう!貸して!」
…………
「わっ、またかかった!」
イラッ
「竜斗〜」
「な、なに?今忙しいんだけど」
「ホレ」
ピトッ
「え?これ…」
「ミミズちゃんだよ」
「うわーーーーーー!」
ザマミロ
ジューー
「杏子、もういいんじゃない?」
「え、だめ、まだピンクのとこある」
「え、そうかな?そんくらい、いいんじゃない?」
「だめ、お腹壊したら、夜エッチできなくなる」
「そうか、でも、ちょっと焦げてきてない?」
「大丈夫」
ジューーーーーー
「わっ、丸焦げじゃん!どうすんのこれ!」
「うるさい、ほい、食べてダーリン」
「え?」
「さっ、もっかい焼こっと」
「酷い!鬼嫁だ鬼嫁!」
「なんか言った〜?」カチカチ
「このトングで掴み潰すぞ」
「おい、どこ掴む気?」
「どこがいい?」カチカチ
「食べます、杏子特製下手くそ丸焦げお肉食べます」
「一言多い!オラッ!」
「イタッ、やめろ、イタッ!掴むなって!」
「ねえ、竜斗〜私の夢の話覚えてる?」
「うん、映画でクルクルと、会見の通訳と、ヒーローインタビュー、あと解説」
「お、よく覚えてるね」
「そりゃね」
「映画の夢はもう叶った、どう仕上がるかわからないけど、濃厚キスシーンで終わったし、もう感無量だよ私」
「そっか、良かった」
「リアクション薄っ!」
「竜斗はあんまり嬉しくないの?」
「何言ってんだよ、嬉しいに決まってる…けど」
「けど?」
「うーん、他の人ともするってことじゃん?」
「え?何を?」
「キス」
「へ?キス?私NGだよ、今までもないよ」
「え!そうなの?じゃあなんで、あの映画はOKなの?」
「あー、それは相手役が竜斗ってわかったから、喜んでOKに決まってるじゃん」
「そ、そうなんだ」
「今後も竜斗以外はキスシーンもラブシーンもNGだよ、安心して」
「わ、わかった!安心する!良かった」
「なんだよ、このこのぉ、妄想して嫉妬してたの?」
「え、う、うん、恥ずかしながら、そうです」
「ごめんね、心配させて」
「うん」
「あとは野球関係の夢かぁ、さすがに無理かなぁ」
「そんなことないよ、もう少し待って」
「え?」
「会見の通訳はすぐ叶うよ、杏子がいる時に会見あったら頼むから」
「え、頼む?」
「うん、マジで頼むつもり、実際今も通訳ついてないから、枠はある」
「でも、そんなんに簡単にやらせてもらえるかなぁ」
「大丈夫、てかね、杏子の夢を叶えさせたいからもあるけど、杏子が一番上手いんだよ、通訳」
「ん?」
「今までさぁ、小山さんとか、リリーとか、あと他にも通訳を何人かにしてもらったんだけど、杏子が一番上手い、これマジでお世辞抜きで、レベチで上手い、俺もさぁ段々英語がわかるようになってきたから、余計にそう思うんだよね」
「本当に?嬉しい!」
「うん、だから真剣に球団に掛け合ってオファーするから大丈夫、あとは杏子が来るタイミングだね、来た時はいつもより頑張って、試合後インタビューを開いてもらえるように頑張る!」
「うん!楽しみにしてるね!」
「ヒーローインタビューはさすがに無理だから、ヒーローインタビューで通訳するって夢に変えない?」
「うん!変えちゃう!」
「あとは解説か、まぁゲスト解説ならいけるか」
「いけるかなぁ」
「まぁ、本気の試合は無理か、杏子が解説だと俺のチームにかたよっちゃうもんな」
「う、うん、かたよっちゃう」
「うーん…あ、親善試合!昔、メジャーのチームが東京ドームに来て日本のプロ野球チームと試合してたじゃん!」
「うん、なんかイチロー様が東京ドームに来てた!」
「そうそれ!それだったら、今はネット配信とかもあるから、ゲスト解説いけんじゃん、親善試合だからかたよってもいいっしょ」
「うん!本当にノブさんのチームと試合になったりして」
「だね、その為には頑張らないとな、日本に呼ばれるようにならないと、俺、杏子の夢のために頑張る!杏子からもらったこの野球人生だから、やるよ!」
「竜斗〜愛してる!」
ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜
甘ーい、新婚旅行?婚約旅行?のことを思い出しては、ため息の繰り返し
絶賛竜斗ロスなう
竜斗と映画撮影して、四日間丸々イチャついて、一旦は帰国したけど、すぐまた会いに行って、約一ヶ月一緒に婚約旅行を楽しんだ
で、帰国してから三ヶ月会えてない
しかも、五年半ぶりの再会からの〜だよ
そりゃロスになる
てか、この先どうなるんだ
私のスケジュールで、いつ竜斗の試合を見に行けるの?
婚約したはいいけど、年に何回会えるのよ
いやね、休みは適度にあるのよ、でもアメリカともなると一週間位は連続して休めないと行けない
トホホホ
毎日ラインはしてる、けど会えない
これ、女優の仕事考えちゃうなぁ
なんか、やる気が湧いてこない
女優の仕事がなければ、もう向こうに住んでもいいんだよなぁ
遠征も付いていっちゃう
メジャーは家族に優しいから、付いてってもOKだしね
姉はどう考えてるのかなぁ、婚約したって言ったら
「婚約?そんなのいらん、すぐ結婚させてやるから待ってろ」
なんて、言ってるけど、どうゆうことよ?
このままじゃ、結婚したって一生別居やん、別居婚
それはキツイ
そして私は二十三歳になった。
竜斗はトリプルAで無双してる
最近やっと、日本のメディアに取り上げてもらうようになったが、チラッとだけ
他の日本人メジャーリーガー達の影に完全に隠れてる
下手すると動画がないことも、静止画のみ、逆にウケる
ニュース番組を見れなかったり、情報が入らない時は、自分でネットをほじくりまくってなんとか拾ってる
結果だけ見ると大変なことになってる、異次元の結果を残してる
専門家は、七月末のトレードデッドラインでベテランを放出して、そのタイミングでコールアップされるだろうって言ってる
七月の三十一日だよね、ほぼ八月か
秋のドラマが決まってるみたいだから、無理だ
残念
「杏子ちょっといい?」
バリボリバリボリ
事務所でおせんべい食ってたら、姉に呼ばれた
「なぁに?」
「あんた、五月の連休明け、一週間空けれるよ、竜ちゃんの試合見に行ってくれば?」
「え!本当!マジで?いいの?」
「うん、しっかり応援してあげな、日程見て行き先教えて」
「うん、わかった!」
ヤッターーーー!
マジで嬉しい、マジで嬉しい!
姉、神
そして、楽しみの連休明けの五月中旬
観戦グッズよし!
竜斗を見たいのはもちろんなのだが、野球をまた見れる、久しぶりに野球を生で見れることに大興奮
トリプルAでも全然楽しめる!
成田から飛行機!もうなんか慣れた
最近国際線乗りまくり
ホテルは竜斗のチームの関係者が取ってくれた!
いたれりつくせり
で、寝る
『星川様、星川様』
ん?
「星川様でお間違いありませんか?」
CAさんに起こされた、なによ?
「はい、そうですけど」
「お休みのところ大変申し訳ありません、到着まで一時間程なんですが、地上スタッフから緊急の連絡が入りまして…」
「え!緊急?」
なになに、何か起きたの?
日本にトンボ帰り?
え、もしかして竜斗死んだ?
えええ?
「はい緊急です」
「何があったんですか?」
え?なに?なんなんのよ!
「到着したら、すぐにトランスファー…飛行機を乗り換ていただきます、手続きやチケット等は関係者の方が既に行っております」
トランスファー?行き先が変わる?どうゆうこと?
「え、私はどうしたらいいんでしょうか?」
「まず、行き先変更の承諾が欲しいとのことです、到着してからだと時間がないので機内で済ませます、変更先はサンフランシスコです、よろしいでしょうか?」
「え、サンフランシスコ?」
「サンフランシスコですか?」
「はい」
ま、まままさか…マジか!
「はい、も、もちのロン、もちろんOKです!」
「かしこまりました」
するとCAさんが、他のCAさんに頷いて連絡を取らせてる
「まず、本当に乗り換え時間がありません、到着したら一番に出てもらいます」
「そんなに時間ないんですか?」
「ありません、入国審査の時間を考えると余裕がありません」
「わ、わかりました」
「これを逃すと間に合わないとのことです」
「わーお」
「それから、お預けになってるお荷物のチェックと載せ替えを待ってる時間はありません、関係者の方が代わりに手続きをして、次の便に載せます、よろしいですか?」
「はい、大丈夫です」
「では、到着したらすぐご案内差し上げますので、お待ちください」
「はい、お手数おかけします」
「星川様、この度はおめでとうございます」
「え!は、はい、あ、ありがとうございます」
こ、これは凄い、大変なことになった、てか…こんな偶然ある?
こ、このタイミングでコールアップ
メジャー昇格だ…もう信じられない
どこまで、私はついてるんだろうか…
にしても、飛行機クルーを巻き込んでのこのドタバタ
新人選手がメジャー初昇格時、どの球団も家族を招待する
そのためには、最善を尽くしてくれる
とにかくメモリアルを大事にしてくれる
竜斗は外国人だが、マイナースタートの生え抜き、国内選手と同じ扱いをしてくれたんだ…
本来ならば日本だと距離的に無理なので、初昇格時の招待を諦めるが
たまたま機内の人だった私を、どうにか間に合わせて、竜斗のメジャー初姿を見せてくれようとしてくれる
これだから、メジャーリーグ大好き
手荷物持ってダッシュするか、任せろ
経由地の空港に到着
飛行機を出ると、すぐに地上スタッフさんに連れられ入国審査
マッハで終了
審査の人、私の状況わかってた、グッドラック!って言われた
また地上スタッフさんに連れられ一旦出口へ
すると、球団関係者の黒人の方が待ってた
チケットを渡されて、早歩き…いやほぼ走って次の飛行機へ
「私もハルキを応援してる、是非彼のメジャーデビューを見てあげてくれ、彼はきっと凄いプレーをする!」
と、球団関係者さんが言ってくれる
みんな、私を送り届けようと必死になってくれた、めっちゃ感動、泣きそうになった
「それから、相手はニューヨーク!ヤンキースだ!ついてるぞ、注目度か高い!チャンスだ」
ま、マジか、いきなりヤンキースかよ、スター軍団じゃないか
しかもインターリーグ!レアカードじゃん!
マジで、マジで!やばすぎる!
サンフランシスコ行きの飛行機に飛び乗った
間に合った、間に合ったよ!みんなのおかげで間に合ったよ!
竜斗待っててね!
晴れ姿、この目で焼き付けるから!
サンフランシスコ到着
空港に到着すると、また関係者の方が待っててくれて、車でダッシュで球場に向かう
「その書類にサインお願いします」
「はい」
書類に目を通す
それは、私の紹介書類
「招待家族をテレビ放送で紹介する場合があります、問題なければサインお願いします」
「はい」
冬川京子 横浜、ボストン出身 二十三歳 女優 婚約者
あれ、芸名?竜斗が書いたのかな…
でも、これテレビに出していい内容かな
日本で放映されたら、バレる
「あの、事務所に確認してからでもいいですか?」
「それは、そちらの事務所から送っていただいたので、確認は必要ありません、こちらがミスをしてないかだけご確認ください」
ま、マジか、姉がOK出したんだ、もう堂々としていいんだ
めっちゃ嬉しい
サラサラサラサラ
サインをして渡す
球場に到着、関係者通路からグラウンドに入る
この球場はもちろん初めて、アメリカ時代はボストンの球場しか行ったことない
席のチケットを渡されて、座席を案内された
試合開始20分前だった
ん?んんん?
「わっ!トニー!リリーも!来てたの?」
「あー、教え子のデビュー戦だ、妻が産気付いても来るのが常識だろ」
ウインク、ニッ
「ヘェー」って、お前妻いないだろ
「キョーコ、はいこれ、まだハルキのユニフォームは売ってないからキャップだけね」
リリーがチームの帽子を用意していてくれてた
「サンキューーー」
ガサゴソ
バッグから双眼鏡を取り出す
座席はバックネット裏の後方なので、双眼鏡は必須アイテムだよね
持ってきといてよかった!
双眼鏡でグラウンドを見渡すが、竜斗の姿は見当たらない、てか試合前のセレモニーが行われている
にしても空席が目立つな
「トニー、観客っていつもこんな感じ?空席多いね」
「何言ってんだ、これでもいつもより全然多い、今年は散々だからな、みんな見に来ない」
「ヤンキースが相手だから今日は多いの?」
「それもあるが、ハルキがコールアップされたからだろう、当日券がとんでもなく売れたって言ってたからな」
「え、もう人気あるの?」
「ああ、俳優でテレビにも多く出てて既に人気があるのに、ツーウェイプレイヤーでもあるからな、それにマイナーのずば抜けた成績もこっちでは連日報道されてる、ハルキが出るとなると、ファンは当然スタジアムに足を運ぶ」
「なるほど」
俳優でも人気あるのか、色々出てたとは聞いたけど、人気があるとは知らなかった
でも、うなずける
好感度はいいに決まってる、高校生の頃から街行く人に振り返られてたんだから
そんな俳優が、今度はメジャーの舞台で試合…
これが大変なことは、子供でもおじいちゃんでもわかる
あ、そだ、竜斗はスタメンで出るのか?
既に発表されてるラインナップをビジョンで確認する
……
「あった!」
免許の合格発表を思い出す
七番サード!スタメン!
「凄い!やった!」
「チームは再建を計る、今日の内容がよければ、ハルキはどんどん打順を上げてくるぞ」
「うん!」
このチームは今年開幕から低迷を続けてる
ここまで借金まみれ、連敗地獄
地区四位、この下にまだいるの?って思う位の惨状
トニーから聞く、負けまくりの原因はまず、打線
ここまでの平均得点が酷すぎる
そして、ブルペン投手が打たれまくってる
クローザーはいたが、開幕からセーブ失敗を続け、とうとう右肩炎症で故障者リストに入ってしまった
他のブルペン、リリーフピッチャーも打たれてる
先発投手陣は、良いピッチングはしてる
負けパターンをまとめると
先発が試合を作るも、打線のランサポート(得点の援護)が得られない、そしてリリーフ投手が打たれて負けてしまうパターン
「ここまで、打率一割台の二人をDFA(自由契約)にして、ハルキともう一人をトリプルAからコールアップした、これでまずは一気に打線の得点力が上がってくれるだろう、この二人はトリプルAでバケモンみたいな成績残してきてるからな」
「ふぅーん」
「あ、私フライドポテト買ってくるね」リリー
「でも、なんでそれならもっと早くコールアップしなかったの?」
「ん?それは色々契約とかの絡みがあるんだよ」
そっか、大人の事情ってやつか、でもそのおかげで今日初舞台になって、私は見れてるからいっか
「それよりも、キョーコ、うちのラインナップ見てまだ気付かないか?」
「え?」
「ハルキの次の八番を見てみろ」
「ん?」
えっと、オリバーライトJr.
オリバーライトジュニア
オリバー…
オリー
オリー!
「オリー?オリーなの?」
「そうだよ」
「えーーーーーーー!」
オリバーライトジュニア
オリーは私の同級生
学校は違うが、クラブチームで二遊間を組んでた相手だ
子供の頃から一緒に野球をやってきた幼馴染
しかも、私の晩年は、私が九番、オリーは一番
今日は竜斗が七番、オリーが八番
そう、打順が並んでる
そして私達は二遊間、竜斗達は三遊間
隣り同士のポジションを組んでる
えーーこんなことある?
凄いよこの運命
ただ、わかる、トニーだ、トニーが目をつけたんだ
うちのチームに遊びに来てるだけとばっかり思ってたけど、しっかりオリーの可能性に気づいてたんだ
オリーの才能はずば抜けていた
トニーが目をつけたのも納得がいく、竜斗を見つけた時みたいに
でも、ここメジャーだよ!
凄い!
「トニーがスカウトしたんだ」
「あー、ハルキを入団させた後、すぐにオリーに目を向けた」
「ふふ、買いすぎちゃった、どこ置こうかな、隣り空いてるから置いちゃお」リリー
「そうなんだ、凄いねトニー」
「まあな、オリーは国内ドラフトを通ってきてるから、指名が残るか心配だったけど、無事取れたよ」
ウインク ニッ
もうね、ただのオッサンになってるからね、かっこよくもなんともないよ
「ハルキとオリーは、ずっと二人で頑張ってきてる、そして二人でコールアップされたんだ、そしてキョーコが見に来ている、素晴らしいな」
「うん」
「キョーコ、君はついてる、こんな偶然は普通あり得ない、コウシエンの時から思ってたが、なんか君には、不思議なパワーが宿ってるとしか思えないな」
「そ、そうかな」
「きっとそうだ、神に感謝しよう」
「あれ!何あれ、美味しいそう!買ってくる!」リリー
なんだよさっきから!マリさんみてーのがいんぞ
ん?
竜斗が出てきた!初回の守りの準備に入る!
「りゅうとぉーーーーー!」
届くわけないが、声を出す
あれ?
あ!こっち見た!
立って思いっきり手を振る!
すると、手を振ってきた!
そっか、大体どこにいるかわかってるのか
そういえば、スタンドから竜斗を応援するの初めてだ!
これはこれで楽しい
頑張ってね!
あ、背番号4だ!
新人選手に一桁番号、チームの期待度がわかる
「トニー、竜斗は投手でも出るのかな?」
「今日は無理だな、まだ投手登録はされてない」
「そっか、残念」
双眼鏡を駆使して、竜斗を食い入るように見る
オリーすまん、君のことは後で見る、とりあえず竜斗に集中するんで
ん、え?えええええー!
グ、グローブが、か、変わってない!
お手紙グローブ
嘘でしょ…
もう何年経ってると思ってるの?ここメジャーだよ、それ使うか?
明らかにそのグローブ疲れてんじゃん
バカなの?なんで新しいの買わないの?あなたもう普通にお金持ってるじゃん
自分で買えるじゃん、なんでそんなに大事に使ってくれるの…
試合前から泣きそうになる
試合が始まる
「キョーコ、一緒にこれも見よう」
トニーが私達の前にタブレットを置いた
テレビ中継が映ってる
こりゃいい、ここからでは得られない情報、そして細い部分が見れる
「ありがとう、そういえば日本では放送されてるのかな?」
「されてる、地上波はわらかないが、配信サイトは緊急で番組を組んでるらしいぞ、コウシエンの大スターのメジャーデビューだ、大騒ぎになっても不思議ではない」
そっか、日本のみんなも見てくれてるかな
初回ヤンキースの攻撃
すんごいのだらけ、二番を打つ選手なんて、身長が二メートル越え、昨季のホームランが…六十本!
やばすぎる
てか、みんなデカイ
身長191センチの竜斗が普通に見える
オリーの185は小さく見える
分かってはいたが、ここはそうゆう世界
その中で戦っていくのか…
初回はこっち先発の左のスライダーピッチャーが無失点に抑える
そして、こっちの攻撃
画面では、相手投手のピッチアーセナル(球種)が紹介されている
フォーシームの平均急速が99マイル
メジャーは年間162試合、それを中4日で先発を回して行く過酷な世界、それで平均がそれだけ出るなんて凄すぎる
「この相手ピッチャーやっぱり凄いの?」
「ああ、メジャーでも最高峰だ、去年サイヤングを取ってる、しかも二回目、去年は十七勝、奪三振数は投げたイニングを軽く越えてる、今年大型契約をして、年俸の単年平均は五十億だ」
「うー、わーーお」
こりゃキビい
「うまっ!」リリー
てか、リリーは何枠でここ座ってんだ?
リリーとトニーは普通に仲良さそう
リリーは、アカデミーにも出入りしてたのは知ってる
竜斗がサポートしてくれてたって、それを聞いて関係を疑ったけど、竜斗は全否定したし、リリーの人柄みるとそんな人ではないのが分かったから安心した、それに兄の紹介みたいだし
ただ、竜斗が昔のサポートのよしみで呼ぶとは思えない
この前言ってた、私がいない時に試合には関係者でも女性を試合に呼ばないって、お互い嫌なことしないルールだ
それを考えると、リリーを呼んだのは竜斗ではない
だって、私は今日試合に間に合うか、わからなかったんだから
まぁ、あれか、アカデミーでトニーとリリーは仲良くなったんだな、それで連れきたんだな
「トニーこれ美味しいよ、はい、アーン」
ふふ、親子みたい
そうこうしてる間に、こっちの攻撃がサクッと終わった
てかさ、うちの上位打線のスタッツ(成績)が悪すぎる
みんな打率二割そこそこ
そりゃぁ、無理よ
二回裏
七番の竜斗には一人出れば回る
四番五番がサクッと終わる
そして…六番バッターがフォアボール!
出た!
回ってきた!
竜斗の名前がスタジアム内にコールされる
すると、拍手が起こる!
みんな、新人選手を歓迎してる!
いや、それだけじゃないかも!
この雰囲気好き
竜斗が構える
ふふ、構え変わってない
双眼鏡越しで見る竜斗、身体は大きくなってるけど、バッティングフォームは全然変わってない
そして、鳴物がないメジャーのスタジアムは静寂に包まれる
初球だった…そうこの人は基本アホだった
相手ピッチャーがどうとか、初打席とか関係ない人
クァーーーン!
木製バットから、乾いた激しい音、ライフル銃みたいな音が鳴り、スタジアム内に響き渡る
「あ」
打球はあっという間にすっ飛とんでいく、高校時代よりも更に鋭くなってる
あっという間にライトスタンドを越え、その先の海に吸い込まれていった
「わーーーーーお」
球場内もみんな似たようなリアクション
そしてスタンディングオベーション
打球速度は115マイル、飛距離は483フィートとタブレットの画面に映るテレビ映像が表示している
ビジョンにもリプレーを映しながら、表示している
それを見てみんなどよめきを起こす
観客がこれがいかに凄いことなのかわかってる
急いで、スマフォでメートル換算する
飛距離は147メートル
嘘でしょ…
す、凄すぎる
これ、大記録なんじゃないか?
メジャー初打席初球ホームラン、しかもこの球場独特の場外ホームラン、記念のボールは海に消えた、カヌーの人が取ったか?
テレビの実況は、クレイジークレイジーと大はしゃぎしてる
私は本当に本当についてる!一生に一度しかない竜斗のメジャーデビュー戦、初打席でホームランを拝めた
私はいつもこの人に夢を見させてもらい、実現をしてくれる
そして、いつも、いつも私の想像をいちいち越えてくる
竜斗、凄いよぉ、凄い、何度も言うけど、メジャーだよ?相手サイヤングだよ?五十億だよ?なんで初球を思いっきり叩けるのよ!
涙出てきた
「おい、紹介されてるぞ」
「へ?わっ!」
画面に私達が映し出されて、テロップと共に実況に紹介されてる
冬川京子 女優 婚約者
と、紹介されると、周りの人がこっちを見て拍手してくれる、近くの人が握手をしてくる
トニーは、コーチ、トレーナー
リリーは、トニーのワイフと紹介されている
泣いたの映ったかなぁ
日本では今頃どうなってんだろなぁ
じゃねーわ
え!ええええ?
ワイフ?妻?嫁?はい?
本当に妻いたの?トニー?
いや、ちゃう、そこじゃない
出会いも偶然でないのはわかる、いわゆる職場婚
ちゃうのよ!違う!
お前ら何歳差?
えっと、リリーは四歳上だから、今年で二十七
トニーは…えっと、確か四十六かな?
………
二十歳差くらい?
マジかよ、うちの母と姉の差と変わらないやん
親子だろ!
いや、まあ、トニーはハタから見たらソコソコかもよ
でも、普通にオッサンだぞ
リリーは綺麗でオッパイでかい
綺麗事抜きで、そこ行くかね?
「トニーおめでとー、よく結婚出来たね」
「はは、驚いたろ、恋に歳の差は関係ないってやつだ」
ウインク、ニッ
うるせーよ、お前らのせいで竜斗のホームランが少し薄まったじゃねーか!
「な、リリー、チュッ」
イラッ
「ねえ、リリー、もしかしてオッサン好き?」
日本語で話かける、トニーにバレないように
「オッサンは失礼だな」
え?トニーわかるの?日本語でしゃべった
さては、リリーに教育されてんな!
「そう、大のオッサン好き、ね、チュっ!」
イライライライラ
ぶっ殺したくなってきたこの二人!
こっちは、全然会ってなくてムラムラしてんのに!
くそムカつく
この時思った
人前でイチャつくのは良くない
私も気をつけよう
いや、やっぱり嘘
最近自覚出てきた、人前でイチャイチャするの好きだ
建前上、いつも竜斗のせいにしてきたが、結果私の方が乗り気だった気がする
正気に戻り、リプレーを見ると挨拶変わりのインハイフォーシームをぶっ叩いてる
球速は99マイル
フォーシームと表示されてるが、だいぶ動いてる
こんなのよく打ったよ
しかもバケモンみたいな、打球速度と飛距離
ランチアングル(打球角度)は26度
その角度で…なんで海まで飛んで、そんな飛距離がでるのよ…
竜斗が渡米して、六年
そして、七年目のシーズン
メジャーリーグとゆう大舞台で、モンスターは、また行進を始めた
このモンスターはどこがゴールなのか
そのゴールまで付き合える身分を得た私
幸せ。




