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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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56/75

何もなし


「合格者は掲示板に番号が出ますのでご確認くださーい」


 六十三番、六十三番、六十三番、六十三番


 チカッ


 番号が一斉に表示される


 六十三番、六十三番


 おっ!おっし!あった!


 一発合格!いえーい



 普通車免許を取った、取らされた。

 取らされたのに自腹


 まぁ、いいけどね


 お金はあまり使わない、使う暇がない。


 ブランド物に興味がない、姉のお下がりを貰いまくってたのでありがたみがない。


 自分の趣味が合う物しか買わない

 見栄とかでは絶対買わない。


 で、普通車免許


 取れるうちに取っておけって、姉に言われた。


 撮影とかに必要なのかな?


 自分で運転するつもりはない

 するなとも言われた。


 軽く事故しただけでもニュースになるからだって


 なので、身分証代わりにしかならないよね


 ペーパードライバーまっしぐら


 将来、子供とか出来たら必要になるのかな


 母の愛車のようなミニクーパーみたいのが欲しい


 免許を取ってる間は、仕事を調整してくれたので、集中して自動車学校に通えた。


 一か月くらいでサクッと取れた。


 私センスあるかも、と思うくらいスイスイ段階を越えていけた。


 効果測定は難しかったけど、あとはスイスイ


 もしかしたら、教官の人が冬月京子採点をしてくれたのかも…だとしたら尚更運転しない方がいいよね


 

 免許証出来上がり


 うわ、ひどっ


 噂には聞いていたが、免許の写真が酷い


 みんな酷くなるらしいが、私は更に酷い気がする


 これ、別人じゃね?


 今、職務質問されて免許証出しても、信じてくれなさそう


 洗剤写真使わせろ



 十九歳になって初めての仕事が免許所得だった


 高校卒業したら馬車馬かなぁ…なんて思ってたらそうでもない


 CM撮影も落ち着き、ドラマ撮影がちょこっとあるだけなのでまぁまぁ時間ある。




 リナさんとマリさんと女子会した。


 リナさんはまだカラボで働いてる、バイトリーダーらしい、さすがだ


 ボイトレも落ち着き、これからオーディションなどを受けまくると言ってる


 ゴー君はカラボをやめて、設備屋さんの職人になった。

 生活費捻出のためみたい、もちろんバンド活動は継続中


 ライブハウスで定期的にライブをやってる、そこにリナさんも出演して、ゴー君が作った歌を披露したりしてるらしい


 二人とも頑張れ!


 マリさんは短大を卒業して保母さんになった


 保育園に勤めてる

 幼稚園の先生は断念

 ピアノが弾けないらしい


 脳筋バカ、スポーツバカのマリさんに、ピアノはハードルが高かったみたい


 子供におっぱい揉まれるらしい

 そりゃそう


 ちなみに、マリさんはガブさんと別れた

 なんなら高校出てすぐに別れた


 本人は、すれ違いとか言ってるけど

 ただ単に飽きたのではないかと思う


 今は食っちゃ捨て食っちゃ捨てを繰り返してる

 なかなかの肉食だ



 そして、星川家にも変化が起きた。


 兄の秀太が帰国した。


 野球は早々に見切りをつけて、向こうで不動産関係の仕事を模索してたが、私達の甲子園を見たら気持ちが揺らいだらしく、とうとう覚悟を決めた。


 帰国後、大学に入り直して英語の教員免許を取り、高校野球の指導者を目指すと言ってる。


 兄の帰国で一番喜んだの当然母だ


「ケバイ姉妹に比べて、秀太はお利口さん、大人しいし、ギャーギャー言わないし、本当に出来た子、日本で彼女作る時は頼むから大人しい子にしてね」


 って、本人に向かって言う親バカ、そして私に聞こえるように言ってる


 悪かったな、ケバくて、ギャーギャーで、この前、車のホイール買ってくれってせがんできたのどこのどいつだ!


 ホイールの前に首都高乗れるようになれ!


 まぁ、しゃあないので買ってあげた、三十万飛んだ


 姉が車本体とナビ、私ホイール

 なのに、この言われよう

 理不尽すぎる。

 

 兄はもちろん、姉の衣装部屋を使う。


 姉はそのまま荷物を残してる、なので竜斗同様に姉の物品に囲まれて寝る、そう、あのベッドで…


 シーツは取り替えたよ、うん


 でも、すまん、そのベッドは既に(けが)れてます。


 竜斗と過ごした思い出のベッド


 二人で寝転がって、音楽を聴いたりゲームしたり

 たまに…声を殺してエッチしたり


 そんな甘い思い出が上書きされてくようで、寂しく感じる。 




 仕事はいたって順調


 学業が終わった分、伸び伸びやれてる


 休みも適度にあるが、休みで何か特別にやることはない


 家で携帯ゲームやって、リナさんやマリさんとラインして遊んでる。



 竜斗が渡米して三年

 変わらず何も情報が入ってこない。


 まだ試合には出てないのかな…



 そして、私は二十歳になった、成人になった

 すると、仕事が一気に増えてきた。


 番宣ついでにバラエティーに出たのが好評だったらしく


 そっち方面の仕事が増えた。


「ゲラ」なのでウケがいいのかな


 ゴリラ笑いは一生懸命堪えてる


 仕事が増えたので、実家を出て都心でマンションを借りて一人暮らしを初めた。


 クソ忙しいので、寝に帰るだけ


 えっと、散らかってるかな…うん


 お酒も飲めるようになったので、チョイチョイ飲んでる


 お酒好きかも


 学生の頃に家で父のビールを盗み飲みしたことはあったが、その時はマズっ!だった。


 でも、成人して飲むとこれがまた美味い


 不思議


 家の冷蔵庫は、お酒とおつまみしか入ってない

 若い女子としては、終わってる気がする。


 お酒が飲めるようになると、行きつけの店が出来た。


 月2、3程度で通う店


 実家の近くの、本格中華料理三笠

 別名、居酒屋ドリさん、名付け親は私


 そう、あのドリさん


 家の後を継ぎ、とゆうかお父さんと一緒にやってる


 二十一時までの営業だが、終わった後も連絡すると私のために開けて待っててくれる


 営業終わりでないと、私の立場的に行けないので助かる


「ちわー、ドリさーん生ちょーだーい」

 昔の野球部仲間に会うと、冬川京子から星川杏子に戻る


 しかもタメ口になってきてる


「杏子ちゃん、いつものとりあえず作ろっか?」

「うん、おにゃしまーす」


 いつものとは、竜斗が大好きで母によく作ってもらってた豚肉とインゲンの炒め物


 竜斗がアホみたいに母にリクエストするので、いつのまにか私も好きになってしまった。


 居酒屋ドリさんには最初無かったメニュー、私がリクエストして作ってもらってる


 母とは少し味付けが違うが、これはこれで美味い


 今はメニューにのせて好評らしい


 店内には甲子園の時の写真が飾られていて、その下には、小さいショーケースにドリさんが使ってたハタケヤマのミットが飾られてある


 ノブさんのボールと竜斗の豪速球を受け続けてきたミット


 かなり味が出てる、カックイイ


 ミット好きの私は、このハタケヤマが何よりのツマミになる


 で、ドリさん本体は当時よりも一回りサイズアップされてる 


 これは予想出来てた


「冬川せんぱーい、先にいただいてまーす」

「……」コクリ


 調子のいい声を出すやつと、その横で眠たそうな顔してコクリと会釈だけするやつ


 そう、マッキーとコバ

 もう、呼びつけ


 こいつら、ハイエナ?コバンザメ?


 私が来ると知ると、ここぞとばかりにタダ飯を漁りにくる


 この二人、コバッキーってコンビ名でお笑い芸人をやってる


 やってると言っても、まだまだ売れてないので、バイトがメインのたまにお笑い芸人って感じ


 芸人ルール?


 歳は私のが下でも芸歴は私のが先輩なので、先輩扱いされ、先輩が飯を奢るのは当たり前ルールに全乗っかりしてくる


 しかも!事務所の後輩でもある!


 元々いた事務所とコバの相性が良くなくて、事務所を移籍してきた


 リナさん経由で姉に紹介したんだけど、絶対姉は断ると思った、金の匂いがしないとなびかない姉


 でも、あっさり快諾した



 二人のネタは、この居酒屋ドリさんでたまに見せてくるけど、まぁまぁ面白い


 私はゲラだからか?


 コバがボソボソとボケて、マッキーがノリノリでツッこむのが、温度差があって私的にはなかなか面白い


 だけど…うちの事務所には、他にお笑い芸人がいない


 そんな中で、わざわざ雇うほどではないと思う


 うちに置いて旨みあんのか?


 私にはわからないが、将来有望なのか?


 でも、姉はたぶん何か思いついたんだ


 数少ない営業と、他事務所の先輩芸人のワンマンライブの招待がたまにあり、あとは姉パワーで持ってきた番組の前説などをやっている


 でも、メインはガードマンのバイト


 マッキーは、たまに姉のカバン持ちもやらされてる、スポンサーのお土産が多い時等だ、そしていつもの空気読めない行動をして、よく姉に長い足で蹴られてる、そして喜んでる




 秋になると、とうとうドラフトに桜水高校出身の二人が指名された


 ノブさんと大さんだ!


 ノブさんは、父がいるチームとは別の東京の人気チームに投手で二位指名され


 大さんは、福岡のチームから外野手で四位で指名された


 凄い!野球を続けた二人がプロ入り!


 一軍目指して頑張れ!


 竜斗はどうしてるのかなぁ


 竜斗のメジャーデビューと、この二人の一軍デビュー


 誰が一番最初に出てくるかな


 やっぱりノブさんかな

 プロ向きのピッチングしてたもんなぁ




 竜斗が渡米して四年が経ち

 そして、私は二十一歳になった。


 竜斗の情報まるでなし


 そろそろマイナーの試合に出てもいいと思うんだけど…


 全然報道されない


 五年でメジャーは全然無理に思えてきた。


 そろそろなんかしら報道されないと無理だろ


 他の日本人達がメジャーで活躍してるから、影に隠れてるのかな


 あの神奈川の150キロカルテットの一人、私達の試合に先発した左腕が、高卒からプロに入り、今は一軍でバリバリ投げて活躍してる。


 少しもどかしい



 私はドラマや映画の主演もやるようになり、仕事は順風満帆


 でもなんでか、朝ドラからは声がかからない

 ふん、私の顔は朝には向いてないのね!


 スキャンダルなし、あるわけない



 映画の記者会見で意外な人物を見た


 週刊誌の記者


 その顔を私は知ってる!


 柴田はづきさん!


 竜斗の幼馴染


 バトミントンをやめたのは知ってたが、まさか記者になってるとは…


 言葉は交わさなかった


 はづきさんは苦手だ


 高校時代、チョイチョイ顔を合わせたが、はづきさんは私に対する態度だけなんか違うので、苦手だった


 悪い人では無さそうなんだけどね




 その後も忙しい日々が続く


 その中で、私の気持ちに変化が起き始めてきた

 竜斗がいない生活に慣れきってきた。


 気持ちが段々薄れてきてるのが自分でもわかる

 まだ、なんかしら情報があれば違ったと思うが

 何もなし


 さすがに諦めるとゆうよりも、もういいかな、私は私で前に進もうかな、昔の初恋なんて、もう引っ張る必要ないかな、って思うようになってきてる


 こうして、みんな前に進んでくのかな


 母が前に言ってた、父と結婚する前に大好きな人がいたって

 まぁ、そこは少し勝手な憶測も入ってるけどね


 でも、大好きな人ではなく、父と結婚してる

 当時はなんで?って思ったが

 今は少しわかってきた気がする。


 こうして、みんな女として成長していくんだな、と思った。


 まぁ、母は母で父の事も大好きだと思う

 結婚三十年経っても燃えてたし

 キャバ程度で殺しそうになってたからね

 と、心の中で母をフォローする。




 そして、竜斗が渡米して五年が経った。


 とりあえずは五年の五年


 相変わらず何もなし


 私はもうすぐ二十二歳になる。


 ノブさんは去年から一軍でバリバリ投げてる

 八勝した


 大さんも去年一軍デビューを果たした


 今年は開幕スタメン取れるかも


 ゴー君のバンドは配信等で曲を披露して知名度が上がってきている。


 それ以上に才能を発揮してるのが、トークの生配信だ


 お酒を飲みながら生配信をして、リスナーと喧嘩したり、笑ったり、時事ネタぶった斬ったりして、めっちゃ面白い


 登録者数もガンガン増えてる

 んで、それを見て黙ってる姉ではない


 完全フリーのゴー君にアプローチをかける


 縛られるの嫌いかなぁと思ってたら、あっさりオーケー


「あー、なんか金が入るようになると面倒いから丸投げしちゃうわ」

 って、言ってたって、リナさんから聞いた


 金の管理は自分だぞ、サラリーマンなんじゃないんだからっ


 ただ、これがいい方向に向く


 ゴー君に歌よりも楽曲提供を勧めた姉


 姉が前に所属していた事務所の歌手に提供したら大ヒット!


 ゴー君の才能が開花を始める 


 てか、うちの事務所がどんどん桜水化してる


 コバッキーはまだ低迷中だけど



 ガブさんがプロテスト合格

 本当にプロゴルファーになった。

 

 そして、思わぬ伏兵が現れた!

 羽堂さんだ!


 知らぬ間に民放のアナウンサーになってた!

 女子アナ狙い間違いなし!


 プロ野球の実況をやり始めている


 夜のスポーツ番組のアシスタントみたいなこともやってる 


 私は野球NGなので会うことないけどね



 で!出世頭!大出世!リナさん!


 リナさんの歌声がとうとう世に広まった!


 アニメ映画の主題歌を務めたら大ヒット!メガヒット!


 なんなら挿入歌もリナさん!


 映画、歌、挿入歌、みんなメガヒット!


 今じゃ、その辺どこかしらで曲がかかってる


 こりゃ紅白いくでしょ


 レコード会社に紹介したのは姉だ


 うちの事務所には入れなかった


「いやぁ、あの歌声聞いちゃったら、うちじゃ無理だよ、専門分野に任した方がいい」と、姉は言ってたが…



「お姉ちゃん、リナさんのこと惜しかったね、うちに入れとけばって後悔してるでしょ?」


「いや、うちじゃ、あのアニメの主題歌もらえないよ、だから良かったんだよレコード会社で、でも大丈夫、タダでは渡してないから、イヒヒヒ」


 もう、恐ろしいわ


 なんか、桜水高校野球部凄くね?

 みんな甲子園より活躍してる気がする。


 みんな、有名人になっていく


 街中ではリナさんの曲が流れ


 ナイターを見たら、ノブさんが投げ羽堂さんが実況してる。


 大さんは夜のスポーツ番組やスポーツ新聞でたまにみる


 ユーチューブを開けば、ゴー君が酔っ払ってしゃべってる


 ドラマや映画には私が出てる


 そのうち、ガブさんもいい成績を残して出てくるかもしれない


 竜斗と同級生は今年二十四歳になる、段々みんなレールに乗り始めている。


 竜斗は無理だったのかな、もしかしたら野球辞めて、向こうで新しい生活をしてるかもしれない

 

 私達、もう二度と会えないかも


 前向くしかないな私

 そう思い始めてきた。




「杏子!ハリウッド!決まったよ!」

「うそ!」


「うん、やったな!英語力が評価された!夏終わりから撮影入るから」


 そう、ここまで、野球の他に世間に隠してたのは帰国子女キャラだ


 そこは別に良かったのに、姉がここぞって時にとっておくって言われてた


 ここぞって時がキタ! 


「冬川京子がハリウッド映画に出て、いきなり英語をぺらんこ喋りだす、こりゃまた売れるな」

 と、ウハウハ顔の姉


 まぁ、もちろん脇役だけど、めっちゃ嬉しい


 アメリカは半分母国!昔の友達が見てくれるかもしれない


「よし、準備しとけよ!」


「うん!スケジュール大丈夫なの?」

「調整するに決まってんだろ!」



 ハリウッド、アメリカ

 アメリカにいる竜斗の近くに行けるが

 それは立ってる場所の距離が近くなるだけ


 竜斗が夢を叶えるまでは、心の距離は縮まらない。

 

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