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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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58/76

映画撮影

 

 現地到着!


「ようこそ、冬川京子さん、初めましてリリーウィリアムズです、こっちでのマネージャー業務をやらさせていただきます、よろしくお願いします」


 白人の綺麗なお姉さんが迎えてくれた。


 おっぱい大きい…

 てか!私の周りみんなデカくね?


「よろしくお願いします」


「私もスターリバー所属なので、遠慮なくなんでも言ってくださいね」


 ま、マジか、海外にも社員いるのか


「日本語上手ですね」


「はい、子供の頃は日本で育ちましたので!」


「なるほど、あの、リリーさん、リリーさんでいいかな?えっと、英語でお願いしていいですか?英語での演技初めてなので、慣らしておきたいです」


「オーケー、リリーでいいわよ、じゃあ行きましょう」




 撮影開始


 初めての英語での演技も、まぁすぐに慣れた。

 しかも、英語でのジェスチャー付きの演技のが感情を出しやすい



 撮影が始まってからわかった。


 主人公チームと絡みなし、最初のメールの件もメールなので絡みなし


 兄役を脱獄させるまで、ほぼ一人演技ばかり


 えっとこれ、完全にサブストーリー


 主人公達に会うのは、最後に赤ちゃんを届けるワンシーンのみ


 マジかぁ、もっと会って共演したかったけどね

 でも、サブストーリーだからこれはこれで大事



 ほぼ一人演技の撮影が終わると兄役と合流予定


 その後は兄妹セットの動きだらけ、なのに相手役がまだ決まってない


 これ私的に超不安、ある程度イメージわけば、イメトレして本番に望める、でもこのままじゃ、ぶっつけじゃん!


 余裕かましすぎだろ、ハリウッド!



「キョーコ、相手役決まったみたい、脚本少し変わるって、あとショーコからの伝言、一人演技の時でも楽しかった頃を思い出して笑顔作れ、じゃないと相手役と合流してからの笑顔が繋がらなくなって、撮り直しになるぞ、ですって」


「オーケー」


 そういえば、長谷川さんが、姉も昔、顔が繋がらなくて、撮り直しになったことがあるって言ってたな


 うーん、楽しかった頃ねぇ、竜斗とデートした頃でも思い出すか…


 あー、そっか、確かに竜斗を意識した笑顔と冬川京子の笑顔は繋がらないかも


 ん?てか、じゃあ冬川京子のままでよくない?別に悪くないと思うんだけど…


 まっ、姉の言うことは絶対だし、結果それがいつも正解になる、なので言うことを聞いておく


 ってあれ?相手役決まったって言ったよね


「リリー、相手役決まったって誰?資料ちょうだい、イメージ湧かせたいから」


「あー、今はまだ教えられないわ」

「は?」

「ごめんなさーい」


 おいおい、なんだよそれ、ハリウッドってそうゆうところなのか?


 いや、お前うちの社員だろ!教えろよ


 ま、いいや、もう知らん



 笑顔を意識しての演技が続いた。



「キョーコ、新しい脚本出来たから読んどいてね」


「オーケー」


 脚本が少し変わるのはよくあることだ


 どれど……れ?は?めっちゃ変わってるやん


 兄じゃなくて、元恋人になってる


 刑務所じゃなくて、普通にローカルレース場で声をかけて、ミッションを依頼する


 最初は断られるが


 じゃあ一人でやるからいいと言うと、慌てて元恋人が引き受ける


 男の運転の横でハッキングを駆使して、赤ちゃんが捕らわれてるアジトを探す


 元々、二人は男の浮気が原因で別れた


 でも、それは女の全くの誤解


 男はミッションのための浮気のフリだった


 男の指には指輪がまだはめてある、それは以前に女がプレゼントしたやつ

 それを見て、女は段々浮気は間違いじゃないかと疑う


 大好きだったのに裏切られたと思ってた女だったが、少し気持ちが変わってくる


 途中CIAの人間から、実は男は政府秘密組織の日本人エージェントで、非常に危険なミッションに入る時に、女に危険が及ばないようにと、浮気をしたフリをして女を遠ざけた、と、聞かされ女は泣く


 ここ重要だな、泣くのは得意


 でも、何でまだ本当のこと言ってくれないんだと、イラつく女


 そして、我慢できずに思わず軽いキスをしてしまう…


 え!キス?おい聞いてないぞ!


「キョーコ、最後までちゃんと読んでね、資料もあるからね


「オーケー」


 って、キスは聞いてない!ハリウッドでもだめ!


 とりあえず最後まで読む


 そこから、二人は一気に敵を追い込む

 主人公チームと戦ってる敵の人質のガードは、あまり力を入れてない

 でもセキュリティだけは固い


 そのセキュリティを女が突破して、男は凄腕のエージェントらしく敵をバッタバッタとなぎ倒す


 赤ちゃんを見つけるも、大きいトラックの中に捕らわれてた


 トラックの中で乱闘になる、強敵との乱闘、でも敵は赤ちゃんを奪われまいと、トラックごと敵本体に向けて走り出す


 女はトラックを車で追跡する


 男はギリギリで赤ちゃんが入ったカゴを女にパス


 トラックを運転してた敵は撃たれて死ぬ


 トラックが制御不能になる


 でも、男と強敵の乱闘は終わらない


 やっとこさ、強敵を倒すも、トラックは崖の下に落ちそうになる


 トラックの中から、必死にジャンプしたところを、女が車をギリギリまでつけて、それになんとか掴まり男は助かる


 トラックは崖の下に落ちて爆発


 女は、もうどこにも行かないで!と言って濃厚なキスシーン、で、赤ちゃんを助けるサブストーリー終了か…


 っておーーい、軽いキスと濃厚なキス?


 さすがに無理


「リリー、これ無理、制作側に前のに戻すように言って」


「え?ショーコはオーケー出してますよ」

「は?」


 え?なんで?姉はNG知ってるのになんで?ハリウッドの押しに負けた?


 いや、ふざけんな、だったらまず私に相談だろ!


 なに勝手に決めてんだよ

 さすがにこれはない!


「リリー!社長に電話つなげて!」

「え?」

「早く!」




「おー、ビックリしたべ?いやさ、最初にネタバレさせちゃうと、お前頭おかしくなって仕事どころじゃなくなるじゃん?だからギリギリにしたのよ、それに、そのほうがそのまま感情が乗ったいい演技になるから、内緒にしてたんだよ」


「は?何言ってんの?お姉ちゃん、なんでオーケー出したの?キスシーン入ってるじゃん!どゆこと!」


「はー?なんだよ、ありがとうって言われるのかと思ったわ、じゃあ他の女優と入れ替えんぞー」


「いいよ、さすがに無理」


「あれ、お前、もしかして、相手役の資料見てないの?」


「え?み、見てないけど、誰がやったって一緒だよ!」


 パラパラパラパラ


 ん?脚本とは別に相手役の資料が付いてる


 これか


「ふぅーん、じゃあいいのね、他の女優探しちゃうよー残念」



 …………………?

 …………………!



 え?えええええ?

 えーーーーーー!


 ガチャン


 電話を落としまった


「もしもーし、もしもーし、あれ?どうしたのかなー」


 相手役の俳優の名前




 リュウト ハルキ

 スターリバープロモーション



 はい?


 え、何が起きた?え?


 電話を慌てて拾う


「お、お姉ちゃん、イタズラするなんて酷いよ、あれ、もしかして同姓同名の韓国人?」


「おー、大丈夫か?そんな名前の韓国人いるわけねーだろ、イタズラじゃないよ、とりあえず落ちつけ」


「え?竜斗?これ竜斗?」


「ピンポーン、えっとやるの?どーすんの?」


「はぁ?やるに決まってんじゃん!他の奴にやらせてたまるかよ!やります!この役是非やらせていただきます!」


「だよねー」


「お姉ちゃん、知ってたから脚本変えたのオーケーしたんだ」


「バーカ、最初からその脚本だよ、兄妹の件のやつは私が適当に考えたやつだよ、あんたにギリギリまでネタバレさせないため、悪く思うなよ、じゃああとは頑張れーファイトー」



 ま、マジかよ


 てか、なんで?


 竜斗と会える喜びよりも、なんで?のが勝ってる


 野球どうしたのよ、だめ?怪我したりした?


 俳優に転向?いつの間に?


 しかもうちの事務所…なんで?


 知らぬ間に日本に帰ってきてた?


 てか、これかなりの大作だぞ

 私だって、やっと掴んだんだぞ

 なんで、普通に出れんだ?




 

 相手役俳優との顔合わせと打ち合わせの日がキタ


「えっと、本当に竜斗なの?春樹竜斗なの?」


 リリーに聞いたらクスクス笑ってるだけ


 なんやねん、私だけはぶ?もしかしてドッキリ?


 全然実感湧かない、てっきり野球場で再会すると思ってたもん


 車で移動中もモヤモヤ、もうすぐ会えるのに喜びが湧いてこない




 到着


 少し遠くでスタッフと話す大柄な日本人男性が見えた


「ほら、見えるでしょ、行ってらっしゃい」


 リリーが優しく言って、車のドアを開ける



 日本人男性が振り向く


 竜斗!間違いなく竜斗!竜斗だ竜斗だ


 髪の毛伸びてる!カックイイ

 顔が大人になってる!この顔、私が大好きなこの顔!

 


 スタスタ、タッタッタッタッタ、タタタタタタタタタタタ


 自然と私の足が走り出す


「りゅ、りゅうとぉ、りゅうとぉーーーー!」



 チクタクと十六歳で止まってた私の中の恋の時計が再び動きだす



 なんで俳優なの?なんて思いが一気に吹き飛ぶ


 どんな形でもいいんだ、私は五年半この時を待ち遠しくて待ってたんだ!


 竜斗、会いたかった!会いたかったよぉ


 走りながら泣きだす


 竜斗が大きく手を広げて、走ってくる私を待ち受けている



 バフッ!


 竜斗の胸に飛び込んだ


 竜斗が優しく抱きしめてくれる


「だーーれだ?」

「ハハハハ、それ正面向かって言うセリフじゃないからっ!」

「うっさい!」


「えっとー、杏子!別名冬川京子さんかな?」

「ピンポン」


「会いたかったよぉ、もう何してたの!おばあちゃんになっちゃうって思ってたよぉ」


「ハハハ、そうかそうかごめん」


 スリスリスリスリスリスリ


 あれ?体が大きくなってる、ちゃんとトレーニングしてある体


 本当に竜斗?


 抱きしめを解除する


「チョップ!」

「ヒャーン」


「本当に竜斗だ、エヘヘへ」


「おいー、悪いことしてないのにやめろよぉ」


「うっさい、待たせた罰、待たせた罰なの、本当に、本当に……ウエーーーン」


「みんな見てるからとりあえず泣くのやめな、ケバイ化粧落ちちゃうよ」


「ケバくない!一言余計!」


「わかったって、ほら顔見せて」

 優しく指で私の涙を拭ってくれる


 キラッ


 ガバッ


 慌てて竜斗から離れる

 竜斗の左手の薬指に指輪が…


「どうした?」


「あ、そのその、ごめんなさい、もう結婚してたんだね、そうだよね、五年以上たってれば金髪のボインちゃんと、やりまくって子供出来ちゃうよね、あ、子供出来て野球諦めたんだ、うん、そうだね、今幸せ?私?私は死にたいかも、あ、ごめん、重いね、えっと、子供の名前はさくらにして、あれ?金髪だからだめか、あら?ウエーン」


「お、おいおい、落ち着けって、なんでそうなるんだよ、やりまくってないし、結婚どころか彼女もいないよ」


「は?騙すの?じゃあ、その指輪なによ!」


「え?これ?あー、杏子からもらったって設定のやつだよ」


「は?あげてねーし、それになに設定って?喧嘩売ってんの?蹴るよ!」


「落ち着け、な、まず落ち着け、ホン読んでないのか?指輪のシーンあるだろ!さっきサイズチェックしたんだよ!」


「ん?…………」


「あ」


「思い出した?」

「うん、はい」


「もうーー、頼むよぉ、いきなりポンコツかますなよー、よくそれで今までやってこれたなぁ」


「ち、違うもん!今まではヘーキだったの!なんか今日だけ……調子悪い」



 そう、私はこの人を前にすると、たちまちポンコツになってしまう



「ねえ、彼女いないってホント?」

「もちのロンだよ」

「エヘヘへ、私もいないよ」

「そっか」

「そっかじゃない!言うことあんでしょ!」


「え?け、結婚だよね」


「そう!空港で約束したじゃん、結婚して、早く、結婚!」



 そして、私はこの人の前だと、積極的になりすぎてしまう



「わかったわかった、まあ、日本語わかるの周りにいないし、いっか」



「杏子、俺と結婚しよう」


「もちのロン!エヘヘへ」


「ただし、とりあえず婚約ね、まずは俺達この映画をちゃんとやり遂げないと、それに来年メジャー上がりそうだから、それまで待って、一応ケジメつけたい」


「え?野球続けてるの?」


「当たり前だろ!来年からトリプルAだ、メジャー、一歩手前!」


「わお!凄いじゃん!」


「で、でも、メジャーに上がれなかったら?離婚?婚約破棄?メジャー離婚?トリプルA離婚?」


「大丈夫!絶対に上がるから、もし怪我とかしてダメになっても結婚はするよ、俳優で食ってくから安心して、でもまずはメジャーに上がるまで待って」


「わかった!許す!婚約許す!」


「じゃあ、打ち合わせしよ」


「チューして」

「は?」


「チューして!ここはアメリカだからへーき」



 そしてそして、私はこの人を前にすると、たちまち恥じらいが欠落する



「ったく、しょうがないなぁ」


「ラストシーンのリハーサルするよー」


 ワオ!竜斗英語上手くなってる!


 周りのスタッフは、?マーク


「ほら、じゃあリハーサルな」

「うん!」


「んんんん、んん、んんんんんん」

 わーお、濃厚やん


 あれ、竜斗、震えてる、竜斗も再会を楽しみにしててくれたんだ


「んんんん」


 プハ!やばい、死にそう


「へい、キスが深すぎるし、長過ぎるからNGだ、もう一回やり直せ、ハハハハハ」


 さすがアメリカ!ノリがいい!


「え!んんんんんー」


 本当にもっかいしてきた


 エヘヘへ


「杏子、再会出来て嬉しいよ、今度はもう離さないよ」


「うん!離れない!」




 私はこの人と出会ってしまい、この人を初恋相手に選んでしまったせいで、この人以外愛せなくなった


 いや、愛せなかった


 私はもうこの人しか愛せない


 離れている間、他の人を好きになるチャンスはいくらでもあった


 それでも無理だった


 一番前向きになってもあの松本でのあの有り様


 他の人は言う、それで人生楽しい?って


 そう、私は長い人生で恋をする相手、身体を絡める相手はこの人だけになる


 だったらなんだ


 何がいけない


 逆に女として生まれて、凄い事だと思う


 こんな相手と若いうちから出会えたんだから


 凄い楽しい人生だ



 離れてる間は辛かった


 一度は別れてるし、連絡すら出来なかったんだから


 でも、私にとっては大きな意味が成された気がする


 あのままずっといても、私からは別れなかったと思うけど、ナァナァになってたかもしれない


 だけど、五年半離れたことで、よりいっそう愛の深さが増した


 こうして、再会出来たから言える言葉かもしれない


 絶対再会するまで待つ!絶対に再会できる!竜斗は迎えに来てくれる!と、竹下通りで泣いた時に決めた、覚悟を決めた


 その思いが竜斗に伝わらないわけがない


 そう信じられる人なんだから!


 だから、どのタイミングで再会しても、結果は一緒


 この人しか愛せない、愛せなかった


 例え、おばあちゃんになってもね


 はぁ、本当に嬉しい


 神様、ご褒美ありがとう

 神様、いつも助けてくれるね

 竜斗の次に好きだよ



 

 打ち合わせの前に少し話した


「ねえ、なんで竜斗はこの役になれたの?」

「あー、この映画、うちの球団がタイアップしてるんだよ、だから、コネ配役」


「そうなんだ、演技は?けっこうどころか、かなり難しいシーンあるよ、英語だし」


「うん、オフシーズンにバイトでエキストラや端役をこっちでやってたからね、なんとかやるよ」


「ふぅーん」

 そんな、レベルでこの大役務まるのか?


「英語がけっこう難関だったよ、マスターするのに時間かかった、だから野球のデビューが遅れたんだ、マイナーリーグも英語力ないとコミュニケーションとれないし、まぁ大変だったよ」


「なるほど」


「今でも正直完璧じゃないかな、ある程度の会話は平気なんだけど、早口で喋られたり、なまりが入るとたまに聞き直しちゃうよ」


「あー、それはしょうがないかな、でもゆっくりなら日常会話大丈夫なんでしょ?」


「うん、台本で早口のとこあるけど、台本通りなら大丈夫だから、遠慮なくきて、変なアドリブは勘弁な」


「うん、わかった、私の演技にちゃんとついてきてよね!」


「オッケー」



 なぁんて、上から言ってた私がバカだった




 二人の撮影が始まる


 えっとなに?めっちゃ演技上手いんですけど!

 どうしたのこのスキル…

 私が押されてる


 って、忘れてたわ、コイツはアホみたいな習得モンスターだった、コツを掴んだら無敵だったの忘れてた。


 

 撮影は快調


 そりゃそう、婚約してる二人、溺愛してる二人

 夫は習得モンスター

 妻は帰国子女の自称トップ女優、自称ね自称

 上手くいかないわけがない


 今までの冬川京子とはまるで違う演技スタイル、星川杏子、いや、春樹杏子バージョンだ


 あぶない、竜斗と合流する前の演技の笑い方を意識しといて良かった


 普通にやってたら、絶対に繋がらない


 姉の言ってた意味がわかった


 竜斗との撮影が楽しすぎて、笑顔のシーンが心からの笑顔になってるのがわかる


 まさか、キャッチボールではなく、演技でもまたこうして一緒に出来るなんて…


 本当に幸せ




「なんで、教えてくれなかったの?」

「しょうがないだろ、君を巻き込みたくない、教えたら君のことだ、離れないと駄々をこねたはずだ」


「あらそう、でもこうして今は一緒にいる、気分はどう?」

「どうって?なんて言ったら君は喜ぶんだ」


「そんなの自分で考えなさいよ!ミッションが終わったらどうせ離れ離れ、ムカつくこと言っても許してあげる」


「今でも愛してる」

「あ、そ、」

 チュッ、チューーーー


「フン、合格」


「カットーーー」


「キョーコ長過ぎる!そこは軽く終わらさないと、少し怒りながらも嬉しいところなんだから!」


「イエーース」


 最初のキスシーンで監督にダメ出しされた


 長いバージョンも欲しいかと思った


 なんて嘘、少し遊びました



 ここから、竜斗はアクションシーンがてんこ盛り


 私は基本、運転してるかパソコン叩いてるか、キレてるかなので、アクションはほぼない、比較的楽な演技


 でも、竜斗はエージェントらしく敵をバッタバッタ


 しかも、最後は格闘シーンが長く続く、大丈夫か?




 大丈夫だった

 竜斗は、ほぼ一発オーケー


 嘘でしょ?


 マジで?そのスキルどこで覚えた!


 しかも、身体がたくましいから、その格闘シーンがかっこいい…


 惚れる、いやとっくに惚れてる、惚れ直してる


 がぶりつきたい


 竜斗をメチャメチャにしたい


 五年半もの溜まったムラムラが大変なことになってる


 そりゃそう、今は生殺し状態


 撮影中は二人で会わないと決めた

 スタッフを交えて食事をする程度


 節度を持って撮影に望む!


 遊びで来てるわけではない


 周りにデートの延長だと思われたくなかった


 真剣に演技に取り組みたかった


 なので、我慢我慢


 無事やり遂げるまで、頑張る!


 二人で何度も打ち合わせして、撮影に取り組んだ


 それだけでもじゅうぶん楽しいし、幸せ…

 だけど、そろそろムラムラの限界がきてる




 そして最後のシーン


「ありがとう、危なかった、助かったよ」

「もう!無茶しないでよ!死ぬとこだったのよ!」


「仕方ないだろ、あーするしかなかったんだ、エージェントになった日から死ぬ覚悟は出来てたよ、こんな日が来るんじゃないかって」


「ねえ!もし死んでたら!死んであなたがいなくなったら!残された私はどうなるの?一生あなたの亡霊と付き合うの?もうあなたと離れるのは嫌!私から離れないで!どこにも行かないで!死んだら許さない!」


「そんなこと言ったって、死にそうになったのは君からのオファーのせいじゃないか、怒るんじゃなくて褒めてくれよ」


「そ、そうだけど…フン!今回は許してあげる!どこにも行かない、離れないって言うなら、許してあげる!」


「わかったよ、どこにも行かないよ、今はエージェントではなく、ただのローカルレーサーだからな」


 そして抱き合う私達


「本当にどこにも行かない?浮気したりしない?」

「浮気はミッションだって言ってんだろ」

「ミッションでも許さない」


「うるさい女だ、けど愛してる」

「私も愛してる」


 濃厚なキスシーンに入る


 キスシーンに力が入る


 ムラムラが解放されたわけじゃない


 もう、離れなくていいんだという、現実とごっちゃになった


 そして、キスシーン中、自然と涙が私の両目からツーと流れ落ちる


 泣くシーンではなかった


 やばっ、やり直しかな


 すると、ドローンカメラがゆっくり上に上がっていく


 あ、オーケーだ!



 その後アテレコで、ドローンカメラが上がって上からの描写になる最中にセリフだけを入れる


「そうそう、もうレーサーやる必要ないわよ」

「え?なんで?」


「今回の報酬、今のあなたの年収の千倍はあるわよ」

「わーお、遊んで暮らしても有り余るな」


「遊ばせない」

「え?」


「あなたは一生、私のパソコンを掃除するの」

「ハハハ、それも悪くない」



 あとは、アテレコを必要なとこに入れて


 細部を撮り直ししたり、私の最初の頃の笑顔を撮り直して、一旦は私と竜斗はクランクアップになった


 今は十二月


 年を越えたら、撮影チームは主人公チームの撮影に入る


 一月の末に先に私達が赤ちゃんを持っていくシーンを撮る、竜斗が二月からキャンプインになるためスケジュールが調整がされた感じ


 映画の公開は、来年十二月予定


 来年の竜斗のオフシーズンに私と竜斗は日本語の吹き替えも担当し、日本で収録をする


 当初は、竜斗だけ声優を入れる予定だったが、制作側が吹き替えも竜斗本人でと日本側に打診した


 これはマジで嬉しい 

 声優さんには悪いが、他の人とやりたくなかった


 制作側が竜斗の演技力に惚れ込んだからかな

 竜斗は野球だけじゃなく、俳優でも規格外だった


 本当にとんでもない人を好きに…いや、旦那にしてしまった




 クランクアップすると、四日間二人の時間が取れた。


 その後、一旦私は帰国、ちょこっと撮影をしたらすぐに竜斗に会いに来て、年末年始を一緒に過ごす


 姉は、まだ二人の関係はバレたくないから、日本で会うなと言われた。


 タイミングを見計らうから待ってろ、そしたら堂々と会っていい、と言われたのでその通りにする、マジで姉の言う通りにしとけば間違いない




 まずは四日間の久しぶりの二人だけの時間

 ムラムラをぶっっつけまくる


 竜斗のアパートメントは、近くにチームメイトが、うじゃうじゃいるから嫌だと言うので、サンノゼのホテルに泊まることにした。



 竜斗が運転する車に初めて乗る。


 あまり高そうな車ではない

 

 マイナーリーガーだからしゃあない

 が、そんな事はどうでもいい

 竜斗が運転する車だったらなんでもいい

 壊れなければね


 あーもう、だめ、運転する姿にムラムラ

 抱きつく!ムジュー、ほっぺにチュー


「おい、運転中はやめろ、事故る」

「エヘヘヘ」


「あ、そうだ、そこのグローブボックス開けてみん」


「え?うん」


 開ける


「ん?わっ!」

「時計、私のあげた時計」


「ごめんな、映画はスポンサーついてるから、つけれないからさぁ、車に置いといたんだ、ミサンガは切れちゃった」


「時計ずっとつけてくれてたの?」

「うん、今でも気に入ってる」


「そっか、ありがとね、ねえ、私のベイビーGどこにあると思う?」


「ん?日本?家?」


「待ってね」

 ガサゴソ


 もうすぐ六年経つんだよ、それなのに大事に使ってくれてたんだ、もう大好き


「じゃーん!持ってるよん、私も別メーカーのCM出ちゃったからつけれないけど、お守り代わりで、いつも持ってたん……ん、んんん」


 あん、キスされた


「じ、事故るよ」

「大丈夫、信号待ち」

「あ、そ、合格、チュッ!」

「映画のパクリじゃん」


「うっさい!一言余計!もっかいチューして!」

「青になりました」

「もう!」



 

 ホテル到着、ここを拠点として、軽く出歩きながらホテルにこもる


 竜斗とホテルは初、はるきホテルはあるけど

 テンション上がる!


 少し高めの部屋にした

 竜斗が財布からカードを出す


「ちょっと待って!事務所の先輩の私が出す!」

 そう、芸人ルールを活用する!たぶん私の方が収入多いと思うしね


「え?俺のが先輩だよ」

 と、言いながらカードをフロントに出して精算を済ます


「ん?なんで、私十七歳からだよ」

「知ってるよ、俺その前からだもん」


「はい?いつ?」


「えっと、あ、ほら甲子園の後プール行ったじゃん?」


「あ、あの日は別れる宣言した日じゃん」 


「そうそう、あの日の前日かな、実はさ、アンソニーさんと秋葉原で話をしたんだよ、アメリカの話、その後祥子さんに呼ばれて契約…あれ、正式にはこっちきてから契約したから、同じくらい?いや、四月に契約したから、ほら、俺のがせんぱーい!」


 ん?

 なんでそんな早くに契約してるの?

 てっきり、この映画に出るから、姉を頼ったと思ってた

 

 こうなることを姉は予想してたのか?

 さすが姉だわ、感心する



 じゃねーわ



「トニーと話?誰が通訳したの?」


「えっと、小山さん」


「あれ、その日は墓参りしか聞いてないよ」

「え!あ、え、えっと確か、急に言われたんだよ」


 ん?やべって顔した


「秋葉原?」

「そう」

「ふぅーん」

「え?」


「竜斗あのさ、うーん…ま、いいや、とりあえずやる事やろう」

「は、はい」


 秋葉原、トニー、小山、コンプリートじゃん

 さぁ、どうしてくれようか…


 母譲りのスナイパーの目になる。

 

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