仮説
あー、やばい、ピンチ
秋葉原メイドカフェに行っちゃった案件が、六年の時を経てバレそう
「はい、じゃあ取り調べを始めまーす」
「はい」
「被告人、準備はよろしいですか?」
「え!それ、取り調べじゃないよ、裁判じゃん」
「うるさい、罪人が勝手にしゃべるな」
もう有罪になってるやん
てか、この人、弁護士の助手役やってたよね?なんでそれで色々ぐちゃぐちゃなんだよ、バカなのか?いや、そうだった、少しおバカさんだった
そう、俺は杏子の出演している作品はだいたい見てきてる
こっちでも見れるように、日本のテレビ大好きのリリーがやってくれた
最初の頃は見れない、なんか辛くて見れないと思ったが…
意を決して見てみると、これが普通に見れる
「冬川京子」の、仮面をしっかり被ってるからなのか、普通に視聴者として見れた
でも、恋愛ドラマで手を繋いだりハグしたりしてるシーンは、ポチッと電源を消してしまった時もあったが、でもやはり、俺に見せてくれてた顔とは別人なので、それでも電源を入れ直してなんとか見た
キスシーンは見たことないな、恋愛ドラマは杏子が十代の時が中心で、最近はかっこいい役ばっかりやってるからかな
かっこいい役は、ポンコツのくせによく務まってるなと、失笑しながら見てた
「おいこら、ちゃんと聞いてるのか?」
「はい」
「まずはだ、被告人、あなた、はづきさんに嘘つきましたね?」
「え?」
なんで知ってるん?
「ネタは上がってます、プールの日さぁ言われたんだよねぇ、近くに来てボソっと」
「あ、その水着、ハルと買いに行ったやつだ、ハルも攻めた水着が好きなのかな」
「なぁんて、言われたわけよ、当時は何言ってんのコイツ?だったけど、今繋がったわ、あなた、秋葉原に行く前に、はづきさんに発見されて、とっさに嘘つきましたね?」
くそー、やはり浅はかだったか、てか、たまに鋭い感が働くんだよなぁ、ポンコツのくせに
「はい、その通りです」
「嘘をついた、ってことは…秋葉原に行くのがバレたくない、普通秋葉原だったらそのまま言えばいい、でも嘘をついた、それは…ただ秋葉原に行くんじゃない、女の子には知られたくない、イケナイ場所に行くからだ!違いますか?」
「あの、それは、アンソニーさんに内緒で来いと言われからです」
「あ、そ、でも隠す必要ないよね?秋葉原に行くって言えばいいんだから」
くそー、はづきは何かと付いて来ちゃう病だから、杏子と買い物って言えばいいと思って言っただけなのに、でもそれをまともに報告したら、火に油だ…
「えっと〜杏子との仲をアピールしたかったからです、一緒に水着買いに行っちゃう仲なんだぞぉ〜的な?」
「え?エヘヘへ、あ、オホン」
ん?
「わかりました、はづきさんの件は無罪!」
「ありがとうございます」
第一関門クリア
「では、次の事件の謎を解きます」
事件になってるよ、謎解きになってるよ
にしても、胸少し大きくなったな、形もいいし、色も綺麗
「こら!被告人の分際でオッパイと視線合わすな!オッパイと裁判してるのか?」
「だったら、服を来てください裁判長、オッパイ丸出しの裁判長なんていません」
「んー、あとでもっかいするから面倒い」
「え?」
裁判の後、もっかいするなら無罪じゃん
「は?なんか文句ある?」
「いや、ないです、好きにしてください」
「だよね」
そう、いつも通り下着姿、なんなら上は何も着てない丸出し、パン一姿
そもそもズルい、ホテルに着いて二回もヤッた後に裁判を開く、自分の欲を満たしてから裁判を開いてる、ズルい
まぁ、そうゆうの嫌いじゃないけど
「はっきり聞きます!あなた、メイドカフェに行きましたね!」
あー、やっぱりそこついてくるよなぁ
秋葉原→女の子に言えない所→メイドカフェ
ってなるよな、うん、だから裁判開かれてるわけだし、鉄道模型店だったら、裁判開かれない
詰んでるね、これ、正直に言おう
「はい、行きました、でも聞いてください!小山さんがメイドカフェを経営してるんです、なのでそこの社長室で話をしたんです!」
「え?そうなの?知らなかった!」
「そうですよ、嘘ではありません、祥子さんに聞いてみてください」
「ふぅーん、そこで話をして終わり?」
ビクッ
「あれ?なんかあるねこれ」
「え!ないです」
「なんかやべって顔したね」
「いやその綺麗なオッパイしてるなぁって」
「え?エヘヘヘヘ、あ、オホン」
ん?あれ、もしかして…
「メイドカフェのあと、事務所に行ったんだよね?」
「小山さんの部屋から直接向かったのかな、そーれーとーもー!」
「待ってください!はい、確かにその後小山さんにお昼食ってけと言われ、カフェの店内で食事しました!オムライス食べました!でもそれは…」
「ほほう、すんなりゲロったな、あの約束どした」
「ち、違うんです!なんか前から杏子がメイドの衣装着たらかわいいだろうなぁ、どんな衣装なのかなぁ、今度着てもらいたいなぁ、杏子なら似合うなぁ、杏子かわいいもんなぁ、一応今後の参考のために見といてもいいかなぁ…そ、それに、このメイドさん達より杏子のがかわいいなぁ、レベチだなぁって思った!」
「でも、杏子に悪いなぁと思いつつも、泣く泣く、小山さんの言われるがまま、オムライス食べました」
杏子はメイドの服なんて似合うわけない
しかも、最後の方、なんかセリフ繋がってないし…
これは、厳しいかぁ
「え?かわいい?エヘヘヘ」
「メイドさんより、私のがレベチ?」
「そりゃもう、レベチ過ぎです」
「私のこと好き?食べちゃいたい?」
「はい、食べちゃいました」
「しゅんぶん!」
主文だよ
「被告人竜斗は、無期懲役!執行猶予なし!」
「無期懲役?」
「そう、あなたは一生私の小屋から出れないわよ」
「なんかそれ、映画のパクリじゃない?」
「うっさい!」
「一生愛すの!離れないの!」
「うん、愛します、離れない」
「ヨシ!エヘヘヘ」
そうだった、杏子は一直線単純バカだった
脳みそも猪かな
「で?おまじないかけてもらったの?」
ドキッ
「えっとぉ」
「怒らないから、判決出てるから、カモン」
「萌キュン?だっけかな」
「ぶち殺す!」
「ちょっと待って、生足だめ!」
バチン!
「イッターー!」
背中張り手された
「杏子さん、あのほら、もう六年前のことだし、ほら、一回別れたわけだし、ね、時効ってことで」
「あの時はまだ付き合ってたじゃん」
「そっか、ごめん」
「グスン、もうやめてよ、嫌がることしないでよ、ずっと私は誰とも恋をしないで待ってたんだよ、例えそれが六年前でもショック、それにまたこの先、似たような事するかもしれないって思っちゃうじゃん」
あー、やっちゃったな、泣かせちゃったよ
絶対泣かしたくないと思ってたのに…
恋してないのは知ってる、祥子さんから聞いてたから
若かったとはいえ、悪いことした、猛省
「ごめん、悪いことした、謝る、ごめんなさい、今後は絶対嫌がることしないから、信じて、俺も杏子と離れてる間は、誰とも恋してないから、俺は杏子以外に好きになれないんだよ、好きな人相手じゃないと……興奮しないから、ね、信じてくれ、妻を大事にする夫になるから」
「本当?」
「うん、本当」
この場を乗り切ろうとしてるわけじゃない、本当の事だ
「その断れない癖直してね」
「うん、直しちゃう」
「誰とも恋してない?本当?」
「本当だよ」
「私以外愛せないの?」
「愛せません」
「ヨシ許す!」
よかった
「おし、シャワー行こ!三回戦進出!あれ?私はえっと…決勝進出?ま、いっか、早く!」
「切り替え早っ!」
「はい?」
「いえ、お好きにどーぞ、どこまでも付いていきます」
「だよね、エヘヘヘヘ」
決勝戦と三回戦が終わり、見事優勝した杏子はグッスリ、いや、グッタリ俺に抱きついて寝てる
自由過ぎるぞ
賢者タイム…いや、物思いタイム
ここまで五年半、もうすぐ六年か…
最初の三年はまぁ大変
こっちの生活や、食生活に慣れること
そして、英会話に身体作り
リリーがサポートしてくれなきゃ、やばかった
英会話はもちろん日本食も作ってくれたし
免許所得や、生活用品の買い物など、全てサポートしてくれた
リリーとはなにもない
リリーは全て知っていた、杏子とのこと、どうゆう流れでこっちに来てるのかも、祥子さんから全部聞いていたみたい
歳は二つ上、中学生まで日本の基地にいて、高校からボストン
そう、杏子と真逆の道をたどってる
それに、リリーは、秀太さんの紹介
なので、俺とどうのこうのなるわけがない
俺と杏子が再会して、杏子が俺に抱きついてる瞬間、リリーを見たら泣いて喜んでるのがわかった
星川家の人間が紹介してくれたんだ、良い人に決まってる、決まってた
英会話をなんとか覚えると、今度はアクターズスクール等で、演技指導や、格闘シーンなどのレクチャーを受けた
それから、ポツポツ仕事をもらい、俳優業もなんとかこなしていった
日本人役、日本の企業のCM、あと侍もやらされた
こんな侍いねーよ、みたいな演技もやらされた
アメリカは、侍に対しての誤解が酷いと実感する
祥子さんは目立つ役やらせねー、とか言ってたが、じゅうぶん目立ってた気がする、よくバレなかったよ
さっき、車の中で、祥子さんのマネジメントで俳優業もやってたとネタバレさせた、杏子はビックリするかと思ったら、なんか納得してた
俳優業の報酬は助かった
球団から最初にもらった契約金は半端なく良かったが、年俸がやばいくらい安い
試合に出ない最初の三年は、日本円で二百五十万くらい
物価高いし、色々揃えたり、免許取ったり、車も買ったりしたので、足りるわけない、アンソニーさんの言う通り、契約金を切り崩してなんとか凌いできた
まぁ、契約金を使いきらなかったし、俳優業のギャラもそこそこもらえたので、今はだいぶ楽、いや潤ってる
来季はトリプルA、メジャーからのコールアップ待ちになるので、年俸はそんなに悪くない
やっと起動に乗ってきた
日本で活躍するみんなに追いついてきたかな
杏子と俺、今の時点でどっちが稼いでるんだろうか
やっぱり杏子かな?いや、ぶっちぎりで杏子だな
二十二歳で一応は人気女優だもんな
横でアホ面で、マッパで寝てるけど
アホ面だけど、相変わらず寝顔はかわいいな
籍を入れるまでには、年収をまくらないとかっこがつかないな
秀太さんと会う事が出来た
秀太さんが日本に帰国する際に、祥子さんがわざわざ東海岸から連れてきて紹介してくれた
凄く柔らかい人、お母さんの涼子さん似だな、顔も性格も似てる
間違っても、ギャーギャー言いそうにない
キャラ濃いめの姉妹に挟まれて気の毒だ
アメリカに残ったのは、そんな姉妹から逃げたかったのかも
なんでも、高校野球の指導者を目指して帰国するらしい
うちらの甲子園を見てくれて影響を受けたみたい
ありがたい、是非頑張って欲しい
グローブの礼を言うと、自分のスラッガーがテレビにアップで映ってて感動した、ありがとうと逆に礼を言われた
メジャーで活躍して、桜水高校にグラウンドを寄付してくれ、そしたら俺が監督やる!って言ってる
あ、移動用のバスも頼む、俺運転できるから!
って、涼子さんが祥子さんにおねだりしてるみたいだった!ウケた、似てる
本当に稼げたら考える
四日間一緒に過ごしたら、杏子は一旦帰国
年末年始になったら、またこっちに来てくれるらしい
なんか、行ったり来たりさせて申し訳ないな
日本でまだ会う事出来ないから、仕方はないんだけど…
有名人の妻を持つと、こうゆう悩みも出てくる
会う場所が限られてくる
でも、それでも全然いい
それに、そのうち結婚を発表すれば堂々会える
そのためにも頑張らないと
杏子と入れ替わるようなタイミングで、今度は祥子さんがこっちに来る
俺達の映画撮影が一旦終了したので、制作チームに挨拶に来るらしい
社長自ら来る
祥子さんはフットワークが軽い
なにか節目の時は必ず来る
祥子さんだって、まだ現役バリバリの女優
忙しいのによくやるよ、本当に感心する
しかも、俺達に手が掛からなくなったら、ブロードウェイの主演狙うとか言ってるし、あの人の原動力はなんなんだろうか
んで、飲もうと誘われた
珍しい、酒自体あまり飲むの、見たことない
なので、それもちょっと楽しみ
もちろん、裁判長には報告はしてある
さすがに大人になったのか、許してくれた
とゆうか、祥子さんが俺の渡米全てに関わってることを報告したら、さすがにビックリしてた
だから、杏子も俺もわかってる、祥子さんのおかげでこの映画で共演出来て、尚且つ再会出来てる
もし、祥子さんが何も関わってなかったら、また違ったことになってかもしれない
二度と会えなかったかもしれない
祥子さんは、うちらのことをちゃんと考えて動いてくれてた、ちゃんと再会できるように動いてくれてた
だから、杏子も飲むことを許してくれたと思う
「ふあぁ、寝ちゃった」
「おー、起きた?下のバーにでも行ってお酒飲もうか?サシ呑み」
「んー、飲む、生と焼酎あるかな」
寝起きで酒が飲めるのも凄いが、やはり趣味がおっさん臭い
「どうかなぁ、カクテルじゃダメなの?」
「うーん、オケ、じゃあもっかいしてから行こ」
「無理!四連投は無理、球団から三連投までって言われてる!」
「えー、じゃあ、中何時間空けばいいの?」
今日は無理って意味なんすけど
「うーん、中三時間」
断れない癖発動
「おけ、じゃあ飲んでからだね!
マジ元気だわ、殺されるぞ俺
「おーし、レッツゴー!行くよー」
「あのさ」
「なに!」
「服着てください、そのまま行こうとしてない?」
寝ぼけてるのか?ポンコツだからか?
「あ…面倒い、ルームサービスにしない?」
マジ裸族
杏子が一旦帰国した
空港まで送って、見送った
どうせ、一週間ちょっとでまた会えるのに、搭乗口から消えていく杏子の姿を見ると、なんだか切なくなった
見送る側は余計に寂しく感じる
あの時…成田での別れの時
杏子はさぞ辛かったんだろうと実感する
その時の心境が、今少しわかった気がする…
いや、今とは状況が全然違う
こんなもんじゃない
杏子が見送った時は、いつ会えるかわからない、もう会えないかもしれない状況だったんだ
それなのに、一生懸命笑顔で送り出してくれた
なんか…想像するだけで泣けてくる
またこっち来たら、いっぱいわがままを聞いてあげよう
祥子さんが来た
自分がチームメイトとたまに行くバーは、あまりよろしくないので、祥子さんが泊まってる高級ホテルの中にあるバーで飲むことにした
「最後のシーンだけチラッと見せてくれたけど、凄いじゃん、こりゃ、日本で爆発的にヒットするぞ、ふふふふ」
「ありがとうございます」
その後、星川家の昔話などを話してくれた
ワインが進む祥子さん
いつもは体型を気にしてか、お酒や食事量を気にしてるプロ意識バリ高の祥子さん
何も考えずにガブガブ飲んでた杏子とは違う
けど、今日は嬉しいのか少し酔いが回ってるのがわかる
「俺の一月のスケジュールって、映画のラストシーンの三日間だけですか?」
「うん、そうだよ、それとアメリカでの俳優出演はこれで最後ね、CMの更新をするくらいかな」
「え、そうなんですね」
「うん、来年メジャー上がって、活躍して、で、締めでこの映画でしょ、知名度上げるのはもう充分だよ」
「そ、そうですか、了解です」
「大丈夫、竜ちゃんは間違いなく活躍するし、映画はバカみたいに大ヒットする、ただでさえ人気シリーズ、それに現役日本人メジャーリーガーと日本の売れっ子女優の共演、しかもこの二人は高校生からの愛を育みゴールイン、こうゆうサクセスストーリーはアメリカ人大好きだからね、たぶんこれ記録作るよ、もちろん日本でもヤバイことになる」
「わかりました」
これを最初の頃から狙ってたのかな、だとしたら祥子さんの先を見据える頭脳は神がかってる
「だから、竜ちゃんは何も考えずに野球に専念しな」
「了解です、俳優業はもう廃業ってことですか?」
「バカタレ、今度は日本だよ日本、来シーズン終わったらセット販売に走るからね、とりあえずCMとか持ってくるから、よろしく頼むよ」
でた、セット販売
「はい、よろしくお願いします」
「あ、杏子のスケジュールってどうなってます?なんか俺と一緒で、今のところなんもないとか言ってましたけど」
「入ってないし、入れないよ、杏子は二月から撮影が入ってる、だから年末から映画の撮影まで二人とも空きだからバカンス楽しめ!」
「ま、マジすか!」
「うん、あなた達は世界中で有名になる、そうなるとなかなか好き勝手出歩けないよ、今のうちに楽しんでおきな」
「ありがとうございます!じゃあ、ハワイ行こうかな、新婚旅行みたいでいいすよね」
「あーだめ、一月のハワイは日本人めちゃくちゃいるから、バレちゃうからだめ、まだバレないようにして」
「あーそっか、そうだよな」
「まぁ、この辺とかでもいーよ、どこか連れてってやって、来年からは杏子もこっちの住人になるから、色々先に教えてやんな」
「え、住人?」
「ま、それは追い追い説明する」
「わかりました」
お酒が進む
「祥子さんはこの先、本当に結婚はしないんですか?」
「うん、しない、一生絶対しない、おばあちゃんまで女優やるし、孫は任した」
「前から思ってたんすけど、祥子さんはどうしてそこまでストイックに女優業をこなしていけるんですか?事務所も順調だし、俺から言うのも失礼なんですけど、恋愛とかに走ってもいいような気がするんですが…」
「ははは、そうね、でもね、私はもう女優として生きていくしかないの、生きていくしかないんだよ」
少し思いつめる祥子さん
「そ、そうなんすね、失礼しました」
「私さ、昔、子供堕ろしてるんだ」
「え!」
「二十歳の時だね、うちの家族はみんな渡米してたから、みんな知らないからね、私一人で解決してるから、みんなに内緒ね、杏子にもだよ」
「りょ、了解です」
「高校の先輩の兄貴でさぁ、本当好きだったなぁ、かっこいいし、優しいし、男らしくてね、まぁベタ惚れだったよ」
「私が高校二年の時から三年位付き合った、歳は六個上でさ、当時の私からしたらさ大人じゃん、そりゃもう大人の魅力にやられてた」
「トレーラーの運転手やっててね、本牧からコンテナ積んであちこち配達に行くんだけど、その横に乗せてもらって色々連れてってもらった、幸せだった」
「でもね、子供できちゃったんだよ、当時はモデルで大事な時期、悩んだよぉ」
「私のモデルの大先輩、私がまだ子供の頃に、秀太のべビーシッターで来てた人なんだけど、その人がやっとモデルで売れ出した時に子供出来ちゃってさっ」
「その人は子供産んで、モデルの仕事辞めたんだよ」
「辞めて、私に託したの、モデルやれって、その人が芸能事務所に私を紹介してくれたんだよ」
「その先輩を見てたのに、気をつけなきゃって思ってたのに、一時の快楽に負けた、だから竜ちゃんに子供は気をつけろって、全部だめになるって言ってたの、子供を作る時は環境が整った時じゃないとだめなんだよ…」
「はい」
「結局、その彼には何も告げずに別れた、子供が出来たことを言わずにね、そして堕ろしたんだ」
「そうだったんですね」
「その時誓ったの、せっかくの命を殺してまでモデル、女優の道を選んだ、私にはもうこの先結婚して子供を産む資格はない、その命からもらったこの女優業を一生かけてやり通して報いる!懺悔する!ってね」
祥子さんだって、杏子と同じ血が流れてる、絶対に恋愛は真面目な人だ、さぞ凄く悩み、悩みに悩んで決断したんだ
「わかりました、祥子さんにも色々あったんですね、自分はその祥子さんの一生をかけた女優業、俺は一生助けたいです、何か俺に出来ることがあったらなんでも言ってください!」
「はは、この前まで小僧だったのに生意気言うようになったじゃん…って竜ちゃんは前からそんな感じだ、ありがとう」
「いえ」
「杏子は大したもんだ、こんな優良物件捕まえるんだから」
「そんな…」
「あ、そうだ、お墓だけど」
「はい、てか、すんません、お墓参り頼んでしまって、関係ないのにご迷惑かけてます」
「うん、お墓移したから、うちの事務所の近くに」
「え?」
「いや、その子しか入ってないって言うから、こっちで近くに買って移しちゃった、大久保地味に遠いっていうか、面倒いからね」
「あのぉ、さっぱり意味がわからないんすけど」
「大丈夫、その子のお母さんには了解を得てるよ」
どうゆうことだ、お母さんの連絡先なんて教えてないぞ
それに墓だって高いだろ、意味が…
「あ、ビックリするよね、実はその子のこと、私知ってる、てかお母さんをよーく知ってる」
「え!どうゆうことですか?」
「さっき話をした、子供産んだ大先輩、それがその人、その子のお母さんなんだよ、んで、その子を産んでモデルやめたの」
「えーーーー」
そんな偶然あるか?
あ、そか、ベビーシッターか
タカちゃんのお母さんは、確かうちの地元の人
祥子さんも中学高校は、横浜だけど、小学生の時までは、今の星川家の家に家族と住んでた。
秀太さんが小さいってことは、まだ東京にいたってことか…
近所の付き合いかなんかで、ベビーシッターを頼まれたのかな
からの、祥子さんと知り合いになったってことか
にしても、ここでも偶然が重なってくる…
俺の親友のお母さんが星川家に関係してる
もう、怖いぞ
「その子が、小学生に上がる頃まではちょくちょく会ってた、でもほら、あの人再婚したじゃん?あ、シングルだから初婚か、とにかく、新しいお父さんの手前、それから行きづらくなっちゃってね」
「え!再婚?新しいお父さん?どうゆことですか?俺がタカちゃんと初めてあった時には、お父さんは普通にいましたけど」
「え?」
やばって顔してる
「あー、うん、その人シングルマザーなんだよ、私と一緒で相手には子供出来たの告げてない、しかも数年後には相手は遠くに引っ越したからね」
「え、産んだのになんでですか?告げて結婚すれば良かったじゃないですか?」
「不倫」
「わお」
「頼む、内緒ね、やばいな酔っ払ったか私」
「知らなかったです、普通の家庭に全然見えましたから」
「そうなんだ、でもさぁ、死んでたの知らなかったよぉ」
「そうなんすね」
「竜ちゃんにお墓参り行ってくれって言われて、名前聞いた時、ビックリしたよ」
あ、だからあん時、見たことない表情したのか
「本当…まさか亡くなってるだなんて…連絡ないから元気でやってると思ってたよ、大人になったら会えるかなぁ…って」
えっ、涙浮かべてる、お酒のせい?
でも…いくら亡くなってるからって、先輩の子供相手に泣けるかな…
そもそも、祥子さんが泣くってやばくないか?
なんか、だんだん変な疑問が俺の中で湧いてくる
そもそも、いくら面倒いからってお墓移すか?
銭金の問題じゃない、常識的にありえない
確かにお母さんは旦那さんの仕事の都合で京都に行ってる、でもやり過ぎだろ
「ねえ、竜ちゃん、ナオタカの小学生時代のこと教えてよ、どんな子だった?」
「あ、そうすね、よく俺とプロ野球選手の真似して遊んでましたね、どっちが上手いか!なんて争ってましたね」
「ハハハ」
「それに、あいつ野球めっちゃ上手いんすよ、で、ヤス…工藤ってのがいるんすけど、そいつと少年野球入ってたから、タカちゃんも誘ったんすよ、でもやらないんすよぉ、もったいないなぁってずっと思ってました」
「………」
ん、思い詰めてるな祥子さん
あれ、自分で言ってて不思議になってきた
なんで、タカちゃんは野球チームに入らなかったんだろ、思いだすと頑なだった気がする
俺とヤスとカゲさんでプロの試合見に行く時も誘ったけどこなかった、今思うと滅多にないチャンスなのに、なんでだ
「そっか、でも楽しく過ごしてたんだね、野球好きだったんだね」
「はい、暇さえあれば運動公園で野球やってま…した」
うーん、なんだろなんかモヤモヤする
「そうそう、横浜の大ファンでしたね、クラスには誰も横浜ファンいないから、浮いてましたよ、俺もドラゴンズファンだったので、二人で浮いてましたね」
「しかも、直鷹と竜斗、先生達には鷹と竜とか言われてました」
あれ、直鷹…
「そっか、そっか、横浜ファンか…あの子ちゃんとわかってたんだ…」
「え、何をですか?」
「ううん、なんでもない、教えてくれてありがとう」
その後、祥子さんとはもう少し飲んで別れた
俺の中でいけない仮説が浮かんでくる
祥子さんの話と行動、俺の記憶をたどってみる
泣いてたし、墓を移動
再婚後は遠慮して会ってない
タカちゃんは横浜ファン
誰かに遠慮してるかのように野球をやらない
いや、野球はするけど、チームには入らない
真剣にやってるところをお母さんに見せたくなかったのかな、思い出させないために
横浜ファンだったけど、お母さんに隠してた
亡くなった後、毎月線香を上げるのにお邪魔してたんだが、その時、お母さんと、色々話をしたんだけど、横浜ファンだったことを聞いてビックリしてた。
タカちゃんは、子供なりに色々気を使ってたんだ
そう、横浜ファン
あの人は、横浜のコーチをやってた
あの人の名前は確か直之さん
タカちゃんのお母さんは星川家の元ベビシッター
俺のただの妄想かもしれない
でも、当たってると、タカちゃんは…
祥子さんの…
いや、それもそうだけど
杏子の兄…
あれ?もしかして…
タカちゃん、俺に野球続けろって…
杏子のため?
いろんな偶然、杏子のため?
ん?あれ、祥子さんのため?
ひっくるめると、結果祥子さんのため?
だから声真似?
うーん…
んにゃ、考えすぎか
そもそも、こんなのおとぎ話だ
でも、二人と血が繋がってるのは…
やめた、勝手な推理よくない、これじゃあ考察好きでいつもヘマをやらかす杏子と一緒だ
祥子さんはやること豪快だから、墓を移しただけ
酔っ払ってたから、涙もろかっただけだ
タカちゃんが横浜ファンも偶然偶然
名前も偶然偶然偶然
俺も酔っ払ってるから、変な仮説立てただけ
うん、そうに決まってる。
とりあえずは、そうゆうことにしとこう。




